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番外編
獅子の生まれた日
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早速だけど、俺は悩んでいる。
今日は3月13日。明日はホワイトデー。世の男性はバレンタインデーのお返しをどうしようか悩んでいることだろう。
しかしながら、誰からもチョコを貰えなかった俺の悩みは悲しいかなそれではない。
色々世話になっている結城巽の誕生日が、明日のホワイトデー。何かしらプレゼントでも買って帰ろうと出てきたのはいいものの、何がいいのか皆目検討も付かないというのが俺の悩みなのである。
「恥ずかしがらずに山下さんと来ればよかったな……」
……いや。山下さんがいたところで結城へのプレゼントが決まるとは思えない。むしろ邪魔。
「……ハァ」
溜め息を付いた俺の肩に、人差し指を立てた手が置かれた。振り向こうとした瞬間にそれを目の端で捉えた俺は、瞬時に反対向きに振り向くことに成功した。
……が、反対側にも人差し指はあった。
「まだまだ甘いねー。かづっちゃんは」
俺の頬っぺたを差す指の主がケラケラ笑う。綺麗な淡い茶色の髪に緑色の瞳。男だけど、そりゃもう凄絶に美しい外見に似合わず、中身はただの面白いお兄さんな鈴音さんである。
「……鈴音さん? なんでここに?」
「ちょっとした頼まれ事だよ。かづっちゃんは? 一人で何してんだ?」
「えーっと……」
素直に言うの、やっぱり恥ずかしいなぁ……。
「あの……、明日、結城の誕生日だから何か喜ばせたいって……何か、はい」
「へー! 巽さんって明日誕生日なんだ。んで、プレゼント買いに一人で出てきたのか?」
「そうです」
「何買うか決まってんの?」
「全然決まってないっす。結城の喜ぶものとか分かんねぇし」
欲しいものがあれば簡単に自分で買えてしまうような奴に、何を買ったらいいかとか悩む方がバカだ。あいつが欲しいものはもうあいつの手の中にあるだろう。
「ふーん。じゃあ俺が手伝ってやるよ」
「まじですか!?」
「俺も何がいいかなんて分かんねぇけど、これでも友達は多いからさ。リサーチしてみる」
「めちゃくちゃ助かります! ありがとうございます!」
天使か! 俺の前に舞い降りた天使! この外見だし背中に白い羽が生えてても何もおかしくない。
「その前に、電話一本だけいい?」
「もちろんです!」
「悪いな」
スマホを取り出して、誰かに電話を掛ける鈴音さん。『うーん、間に合えばいいんだけどなあ~』って言いながら相手が出るのを待っている。何か大事な用があったんだったらと思うと申し訳なかった。
今日は3月13日。明日はホワイトデー。世の男性はバレンタインデーのお返しをどうしようか悩んでいることだろう。
しかしながら、誰からもチョコを貰えなかった俺の悩みは悲しいかなそれではない。
色々世話になっている結城巽の誕生日が、明日のホワイトデー。何かしらプレゼントでも買って帰ろうと出てきたのはいいものの、何がいいのか皆目検討も付かないというのが俺の悩みなのである。
「恥ずかしがらずに山下さんと来ればよかったな……」
……いや。山下さんがいたところで結城へのプレゼントが決まるとは思えない。むしろ邪魔。
「……ハァ」
溜め息を付いた俺の肩に、人差し指を立てた手が置かれた。振り向こうとした瞬間にそれを目の端で捉えた俺は、瞬時に反対向きに振り向くことに成功した。
……が、反対側にも人差し指はあった。
「まだまだ甘いねー。かづっちゃんは」
俺の頬っぺたを差す指の主がケラケラ笑う。綺麗な淡い茶色の髪に緑色の瞳。男だけど、そりゃもう凄絶に美しい外見に似合わず、中身はただの面白いお兄さんな鈴音さんである。
「……鈴音さん? なんでここに?」
「ちょっとした頼まれ事だよ。かづっちゃんは? 一人で何してんだ?」
「えーっと……」
素直に言うの、やっぱり恥ずかしいなぁ……。
「あの……、明日、結城の誕生日だから何か喜ばせたいって……何か、はい」
「へー! 巽さんって明日誕生日なんだ。んで、プレゼント買いに一人で出てきたのか?」
「そうです」
「何買うか決まってんの?」
「全然決まってないっす。結城の喜ぶものとか分かんねぇし」
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「ふーん。じゃあ俺が手伝ってやるよ」
「まじですか!?」
「俺も何がいいかなんて分かんねぇけど、これでも友達は多いからさ。リサーチしてみる」
「めちゃくちゃ助かります! ありがとうございます!」
天使か! 俺の前に舞い降りた天使! この外見だし背中に白い羽が生えてても何もおかしくない。
「その前に、電話一本だけいい?」
「もちろんです!」
「悪いな」
スマホを取り出して、誰かに電話を掛ける鈴音さん。『うーん、間に合えばいいんだけどなあ~』って言いながら相手が出るのを待っている。何か大事な用があったんだったらと思うと申し訳なかった。
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