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第二部(アレク編)

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 最初は主に、10月に婚約を発表してから王子妃教育を始めて、目標では貴族学校卒業までに修了し、卒業後は王宮に入って、半年後に婚姻式を行なうといった流れをお姉様に話してくださった。
 その後は私も交えて和やかな雰囲気でお話しをしてくださり、オーキッド殿下とお呼びする許可をいただいて、3人での茶会は進んだ。私の視線は専ら、殿下の後ろに立つアレクに注がれているのだけれど。

「アレキサンダーが剣の指南をしているというオスカー殿は今日はいないのかな?」

「オスカーは剣の鍛錬をしていると思います。すぐに呼ぶこともできますが」

「いや、いいんだ。顔を見られたらと思っただけで、真面目に取り組んでいることを邪魔するほどでもないよ」

「兄は王国騎士団に入るために毎日鍛錬を積んでおります」

「もし正騎士になることができたなら、私の騎士になってくれると嬉しいのだけれど。年も近いし、モンティアナ嬢の弟ならば信頼もできる」

「それは兄も喜びます。一層鍛錬に身が入ることでしょう!」

 お姉様と顔を見合わせて笑う。オーキッド殿下の側近になれるなんて誉れだ。それにオーキッド殿下をお守りすると同時にお姉様のそばにいられるから、王宮に入るお姉様にとっても安心だし、素敵なご提案だ。

「アレキサンダー卿も第一王子殿下の騎士にと言われたのですよね?」

 話の流れ的にいいかなーと思ってアレクに話しかけてみた。こんなに近くにいるのに護衛として撤しているのが少し寂しい。

「その件については……まだ、決めかねているところで」

「あら、どうしてですか? とても良いお話だと思うのですけれど」

「う、ん……そうなのですが」

 オーキッド殿下の護衛として来ている手前、いつものように気安く話してくれないし、なんだか返事もはっきりしないし、アレクらしくなくてモヤモヤしてしまう。

「アレキサンダーはオスカー殿の剣の指南にこちらへ来るのが楽しみで、また私がモンティアナ嬢に会いにこちらへ来ると知れば自ら護衛を買って出てくれるほど。だからアズール兄さんの専属騎士になることに難色を示しているという訳なんだ」

「殿下、私の内心を言い当ててアドリアーナ嬢に言ってしまうのはやめてください」

 優雅に紅茶を飲むオーキッド殿下と、項垂れるアレク。
 つまり、アレクはここへ来る機会を失うのが嫌だから、第一王子殿下の騎士になるという栄誉を賜ることを渋っているということ?

「アドリアーナ嬢、忘れてください」

「え、ですが……」

「まだ現段階では決めかねているというだけです」

 アレクはこう言うけれど、気になる。気になり過ぎる。第一王子殿下に色良い返事をしないことってアレクにとってマイナスになるんじゃなかろうか。

「アドリアーナ嬢は今現時点で婚約者はいるのかい? まぁセレストと同じ年頃の令嬢だからいないだろうけど、一応ね」

「婚約者はまだおりませんが、第三王子殿下と婚約をなどとは全く思っておりません」

「あっ、私が……」

 お姉様が、やってしまった! みたいな顔をしているがやってしまってません。むしろグッジョブなんです!

「お姉様がオーキッド殿下とご婚約なさることとは関係なく、望んでおりません」

「それは、どうして?」

「お慕いしている方がおりますので」

「婚約の打診はしているのかな?」

「いいえ。まだ何も」

「その理由は教えてもらえる?」

 理由……アレクを見ながら考えてみる。
 そもそもは出会ったらすぐに求婚をと考えていた。でもそれはアレクが平民だと思っていたからであって、公爵令息として出会って出鼻を挫かれたような気でいた。
 だけど、婚約の打診くらいはしてもよかったのかしら? いやでもまだ6歳だし。
 お兄様の訓練のために毎週来てくださることになったから、仲良くなって、この恋を成就させるのよ! なんて思っていたけれど……よくよく考えてみれば、婚約の打診をしてからその後の行動を考えていくというような形でもよかったのでは?

「まだ私は6歳ですし、尻込みしておりました。でも少し行動を起こしてみることにします」

「それは助かるよ。幼い頃から婚約している令嬢もいないことはないしね」

 え? 助かるってどういうこと? と思ったが、オーキッド殿下はこの話は終わりといった様子で紅茶にまた口を付ける。
 ちらりと窺ったアレクの顔がどんどんと険しくなっていったのがとても気になった。
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