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天下一統して大日本国となる。-大日本国から世界へ-
第746話 『ケープタウンとポルトガル。周辺の王国とインドと同じ状況』
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天正十七年十月六日(1588/11/24) ケープタウン
カリカットからソコトラ沖の海戦を経て、マダガスカルに到着して現地を視察した後、純正の艦隊はケープタウンに到着した。
「父上、朝夕は肌寒いですが、日中は過ごし易うございますね」
「うむ。今時分はちょうどよい季節であるな。然れど学んだであろう。日ノ本とは違い、この地球の南半分にあるゆえ、夏寒く冬暖かいのだ。我らは北半球から南半球、そしてまた北半球へと旅をする。暦がなければ、今は夏なのか冬なのか、見当も付かぬ。まあ、いまこの地では夏なのであろうがな」
息子である純勝の問いに純正はそう言って答えた。純勝は港を見下ろす総督府のある丘の上から、入り混じる船団を眺めながら言う。
「父上、ポルトガル船や我が国の船、それからムガル帝国の船まで、実に様々な国の船が停泊しております。まるで異国の地のようです」
純正は頷きながら答えた。
「そうだな。ここケープタウンは、まさに世界の交差点といえよう。我らが肥前の統治下とはいえ、その実態は様々な文化が混ざり合う、独特な場所なのだ。ムガル帝国とはヴィジャヤナガル王国との兼ね合いがあるが、商人同士の付き合いはあるからの」
「父上、現地の人々との関係はいかがでしょうか?」
純正は少し考え込むように目を細めた。
「難しい問いだ。我らは統治者ではあるが、現地の習慣や文化を尊重せねばならぬ。幸いコイコイ人たちとの関係も友好的に築けていると聞く。彼らの土地を奪うのではなく、共に栄える道を探ってきた結果であるな」
純勝は父の言葉に深く頷いた。
「うべなるかな(なるほど)。然らば、ポルトガルのセバスティアン一世との友誼は、この地にとって如何なる意味を持つのでしょうか」
純正は遠くを見つめながら答えた。
「セバスティアンとの友誼は、我らの立場を強くする重き柱だ。彼の助力があったからこそ、この地での足溜り(拠点)を得ることができた。然れど欧州ではイスパニアがおり、我が国と戦の盟を結ぶことは能わぬ。その辺りも含めて此度は話し合おうと考えておるのだ」
純勝は純正の言葉を慎重に受け止め、さらに問いかける。
「父上、イスパニアと我が国は戦をしており、隣国であるポルトガルの立場が難し事は存じております。然れど、イングレス(イギリス)やホラント(オランダ)などという国も、イスパニアに抗っていると聞き及びます」
「よく知っておるな。確かにイングレスやホラントも、イスパニアに対して不満を抱いておる。だが、只今のところ彼の国らの海外での力はまだ弱い。ポルトガルとイスパニアが世界の海を、いやそれに我が国も含まれるが、この三国が世界の海を統べているといってもよいであろう」
純正は息子の知識の広さに感心しつつ、慎重に答えた。
「然れどイングレスやホラントの動きは無視できぬ。彼の国らは今後、大きな力を持つ恐れがある。我らはこの変化の兆しを見逃さず、将来に備えねばならぬ。ポルトガルと交誼を深めつつ、様子をみて、必要があれば両国とも誼を通じるべきと考えておる」
純勝は父の言葉を真剣に聞き、深く考えた後、さらに質問を続ける。
「父上の先見の明に感服いたします。では、我らがこの地に根を下ろす上で、最も恐れるべき勢は何処になりますでしょうか。イスパニアでしょうか、それともオスマン帝国でしょうか」
「良い質問だ。然れど印阿で考えるならばオスマンやムガル帝国じゃ。イスパニアはアフリカでは力を持たぬ。備えねばならぬのはルソンや東南アジアであろう。ここで考えるべきはポルトガルとの共存とオスマンの攻撃に備えることぞ」
純正は息子の鋭い質問に満足げな表情を浮かべ、慎重に答えた後にさらに続けた。
「然れど最も備えるべきは、スワヒリ海岸の都市国家群や内陸の王国たちとの関係じゃ。これを上手く保ち続けなければ、この地での我らの立場は危うくなる」
純勝は熱心に聞き入りながら尋ねる。
「では父上、我らは如何にすれば斯様な世の中を乗り越える事能うのでしょうか」
純正が純勝に話しかけようとしたその時、ノックの音が聞こえた。
「殿下、よろしいでしょうか」
「ふむ、如何した」
「は、先触れなき訪問なれど、モノモタパ王国の王陛下が、殿下の来訪を知り、是非面会を仰せにございます」
「なに? あい分かった。支度する故、しばし待っていただくようお伝えするのだ」
「はは」
純正は純勝に向き直り、静かに言う。
「思わぬ来客じゃな。モノモタパ王国との交誼は重しである。この機を逃すわけにはいかん」
「父上、モノモタパ王国の王が直々にお越しになるとは。何か特別な故があるのでしょうか」
純勝は純正の表情を窺いながら尋ねた。
「恐らくは我らの存在感の高まりを察知してのことであろう。今に始まった事ではないが、我らの平等主義的な政策や、ポルトガルとの関係の変化が、彼らの注目を集めているのだ」
純正は答え、立ち上がって衣服を整えながら続けた。
「モノモタパ王国は、この地域で最も影響力のある王国の1つじゃ。彼らとの関係を如何に築くかが、我らの今後の発展に大きく関わってくる」
「では、如何に対応すべきでしょうか」
「なに、難しく考える事はない。礼を尽くして迎え入れることじゃ。そして我らの理念、すなわち平等と互いに栄えるという心を伝えねばならん。だが同時に、彼らの真意を探ることも忘れてはならぬ」
純正は息子の肩に手を置き、真剣な表情で言った。
「純勝、お主もこの会見に同席するのじゃ。よく観察し、学ぶがよい。この会見が、アフリカでの我らの未来を左右するかもしれぬからの」
「はい、父上。しっかりと学ばせていただきます」
純勝は決意を込めて答えた。
2人は互いに頷き合い、モノモタパ王国の王を迎えるため、総督府の大広間へと向かう。
モノモタパの王がもたらす報せは吉か、凶か。
次回 第747話 (仮)『モノモタパ王とまちわびたリスボン』
カリカットからソコトラ沖の海戦を経て、マダガスカルに到着して現地を視察した後、純正の艦隊はケープタウンに到着した。
「父上、朝夕は肌寒いですが、日中は過ごし易うございますね」
「うむ。今時分はちょうどよい季節であるな。然れど学んだであろう。日ノ本とは違い、この地球の南半分にあるゆえ、夏寒く冬暖かいのだ。我らは北半球から南半球、そしてまた北半球へと旅をする。暦がなければ、今は夏なのか冬なのか、見当も付かぬ。まあ、いまこの地では夏なのであろうがな」
息子である純勝の問いに純正はそう言って答えた。純勝は港を見下ろす総督府のある丘の上から、入り混じる船団を眺めながら言う。
「父上、ポルトガル船や我が国の船、それからムガル帝国の船まで、実に様々な国の船が停泊しております。まるで異国の地のようです」
純正は頷きながら答えた。
「そうだな。ここケープタウンは、まさに世界の交差点といえよう。我らが肥前の統治下とはいえ、その実態は様々な文化が混ざり合う、独特な場所なのだ。ムガル帝国とはヴィジャヤナガル王国との兼ね合いがあるが、商人同士の付き合いはあるからの」
「父上、現地の人々との関係はいかがでしょうか?」
純正は少し考え込むように目を細めた。
「難しい問いだ。我らは統治者ではあるが、現地の習慣や文化を尊重せねばならぬ。幸いコイコイ人たちとの関係も友好的に築けていると聞く。彼らの土地を奪うのではなく、共に栄える道を探ってきた結果であるな」
純勝は父の言葉に深く頷いた。
「うべなるかな(なるほど)。然らば、ポルトガルのセバスティアン一世との友誼は、この地にとって如何なる意味を持つのでしょうか」
純正は遠くを見つめながら答えた。
「セバスティアンとの友誼は、我らの立場を強くする重き柱だ。彼の助力があったからこそ、この地での足溜り(拠点)を得ることができた。然れど欧州ではイスパニアがおり、我が国と戦の盟を結ぶことは能わぬ。その辺りも含めて此度は話し合おうと考えておるのだ」
純勝は純正の言葉を慎重に受け止め、さらに問いかける。
「父上、イスパニアと我が国は戦をしており、隣国であるポルトガルの立場が難し事は存じております。然れど、イングレス(イギリス)やホラント(オランダ)などという国も、イスパニアに抗っていると聞き及びます」
「よく知っておるな。確かにイングレスやホラントも、イスパニアに対して不満を抱いておる。だが、只今のところ彼の国らの海外での力はまだ弱い。ポルトガルとイスパニアが世界の海を、いやそれに我が国も含まれるが、この三国が世界の海を統べているといってもよいであろう」
純正は息子の知識の広さに感心しつつ、慎重に答えた。
「然れどイングレスやホラントの動きは無視できぬ。彼の国らは今後、大きな力を持つ恐れがある。我らはこの変化の兆しを見逃さず、将来に備えねばならぬ。ポルトガルと交誼を深めつつ、様子をみて、必要があれば両国とも誼を通じるべきと考えておる」
純勝は父の言葉を真剣に聞き、深く考えた後、さらに質問を続ける。
「父上の先見の明に感服いたします。では、我らがこの地に根を下ろす上で、最も恐れるべき勢は何処になりますでしょうか。イスパニアでしょうか、それともオスマン帝国でしょうか」
「良い質問だ。然れど印阿で考えるならばオスマンやムガル帝国じゃ。イスパニアはアフリカでは力を持たぬ。備えねばならぬのはルソンや東南アジアであろう。ここで考えるべきはポルトガルとの共存とオスマンの攻撃に備えることぞ」
純正は息子の鋭い質問に満足げな表情を浮かべ、慎重に答えた後にさらに続けた。
「然れど最も備えるべきは、スワヒリ海岸の都市国家群や内陸の王国たちとの関係じゃ。これを上手く保ち続けなければ、この地での我らの立場は危うくなる」
純勝は熱心に聞き入りながら尋ねる。
「では父上、我らは如何にすれば斯様な世の中を乗り越える事能うのでしょうか」
純正が純勝に話しかけようとしたその時、ノックの音が聞こえた。
「殿下、よろしいでしょうか」
「ふむ、如何した」
「は、先触れなき訪問なれど、モノモタパ王国の王陛下が、殿下の来訪を知り、是非面会を仰せにございます」
「なに? あい分かった。支度する故、しばし待っていただくようお伝えするのだ」
「はは」
純正は純勝に向き直り、静かに言う。
「思わぬ来客じゃな。モノモタパ王国との交誼は重しである。この機を逃すわけにはいかん」
「父上、モノモタパ王国の王が直々にお越しになるとは。何か特別な故があるのでしょうか」
純勝は純正の表情を窺いながら尋ねた。
「恐らくは我らの存在感の高まりを察知してのことであろう。今に始まった事ではないが、我らの平等主義的な政策や、ポルトガルとの関係の変化が、彼らの注目を集めているのだ」
純正は答え、立ち上がって衣服を整えながら続けた。
「モノモタパ王国は、この地域で最も影響力のある王国の1つじゃ。彼らとの関係を如何に築くかが、我らの今後の発展に大きく関わってくる」
「では、如何に対応すべきでしょうか」
「なに、難しく考える事はない。礼を尽くして迎え入れることじゃ。そして我らの理念、すなわち平等と互いに栄えるという心を伝えねばならん。だが同時に、彼らの真意を探ることも忘れてはならぬ」
純正は息子の肩に手を置き、真剣な表情で言った。
「純勝、お主もこの会見に同席するのじゃ。よく観察し、学ぶがよい。この会見が、アフリカでの我らの未来を左右するかもしれぬからの」
「はい、父上。しっかりと学ばせていただきます」
純勝は決意を込めて答えた。
2人は互いに頷き合い、モノモタパ王国の王を迎えるため、総督府の大広間へと向かう。
モノモタパの王がもたらす報せは吉か、凶か。
次回 第747話 (仮)『モノモタパ王とまちわびたリスボン』
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