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本編
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結城がタオルを持ってきてくれて、顔を洗った。実際タオルがある場所が分からなくてどうしようかと思っていたところだったから助かった。
元いたソファがあるところに結城に連れられて戻る。鳴海さんと、格好良いお兄さんと、綺麗なお兄さんが立っていた。
「花月さん、紹介します。今後、花月さんのお世話をさせていただく風見と山下です。特に山下は常におそばに置いておきますので、良いように使ってやって下さい」
「あの、俺、お世話とかしてもらわなくていいんですけど……」
「送り迎えや、お食事の準備など何でも言って下さって構いません」
「えーっと……、えぇ?」
なんでヤクザのお兄さんに世話なんかしてもらわなきゃなんねぇの。まじで嫌だ。ちょ、まさか見張りか? 常にヤクザに睨まれて過ごすのかよ!?
どんどん俺の顔が引き攣っていくのが分かる。最初は格好良いと思った風見さんと山下さんの顔も怖い気がしてきた。
「用があれば言えってだけの話だ。邪魔な時はそれでいい」
「……四六時中見張られるとかじゃない……?」
「俺が嫌だ」
はっ? 何理論なんだよ!
「花月さん、私から説明させていただきます。花月さんにとっては不本意だとは思いますが、今後は花月さんはうちの組の関係者と見られてしまいます。結城の弱みを握りたいと考える輩に花月さんが狙われてはいけませんので、念のため山下を警護に付けさせていただきたいのです」
「邪魔にならんよう気を付けます! メシ作るんは得意です! 言ってもらえたら何でも作ります! 送り迎えもすぐに対応します! よろしくお願いします!!」
ガバッと頭を下げた山下さんの勢いがすごくて、俺は『こ、こちらこそ……』としか言えなかった。
※side山下
「この部屋の清掃は、組員がしておりますがその際はこの風見が常におります。しかし不快であれば不在時にするよう調整します。また衣類の洗濯などはクリーニング業者にやらせておりますので、花月さんは何も気にせず、寛いでいただいて構いません。何か困ったことがあれば、山下、風見、私、もしくは結城に気軽に仰って下さい」
聞いたことないようなめっちゃ優しい声で、かしらがそう言うた。さっきから戸惑いまくっとる花月さんの表情も、ちょっと和らいで目元が柔らかくなった。可愛らしい顔が余計可愛らしくなる。
組長に連れられて歩いてくる花月さんを見た時、何ちゅう可愛らしいて綺麗な顔やねんと驚いた。風見さんを初めて見た時も、美人な男がおるもんやなと思ったもんやけど、花月さんはとにかく『可愛い』って言葉が合う。
「花月さんの携帯番号を教えていただいてもよろしいですか?」
かしらが花月さんやなくて、組長に尋ねた。
組長が『イロ』とか『思い出』とか似合わなすぎて恐いと思ったもんやけど、花月さんを見る組長の目が『好きや』って言ってるみたいで、なんちゅうか……組長もこんな顔するんやなって見直したくらい。見直したって言い方はおかしいかな。
でも、非情で荒々しい組長を慕う組員が多いんも確かやから、これはよくないのかもとも思う。
「あぁ、全員聞いておけ。何番だ?」
「えーと……俺、携帯持ってない」
「ああ?」
「だってそんなの金の無駄だし、なくても平気だし」
「大学で必要になりませんか?」
「あ、友達が全部連絡とか俺のも受けてくれて教えてくれてるんで、大丈夫です」
今時の大学生が携帯持ってないことよりも、組長にはタメ口で、かしらには敬語なんが気になった。
すげえ、と思った。
元いたソファがあるところに結城に連れられて戻る。鳴海さんと、格好良いお兄さんと、綺麗なお兄さんが立っていた。
「花月さん、紹介します。今後、花月さんのお世話をさせていただく風見と山下です。特に山下は常におそばに置いておきますので、良いように使ってやって下さい」
「あの、俺、お世話とかしてもらわなくていいんですけど……」
「送り迎えや、お食事の準備など何でも言って下さって構いません」
「えーっと……、えぇ?」
なんでヤクザのお兄さんに世話なんかしてもらわなきゃなんねぇの。まじで嫌だ。ちょ、まさか見張りか? 常にヤクザに睨まれて過ごすのかよ!?
どんどん俺の顔が引き攣っていくのが分かる。最初は格好良いと思った風見さんと山下さんの顔も怖い気がしてきた。
「用があれば言えってだけの話だ。邪魔な時はそれでいい」
「……四六時中見張られるとかじゃない……?」
「俺が嫌だ」
はっ? 何理論なんだよ!
「花月さん、私から説明させていただきます。花月さんにとっては不本意だとは思いますが、今後は花月さんはうちの組の関係者と見られてしまいます。結城の弱みを握りたいと考える輩に花月さんが狙われてはいけませんので、念のため山下を警護に付けさせていただきたいのです」
「邪魔にならんよう気を付けます! メシ作るんは得意です! 言ってもらえたら何でも作ります! 送り迎えもすぐに対応します! よろしくお願いします!!」
ガバッと頭を下げた山下さんの勢いがすごくて、俺は『こ、こちらこそ……』としか言えなかった。
※side山下
「この部屋の清掃は、組員がしておりますがその際はこの風見が常におります。しかし不快であれば不在時にするよう調整します。また衣類の洗濯などはクリーニング業者にやらせておりますので、花月さんは何も気にせず、寛いでいただいて構いません。何か困ったことがあれば、山下、風見、私、もしくは結城に気軽に仰って下さい」
聞いたことないようなめっちゃ優しい声で、かしらがそう言うた。さっきから戸惑いまくっとる花月さんの表情も、ちょっと和らいで目元が柔らかくなった。可愛らしい顔が余計可愛らしくなる。
組長に連れられて歩いてくる花月さんを見た時、何ちゅう可愛らしいて綺麗な顔やねんと驚いた。風見さんを初めて見た時も、美人な男がおるもんやなと思ったもんやけど、花月さんはとにかく『可愛い』って言葉が合う。
「花月さんの携帯番号を教えていただいてもよろしいですか?」
かしらが花月さんやなくて、組長に尋ねた。
組長が『イロ』とか『思い出』とか似合わなすぎて恐いと思ったもんやけど、花月さんを見る組長の目が『好きや』って言ってるみたいで、なんちゅうか……組長もこんな顔するんやなって見直したくらい。見直したって言い方はおかしいかな。
でも、非情で荒々しい組長を慕う組員が多いんも確かやから、これはよくないのかもとも思う。
「あぁ、全員聞いておけ。何番だ?」
「えーと……俺、携帯持ってない」
「ああ?」
「だってそんなの金の無駄だし、なくても平気だし」
「大学で必要になりませんか?」
「あ、友達が全部連絡とか俺のも受けてくれて教えてくれてるんで、大丈夫です」
今時の大学生が携帯持ってないことよりも、組長にはタメ口で、かしらには敬語なんが気になった。
すげえ、と思った。
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