花を愛でる獅子【本編完結】

千環

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番外編

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『分かった。日程と場所調べとくよ。かづっちゃんが望むなら、その他にも色々準備しとくけど』

「色々って?」

『いくら断るっつったって、どんな様子だろうか気になるだろ? 覗いちまおうぜ』

「え! そんなのバレますって」

『俺を誰だと思ってんのー。平気だよ。変装なら任せとけって。じゃあ詳細が分かり次第また俺から連絡するから。じゃあねーん』

 思わぬ方向に話が進んでしまったけど……でも願ってもないチャンスかな。結城には悪いけど、俺だって不安だし。
 携帯を充電器に繋いで、布団に入った。とりあえず、結城にバレないように普通にしておくことだけ考えよう。



 見合い当日。
 朝早く出て行く結城を見送って、鈴音さんに電話をする。

「結城出て行きました」

「オッケー! じゃあ打ち合わせ通りにこっちまで来てくれ。チケット忘れないようにな?」

「はい、大丈夫です。ちゃんと鈴音さんが用意してくれた服と鞄と靴、チケットと、あとこの携帯も持って行きます。俺の携帯は山下さんに駅まで送ってもらったら電源を切る、でいいんですよね?」

「それでしばらくはバレないだろ。いないって分かってもGPSで辿れなきゃ捕まんねーし、怒られる時は一緒に怒られてやるから、まあ心配すんな! 何とかなんだろ」

 割とざっくりプラン。本当に大丈夫なのか。見合いの場に乗り込むとか……絶対バレるだろ。っていうか、服も鞄も靴も身に付けないようにしないと俺の居場所が把握されるとか、過保護もここまでくると狂気の沙汰じゃね?
 俺が勝手なことしたら、また山下さんに迷惑をかけてしまう。ちゃんと事情を言ってから行った方がいいのかな。でも、知っていたら余計に迷惑なのかもしれないしな。どうするのが正解なのか分からないけどとにかく結城の見合いは気になる……ごめん、山下さん! バレないように頑張るから!

「ほな、俺は帰りますけど、くれぐれも……」

「分かってますよ。なんかあったらすぐ連絡します。一人で危険な場所には行きません。結城にも連絡は入れます」

「気をつけて行ってきてくださいね! 迎えが必要やったら電話くださいね!」

「了解です。行ってきます!」

 良心が痛む……。一人で出かける時のいつものやりとりだけど、嘘吐いてるみたいでヘコむ。自分が悪いくせに。
 でももう鈴音さんに色々と準備してもらって、見合いを覗く手筈になってるし……行くしかない!

 結城が見合いをするのは今日の午後、関西にあるホテルで。それに結城は車で9時間かけて向かっている。
 一方、俺は鈴音さんが送ってくれた新幹線のチケットを使わせてもらって、結城よりも早く関西に行って、鈴音さんに変装させてもらって、一緒にホテルに向かうという計画になっている。

 変装ってどんななんだろうか。どうやって覗くんだろうか。日常にない行動に、実はちょっとだけワクワクしている。
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