花を愛でる獅子【本編完結】

千環

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番外編

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「年末年始どうすんだ? また地元に帰るんだろ?」

 次の講義がある教室に向かって歩いていると、花月が言うほど興味の無さそうな顔でそう聞いてきた。
 そういやもう年末近いんだなーと思って浮かんだのは鳴海さんのこと。クリスマス、鳴海さんはどこで誰と過ごすのだろうと考えて、頭を掻いた。その拍子にセットが崩れたから即座に直した。何してんだ俺は。

「バイトあるから年明けの4日くらいに帰ろうかと思ってる」

「まじ? もし大晦日一人なんだったら一緒に年越ししねぇ?」

「俺はいいけど花月はいいのか? お父さん一人になっちゃうぞ?」

「あー、何ていうか……そういう時に遊べるような友達もいないのかって、思われたくなくてさ」

「ふーん? じゃあとりあえず俺ん家来る?」

「おー。ありがとう」

 そっけない口調とは裏腹に、嬉しそうに笑うから、実は高確率で断られることを想定してたんだろうと分かった。あー、大晦日の予定が空いててよかった。なんて、俺も思ってしまう。
 そんでふと思い出す。鳴海さんには彼女さん、もしくは奥さんがいるんじゃなかったっけ。

『シャワールームもキッチンもあなたの言う通りにしたでしょう。何が不満なんですか』

 そんなようなことを電話で言ってたはず。
 じゃあ何で、あの時俺にキスなんかした? 『私のものになる覚悟があるなら』連絡してとか、何で言った? ていうか、鳴海さんのものになるってどういうことだよ。俺はてっきり恋人になるってことかと思って、そっちの方向で悩んでたし。
 でもこれって、愛人ってこと?
 俗に言う二号さん? てか鳴海さんって男イケる人? 俺だって本当に男イケんのかって言われたら微妙だけど、でも鳴海さんのことは好きだ。
 鳴海さんがヤクザだからっていう理由で俺は数日悩んでた。正直、キスされたことを意識してから悶えるくらい喜んだ。ただ、将来、弁護士になるって夢があるし、そういう人と関わりを持ってしまうことのリスクをめちゃくちゃ考えた。

 でもそういう次元の話じゃなくない?
 俺の脳内どんだけ甘酸っぱいんだよ。一人で勝手に舞い上がって、恋愛方面に飛び立ってたんだけど。ダサすぎる。

 あーもう! 連絡なんかしないでおこう。
 絶対からかわれたんだ。そうに決まってる。遊び。ギャグ。冗談。
 そうじゃなかったら、おかしいし。
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