花を愛でる獅子【本編完結】

千環

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番外編

4(完)

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「……ん? いつ寝たんだ、俺?」

 翌朝、大学に行くためにセットしておいたアラームで起床した花月は、いつの間にかベッドで寝ていたことを不思議に思った。

「結城?」

 毎晩一緒に寝ているはずの結城の姿がないことに気付いて、ベッドから降りる。おそらくはソファに座っているだろうと当たりをつけて、そちらへ向かう。

「……え、何でこんなとこで寝てんだ、こいつ」

 ソファで寝ているのは想定外だった。毎晩必ず花月を抱いて眠る男が、なぜわざわざ縮こまって狭いソファで眠っているのか。不可解にも程がある。
 とりあえず、朝食の用意とコーヒーを淹れる準備をしながら、夕べのことを思い出そうとしてみた。……無理だったが。

「……ん……」

「お、起きたか? まだ寝るならベッド行けよー」

「……花月……?」

「何だよ。寝ぼけてんのか?」

「……おー、普通に戻ったな」

「は?」

 何を言われているのか分かっていない花月を放っておいて、結城が身体を起こす。首を2、3度回して、目頭を揉んだ。

「今何時だ?」

「8時半」

「いい時間だな。俺の分もコーヒー淹れてくれ」

「朝から仕事?」

「おう。会議するんだと」

「ふーん。まあ頑張れ」

 2人分のコーヒーを淹れながら、結城の顔も見ずに頑張れと言う。全く心がこもっていない。

「おう」

 しかし結城は笑って頷いた。ネクタイを緩く締めながら、花月に目をやる。

「やっぱお前は可愛げないくらいがちょうどいいな」

「は? 朝から何の話だよ喧嘩売ってんのか?」

「こっちの話だ」

 先ほどから訳の分からないことばかりをいわれて、何となく不機嫌になっている花月に、結城はさらに付け足した。

「あとお前もう一生酒飲むな」



end.
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