18 / 26
トラック2:学校の中の自分と家の中の自分は、性格が全く違うことがある
ひねくれ者
しおりを挟む
ぴしゃりと突き刺したかのような返事。
まさか彼から、そんなきつい口調が出てくるとは思ってなかったので、思わず頬がひきつった。
「いくらなんでも薄情すぎるって。仲間がこんなに思い悩んでるんだ。少しは助けになってやりたいとか思ったりしないのか」
暉信に対し、その男は語尾に近づいていくほど、早口になっていく。
「やめろ博人。暉信には、紗彩を助ける義理なんて一つもない」俺は二人の間に割って入って、少し頭に血が上りそうになっている博人をどうどうと手で制した。「その上元々は、俺一人で良いことだったんだ」
「そ、それはそうだけどさ……」
体温が上がっていたのを実感したのか、博人が自分の頭を無作為にかきむしり始めた。
「……あのさ、二人とも勘違いしてるけど、僕まだできないなんて言ってないよ」
そう言った暉信は腰に手をあてながら、ため息をついた。
俺も博人も「え?」と呆気にとられたような反応になる。
「いやいやこの流れ、完全に否定するオチだったじゃん」
「それは違う」暉信は頭を振りながら、肩を竦めた。「全く、他人の話を最後まで聞いてほしいし、勝手にパターン化しないでほしいよね」
「ははっ、すまん」
そう俺は乾いた苦笑を交えた。
「まあでも、例えば『これからどうやっていこうか?』なんていうさ、一緒に相談に付き合ったり考えたりするような面倒事は、丁重に断る」なおも暉信は、自分の回答を続けていく。「でも情報提供みたいにさ、明確な指示をくれたとしたら、僕も何らか協力する」
「ああ、わかった」
そう言って、俺は深々と頷いた。
「ほら、自分ひねくれ者だから。義理人情とかそういうの、あんまり分からないから」
はははと暉信は、自虐気味に苦笑した。
「何だ、そういうことかよ。紛らわしいんだよお前は」
バツが悪そうに頭を掻く博人。
「いやいや、全部君が早とちりしただけ」
若干目を眇め、博人を睨む暉信。
「だな。こいつ俺の幼馴染の話になると、急に自分見えなくなるよな」
「う、うるせえよ」
等身大の友情でいじると、顔を伏せながら赤面するというわかりやすい反応。
そんな素直な男に対し、俺はほくそ笑んだ。
「ありがと。まさか暉信まで力になってくれるとは思ってなかったよ」
「俺からも謝るわ。少し、いや大分短気になってたわ」
「や、やめてくれ。そういうの」
俺達の水臭い態度に尻込みしたのか、暉信は背を向く。
「何お前まで、博人みたいに照れてんだよ」
そう言って、俺はははっと乾いた笑いを見せた。
再びいじられた博人は「芳人、もうそれやめて」と困惑顔を俺に見せてきた。
「き、急に優しくされるの慣れてないだけだ。それ以外何もない」
依然として、暉信は俺達と視線を合わさない。
「義理人情が分からないから、しょうがないよな」
「は?」
揚げ足をとった俺に、ぎろっと鋭い視線を向ける暉信。
「だって、そう言ったじゃん」
そんな暉信に、俺は少しいじり倒してみた。
「今後、暉信にいっぱいありがとうって言うようにするよ」
「誠意のない感謝なんて要らない」
「そして、再びお前が恥じらうまで、ずっと感謝し続けるよ」
「毎回僕が同じ反応を見せるとでも?」
「俺、お前の良いところ、もっと引き出したいし」
「有難迷惑って言葉、知ってる七尾君?」
「暉信ほんと良い奴だな」
「七尾君?」
不敵な笑みを浮かべつつ、暉信は俺の肩を優しく掴んできた。
「大丈夫。俺が保証する」
「あ、やっぱ僕協力するのやめることにするね」
「すみません。調子に乗りました。もうしないので許してください」
暉信が今一番効果の高い切り札を暉信が出してきたので、俺はそう平謝りするしか術は無かった。
そんなこんなで俺達は、談笑しながら自転車のペダルを漕ぎ、三人とも凍えながら飛ばしていった。
暉信の自宅は、偕楽園方面に家があるので、水戸駅に着く前に別れ、博人は一回エクセルで寄りたいところがあると言ったので駅で別れ、お互い別々に家路について今日はお開きになった。
まさか彼から、そんなきつい口調が出てくるとは思ってなかったので、思わず頬がひきつった。
「いくらなんでも薄情すぎるって。仲間がこんなに思い悩んでるんだ。少しは助けになってやりたいとか思ったりしないのか」
暉信に対し、その男は語尾に近づいていくほど、早口になっていく。
「やめろ博人。暉信には、紗彩を助ける義理なんて一つもない」俺は二人の間に割って入って、少し頭に血が上りそうになっている博人をどうどうと手で制した。「その上元々は、俺一人で良いことだったんだ」
「そ、それはそうだけどさ……」
体温が上がっていたのを実感したのか、博人が自分の頭を無作為にかきむしり始めた。
「……あのさ、二人とも勘違いしてるけど、僕まだできないなんて言ってないよ」
そう言った暉信は腰に手をあてながら、ため息をついた。
俺も博人も「え?」と呆気にとられたような反応になる。
「いやいやこの流れ、完全に否定するオチだったじゃん」
「それは違う」暉信は頭を振りながら、肩を竦めた。「全く、他人の話を最後まで聞いてほしいし、勝手にパターン化しないでほしいよね」
「ははっ、すまん」
そう俺は乾いた苦笑を交えた。
「まあでも、例えば『これからどうやっていこうか?』なんていうさ、一緒に相談に付き合ったり考えたりするような面倒事は、丁重に断る」なおも暉信は、自分の回答を続けていく。「でも情報提供みたいにさ、明確な指示をくれたとしたら、僕も何らか協力する」
「ああ、わかった」
そう言って、俺は深々と頷いた。
「ほら、自分ひねくれ者だから。義理人情とかそういうの、あんまり分からないから」
はははと暉信は、自虐気味に苦笑した。
「何だ、そういうことかよ。紛らわしいんだよお前は」
バツが悪そうに頭を掻く博人。
「いやいや、全部君が早とちりしただけ」
若干目を眇め、博人を睨む暉信。
「だな。こいつ俺の幼馴染の話になると、急に自分見えなくなるよな」
「う、うるせえよ」
等身大の友情でいじると、顔を伏せながら赤面するというわかりやすい反応。
そんな素直な男に対し、俺はほくそ笑んだ。
「ありがと。まさか暉信まで力になってくれるとは思ってなかったよ」
「俺からも謝るわ。少し、いや大分短気になってたわ」
「や、やめてくれ。そういうの」
俺達の水臭い態度に尻込みしたのか、暉信は背を向く。
「何お前まで、博人みたいに照れてんだよ」
そう言って、俺はははっと乾いた笑いを見せた。
再びいじられた博人は「芳人、もうそれやめて」と困惑顔を俺に見せてきた。
「き、急に優しくされるの慣れてないだけだ。それ以外何もない」
依然として、暉信は俺達と視線を合わさない。
「義理人情が分からないから、しょうがないよな」
「は?」
揚げ足をとった俺に、ぎろっと鋭い視線を向ける暉信。
「だって、そう言ったじゃん」
そんな暉信に、俺は少しいじり倒してみた。
「今後、暉信にいっぱいありがとうって言うようにするよ」
「誠意のない感謝なんて要らない」
「そして、再びお前が恥じらうまで、ずっと感謝し続けるよ」
「毎回僕が同じ反応を見せるとでも?」
「俺、お前の良いところ、もっと引き出したいし」
「有難迷惑って言葉、知ってる七尾君?」
「暉信ほんと良い奴だな」
「七尾君?」
不敵な笑みを浮かべつつ、暉信は俺の肩を優しく掴んできた。
「大丈夫。俺が保証する」
「あ、やっぱ僕協力するのやめることにするね」
「すみません。調子に乗りました。もうしないので許してください」
暉信が今一番効果の高い切り札を暉信が出してきたので、俺はそう平謝りするしか術は無かった。
そんなこんなで俺達は、談笑しながら自転車のペダルを漕ぎ、三人とも凍えながら飛ばしていった。
暉信の自宅は、偕楽園方面に家があるので、水戸駅に着く前に別れ、博人は一回エクセルで寄りたいところがあると言ったので駅で別れ、お互い別々に家路について今日はお開きになった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

微睡みの狭間に
幽零
青春
私立高校3年生の間泥(マドロ)君はいつも頬杖をついて眠たそうにしています。そんな彼と隣の席の覚芽(サメ)さんは間泥君が気になる様子。そんな彼らの日々を垣間見る短編小説です。
イラスト アイコンメーカー 様
M性に目覚めた若かりしころの思い出
kazu106
青春
わたし自身が生涯の性癖として持ち合わせるM性について、それをはじめて自覚した中学時代の体験になります。歳を重ねた者の、人生の回顧録のひとつとして、読んでいただけましたら幸いです。
一部、フィクションも交えながら、述べさせていただいてます。フィクション/ノンフィクションの境界は、読んでくださった方の想像におまかせいたします。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。


乙男女じぇねれーしょん
ムラハチ
青春
見知らぬ街でセーラー服を着るはめになったほぼニートのおじさんが、『乙男女《おつとめ》じぇねれーしょん』というアイドルグループに加入し、神戸を舞台に事件に巻き込まれながらトップアイドルを目指す青春群像劇! 怪しいおじさん達の周りで巻き起こる少女誘拐事件、そして消えた3億円の行方は……。
小説家になろうは現在休止中。
女子高生は小悪魔だ~教師のボクはこんな毎日送ってます
藤 ゆう
青春
ボクはある私立女子高の体育教師。大学をでて、初めての赴任だった。
「男子がいないからなぁ、ブリっ子もしないし、かなり地がでるぞ…おまえ食われるなよ(笑)」
先輩に聞いていたから少しは身構えていたけれど…
色んな(笑)事件がまきおこる。
どこもこんなものなのか?
新米のボクにはわからないけれど、ついにスタートした可愛い小悪魔たちとの毎日。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる