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トラック2:学校の中の自分と家の中の自分は、性格が全く違うことがある
無知な子は、無知だからこそ可愛さがある
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「てか、そんな寒そうな格好してると風邪ひくだろ?」
Tシャツにハーフパンツという、とても真冬とは思えない格好なので、俺はそう心配する。
「大丈夫。風呂上りで暑いから」
「何だその謎理論」
むしろ湯冷めだからこそ、逆に風邪ひきやすくなるんじゃないか。
そう思ったが、俺は口に出そうという気が起きなかった。
「へくちっ」
「ほら言わんこっちゃない」
紗彩が可愛いくしゃみをしたので、俺は湯呑に残った緑茶をくびっと飲み、立ち上がった。
「へへ、ごめん」
照れ笑いを浮かべながら、紗彩も緑茶をすする。
「セーター、出してやるよ」
それまで手に持ってる茶で温めとけと言い、箪笥の下の方の引き出しから順にあさり始めた。
紗彩は、はーいと呑気な返事をする。
確か、最近洗ったばかりのセーターをしまっておいたはずだ。
「えーと何処にしまったかな……あ、あった!」
下の段から三番目の引き出しに紺色のセーターがあるのを見つけて引っ張り出し、ベッドに放り込む。
「勝手に着てて良いよ」
そう俺は、放り込んだセーターを親指で指した。
「やった、ありがと芳ちゃん」
と、紗彩は飛び掛かるように俺のセーターに食いついてきた。
「そんなに寒いの我慢してたのか?」
「もう! 流石にわたし、そんな馬鹿じゃない」
そう紗彩が、ぷぅと頬を膨らましながら、突っ込みを入れた。
「だな。紗彩、成績良かったからな」
「今でも頭良いもん!」
と、紗彩は俺のほうからそっぽを向いたが、やっぱり頬は膨らませたままだった。
実際紗彩は、中学で指折りの成績だった。
そんな紗彩が高校の進路で名門校には行かず、自分の叶えたい夢のために進学実績の少ない学校に行くのを決意した時には、大分驚いたが。
というか……。
さっきから、紗彩のある部分に目がいってしまう。
小柄な紗彩にとっては、確かに幼いころの俺の服を着るにはちょうど良いサイズかもしれない。
ただ、胸囲の部分に二つのメロンが成っていた。
メロンといっても、一般の人が思い浮かぶようなメロンではない。
あれはマスクメロン。そう呼ぶにはあまりにも大きすぎる。
メロンには色んな種類がある。
紗彩に当てはまるのは、"やや大きめ"に分類される摘果メロンが丁度良い。
そんな摘果メロンのせいで、戦隊Tシャツが3D化していた。
レッド隊員の顔が最早潰れている。彼はいつまで無心で居続けられるだろうか。
「んしょ」
紗彩が両手を挙げてセーターを着ようとした。
その時、Tシャツの裾が若干上がって彼女の可愛らしいへそが露わになった。
色白く、透き通るような肌艶のあるスリムなお腹は、俺の心臓を跳ねあがらせるには十分の療法だった。
その上、風呂上り特有のシャンプーの良い香りも相まっている。
もしここに博人がいたら、鼻血出して卒倒するんじゃないか。
「どうしたの、芳ちゃん?」
「いいや……何でもない」
セーターのネック部分から顔を出した紗彩は、俺が少し赤面しているのを不思議そうに見つめる。
知らない方が良い。この子は無知だからこそ、愛嬌があるのだ。
「ふうん」
そう紗彩は、俺の方に顔を近づかせてにやついてきた。
「な、何だよ」
「別に何でもないよー♪」
上機嫌に口笛を吹きながら、紗彩は俺に背中を向けてきた。
「これ、芳ちゃんの臭いがするね」
紗彩がセーターの袖を鼻にあてて、すんすんと嗅ぎ始めた。
「や、やめてくれよ。そんなことするの」そう言って、俺は頭を無造作に掻く。「臭いだろ?」
「え、全然そんなことないよ」紗彩は首を横に振って、臭くないと否定する。
「男子高校生の体臭だぞ? 臭いに決まってる」
「うんうん、臭くない。臭くないから」
そう紗彩は「ほら」と俺にセーターの袖口を鼻に突き出してきた。
渋々俺はくんくんと嗅いでみるも、
「わからん」自分の臭いなんて分かるわけがなく、俺はあっさり答えた。
「ならもし、これが博人の臭いだったらどうなるよ?」
そう俺はいじらしく紗彩に聞いてみた。
「お、大崎君はちょっと……嫌かも」
「わかった。あいつに言っとくよ」
「え、駄目」
「あいつの前で、紗彩はお前の臭いが苦手だって言っとくよ」
「ダメダメ。やめてえ!」
