42 / 98
第二部(アレク編)
15
しおりを挟む
「頑張ってきてくださいませ! お姉様!」
いよいよ茶会の日。デビュタントもまだの令嬢達ばかりなので、夫人が同伴する家もあるだろうし、兄が同伴する家もあるだろう。
スタングロム侯爵家からは当主であるお父様が同伴する。まぁ、適した大人が他にいないというだけなのだが。
「姉上、第二王子殿下とお話しできるといいですね」
「ありがとう、オスカー、アニー」
「では、行ってくる」
行ってらっしゃいませ! とお兄様と一緒に馬車を見送った。お姉様は落ち着いていたし、きっと良い結果になるはずだ。
「あの人がいなくなってから、姉上は少し表情が明るくなったな」
「そうですね。自信の無さみたいなものが無くなったように思います」
「お前のおかげだろうな」
「私ですか? 何もしておりませんが?」
「当然のことのように自分を肯定してくれる存在は、大きな救いだよ」
「救い……」
「さて、訓練してくる」
「頑張ってくださいね! 私も今日はお姉様のために腕を奮いますよ!」
「それは楽しみだな」
お兄様も見送って、邸に戻る。今日はアレクが毎週来てくれていた訓練の日だったけれど、茶会の警備のために休息日は返上らしい。
アレクのために料理を学んでいる私だが、アレクが来ないなら作らない。というのもあからさますぎるため、今日の夕食も頑張って作る所存である。
お父様とお姉様が茶会から戻られるのを待って、今日もお母様を含めた皆で夕食を食べる。
話題はもちろん、茶会のことである。
「第二王子殿下とはどうなったのですか? お話はできましたか?」
「えぇ。思っていたより長くお話できて嬉しかったわ」
「本当ですか! どのようなお話を!?」
「そうね、大体……あなたのことだったかしら」
うふふ、と笑うお姉様。訳が分かりません。なぜに、私?
「テーブルがいくつかあってね、令嬢が2、3人ごとに決められた席に座って、殿下方が順番に回ってお話をするという形だったの。私はフォーサイス公爵令嬢と同じテーブルで、第一王子殿下がフォーサイス公爵令嬢とお話される時間が長かったから、第二王子殿下と長く話せたと思うの」
フォーサイス公爵令嬢は前の人生で第一王子殿下の婚約者になって、王太子妃になられたはず。おそらく今回もそうなりそうね。確かにフォーサイス公爵令嬢と同席だったから長く話せたというのもあるかもしれないけれど、お姉様と話したいからその席になった可能性もあるわよね。
「それで、どんな話を?」
「最初は、ドレスを褒めていただいたわ。アクセサリーも。とても似合っていると。あとはアレキサンダー卿が殿下方の護衛に付かれていたから、オスカーの話になったり、アニーのお料理の話になったり……そんな感じだったかしら」
「アレク様が!?」
「えぇ。第一王子殿下の側近になられるというお話だったわ。学校卒業後は第一王子殿下専属の護衛になって欲しいと打診しているけれど煮え切らないんだとご本人の前で殿下が笑っていらしたわ」
アレクの騎士団服姿見たかったわ! お姉様羨ましい!! 結局未だに剣を振るう姿を見られてないんだもの!
「とにかく、私が想像していたより、とっても良い雰囲気でお話ができたわ。アニーのおかげよ。ありがとう」
「私は何も! お姉様にとって良い結果になるようお祈りしています!」
結局、茶会のドレスやアクセサリーの色で、ジュディスお母様に嫌がらせをするという私の企みは不発に終わってしまったのだけれど……第二王子殿下に褒めていただけて、お姉様が幸せそうなお顔をしていらっしゃるのだから、これで良かったのだと思う。
ジュディスお母様の悔しがる姿を見られなくて、ほんの少し残念だけど。
いよいよ茶会の日。デビュタントもまだの令嬢達ばかりなので、夫人が同伴する家もあるだろうし、兄が同伴する家もあるだろう。
スタングロム侯爵家からは当主であるお父様が同伴する。まぁ、適した大人が他にいないというだけなのだが。
「姉上、第二王子殿下とお話しできるといいですね」
「ありがとう、オスカー、アニー」
「では、行ってくる」
行ってらっしゃいませ! とお兄様と一緒に馬車を見送った。お姉様は落ち着いていたし、きっと良い結果になるはずだ。
「あの人がいなくなってから、姉上は少し表情が明るくなったな」
「そうですね。自信の無さみたいなものが無くなったように思います」
「お前のおかげだろうな」
「私ですか? 何もしておりませんが?」
「当然のことのように自分を肯定してくれる存在は、大きな救いだよ」
「救い……」
「さて、訓練してくる」
「頑張ってくださいね! 私も今日はお姉様のために腕を奮いますよ!」
「それは楽しみだな」
お兄様も見送って、邸に戻る。今日はアレクが毎週来てくれていた訓練の日だったけれど、茶会の警備のために休息日は返上らしい。
アレクのために料理を学んでいる私だが、アレクが来ないなら作らない。というのもあからさますぎるため、今日の夕食も頑張って作る所存である。
お父様とお姉様が茶会から戻られるのを待って、今日もお母様を含めた皆で夕食を食べる。
話題はもちろん、茶会のことである。
「第二王子殿下とはどうなったのですか? お話はできましたか?」
「えぇ。思っていたより長くお話できて嬉しかったわ」
「本当ですか! どのようなお話を!?」
「そうね、大体……あなたのことだったかしら」
うふふ、と笑うお姉様。訳が分かりません。なぜに、私?
「テーブルがいくつかあってね、令嬢が2、3人ごとに決められた席に座って、殿下方が順番に回ってお話をするという形だったの。私はフォーサイス公爵令嬢と同じテーブルで、第一王子殿下がフォーサイス公爵令嬢とお話される時間が長かったから、第二王子殿下と長く話せたと思うの」
フォーサイス公爵令嬢は前の人生で第一王子殿下の婚約者になって、王太子妃になられたはず。おそらく今回もそうなりそうね。確かにフォーサイス公爵令嬢と同席だったから長く話せたというのもあるかもしれないけれど、お姉様と話したいからその席になった可能性もあるわよね。
「それで、どんな話を?」
「最初は、ドレスを褒めていただいたわ。アクセサリーも。とても似合っていると。あとはアレキサンダー卿が殿下方の護衛に付かれていたから、オスカーの話になったり、アニーのお料理の話になったり……そんな感じだったかしら」
「アレク様が!?」
「えぇ。第一王子殿下の側近になられるというお話だったわ。学校卒業後は第一王子殿下専属の護衛になって欲しいと打診しているけれど煮え切らないんだとご本人の前で殿下が笑っていらしたわ」
アレクの騎士団服姿見たかったわ! お姉様羨ましい!! 結局未だに剣を振るう姿を見られてないんだもの!
「とにかく、私が想像していたより、とっても良い雰囲気でお話ができたわ。アニーのおかげよ。ありがとう」
「私は何も! お姉様にとって良い結果になるようお祈りしています!」
結局、茶会のドレスやアクセサリーの色で、ジュディスお母様に嫌がらせをするという私の企みは不発に終わってしまったのだけれど……第二王子殿下に褒めていただけて、お姉様が幸せそうなお顔をしていらっしゃるのだから、これで良かったのだと思う。
ジュディスお母様の悔しがる姿を見られなくて、ほんの少し残念だけど。
61
お気に入りに追加
925
あなたにおすすめの小説
婚約破棄の現場に遭遇した悪役公爵令嬢の父親は激怒する
白バリン
ファンタジー
田中哲朗は日本で働く一児の父であり、定年も近づいていた人間である。
ある日、部下や娘が最近ハマっている乙女ゲームの内容を教えてもらった。
理解のできないことが多かったが、悪役令嬢が9歳と17歳の時に婚約破棄されるという内容が妙に耳に残った。
「娘が婚約破棄なんてされたらたまらんよなあ」と妻と話していた。
翌日、田中はまさに悪役公爵令嬢の父親としてゲームの世界に入ってしまった。
数日後、天使のような9歳の愛娘アリーシャが一方的に断罪され婚約破棄を宣言される現場に遭遇する。
それでも気丈に振る舞う娘への酷い仕打ちに我慢ならず、娘をあざけり笑った者たちをみな許さないと強く決意した。
田中は奮闘し、ゲームのガバガバ設定を逆手にとってヒロインよりも先取りして地球の科学技術を導入し、時代を一挙に進めさせる。
やがて訪れるであろう二度目の婚約破棄にどう回避して立ち向かうか、そして娘を泣かせた者たちへの復讐はどのような形で果たされるのか。
他サイトでも公開中
婚約破棄された貧乏令嬢ですが、意外と有能なの知っていますか?~有能なので王子に求婚されちゃうかも!?~
榎夜
恋愛
「貧乏令嬢となんて誰が結婚するんだよ!」
そう言っていましたが、隣に他の令嬢を連れている時点でおかしいですわよね?
まぁ、私は貴方が居なくなったところで困りませんが.......貴方はどうなんでしょうね?
婚約破棄された公爵令嬢は虐げられた国から出ていくことにしました~国から追い出されたのでよその国で竜騎士を目指します~
ヒンメル
ファンタジー
マグナス王国の公爵令嬢マチルダ・スチュアートは他国出身の母の容姿そっくりなためかこの国でうとまれ一人浮いた存在だった。
そんなマチルダが王家主催の夜会にて婚約者である王太子から婚約破棄を告げられ、国外退去を命じられる。
自分と同じ容姿を持つ者のいるであろう国に行けば、目立つこともなく、穏やかに暮らせるのではないかと思うのだった。
マチルダの母の祖国ドラガニアを目指す旅が今始まる――
※文章を書く練習をしています。誤字脱字や表現のおかしい所などがあったら優しく教えてやってください。
※第二章まで完結してます。現在、最終章について考え中です(第二章が考えていた話から離れてしまいました(^_^;))
書くスピードが亀より遅いので、お待たせしてすみませんm(__)m
※小説家になろう様にも投稿しています。
この国の王族に嫁ぐのは断固拒否します
鍋
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢?
そんなの分からないけど、こんな性事情は受け入れられません。
ヒロインに王子様は譲ります。
私は好きな人を見つけます。
一章 17話完結 毎日12時に更新します。
二章 7話完結 毎日12時に更新します。
転生したら使用人の扱いでした~冷たい家族に背を向け、魔法で未来を切り拓く~
沙羅杏樹
恋愛
前世の記憶がある16歳のエリーナ・レイヴンは、貴族の家に生まれながら、家族から冷遇され使用人同然の扱いを受けて育った。しかし、彼女の中には誰も知らない秘密が眠っていた。
ある日、森で迷い、穴に落ちてしまったエリーナは、王国騎士団所属のリュシアンに救われる。彼の助けを得て、エリーナは持って生まれた魔法の才能を開花させていく。
魔法学院への入学を果たしたエリーナだが、そこで待っていたのは、クラスメイトたちの冷たい視線だった。しかし、エリーナは決して諦めない。友人たちとの絆を深め、自らの力を信じ、着実に成長していく。
そんな中、エリーナの出生の秘密が明らかになる。その事実を知った時、エリーナの中に眠っていた真の力が目覚める。
果たしてエリーナは、リュシアンや仲間たちと共に、迫り来る脅威から王国を守り抜くことができるのか。そして、自らの出生の謎を解き明かし、本当の幸せを掴むことができるのか。
転生要素は薄いかもしれません。
最後まで執筆済み。完結は保障します。
前に書いた小説を加筆修正しながらアップしています。見落としがないようにしていますが、修正されてない箇所があるかもしれません。
長編+戦闘描写を書いたのが初めてだったため、修正がおいつきません⋯⋯拙すぎてやばいところが多々あります⋯⋯。
カクヨム様にも投稿しています。
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
築地シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。
これでも全属性持ちのチートですが、兄弟からお前など不要だと言われたので冒険者になります。
りまり
恋愛
私の名前はエルムと言います。
伯爵家の長女なのですが……家はかなり落ちぶれています。
それを私が持ち直すのに頑張り、贅沢できるまでになったのに私はいらないから出て行けと言われたので出ていきます。
でも知りませんよ。
私がいるからこの贅沢ができるんですからね!!!!!!
令嬢に転生してよかった!〜婚約者を取られても強く生きます。〜
三月べに
ファンタジー
令嬢に転生してよかった〜!!!
素朴な令嬢に婚約者である王子を取られたショックで学園を飛び出したが、前世の記憶を思い出す。
少女漫画や小説大好き人間だった前世。
転生先は、魔法溢れるファンタジーな世界だった。リディーは十分すぎるほど愛されて育ったことに喜ぶも、婚約破棄の事実を知った家族の反応と、貴族内の自分の立場の危うさを恐れる。
そして家出を決意。そのまま旅をしながら、冒険者になるリディーだったのだが?
【連載再開しました! 二章 冒険編。】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる