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本編
2-1
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「……へ? やめた? 俺がですか?」
幹部会とやらで関東に連れてかれた先から帰ってきたのが昨日。そして今、俺はバイト先に電話をかけた。親父が死んでからしばらく休みを貰っていたから、とりあえず落ち着いたし復帰するって伝えるためだった。
……のに。俺はいつの間にか退職していたらしい。って、そんな訳あるかーい! とか言ってる場合じゃなくて!
「俺は辞めるなんて一言も……はい……ああ……はい。あります、ね。はい。……ああー、……分かりました。ありがとうございます。……はい、失礼します」
電話を切る。状況を把握。
「結城ぃー!!」
「うおっ! え? ど、どないしはったんですか」
「山下さん、結城は?」
「組長やったら先ほど出られましたけど」
……クソ。逃げられた。
「何ですか? 急ぎやったらかしらに伝言しますけど」
「知らない間にバイトを辞めさせられてました」
「ああ。そのことやったら組長が必要無いからって仰ったんですよ」
「無い訳ないでしょ! 学費は払えなくなるし、第一いきなり辞めたらバイト先に迷惑かかるし!」
「学費はもう納入しましたよ。花月さんのご自宅に振込用紙があったんで、前期分と後期分。あとバイトなんですけど、実は花月さんの行ってたバイト先がうちの系列というか、まあ、関係のあるとこで、全く問題ありません」
……学費を払った? 系列?
「卒業するまでの学費は組長が出すって仰ってましたし、バイトする必要無いでしょう?」
「何でそんなことまで……ああー、クソッ! 何なんだよ!!」
惨めな気分ってこういうことか。
夜になって、結城が部屋に帰ってきた。ドアを開けた所でしばらく突っ立ったまま何か待っているような顔をしている。
「……あ?」
「おかえりなさいくらい笑顔で言えねぇのか、お前は」
「おー、おかえり。お疲れ。それより俺はお前に話がある。はぐらかさずに答えろ」
「ああ。バイトの話か?」
「それもある」
結城が俺の隣に座ろうとするから、俺は立ち上がって、テーブルを挟んだ向かいに座り直した。
「おい。二人でいる時は俺の膝に座るってことで決着ついただろうが」
「例外1。真面目な話をする時は別」
密着したらなんだかんだではぐらかされてしまうからな!
「何だそれ。話ってなんだよ」
「お前言ったよな。俺らは初対面じゃない。最初は俺からお前に話しかけたって」
「思い出したか?」
「いや、全く。……親父の借金三千万。卒業までの学費三年分。それから食う物、着る物、必要な物、全部お前が面倒見てくれる。確かにお前がいなかったら、大学やめて働いたとしても、借金を返すこともできずにひどいことになってたと思う。お前がいてくれたから大学も行けるし、正直、有難いって思ってるよ。……けど、俺はこんなのラッキーだなんて思って笑えねぇ。どんどん重くなる。俺が必死で働いても払えないような金をポンと出されてるのに、俺は何もしなくていいって言われる。逆に何でもするから言ってくれとまで言われる。俺は、何もできない訳じゃない。俺は、お前の何なの? おもちゃか? ペットか? …………お前に感謝はしてるよ。けど、全部奪われたくない」
俺はぐちゃぐちゃした気持ちをぶちまけた。伝わったかどうかは分からんない。そもそも、俺ですら自分の気持ちを整理できてないんだから。
「……要は、俺の行動の理由を知りたいんだな?」
「そうだな」
「助けてやりたいから。あと、俺のそばにおいておきたいっていうのもあるな」
「だから、それの理由を知りたいんだって」
幹部会とやらで関東に連れてかれた先から帰ってきたのが昨日。そして今、俺はバイト先に電話をかけた。親父が死んでからしばらく休みを貰っていたから、とりあえず落ち着いたし復帰するって伝えるためだった。
……のに。俺はいつの間にか退職していたらしい。って、そんな訳あるかーい! とか言ってる場合じゃなくて!
「俺は辞めるなんて一言も……はい……ああ……はい。あります、ね。はい。……ああー、……分かりました。ありがとうございます。……はい、失礼します」
電話を切る。状況を把握。
「結城ぃー!!」
「うおっ! え? ど、どないしはったんですか」
「山下さん、結城は?」
「組長やったら先ほど出られましたけど」
……クソ。逃げられた。
「何ですか? 急ぎやったらかしらに伝言しますけど」
「知らない間にバイトを辞めさせられてました」
「ああ。そのことやったら組長が必要無いからって仰ったんですよ」
「無い訳ないでしょ! 学費は払えなくなるし、第一いきなり辞めたらバイト先に迷惑かかるし!」
「学費はもう納入しましたよ。花月さんのご自宅に振込用紙があったんで、前期分と後期分。あとバイトなんですけど、実は花月さんの行ってたバイト先がうちの系列というか、まあ、関係のあるとこで、全く問題ありません」
……学費を払った? 系列?
「卒業するまでの学費は組長が出すって仰ってましたし、バイトする必要無いでしょう?」
「何でそんなことまで……ああー、クソッ! 何なんだよ!!」
惨めな気分ってこういうことか。
夜になって、結城が部屋に帰ってきた。ドアを開けた所でしばらく突っ立ったまま何か待っているような顔をしている。
「……あ?」
「おかえりなさいくらい笑顔で言えねぇのか、お前は」
「おー、おかえり。お疲れ。それより俺はお前に話がある。はぐらかさずに答えろ」
「ああ。バイトの話か?」
「それもある」
結城が俺の隣に座ろうとするから、俺は立ち上がって、テーブルを挟んだ向かいに座り直した。
「おい。二人でいる時は俺の膝に座るってことで決着ついただろうが」
「例外1。真面目な話をする時は別」
密着したらなんだかんだではぐらかされてしまうからな!
「何だそれ。話ってなんだよ」
「お前言ったよな。俺らは初対面じゃない。最初は俺からお前に話しかけたって」
「思い出したか?」
「いや、全く。……親父の借金三千万。卒業までの学費三年分。それから食う物、着る物、必要な物、全部お前が面倒見てくれる。確かにお前がいなかったら、大学やめて働いたとしても、借金を返すこともできずにひどいことになってたと思う。お前がいてくれたから大学も行けるし、正直、有難いって思ってるよ。……けど、俺はこんなのラッキーだなんて思って笑えねぇ。どんどん重くなる。俺が必死で働いても払えないような金をポンと出されてるのに、俺は何もしなくていいって言われる。逆に何でもするから言ってくれとまで言われる。俺は、何もできない訳じゃない。俺は、お前の何なの? おもちゃか? ペットか? …………お前に感謝はしてるよ。けど、全部奪われたくない」
俺はぐちゃぐちゃした気持ちをぶちまけた。伝わったかどうかは分からんない。そもそも、俺ですら自分の気持ちを整理できてないんだから。
「……要は、俺の行動の理由を知りたいんだな?」
「そうだな」
「助けてやりたいから。あと、俺のそばにおいておきたいっていうのもあるな」
「だから、それの理由を知りたいんだって」
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