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本編
3-10
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「俺が、結城を嫌ってねぇのが……おかしいか?」
「おかしいね。断言するよ。君は、結城巽に関わるべきではない。後で困ったことになるのは君の方だよ。今だってそうだろう? 結城巽のそばにいたせいで君は誘拐をされた。俺のように酔狂な人間じゃなければ、君は暴行や性的な屈辱を受けていただろうね。もしくは殺されていたかも。現に、他の二人は君に性的なことをしてやろうかと楽しそうに話していたよ」
「な……っ!?」
「事実だ。それを実行させないために俺はここにいる。……今、恐怖したろう? 結城巽のそばにいる限り、君はそういう危険と常に隣り合わせなんだよ」
恐怖したろう? ……ハァーン!? しーまーしーたー! するに決まってんだろ。自称ウサギちゃんだぞ俺は。結城といたらそういう目に遭う? 結城はヤクザで悪人だ?
それがどうした。知ってるよ! それでも、俺にとっては恩人で、好きな人で、ずっとそばにいたいと思える人なんだ。俺がそう思ってるだけなんだから、お前になんだかんだと言われる筋合いなんかねぇんだよ。
……でも、こいつの言っていることが正しい。分かってる。その通り。だからもう何も言わねぇ。何言ったって言い負かされるし!
「……さて。暇つぶしのおしゃべりはこれくらいにしようか。来たみたいだよ。結城巽が」
「へ? 何で分かんだ?」
「耳が良いんだ。それに、結城巽には隠す気がないようだし」
おしゃべり野郎が立ち上がった。メシだって持って来ていたコンビニのビニール袋から、ガムテープを出している。
待て。いや、待ってくれ。それは……ちょーっとまじで心から勘弁してくれ!
「口はいいだろ、俺黙ってるし……?」
「それは無理だね。君は必ず喋ろうとするよ。ガムテープは貼っておいた方が君の身の安全度は上がるからね、俺を信じて」
「は!? 信じられっかよ!」
「うん、うるさい。痛いことをされたくないなら口を閉じて大人しくしてね。押さえ付けて口も髪も引っくるめてぐるぐる巻きにするよ?」
「…………」
髪の毛をガムテープで一緒くたにするとか、鬼か。ハゲるだろ。俺のなけなしの髪の毛が減る。将来のために大事にしてるのに。
……とかって考えられる余裕があることに気付いた。結城が来てくれたって聞いて、ちょっと安心したのかな。
俺が連れて来られたのは廃工場みたいなところで、俺がさっきまで繋がれてたところは事務所みたいなところだった。そこからおしゃべり野郎に連れられて、休憩室みたいなところに行った。そこでは他の二人、つまり俺を捕まえた奴らが寝転んでスマホを弄っていた。
「結城巽、来たよ。行こう」
おしゃべり野郎がそう言うと、他の二人は嬉しそうというか、興奮したというか、何かそういう下品な感じで笑いながら立ち上がった。
「まじで来たのかよ。すげーな。こいつってやっぱ結城の恋人かなんかかよ?」
「こんだけ可愛らしいツラしてんだから、おかしくはねーよな。本気ってことはねーだろうけど、性欲発散のおもちゃみてえなもんじゃね? 超お気に入りのさ」
「じゃあやっぱヤッときゃよかったな。結城が気に入ったケツに突っ込んで汚してやるってのも面白えじゃん」
……キモ。率直にそう思った。恐怖よりまず嫌悪感が先だったのは、結城が来てくれたってことと、今そばにはおしゃべり野郎がいるっていう安心感があるからなんだろうな。
おしゃべり野郎は山下さんを傷付けたクソ野郎だけど、こいつらみたいな下衆ではない感じがする。
「そう言っちゃえば? どんな反応するだろうね」
俺の心の中のフォローが粉々に崩れ去った。このクソ下衆野郎。いらねぇこと言うんじゃねぇよ。結城にまじで俺が犯されたって誤解されたらどうしてくれる!
……え、こいつもしかしてこういうやり取りを見越して俺の口にガムテープ貼ったんじゃねぇだろうな……? 俺が否定できないようにするために。
「いいねー。そうしようぜ」
「すっげー嫉妬したりしてな? だったらまじウケるわ」
こいつらの妄想の中の結城がどんなリアクションをしてんのか知らねぇけど、大したことにはならねぇぞ。それはけしかけたおしゃべり野郎の表情からも明らかだぞ。
おーい。見てみろって。めっちゃお前らのこと馬鹿にしてんぞこいつ。腹ん中で絶対笑ってるって。まじで。
だから言わないで下さい。お願いします。
「おかしいね。断言するよ。君は、結城巽に関わるべきではない。後で困ったことになるのは君の方だよ。今だってそうだろう? 結城巽のそばにいたせいで君は誘拐をされた。俺のように酔狂な人間じゃなければ、君は暴行や性的な屈辱を受けていただろうね。もしくは殺されていたかも。現に、他の二人は君に性的なことをしてやろうかと楽しそうに話していたよ」
「な……っ!?」
「事実だ。それを実行させないために俺はここにいる。……今、恐怖したろう? 結城巽のそばにいる限り、君はそういう危険と常に隣り合わせなんだよ」
恐怖したろう? ……ハァーン!? しーまーしーたー! するに決まってんだろ。自称ウサギちゃんだぞ俺は。結城といたらそういう目に遭う? 結城はヤクザで悪人だ?
それがどうした。知ってるよ! それでも、俺にとっては恩人で、好きな人で、ずっとそばにいたいと思える人なんだ。俺がそう思ってるだけなんだから、お前になんだかんだと言われる筋合いなんかねぇんだよ。
……でも、こいつの言っていることが正しい。分かってる。その通り。だからもう何も言わねぇ。何言ったって言い負かされるし!
「……さて。暇つぶしのおしゃべりはこれくらいにしようか。来たみたいだよ。結城巽が」
「へ? 何で分かんだ?」
「耳が良いんだ。それに、結城巽には隠す気がないようだし」
おしゃべり野郎が立ち上がった。メシだって持って来ていたコンビニのビニール袋から、ガムテープを出している。
待て。いや、待ってくれ。それは……ちょーっとまじで心から勘弁してくれ!
「口はいいだろ、俺黙ってるし……?」
「それは無理だね。君は必ず喋ろうとするよ。ガムテープは貼っておいた方が君の身の安全度は上がるからね、俺を信じて」
「は!? 信じられっかよ!」
「うん、うるさい。痛いことをされたくないなら口を閉じて大人しくしてね。押さえ付けて口も髪も引っくるめてぐるぐる巻きにするよ?」
「…………」
髪の毛をガムテープで一緒くたにするとか、鬼か。ハゲるだろ。俺のなけなしの髪の毛が減る。将来のために大事にしてるのに。
……とかって考えられる余裕があることに気付いた。結城が来てくれたって聞いて、ちょっと安心したのかな。
俺が連れて来られたのは廃工場みたいなところで、俺がさっきまで繋がれてたところは事務所みたいなところだった。そこからおしゃべり野郎に連れられて、休憩室みたいなところに行った。そこでは他の二人、つまり俺を捕まえた奴らが寝転んでスマホを弄っていた。
「結城巽、来たよ。行こう」
おしゃべり野郎がそう言うと、他の二人は嬉しそうというか、興奮したというか、何かそういう下品な感じで笑いながら立ち上がった。
「まじで来たのかよ。すげーな。こいつってやっぱ結城の恋人かなんかかよ?」
「こんだけ可愛らしいツラしてんだから、おかしくはねーよな。本気ってことはねーだろうけど、性欲発散のおもちゃみてえなもんじゃね? 超お気に入りのさ」
「じゃあやっぱヤッときゃよかったな。結城が気に入ったケツに突っ込んで汚してやるってのも面白えじゃん」
……キモ。率直にそう思った。恐怖よりまず嫌悪感が先だったのは、結城が来てくれたってことと、今そばにはおしゃべり野郎がいるっていう安心感があるからなんだろうな。
おしゃべり野郎は山下さんを傷付けたクソ野郎だけど、こいつらみたいな下衆ではない感じがする。
「そう言っちゃえば? どんな反応するだろうね」
俺の心の中のフォローが粉々に崩れ去った。このクソ下衆野郎。いらねぇこと言うんじゃねぇよ。結城にまじで俺が犯されたって誤解されたらどうしてくれる!
……え、こいつもしかしてこういうやり取りを見越して俺の口にガムテープ貼ったんじゃねぇだろうな……? 俺が否定できないようにするために。
「いいねー。そうしようぜ」
「すっげー嫉妬したりしてな? だったらまじウケるわ」
こいつらの妄想の中の結城がどんなリアクションをしてんのか知らねぇけど、大したことにはならねぇぞ。それはけしかけたおしゃべり野郎の表情からも明らかだぞ。
おーい。見てみろって。めっちゃお前らのこと馬鹿にしてんぞこいつ。腹ん中で絶対笑ってるって。まじで。
だから言わないで下さい。お願いします。
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