709 / 767
天下一統して大日本国となる。-天下百年の計?-
第708話 『琉球州誕生か』
しおりを挟む
天正十二年四月二十六日(1583/6/16) 諫早城
前回の会議で決まった新政府の歳入を調べ上げた。補助金を支払った残りの純粋な歳入だ。
小佐々州……553,346貫
織田州……219,912貫
武田州……76,758貫
北条州……74,354貫
徳川州……37,602貫
浅井州……33,130貫
里見州……23,436貫
畠山州……12,391貫
大宝寺州……6,456貫
新政府直轄領……84,938貫
塩田の収入……100,000貫
総合計……1,222,323貫
とりあえず、一応形にはなった。
国家予算であるがために、軍備や外交等の用途が望ましかったが、当面は外交・軍事は肥前国(小佐々)の陸海軍が担当しなければ立ちゆかない状態である。
この予算も更なる収益を見込むために産業の育成と教育・インフラ整備等に充てられる事となった。
■諫早城広間
「さてみんな、聞いて欲しい。先日琉球から書状が届き、外務省の副大臣である長嶺親方将星が来るとの事だ」
「その当て所(目的)は冊封、わが国に服属を願い出て、独立国としての保証を得んがためとの事」
純正の発議のあと、直茂が補足した。
「今琉球は、明に服属して冊封を受けている。然れどその冊封も有名無実化しており、なんら琉球にとって利のあるものではなく、かえって国益を損ねているとの事だ。これについて皆の考えを聞きたい」
純正は全員を見渡して言ったが、既に答えを決めているかのようであった。
「すでに琉球とは軍事同盟に近い約を結んでおりますれば、我らのかう張り(庇護)の下にあることを内外に明言し、かつ台湾もしくは呂宋の艦隊を駐屯させれば、明の動きを封ずる事にもなりましょう。また明は、永楽帝の御代にはるかアフリカまで船団を遣ったそうですが、それも今は昔。海軍は衰え、いかな大国でも海を渡って琉球を攻めるなど難しいでしょう」
直茂は情報省から得た情報を分析して意見を述べた。官兵衛は立ち上がって、壁に掛けられた大きな地図に歩み寄る。
「琉球を我らの影響の及ぶ下に置くことで、より交易の幅が広まるでしょう。関銭はなくなり、自由に商人が行き交う事で、お互いに利を得る事となるかと存じます。南方への交易船団や艦隊の航行もより易しとなるでしょう。明に関しては、琉球が冊封を止めたことに対して、何らかの動きはあるかもしれませんが、いきなり武を以て琉球を征伐するようなことはないかと存じます」
「官兵衛殿、然りとて明国との戦は避けなければなりませぬ。如何なる拠り所にて、戦にならぬと言い切るのですか」
直家は自分の考えとすり合わせるかのように官兵衛に確認をしたが、官兵衛はその問いに対して冷静な表情で答える。
「宇喜多殿のご指摘、誠にごもっとも。明との戦はないと言い閉ぢむ(断言する)訳ではありませぬが、彼の国がすぐさま武を以て、琉球に攻め入る恐れはないと考えまする」
官兵衛は地図上の明国を指さしながら続ける。
「現在の明は、北方の女真族や蒙古との国境問題に追われています。さらに海禁政策により彼らの海軍力は著しく衰えており、琉球のような遠き地に大がかりな兵を起こす余力はないかと存じます」
直家は腕を組み、深く考え込んだ様子で官兵衛に返す。
「うべなるかな(なるほど)。明との戦は避けるべきと考えておりましたが、実はそれがしの考えも官兵衛どのと同じにござる。明にとって琉球を攻めたところで、何の利もありませぬ。あるとすれば、冊封を止めればこうなるぞ、という見せしめくらいのものでしょう。然りとてそれが戦を起こすほどの故にはなりますまい」
純正は直家と官兵衛のやり取りを静かに聞いていたが、やがてゆっくりと息を吸い、口を開く。
「両名の考え、よく分かった。確かに明との戦の恐れはなさそうであるな。然れど油断は禁物である。琉球の冊封を受け入れることは、単なる形式以上の意味を持つ。これは東アジアの力の釣り合いを崩す一手となるやもしれぬ」
ふと、土居清良が発言を求めた。
「御屋形様、琉球を従わせる事で、台湾や呂宋の艦隊との携わりがより強まります。琉球は我が国の海上の備えの重き結び目となり、東支那海における我が国の海上交易路をより安全に保つことができるでしょう」
さらに続いて佐志方庄兵衛が続けて意見を述べる。
「加えて、琉球に我が国の進んだ造船技術や航海術を伝授することで、彼の国の海上の備えを強め、さらに両国の絆をより深めること能います。これは我が国の海洋戦略の大方(全体)を強める事となるでしょう」
「皆の考え、よく分かった。では、以下の方針で進めることとする」
純正は全員の意見をしっかり聞いて吟味し、その後決意を込めて言った。内容は以下の通りである。
