ロッキン・オン・ガールズライフ -第1章 ひきこもり幼馴染にノットデッドと叫んでやりたい-

たっくす憂斗

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トラック2:学校の中の自分と家の中の自分は、性格が全く違うことがある

ひねくれ者

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 ぴしゃりとしたかのような返事。
 まさか彼から、そんなきつい口調が出てくるとは思ってなかったので、思わずほほがひきつった。

「いくらなんでも薄情はくじょうすぎるって。仲間がこんなに思い悩んでるんだ。少しは助けになってやりたいとか思ったりしないのか」
 暉信てるのぶに対し、その男は語尾に近づいていくほど、早口になっていく。
「やめろ博人ひろと。暉信には、紗彩さあやを助ける義理なんて一つもない」俺は二人の間に割って入って、少し頭に血が上りそうになっている博人をどうどうと手で制した。「その上元々は、俺一人で良いことだったんだ」
「そ、それはそうだけどさ……」
 体温が上がっていたのを実感したのか、博人が自分の頭を無作為にかきむしり始めた。
「……あのさ、二人とも勘違いしてるけど、僕まだできないなんて言ってないよ」
 そう言った暉信は腰に手をあてながら、ため息をついた。
 俺も博人も「え?」と呆気あっけにとられたような反応になる。
「いやいやこの流れ、完全に否定するオチだったじゃん」
「それは違う」暉信はかぶりを振りながら、肩をすくめた。「全く、他人の話を最後まで聞いてほしいし、勝手にパターン化しないでほしいよね」
「ははっ、すまん」
 そう俺は乾いた苦笑を交えた。
「まあでも、例えば『これからどうやっていこうか?』なんていうさ、一緒に相談に付き合ったり考えたりするような面倒事は、丁重に断る」なおも暉信は、自分の回答を続けていく。「でも情報提供みたいにさ、明確な指示をくれたとしたら、僕も何らか協力する」
「ああ、わかった」
 そう言って、俺は深々とうなずいた。
「ほら、自分ひねくれ者だから。義理人情ぎりにんじょうとかそういうの、あんまり分からないから」
 はははと暉信は、自虐気味じぎゃくぎみに苦笑した。
「何だ、そういうことかよ。紛らわしいんだよお前は」
 バツが悪そうに頭をく博人。
「いやいや、全部君が早とちりしただけ」
 若干目をすがめ、博人をにらむ暉信。
「だな。こいつ俺の幼馴染の話になると、急に自分見えなくなるよな」
「う、うるせえよ」
 等身大の友情でいじると、顔をせながら赤面するというわかりやすい反応。
 そんな素直な男に対し、俺はほくそ笑んだ。
「ありがと。まさか暉信まで力になってくれるとは思ってなかったよ」
「俺からも謝るわ。少し、いや大分短気になってたわ」
「や、やめてくれ。そういうの」
 俺達の水臭い態度に尻込しりごみしたのか、暉信は背を向く。
「何お前まで、博人みたいに照れてんだよ」
 そう言って、俺はははっと乾いた笑いを見せた。
 再びいじられた博人は「芳人、もうそれやめて」と困惑顔を俺に見せてきた。
「き、急に優しくされるの慣れてないだけだ。それ以外何もない」
 依然として、暉信は俺達と視線を合わさない。
「義理人情が分からないから、しょうがないよな」
「は?」
 揚げ足をとった俺に、ぎろっと鋭い視線を向ける暉信。
「だって、そう言ったじゃん」
 そんな暉信に、俺は少しいじり倒してみた。
「今後、暉信にいっぱいありがとうって言うようにするよ」
誠意せいいのない感謝なんて要らない」
「そして、再びお前が恥じらうまで、ずっと感謝し続けるよ」
「毎回僕が同じ反応を見せるとでも?」
「俺、お前の良いところ、もっと引き出したいし」
有難迷惑ありがためいわくって言葉、知ってる七尾ななお君?」
「暉信ほんと良い奴だな」
?」
 不敵な笑みを浮かべつつ、暉信は俺の肩を優しくつかんできた。
「大丈夫。俺が保証する」
「あ、やっぱ僕協力するのやめることにするね」
「すみません。調子に乗りました。もうしないので許してください」
 暉信が今一番効果の高い切り札を暉信が出してきたので、俺はそう平謝ひらあやまりするしかすべは無かった。

 そんなこんなで俺達は、談笑しながら自転車のペダルをぎ、三人ともこごえながら飛ばしていった。
 暉信の自宅は、偕楽園かいらくえん方面に家があるので、水戸駅に着く前に別れ、博人は一回エクセルで寄りたいところがあると言ったので駅で別れ、お互い別々に家路について今日はお開きになった。
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