上 下
41 / 58

第41話 『チャリを買って女と毎日おっぱい密着大作戦しよう』

しおりを挟む
 1985年(昭和60年)11月11日(月) <風間悠真>

 中1男子(オレもだが)のヤツらが来月の10日に始まる『~お騒がせします』の話に夢中(?)になっているなか、オレはさっそく実益と実益を兼ねた計画を実施した。

 ここでの実益とは長距離になった下校時間の短縮と、後ろに乗せた女のおっぱい密着ムニュムニュ計画の事だ。これがバイクなら問題ないんだが、下り坂と平地限定。

 ハグの感触とバックハグの感触は経験があるが、後ろからバックハグ? は未経験なのだ。ゆくゆくはバイクでやろうと考えつつ、さっそくじいちゃんに相談した。

 しかし、バイトもしてはいるがギターの練習にデートにと時間が足りない。服やウォークマンや色んな欲しいものがありすぎて、オレの負債は増える一方だ。




「自転車? なんで? 今までいらなかったろう? なんでいるんだ?」

 当然の質問だ。急に必要になる理由がいる。例えばブリジストンのモンテカルロは6万円近くして、ほぼギターだ。

「いや、今までと違って中学で行動範囲が広がったからさ……。ほら、バンドの練習で中学校より遠くに行くし、暗くなれば危ないだろ? バスで帰ってもいいけど、それこそお金がかかるから……」

 じいちゃんは目を細めて、オレの話を聞いていた。しかしオレは大事な事を忘れていたのだ。

「待てよ、悠真。お前、4年生の誕生日に自転車買ってやっただろう。なんとかダイナマンじゃないと嫌だってダダごねて。それ、まだ十分乗れるはずじゃないのか?」

 じいちゃんは腕を組み、眉間にしわを寄せた。

 オレの説明に何か引っかかるものを感じたようだが、まあ当たり前だ。金を出して買ってあげた物が、すぐに飽きられて倉庫行きだったのだから、いい気持ちがするわけない。

 やべえな。すっかり忘れていたぞ。でも今さらあんな子供っぽい自転車には乗れないから、頭をかきながら言い訳を探した。

「あ、そうだった……」

 言葉に詰まるオレを見て、じいちゃんは首をかしげる。

「どうしたんだ? その自転車じゃダメなのか?」

「いや、その……あのダイナマンの自転車、もう小さくて……」

 何とか取り繕おうとするが、じいちゃんは椅子に深く腰掛けて、オレをじっと見つめた。

「小さい? 2年前だぞ。そんなに早く体が大きくなるもんか?」

「実は……さ、中学生になって、あんな子供っぽい自転車じゃ恥ずかしくて……」

「恥ずかしい? 誰に対して恥ずかしいんだ?」

 じいちゃんにしては妙に饒舌じょうぜつだ。普段はあまりしゃべらないし、親父も寡黙だ。昔の男は喋らないんだろうか? 男子厨房ちゅうぼうに入らずとか、黙して語らずとか……。

「いや、ほら……友だちにさ」

 さすがに中学生にもなって戦隊物の自転車は恥ずかしいだろ? 察してくれよ、じいちゃん……。

「友だちが馬鹿にする、か?」

「……うん」

「嘘をつくな。お前去年いじめっ子を殴ったって聞いたぞ。中学入学早々もあるし、1回や2回じゃないだろ? そんなお前を誰が馬鹿にするんだ?」

「いや……」

 ああ、もういいや。正直に言おう。

「いや、馬鹿にはされないよ。自転車そのものは。その……中学生にもなって、子供っぽいだろ? だからだよ」

「……本当にそれだけか? ……男からじゃ、ないだろう?」

 え? なんで?

「正直に言え」

「ああもう! わかったよ! 好きな子がいて、その子にそう思われるのが、嫌なんだよ!」

 うわあ、言ってしまった。51にもなって(51脳で体は12歳)じいちゃんにそんなこと告白するとは思わなかった。




 ……なんだこの沈黙。勘弁してくれよ!




「あーはっはっはっは! そうかそうか! 悠真もそんな歳か! いやあ去年からちょっと変わったなとは思ってはいたが、そうかそうか……わかった! 買ってやろう。その代わり子供っぽくない物だから、今度こそ大事にするんだぞ」

 じいちゃんはそう言って部屋の奥に行き、タンスから7万円持ってきて渡してくれた。お釣りはいいって言ってくれたけど、高校に入ってバイクを買うときが、怖い。




 ■放課後

「え、どうしたの悠真。これ買ったの?」

「ああ……。まあ、色々と使うしな。2人乗りしようぜ」

「うん……」

 今日は月曜日で美咲の日(一緒に登下校)だ。小学校経由で帰ると上り坂が300mで平地が500m、残りが1kmの下り坂になっている。だから帰りは歩きの半分くらいの時間で帰れるんだ。

 歩いて帰ると美咲の家までは約30分。

 でもいつも途中の神社で寄り道するから、40分とか下手すりゃ1時間くらいかけて帰ることになる。その分長く話せるからいいんだけど、自転車で帰れば、正直10分くらいで終わる。ほぼ下り坂だからね。




「ねえ……やっぱり歩いて帰らない?」

「え? なんで?」

「だって、自転車に乗って帰ったら時間短くなっちゃうじゃん。悠真との時間が少なくなるの、嫌だな」

「でも、神社でいっぱい話せばよくない?」

「うーん、でもなんか……歩きながら話したい」

「ふーん、まあ、美咲がそうしたいなら、別にいいけど……」

 う……もろくも崩れたオレの後ろからおっぱいむにゅむにゅ計画。悲しい。

「ねえ、なんで急に自転車?」
 
「いや……まあ、その……」
 
 さすがに美咲のおっぱいのムニュムニュを背中から感じたいからとは言えない。

「ほら、バンドの練習で祐介の家まで行ったりするだろ? 帰りも遅くなるし、バス使っちゃうとお金もかかるからさ。でも小学校の時の戦隊物の自転車はさすがに恥ずかしいから」

 オレは笑いでごまかした。

 美咲のムニュムニュが欲しいとは、言えない。




 ■翌日

 火曜日は凪咲なぎさの日だ。

 凪咲は何の問題もなくOKしてくれて、後ろの荷台に横座りする。2人のカバンは前のカゴに入れて、そのまま自転車をこぐと、上半身はオレの背中に密着して凪咲のムニュムニュが……。

 これはなんだ? 手でもんだときはもちろん、その柔らかい感触がもにゅもにゅとか、むにゅむにゅとかの感触なんだが、一種独特の感覚なんだよな。一体感というか、想像をかき立てるというか。

 背中に全神経を集中する。

 上半身をくっつけてくるから、12脳には刺激が強い。そしてときどき首筋に吹きかかる息とか、スベスベした柔らかい手とか……あ、やべえ、ドキドキしてきたぞ!

「ん?  どうしたの?」
 
 凪咲がオレの耳元でささやく。ああもう! そのささやき声やめてくれないかな! ○ってきそうだぞ。凪咲? お前って天然の魔性の女? 

 平地をそんな感じで移動していたら、見覚えのある後ろ姿。

 美咲だ。

「 「あ」 」

 オレの背中にぴったりと体をくっつけた凪咲は、追い抜き様にニッコリ勝ち誇ったような顔でピースサインを美咲に送る。




 スローモーションのように通り過ぎていく中で見た美咲の、複雑そうな表情がいつまでもオレの頭に残った。




 次回 第42話 (仮)『凪咲のスカートの中』
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について

ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに…… しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。 NTRは始まりでしか、なかったのだ……

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

クラスメイトに死ねコールをされたので飛び降りた

ああああ
恋愛
クラスメイトに死ねコールをされたので飛び降りた

先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…

ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。 しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。 気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…

処理中です...