104 / 108
番外編
5
しおりを挟む「あの、すみませんでした…」
「僕こそ、ぐっすり寝ちゃってごめんね。」
次に獅音さんが起きた頃には、すっかり日が沈んでいた。
その間拘束され続けた私も、あの後二度寝した。
今日は夜、眠れないかもしれない。
時間は19時。
ご飯でも食べていってもらおうか。
「何か作ります。
良かったらご飯食べていってください。」
「体調は大丈夫なの?
何かデリバリーしようよ。」
「でも…」
「いいから、こっちおいで。
一緒に見よう。」
獅音さんが携帯を取り出してアプリを開く。
「何にしよう。
温かいものがいいよね。お粥とかあるけど…
何か食べたいものある?」
「へぇ~…お粥もデリバリーできるんですね。
だけどお粥だと獅音さん物足りなくないですか?」
「僕のことは気にしなくていいよ。
う~ん…ここはどう?」
「美味しそうですね…この、梅雑炊がいいです。」
「はーい。僕は鳥雑炊にしよっと。」
さっと注文を終えて、獅音さんが机に携帯を置いた。
「さて、それじゃあ奏ちゃん。おいで。」
私たちは今、ラグに横並びで座っている。
「…どこに…」
「ここ。」
ここ、と言って獅音さんは自分の太ももをぽんぽんと叩いた。
「はい?!」
「ぎゅっとしたいから、ここに来て。」
「上に乗れと?!」
「そう。
今日一緒に寝たし、もう慣れたでしょ。」
「それとこれとは別では…?!」
「いいから来て。」
流石に獅音さんの太ももの上に乗るのは、自分の体重も気になるしちょっと…
押し問答の末、獅音さんの足の間に座るということで合意した。
なんだこれ。
「こっち見て。」
「顔が近くて恥ずかしいので無理です」
「え~…」
そのまま固まっていると、急に伸びてきた獅音さんの両手が私の頭と腰を自分の方へぐっと引いた。
獅音さんの胸の中にぽすっと倒れこむ。
「わぁ、あ、ごめんなさいっ、」
離れようとするがまたも抱き締められたまま拘束される。
「このまま」
今日、ずっとこの体勢の気がする。
腕の中で固まってると、獅音さんが私の髪を弄り始めた。
「…毎月、今日みたいにしんどいの?」
「…暑い時期は多少マシかな、と」
「これから寒くなるよ。」
「そう、ですね…」
「奏ちゃんが嫌じゃないなら、体調悪いときは呼んでほしい。
一人で辛い思いしてほしくないの。
分かった?」
「…はい。」
「あと、もっと甘えてほしい。恋人だから。」
「それは、」
「僕以外に甘える相手が居るの?
僕以外にあんなところ見せてるの?」
急に変わった雰囲気に戸惑う。
いつもと同じ喋り方なのに、何かが違った。
「そんなわけないじゃないですか…」
「…そう。」
「…怒ってますか?」
獅音さんからネガティブな感情を感じたことは無い。
実際、いつもどおり優しい声で会話は続いている。
でも、
「怒ってないよ。」
これは嘘だ、と思った。
14
お気に入りに追加
445
あなたにおすすめの小説
悩める文官のひとりごと
きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。
そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。
エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。
ムーンライト様にも掲載しております。
婚約破棄?しませんよ、そんなもの
おしゃべりマドレーヌ
BL
王太子の卒業パーティーで、王太子・フェリクスと婚約をしていた、侯爵家のアンリは突然「婚約を破棄する」と言い渡される。どうやら真実の愛を見つけたらしいが、それにアンリは「しませんよ、そんなもの」と返す。
アンリと婚約破棄をしないほうが良い理由は山ほどある。
けれどアンリは段々と、そんなメリット・デメリットを考えるよりも、フェリクスが幸せになるほうが良いと考えるようになり……
「………………それなら、こうしましょう。私が、第一王妃になって仕事をこなします。彼女には、第二王妃になって頂いて、貴方は彼女と暮らすのです」
それでフェリクスが幸せになるなら、それが良い。
<嚙み痕で愛を語るシリーズというシリーズで書いていきます/これはスピンオフのような話です>
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜
ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。
そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。
幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。
もう二度と同じ轍は踏まない。
そう決心したアリスの戦いが始まる。
【完結】僕の大事な魔王様
綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。
「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」
魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。
俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/11……完結
2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位
2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位
2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位
2023/09/21……連載開始
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる