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トラック1:長い間文通を交わしていない友達から突然メッセージが来る時は、かなり驚くけど同時に嬉しさもこみ上げてくる
Yoshichan’s キッチン
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まず下ごしらえから。
にんにくは一片のみ取り出して皮を剥き、端っこの部分は切る。
レモンは二つ串切りにし、あとは冷蔵庫にしまうとすっか。
後はにんにくをすりおろすのみ。なので包丁はほとんど使わなくて済む。
これなら怪我するリスクも圧倒的に減る。
中華っぽいスープから作るとすっか。
小指の第一関節分くらいまでの量にとどめた生姜と、先ほど剥いた一片のにんにく。
卵は二玉をボウルにあけ、あらかじめといでおく。
「水って、どのくらい入れるのが良いんだろう?」
下ごしらえまではレシピ番組のようにスムーズに進められた。
だがここからの過程で、塩梅においてはどのくらいが丁度良い分量なのかがわからない。
それに、料理のジャンルによって味の濃さは変動するので、一概に言えない。
中国料理を例にしても、四川地方は味が濃いめなのが多いが、反対に上海や広東の方では薄味が多い。
和食も同じで、地方の郷土料理は濃い味が目立つが、京都で食べられるような伝統的な和食は、淡白で奥深い味が多い。
俺は味が濃い料理を好んで食べるが、今回は風邪予防という明確なコンセプトがある。あまり塩気の多い料理を食べると、かえって消化が悪くなってしまう。
「俺だけが食べるわけじゃないし、薄味にするべきだな」
そう決め、水の量は気持ち多めに入れることにした。
その上生姜とにんにくという、カレーのスパイスとして頻繁に使用される食材もあるのだ。十分味わい深くなるはず。
そう考えると、400cc程度が適量か。
計量カップで測り、小さめの鍋に水を入れて、コンロの火を点けた。
中華ペーストは、スプーン一杯分程度が妥当だろうか。
俺は、試しに米粒一つ分くらいを手ですくい、口に運んでみた。
「うわっ、しょっぱいなこれ」
想像以上に塩気が多かったので半分程度に減らした上で、沸かしている鍋の中に入れて溶かした。
沸騰するまで、さほど時間はかからなかった。
「さて、次は卵かな……あっ忘れてた」
生姜とにんにくが、まだすりおろしていない塊の状態だった。
俺は急いですりおろし、沸騰している鍋の中にぱらぱらと入れていった。
両指からにんにくの嫌な臭いが、意識をちらつかせていく。
顔に近づけると、その異臭が鼻腔の奥の奥まで刺激させる。
「臭いけど、まあそのうち落ちるだろ」
そう思い立ち、生の生姜の辛味と生のにんにくの臭味を取り除くため、数分間鍋を煮込ませることにした。
「もうちょい、具を増やそうかな」
鍋の中に入っているのが、中華ペーストとすりおろした生姜とにんにくなので、ほぼほぼ具が無い。
後で溶き卵を加えるとしても、それでも見た目の彩りが足りない感じがした。
俺はしばし考えた後、入れる具を見出した。
「葱だな」
昔から風邪の効果にてきめんだと言われている葱を加えれば、見た目良し効果良しの一石二鳥になるはず。
俺はすぐさま野菜庫の中を確認した。
見てみると、複数に束ねられた万能葱と一本に伸びた白葱が入っていた。
万能葱の方は、買ってから数日経っているのか、完全にふやけている。
スーパーで売っているような瑞々しい面影なんて全くなく、言い換えれば銭湯に長く浸かりすぎたのぼせ直前のジジイのようなしわくちゃ具合だった。
「やべっ、急に食欲無くなってきた…」
若干えづきそうになりながらも、何とか堪えることができた。
「とりあえず……何か飲もう」
冷蔵庫から適当に緑茶やらオレンジジュースやらを取り出してグラスに注ぎ、ぐびっと飲んだ。
「はあ、落ち着いた」
何とか気を取り戻すことができたので、引き続き調理を続ける。
白葱のほうは、完璧な状態で保存されていた。白い部分と青い部分が七:三の比率になっていて、変色しているところも一切ない。
県内産だけあって、鮮度も抜群なのだろう。
「葱は、白と青の半々でみじん切りにするか」
何となくそうすれば、彩り豊かになると思ったからだった。
結局また包丁を使うことになったが、別に自分は怪我するほど料理が下手というわけではないことは言っておきたい。単に自信が無いというだけ。うん、きっとそうだ。
よく架空の物語で聞くような、指に一杯のバンドエイドを貼っていて意中の殿方にお弁当を作ってきたというシーンがある。
本当にそんなに怪我したら食べ物に血が付くし、菌が傷口について悪化するため、衛生に良くないことこの上ない。
俺はおぼつかない様子で葱を刻んだ。みじん切りには見えないような粗が多く残る雑加減で。
葱を鍋に投入した頃には、生姜やにんにくの臭いが一切無くなり、食欲を刺激させる良い匂いがキッチン中に漂っていた。
さあ卵を投入するとしよう。
弱火にして、豪快に鍋の中に溶き卵を入れようとしたが、
「いや、ちょっと待てよ」
入る寸前のところで踏みとどまった。いや、正確に言えば少々溶き卵が、煮え切った鍋の中に滴っていた。
中華スープの具になってるような卵って、いきなりぶっかけたりしないよな……。
ダマになって、ただの玉子の塊と化す予想が何となく浮かんだ。
イメージ写真に載っているような、あの繊細さを再現するにはどうするか…。
しばし迷っていたが、ふと俺は食器洗い籠にささっている菜箸が目に留まった。
といだ玉子を菜箸経由で、ゆっくりと熱々の鍋に入れていけば、何となくそれっぽくなるんじゃないか。
そう思い、俺はゆっくりとボウルを傾けて菜箸にあて、鍋の中に溶き卵を回し入れていく。
それはまるで、濾過をしているような気分。
玉子を入れ終えて中火にし、固まるまで程よくかき混ぜながら煮ていく。
一分程度煮込み続けたら、次は片栗粉を少量入れてみよう。
これを入れるか入れないかで、中華っぽさで大分違いが出てくるんじゃないかな。
俺は小さじを用意し、二杯分入れた。
「あ、水で溶いた方が良かったかな」
もう入れちゃったし、別に良いだろう。そこまで本格的にするつもりもないし。
とろみがついたら、そこにごま油も回し入れる。
「お、更に良い感じに香りが出てきたぞ!」
最後に味見して、食べられる美味しさに仕上がっているのを確認した。
そして二人分の器に注いでいく。
「生姜を最後に加えてみるか」
仕上げに、少々生姜を千切りにして、注いだスープの上に添えてみた。
「完成っ!」
七尾流、中華風スープ(風邪予防効果あり)が出来上がった。
次に、冷蔵庫からヨーグルトを取り出し、スプーン二杯分を小皿の上にあける。
そして、そのヨーグルトの上から、蜂蜜を垂らし、ピールを下向きにした状態でレモンを絞っていく。
氏がないヨーグルトも、これで完成だ!
結構、思った以上に時間がかかってしまったな。
普段、料理なんてしないからな。
ま、今後も料理する機会なんで絶対ないと思うけど。
そうして、リビングに熱々のスープと不明なヨーグルトをダイニングテーブルに置き、俺は紗彩を呼びに行った。
にんにくは一片のみ取り出して皮を剥き、端っこの部分は切る。
レモンは二つ串切りにし、あとは冷蔵庫にしまうとすっか。
後はにんにくをすりおろすのみ。なので包丁はほとんど使わなくて済む。
これなら怪我するリスクも圧倒的に減る。
中華っぽいスープから作るとすっか。
小指の第一関節分くらいまでの量にとどめた生姜と、先ほど剥いた一片のにんにく。
卵は二玉をボウルにあけ、あらかじめといでおく。
「水って、どのくらい入れるのが良いんだろう?」
下ごしらえまではレシピ番組のようにスムーズに進められた。
だがここからの過程で、塩梅においてはどのくらいが丁度良い分量なのかがわからない。
それに、料理のジャンルによって味の濃さは変動するので、一概に言えない。
中国料理を例にしても、四川地方は味が濃いめなのが多いが、反対に上海や広東の方では薄味が多い。
和食も同じで、地方の郷土料理は濃い味が目立つが、京都で食べられるような伝統的な和食は、淡白で奥深い味が多い。
俺は味が濃い料理を好んで食べるが、今回は風邪予防という明確なコンセプトがある。あまり塩気の多い料理を食べると、かえって消化が悪くなってしまう。
「俺だけが食べるわけじゃないし、薄味にするべきだな」
そう決め、水の量は気持ち多めに入れることにした。
その上生姜とにんにくという、カレーのスパイスとして頻繁に使用される食材もあるのだ。十分味わい深くなるはず。
そう考えると、400cc程度が適量か。
計量カップで測り、小さめの鍋に水を入れて、コンロの火を点けた。
中華ペーストは、スプーン一杯分程度が妥当だろうか。
俺は、試しに米粒一つ分くらいを手ですくい、口に運んでみた。
「うわっ、しょっぱいなこれ」
想像以上に塩気が多かったので半分程度に減らした上で、沸かしている鍋の中に入れて溶かした。
沸騰するまで、さほど時間はかからなかった。
「さて、次は卵かな……あっ忘れてた」
生姜とにんにくが、まだすりおろしていない塊の状態だった。
俺は急いですりおろし、沸騰している鍋の中にぱらぱらと入れていった。
両指からにんにくの嫌な臭いが、意識をちらつかせていく。
顔に近づけると、その異臭が鼻腔の奥の奥まで刺激させる。
「臭いけど、まあそのうち落ちるだろ」
そう思い立ち、生の生姜の辛味と生のにんにくの臭味を取り除くため、数分間鍋を煮込ませることにした。
「もうちょい、具を増やそうかな」
鍋の中に入っているのが、中華ペーストとすりおろした生姜とにんにくなので、ほぼほぼ具が無い。
後で溶き卵を加えるとしても、それでも見た目の彩りが足りない感じがした。
俺はしばし考えた後、入れる具を見出した。
「葱だな」
昔から風邪の効果にてきめんだと言われている葱を加えれば、見た目良し効果良しの一石二鳥になるはず。
俺はすぐさま野菜庫の中を確認した。
見てみると、複数に束ねられた万能葱と一本に伸びた白葱が入っていた。
万能葱の方は、買ってから数日経っているのか、完全にふやけている。
スーパーで売っているような瑞々しい面影なんて全くなく、言い換えれば銭湯に長く浸かりすぎたのぼせ直前のジジイのようなしわくちゃ具合だった。
「やべっ、急に食欲無くなってきた…」
若干えづきそうになりながらも、何とか堪えることができた。
「とりあえず……何か飲もう」
冷蔵庫から適当に緑茶やらオレンジジュースやらを取り出してグラスに注ぎ、ぐびっと飲んだ。
「はあ、落ち着いた」
何とか気を取り戻すことができたので、引き続き調理を続ける。
白葱のほうは、完璧な状態で保存されていた。白い部分と青い部分が七:三の比率になっていて、変色しているところも一切ない。
県内産だけあって、鮮度も抜群なのだろう。
「葱は、白と青の半々でみじん切りにするか」
何となくそうすれば、彩り豊かになると思ったからだった。
結局また包丁を使うことになったが、別に自分は怪我するほど料理が下手というわけではないことは言っておきたい。単に自信が無いというだけ。うん、きっとそうだ。
よく架空の物語で聞くような、指に一杯のバンドエイドを貼っていて意中の殿方にお弁当を作ってきたというシーンがある。
本当にそんなに怪我したら食べ物に血が付くし、菌が傷口について悪化するため、衛生に良くないことこの上ない。
俺はおぼつかない様子で葱を刻んだ。みじん切りには見えないような粗が多く残る雑加減で。
葱を鍋に投入した頃には、生姜やにんにくの臭いが一切無くなり、食欲を刺激させる良い匂いがキッチン中に漂っていた。
さあ卵を投入するとしよう。
弱火にして、豪快に鍋の中に溶き卵を入れようとしたが、
「いや、ちょっと待てよ」
入る寸前のところで踏みとどまった。いや、正確に言えば少々溶き卵が、煮え切った鍋の中に滴っていた。
中華スープの具になってるような卵って、いきなりぶっかけたりしないよな……。
ダマになって、ただの玉子の塊と化す予想が何となく浮かんだ。
イメージ写真に載っているような、あの繊細さを再現するにはどうするか…。
しばし迷っていたが、ふと俺は食器洗い籠にささっている菜箸が目に留まった。
といだ玉子を菜箸経由で、ゆっくりと熱々の鍋に入れていけば、何となくそれっぽくなるんじゃないか。
そう思い、俺はゆっくりとボウルを傾けて菜箸にあて、鍋の中に溶き卵を回し入れていく。
それはまるで、濾過をしているような気分。
玉子を入れ終えて中火にし、固まるまで程よくかき混ぜながら煮ていく。
一分程度煮込み続けたら、次は片栗粉を少量入れてみよう。
これを入れるか入れないかで、中華っぽさで大分違いが出てくるんじゃないかな。
俺は小さじを用意し、二杯分入れた。
「あ、水で溶いた方が良かったかな」
もう入れちゃったし、別に良いだろう。そこまで本格的にするつもりもないし。
とろみがついたら、そこにごま油も回し入れる。
「お、更に良い感じに香りが出てきたぞ!」
最後に味見して、食べられる美味しさに仕上がっているのを確認した。
そして二人分の器に注いでいく。
「生姜を最後に加えてみるか」
仕上げに、少々生姜を千切りにして、注いだスープの上に添えてみた。
「完成っ!」
七尾流、中華風スープ(風邪予防効果あり)が出来上がった。
次に、冷蔵庫からヨーグルトを取り出し、スプーン二杯分を小皿の上にあける。
そして、そのヨーグルトの上から、蜂蜜を垂らし、ピールを下向きにした状態でレモンを絞っていく。
氏がないヨーグルトも、これで完成だ!
結構、思った以上に時間がかかってしまったな。
普段、料理なんてしないからな。
ま、今後も料理する機会なんで絶対ないと思うけど。
そうして、リビングに熱々のスープと不明なヨーグルトをダイニングテーブルに置き、俺は紗彩を呼びに行った。
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