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第二部(アレク編)

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「頑張ってきてくださいませ! お姉様!」

 いよいよ茶会の日。デビュタントもまだの令嬢達ばかりなので、夫人が同伴する家もあるだろうし、兄が同伴する家もあるだろう。
 スタングロム侯爵家からは当主であるお父様が同伴する。まぁ、適した大人が他にいないというだけなのだが。

「姉上、第二王子殿下とお話しできるといいですね」

「ありがとう、オスカー、アニー」

「では、行ってくる」

 行ってらっしゃいませ! とお兄様と一緒に馬車を見送った。お姉様は落ち着いていたし、きっと良い結果になるはずだ。

「あの人がいなくなってから、姉上は少し表情が明るくなったな」

「そうですね。自信の無さみたいなものが無くなったように思います」

「お前のおかげだろうな」

「私ですか? 何もしておりませんが?」

「当然のことのように自分を肯定してくれる存在は、大きな救いだよ」

「救い……」

「さて、訓練してくる」

「頑張ってくださいね! 私も今日はお姉様のために腕を奮いますよ!」

「それは楽しみだな」

 お兄様も見送って、邸に戻る。今日はアレクが毎週来てくれていた訓練の日だったけれど、茶会の警備のために休息日は返上らしい。
 アレクのために料理を学んでいる私だが、アレクが来ないなら作らない。というのもあからさますぎるため、今日の夕食も頑張って作る所存である。



 お父様とお姉様が茶会から戻られるのを待って、今日もお母様を含めた皆で夕食を食べる。
 話題はもちろん、茶会のことである。

「第二王子殿下とはどうなったのですか? お話はできましたか?」

「えぇ。思っていたより長くお話できて嬉しかったわ」

「本当ですか! どのようなお話を!?」

「そうね、大体……あなたのことだったかしら」

 うふふ、と笑うお姉様。訳が分かりません。なぜに、私?

「テーブルがいくつかあってね、令嬢が2、3人ごとに決められた席に座って、殿下方が順番に回ってお話をするという形だったの。私はフォーサイス公爵令嬢と同じテーブルで、第一王子殿下がフォーサイス公爵令嬢とお話される時間が長かったから、第二王子殿下と長く話せたと思うの」

 フォーサイス公爵令嬢は前の人生で第一王子殿下の婚約者になって、王太子妃になられたはず。おそらく今回もそうなりそうね。確かにフォーサイス公爵令嬢と同席だったから長く話せたというのもあるかもしれないけれど、お姉様と話したいからその席になった可能性もあるわよね。

「それで、どんな話を?」

「最初は、ドレスを褒めていただいたわ。アクセサリーも。とても似合っていると。あとはアレキサンダー卿が殿下方の護衛に付かれていたから、オスカーの話になったり、アニーのお料理の話になったり……そんな感じだったかしら」

「アレク様が!?」

「えぇ。第一王子殿下の側近になられるというお話だったわ。学校卒業後は第一王子殿下専属の護衛になって欲しいと打診しているけれど煮え切らないんだとご本人の前で殿下が笑っていらしたわ」

 アレクの騎士団服姿見たかったわ! お姉様羨ましい!! 結局未だに剣を振るう姿を見られてないんだもの!

「とにかく、私が想像していたより、とっても良い雰囲気でお話ができたわ。アニーのおかげよ。ありがとう」

「私は何も! お姉様にとって良い結果になるようお祈りしています!」

 結局、茶会のドレスやアクセサリーの色で、ジュディスお母様に嫌がらせをするという私の企みは不発に終わってしまったのだけれど……第二王子殿下に褒めていただけて、お姉様が幸せそうなお顔をしていらっしゃるのだから、これで良かったのだと思う。
 ジュディスお母様の悔しがる姿を見られなくて、ほんの少し残念だけど。
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