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番外編
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「おいーっす。依頼の品お届けに参りましたよん」
結城のプライベートルームに入るなり、そう口にする鈴音さん。
「……依頼の、品?」
「花月。こっちに来い」
「え、なに? 何なの?」
「こっち来いっつってんだろうが!」
怒り心頭の結城。何いきなりぶちギレてんの。めっちゃ恐いんだけど。
大人しく結城のそばに行く。ケーキの箱はテーブルの上にそっと置いた。
「……なに?」
ビビりながら聞く俺。いつまで経っても怒っている結城に慣れることはない。
「どこに行ってた?」
「買い物、だけど」
「買いもんくらい山下連れて行ったらいいだろうが。大学の帰りに山下を撒くくらい一人で行きたかったのか?」
「そうじゃねぇけど、……恥ずかしくて」
「あ゛ぁ?」
「お前の誕生日プレゼント買いに行きたいなんて、恥ずかしくて言えなかったんだよ! 明日お前の誕生日だから、何かプレゼントしようと思っただけ。……何でそんな怒ってんの?」
俺は最早半泣きだった。
「あーもう、バカか」
いつもの如く、ひょいと抱き上げられて膝に座らされる。ギュッと強く抱き締めて貰えたのが嬉しくて、人がいるって分かっているけど結城の背中に手を回した。
「どんだけ心配したと思ってんだ。山下から大学にお前がいねぇって連絡があった時、俺がどんな気持ちだったか分かるか?」
「……ごめんなさい」
「反省しろ。二度と連絡せずに出掛けんな。……まじで、頼むわ」
「分かった。ごめんな」
痛いくらいの力で抱き締められて、本当に心配を掛けてしまったんだと実感した。
「鈴音、悪かったな。金は好きなだけ鳴海に言ってくれ」
「今回はそんなつもりで引き受けたんじゃねぇし。逆に俺に頼んでくれてよかったよ。ちょっとでも恩返しができたってもんだ」
「そうか。悪いな」
「お礼だったらかづっちゃんに貰った。んじゃ帰るわ。山下さんが生きてるのも確認できたし」
「もうちょっとで殺してやるところだった」
「だろうな。無傷で済んでよかったよ」
事の顛末。
大学から俺がいなくなったという情報が山下さんから風見さん、風見さんから鳴海さん、鳴海さんから結城に届いた。全員が全員、どこかの組に拐われたんだと考えた。
すぐに多くの組員を使って俺を捜索すると同時に、鈴音さんにも協力を頼んだ。
状況を重く見た山下さんが結城の前で頭を下げまくって償いは何でもすると口にした。結城はそれに対してじゃあ死ねとドスを持ち出す。風見さんがそれを必死に止めている間に、ちょうど近くにいた鈴音さんが俺を見つけたということらしい。
「今日はほんとに……」
「何もなかったんだ、もう気にすんな。二度と今日みたいなことをしねぇんなら、それでいい」
「うん。もうしない」
「その言葉、忘れんなよ」
軽い気持ちで、すごい騒ぎになってしまった。山下さんは泣きながら無事でよかったって言ってくれたし、風見さんには叱られた。
もっと自覚持たないとな……。
「で? この箱はなんだ?」
「……ああ。忘れてた。プレゼントだよ」
「俺の誕生日の?」
「うん」
結城のプライベートルームに入るなり、そう口にする鈴音さん。
「……依頼の、品?」
「花月。こっちに来い」
「え、なに? 何なの?」
「こっち来いっつってんだろうが!」
怒り心頭の結城。何いきなりぶちギレてんの。めっちゃ恐いんだけど。
大人しく結城のそばに行く。ケーキの箱はテーブルの上にそっと置いた。
「……なに?」
ビビりながら聞く俺。いつまで経っても怒っている結城に慣れることはない。
「どこに行ってた?」
「買い物、だけど」
「買いもんくらい山下連れて行ったらいいだろうが。大学の帰りに山下を撒くくらい一人で行きたかったのか?」
「そうじゃねぇけど、……恥ずかしくて」
「あ゛ぁ?」
「お前の誕生日プレゼント買いに行きたいなんて、恥ずかしくて言えなかったんだよ! 明日お前の誕生日だから、何かプレゼントしようと思っただけ。……何でそんな怒ってんの?」
俺は最早半泣きだった。
「あーもう、バカか」
いつもの如く、ひょいと抱き上げられて膝に座らされる。ギュッと強く抱き締めて貰えたのが嬉しくて、人がいるって分かっているけど結城の背中に手を回した。
「どんだけ心配したと思ってんだ。山下から大学にお前がいねぇって連絡があった時、俺がどんな気持ちだったか分かるか?」
「……ごめんなさい」
「反省しろ。二度と連絡せずに出掛けんな。……まじで、頼むわ」
「分かった。ごめんな」
痛いくらいの力で抱き締められて、本当に心配を掛けてしまったんだと実感した。
「鈴音、悪かったな。金は好きなだけ鳴海に言ってくれ」
「今回はそんなつもりで引き受けたんじゃねぇし。逆に俺に頼んでくれてよかったよ。ちょっとでも恩返しができたってもんだ」
「そうか。悪いな」
「お礼だったらかづっちゃんに貰った。んじゃ帰るわ。山下さんが生きてるのも確認できたし」
「もうちょっとで殺してやるところだった」
「だろうな。無傷で済んでよかったよ」
事の顛末。
大学から俺がいなくなったという情報が山下さんから風見さん、風見さんから鳴海さん、鳴海さんから結城に届いた。全員が全員、どこかの組に拐われたんだと考えた。
すぐに多くの組員を使って俺を捜索すると同時に、鈴音さんにも協力を頼んだ。
状況を重く見た山下さんが結城の前で頭を下げまくって償いは何でもすると口にした。結城はそれに対してじゃあ死ねとドスを持ち出す。風見さんがそれを必死に止めている間に、ちょうど近くにいた鈴音さんが俺を見つけたということらしい。
「今日はほんとに……」
「何もなかったんだ、もう気にすんな。二度と今日みたいなことをしねぇんなら、それでいい」
「うん。もうしない」
「その言葉、忘れんなよ」
軽い気持ちで、すごい騒ぎになってしまった。山下さんは泣きながら無事でよかったって言ってくれたし、風見さんには叱られた。
もっと自覚持たないとな……。
「で? この箱はなんだ?」
「……ああ。忘れてた。プレゼントだよ」
「俺の誕生日の?」
「うん」
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