そう俺は紗彩を揶揄いながら、あははははと大きく笑った。
こんな日がずっと続いてくれればいいのに。
そう俺は願ってやまなかった。
Tシャツにハーフパンツという、とても真冬とは思えない格好なので、俺はそう心配する。
「大丈夫。風呂上りで暑いから」
「何だその謎理論」
むしろ湯冷めだからこそ、逆に風邪ひきやすくなるんじゃないか。
そう思ったが、俺は口に出そうという気が起きなかった。
「へくちっ」
「ほら言わんこっちゃない」
紗彩が可愛いくしゃみをしたので、俺は湯呑に残った緑茶をくびっと飲み、立ち上がった。
「へへ、ごめん」
照れ笑いを浮かべながら、紗彩も緑茶をすする。
「セーター、出してやるよ」
それまで手に持ってる茶で温めとけと言い、箪笥の下の方の引き出しから順にあさり始めた。
紗彩は、はーいと呑気な返事をする。
確か、最近洗ったばかりのセーターをしまっておいたはずだ。
「えーと何処にしまったかな……あ、あった!」
下の段から三番目の引き出しに紺色のセーターがあるのを見つけて引っ張り出し、ベッドに放り込む。
「勝手に着てて良いよ」
そう俺は、放り込んだセーターを親指で指した。
「やった、ありがと芳ちゃん」
と、紗彩は飛び掛かるように俺のセーターに食いついてきた。
「そんなに寒いの我慢してたのか?」
「もう! 流石にわたし、そんな馬鹿じゃない」
そう紗彩が、ぷぅと頬を膨らましながら、突っ込みを入れた。
「だな。紗彩、成績良かったからな」
「今でも頭良いもん!」
と、紗彩は俺のほうからそっぽを向いたが、やっぱり頬は膨らませたままだった。
実際紗彩は、中学で指折りの成績だった。
そんな紗彩が高校の進路で名門校には行かず、自分の叶えたい夢のために進学実績の少ない学校に行くのを決意した時には、大分驚いたが。
というか……。
さっきから、紗彩のある部分に目がいってしまう。
小柄な紗彩にとっては、確かに幼いころの俺の服を着るにはちょうど良いサイズかもしれない。
ただ、胸囲の部分に二つのメロンが成っていた。
メロンといっても、一般の人が思い浮かぶようなメロンではない。
あれはマスクメロン。そう呼ぶにはあまりにも大きすぎる。
メロンには色んな種類がある。
紗彩に当てはまるのは、"やや大きめ"に分類される摘果メロンが丁度良い。
そんな摘果メロンのせいで、戦隊Tシャツが3D化していた。
レッド隊員の顔が最早潰れている。彼はいつまで無心で居続けられるだろうか。
「んしょ」
紗彩が両手を挙げてセーターを着ようとした。
その時、Tシャツの裾が若干上がって彼女の可愛らしいへそが露わになった。
色白く、透き通るような肌艶のあるスリムなお腹は、俺の心臓を跳ねあがらせるには十分の療法だった。
その上、風呂上り特有のシャンプーの良い香りも相まっている。
もしここに博人がいたら、鼻血出して卒倒するんじゃないか。
「どうしたの、芳ちゃん?」
「いいや……何でもない」
セーターのネック部分から顔を出した紗彩は、俺が少し赤面しているのを不思議そうに見つめる。
知らない方が良い。この子は無知だからこそ、愛嬌があるのだ。
「ふうん」
そう紗彩は、俺の方に顔を近づかせてにやついてきた。
「な、何だよ」
「別に何でもないよー♪」
上機嫌に口笛を吹きながら、紗彩は俺に背中を向けてきた。
「これ、芳ちゃんの臭いがするね」
紗彩がセーターの袖を鼻にあてて、すんすんと嗅ぎ始めた。
「や、やめてくれよ。そんなことするの」そう言って、俺は頭を無造作に掻く。「臭いだろ?」
「え、全然そんなことないよ」紗彩は首を横に振って、臭くないと否定する。
「男子高校生の体臭だぞ? 臭いに決まってる」
「うんうん、臭くない。臭くないから」
そう紗彩は「ほら」と俺にセーターの袖口を鼻に突き出してきた。
渋々俺はくんくんと嗅いでみるも、
「わからん」自分の臭いなんて分かるわけがなく、俺はあっさり答えた。
「ならもし、これが博人の臭いだったらどうなるよ?」
そう俺はいじらしく紗彩に聞いてみた。
「お、大崎君はちょっと……嫌かも」
「わかった。あいつに言っとくよ」
「え、駄目」
「あいつの前で、紗彩はお前の臭いが苦手だって言っとくよ」
「ダメダメ。やめてえ!」
そう俺は紗彩を揶揄いながら、あははははと大きく笑った。
こんな日がずっと続いてくれればいいのに。
そう俺は願ってやまなかった。
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