一つ、琉球との冊封関係を確立し、我が国の影響下に置く。ただし、彼らの文化や伝統は最大限尊重する。
一つ、明との直接対立は避けつつ、琉球の独立性と我が国との関係強化の正当性を主張する。必要であれば、外交的な説明も行う。
一つ、琉球を我が国の海洋戦略の要として位置づけ、既存の防衛網との連携を強化する。同時に、我が国の技術を伝授し、琉球国の海事能力の向上を図る。
琉球国は小佐々家の海外領土とし、州ではなく(将来的には州)高山国(台湾)や呂宋国(フィリピン)と同じようにした。これはあくまでも帰属を願ってきたのが大日本国ではなく、小佐々家の肥前国であったからに他ならない。
次回 第709話 (仮)『瓶詰めの開発』
前回の会議で決まった新政府の歳入を調べ上げた。補助金を支払った残りの純粋な歳入だ。
小佐々州……553,346貫
織田州……219,912貫
武田州……76,758貫
北条州……74,354貫
徳川州……37,602貫
浅井州……33,130貫
里見州……23,436貫
畠山州……12,391貫
大宝寺州……6,456貫
新政府直轄領……84,938貫
塩田の収入……100,000貫
総合計……1,222,323貫
とりあえず、一応形にはなった。
国家予算であるがために、軍備や外交等の用途が望ましかったが、当面は外交・軍事は肥前国(小佐々)の陸海軍が担当しなければ立ちゆかない状態である。
この予算も更なる収益を見込むために産業の育成と教育・インフラ整備等に充てられる事となった。
■諫早城広間
「さてみんな、聞いて欲しい。先日琉球から書状が届き、外務省の副大臣である長嶺親方将星が来るとの事だ」
「その当て所(目的)は冊封、わが国に服属を願い出て、独立国としての保証を得んがためとの事」
純正の発議のあと、直茂が補足した。
「今琉球は、明に服属して冊封を受けている。然れどその冊封も有名無実化しており、なんら琉球にとって利のあるものではなく、かえって国益を損ねているとの事だ。これについて皆の考えを聞きたい」
純正は全員を見渡して言ったが、既に答えを決めているかのようであった。
「すでに琉球とは軍事同盟に近い約を結んでおりますれば、我らのかう張り(庇護)の下にあることを内外に明言し、かつ台湾もしくは呂宋の艦隊を駐屯させれば、明の動きを封ずる事にもなりましょう。また明は、永楽帝の御代にはるかアフリカまで船団を遣ったそうですが、それも今は昔。海軍は衰え、いかな大国でも海を渡って琉球を攻めるなど難しいでしょう」
直茂は情報省から得た情報を分析して意見を述べた。官兵衛は立ち上がって、壁に掛けられた大きな地図に歩み寄る。
「琉球を我らの影響の及ぶ下に置くことで、より交易の幅が広まるでしょう。関銭はなくなり、自由に商人が行き交う事で、お互いに利を得る事となるかと存じます。南方への交易船団や艦隊の航行もより易しとなるでしょう。明に関しては、琉球が冊封を止めたことに対して、何らかの動きはあるかもしれませんが、いきなり武を以て琉球を征伐するようなことはないかと存じます」
「官兵衛殿、然りとて明国との戦は避けなければなりませぬ。如何なる拠り所にて、戦にならぬと言い切るのですか」
直家は自分の考えとすり合わせるかのように官兵衛に確認をしたが、官兵衛はその問いに対して冷静な表情で答える。
「宇喜多殿のご指摘、誠にごもっとも。明との戦はないと言い閉ぢむ(断言する)訳ではありませぬが、彼の国がすぐさま武を以て、琉球に攻め入る恐れはないと考えまする」
官兵衛は地図上の明国を指さしながら続ける。
「現在の明は、北方の女真族や蒙古との国境問題に追われています。さらに海禁政策により彼らの海軍力は著しく衰えており、琉球のような遠き地に大がかりな兵を起こす余力はないかと存じます」
直家は腕を組み、深く考え込んだ様子で官兵衛に返す。
「うべなるかな(なるほど)。明との戦は避けるべきと考えておりましたが、実はそれがしの考えも官兵衛どのと同じにござる。明にとって琉球を攻めたところで、何の利もありませぬ。あるとすれば、冊封を止めればこうなるぞ、という見せしめくらいのものでしょう。然りとてそれが戦を起こすほどの故にはなりますまい」
純正は直家と官兵衛のやり取りを静かに聞いていたが、やがてゆっくりと息を吸い、口を開く。
「両名の考え、よく分かった。確かに明との戦の恐れはなさそうであるな。然れど油断は禁物である。琉球の冊封を受け入れることは、単なる形式以上の意味を持つ。これは東アジアの力の釣り合いを崩す一手となるやもしれぬ」
ふと、土居清良が発言を求めた。
「御屋形様、琉球を従わせる事で、台湾や呂宋の艦隊との携わりがより強まります。琉球は我が国の海上の備えの重き結び目となり、東支那海における我が国の海上交易路をより安全に保つことができるでしょう」
さらに続いて佐志方庄兵衛が続けて意見を述べる。
