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番外編
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その夜もいつもと同じく、帰って来た結城にコーヒーを淹れる。そして当たり前のように抱き上げられ、ぎゅっと抱きしめられた。花月にとってもこの時間はすごく幸せなひと時だ。大好きな結城の体温に包まれて、心から安心できる瞬間である。
「……風呂入るわ」
結城がそう言って、膝から降ろされる時にはものすごく寂しい気持ちになる。このままでもう少し過ごしていたいのに、と。
だから今夜は、離れなかった。首に回した両腕に力を入れて、しがみ付いてイヤイヤと首を横に振った。
「離せって。風呂入ってくるっつってんだろ」
「嫌だ。まだ離れたくない。どうしても入るんなら俺も一緒に入る」
「……はあ?」
「だめ?」
冗談を言っている訳ではないと声で察した結城は、動揺半分、苛立ち半分で花月に激しくキスをした。一緒に風呂? ふざけるな。一体どれだけ自分が我慢をしていると思っているのだ。そういう気持ちを込めたキスだった。キスをしながら体勢を変え、花月をソファに座らせて、首にしがみ付く手を引き剥がして立ち上がった。
「言い方変える。風呂に入って、頭冷やしてくる。このままお前といたら手が出そうだからな」
今度こそ離れようとした結城のスーツの裾を掴んだ。咄嗟に出た手に花月自身も驚いていた。
「あ……たま、冷やさなくていい。そのままでいいから……」
裾を掴んだ手をぐっと引いて、花月を抱き上げた。性急な動きでベッドまで移動する。そして雪崩れ込むように押し倒した。
「自分で言ってる意味、分かってんのか?」
「分かってる」
「お前のここに、俺のを挿れるんだぞ?」
両足を大きく広げられて、その間に結城の身体をねじ込まれる。服を着ていないわけでもないのに、花月は羞恥で身体が熱くなった。
花月はこう思っていた。
結城は自分とキス以上のことをする気などないんだ。自分はまだ子どもで、欲情などしてはくれない。だから、牛のパジャマが嫌だった。あえて子供っぽい格好をしたくはなかった。
しかし、目の前にいる結城の目は、情欲に濡れてギラギラとしている。それが、嬉しかった。普段の感情の読めない能面じゃない。今、自分に抑えきれないほどの興奮をしてくれているんだと実感できたから。
「……いれて?」
次に驚くのは結城の番だった。苛立ち? そんなものはどこかへ飛んで行った。花月は分かった上で誘っている。結城の目を見つめて、恍惚とした表情をしている。
花月と想いを通じ合わせてから、一年。少なくとも結城は、性行為をしなくても特別不満という訳ではなかった。できることならもちろんしたいが、花月が望まないならずっとしなくてもいい。ただ、我慢しなければならない瞬間もあるから、辛い時もあるというだけ。
それに、とにかく大事にしたかった。お互い男なのに、必然的に女の扱いをされることを花月は嫌がるだろう。だから決定的な行為はしないでいよう。そう考えていた。
なのに、どうだ。花月はうっとりした表情で、今確かに『挿れて』と言った。
結城はグッと眉間に皺を寄せ、何かを我慢するような顔で、スーツを乱暴に脱ぎ捨てて性急な動きで花月に口付けた。とめどなく溢れる花月への気持ちを懸命に押し留めているように思わせる苦しそうな表情をしている。
「……んぅ、は……っ」
結城の熱のこもったキスに翻弄されながらも、広い背中に回った手は力強く結城を捕えていて、たまに合わせる視線でも『もっと。もっと』と訴える花月。
そんな花月のパジャマのボタンに自然と手がかかり、結城は器用に意識させる間もなくスルスルと脱がしていく。
「あっ……!」
さっきまでキスをしていたはずなのに、いつの間にか結城の舌は乳首を這っていた。ビクンと震える身体、思わず漏れた声に花月は驚く。もの凄い羞恥に両手で顔を隠して、口を塞いだ。
「……風呂入るわ」
結城がそう言って、膝から降ろされる時にはものすごく寂しい気持ちになる。このままでもう少し過ごしていたいのに、と。
だから今夜は、離れなかった。首に回した両腕に力を入れて、しがみ付いてイヤイヤと首を横に振った。
「離せって。風呂入ってくるっつってんだろ」
「嫌だ。まだ離れたくない。どうしても入るんなら俺も一緒に入る」
「……はあ?」
「だめ?」
冗談を言っている訳ではないと声で察した結城は、動揺半分、苛立ち半分で花月に激しくキスをした。一緒に風呂? ふざけるな。一体どれだけ自分が我慢をしていると思っているのだ。そういう気持ちを込めたキスだった。キスをしながら体勢を変え、花月をソファに座らせて、首にしがみ付く手を引き剥がして立ち上がった。
「言い方変える。風呂に入って、頭冷やしてくる。このままお前といたら手が出そうだからな」
今度こそ離れようとした結城のスーツの裾を掴んだ。咄嗟に出た手に花月自身も驚いていた。
「あ……たま、冷やさなくていい。そのままでいいから……」
裾を掴んだ手をぐっと引いて、花月を抱き上げた。性急な動きでベッドまで移動する。そして雪崩れ込むように押し倒した。
「自分で言ってる意味、分かってんのか?」
「分かってる」
「お前のここに、俺のを挿れるんだぞ?」
両足を大きく広げられて、その間に結城の身体をねじ込まれる。服を着ていないわけでもないのに、花月は羞恥で身体が熱くなった。
花月はこう思っていた。
結城は自分とキス以上のことをする気などないんだ。自分はまだ子どもで、欲情などしてはくれない。だから、牛のパジャマが嫌だった。あえて子供っぽい格好をしたくはなかった。
しかし、目の前にいる結城の目は、情欲に濡れてギラギラとしている。それが、嬉しかった。普段の感情の読めない能面じゃない。今、自分に抑えきれないほどの興奮をしてくれているんだと実感できたから。
「……いれて?」
次に驚くのは結城の番だった。苛立ち? そんなものはどこかへ飛んで行った。花月は分かった上で誘っている。結城の目を見つめて、恍惚とした表情をしている。
花月と想いを通じ合わせてから、一年。少なくとも結城は、性行為をしなくても特別不満という訳ではなかった。できることならもちろんしたいが、花月が望まないならずっとしなくてもいい。ただ、我慢しなければならない瞬間もあるから、辛い時もあるというだけ。
それに、とにかく大事にしたかった。お互い男なのに、必然的に女の扱いをされることを花月は嫌がるだろう。だから決定的な行為はしないでいよう。そう考えていた。
なのに、どうだ。花月はうっとりした表情で、今確かに『挿れて』と言った。
結城はグッと眉間に皺を寄せ、何かを我慢するような顔で、スーツを乱暴に脱ぎ捨てて性急な動きで花月に口付けた。とめどなく溢れる花月への気持ちを懸命に押し留めているように思わせる苦しそうな表情をしている。
「……んぅ、は……っ」
結城の熱のこもったキスに翻弄されながらも、広い背中に回った手は力強く結城を捕えていて、たまに合わせる視線でも『もっと。もっと』と訴える花月。
そんな花月のパジャマのボタンに自然と手がかかり、結城は器用に意識させる間もなくスルスルと脱がしていく。
「あっ……!」
さっきまでキスをしていたはずなのに、いつの間にか結城の舌は乳首を這っていた。ビクンと震える身体、思わず漏れた声に花月は驚く。もの凄い羞恥に両手で顔を隠して、口を塞いだ。
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