「加えて、琉球に我が国の進んだ造船技術や航海術を伝授することで、彼の国の海上の備えを強め、さらに両国の絆をより深めること能います。これは我が国の海洋戦略の大方(全体)を強める事となるでしょう」
「皆の考え、よく分かった。では、以下の方針で進めることとする」
純正は全員の意見をしっかり聞いて吟味し、その後決意を込めて言った。内容は以下の通りである。
一つ、琉球との冊封関係を確立し、我が国の影響下に置く。ただし、彼らの文化や伝統は最大限尊重する。
一つ、明との直接対立は避けつつ、琉球の独立性と我が国との関係強化の正当性を主張する。必要であれば、外交的な説明も行う。
一つ、琉球を我が国の海洋戦略の要として位置づけ、既存の防衛網との連携を強化する。同時に、我が国の技術を伝授し、琉球国の海事能力の向上を図る。
琉球国は小佐々家の海外領土とし、州ではなく(将来的には州)高山国(台湾)や呂宋国(フィリピン)と同じようにした。これはあくまでも帰属を願ってきたのが大日本国ではなく、小佐々家の肥前国であったからに他ならない。
次回 第709話 (仮)『瓶詰めの開発』
4
お気に入りに追加
155
あなたにおすすめの小説
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
【完結】悪役令嬢の断罪現場に居合わせた私が巻き込まれた悲劇
藍生蕗
ファンタジー
悪役令嬢と揶揄される公爵令嬢フィラデラが公の場で断罪……されている。
トリアは会場の端でその様を傍観していたが、何故か急に自分の名前が出てきた事に動揺し、思わず返事をしてしまう。
会場が注目する中、聞かれる事に答える度に場の空気は悪くなって行って……
別に構いませんよ、離縁するので。
杉本凪咲
恋愛
父親から告げられたのは「出ていけ」という冷たい言葉。
他の家族もそれに賛同しているようで、どうやら私は捨てられてしまうらしい。
まあいいですけどね。私はこっそりと笑顔を浮かべた。
【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する
土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。
異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。
その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。
心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。
※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。
前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。
主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。
小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。
公爵令嬢はアホ係から卒業する
依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」
婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。
そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。
いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?
何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。
エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。
彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。
*『小説家になろう』でも公開しています。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。
しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹
そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる
もう限界がきた私はあることを決心するのだった
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる