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天下一統して大日本国となる。-天下百年の計?-
第706話 『一応の決着。その後の新政府会議』
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天正十二年三月五日(1583/4/26) 肥前国庁舎
数度による肥前国内での協議の上で、大日本国新政府の会議に臨む純正であったが、いくつもの懸念があった。
・越後奥州問題
・財政問題
・大日本国憲法への批准
参加大名は小佐々純正、織田信長、武田勝頼、徳川家康、浅井長政、畠山義慶、里見義重(正木憲時)、大宝寺義氏の八名だ。氏直は謹慎中である。
「では方々、此度は上記の三点について論じたいが、まずは越後と奥州である。如何にすればよいかお考えを伺いたい」
最初に発言したのは信長であった。力強く堂々としている。
「越後と奥州の儀は、我ら大方に関わる重き儀である」
そう前置きして続けた。
「まず上杉景勝が独り立ちを続く事で、我ら新政府の権が揺らぐ。これを放りたるままではいかぬ。景勝を説いて新政府に予参さすべきかと存ずる。また、もし拒むならば、武を以て制する覚悟も要るかと存ずる」
強気な信長であるが、それは新政府軍として討伐すべきというのだろうか。大同盟の時は兵や資金の提供の度合いによって得られる利益が決まるため、結局小佐々の独り勝ちであった。
新政府としてならば、前提から違う。
国として新政府軍を動かすなら、実質は小佐々軍である。そして結局、新政府の領土となるが、運営は小佐々家だ。
正直なところ、小佐々以外の州にはまったくメリットはない。関心すらないかもしれない。それでもなぜ信長は主張したのだろうか。なにか考えがあってなのだろうか。
信長の発言を受け、広間には一瞬の静寂が訪れた。それぞれの大名(州政府代表・国会議員)が思考を巡らせる中、小佐々純正が軽く咳払いをして、次の発言者を促した。
「他の方のお考えは如何か? 続いてお伺いしたい」
家康が次に口を開く。
「中将殿の考えに同じます。されど兵を用うるは避けるべきにて、外交の手を尽くし、景勝を説くべきと存じます。新政府へ与する事の利を説き、共に栄える先(将来)を考えさすべきかと存じます」
勝頼は家康に賛成し、武力行使は最後の手段だと述べたが、長政は反対した。戦による犠牲を考慮し、経済制裁を提案したのだ。義慶も同様で、戦を避けつつ経済制裁で参画を促す方法である。
里見義重も慎重派であり、奥州の大宝寺義氏は、武力行使には最後まで反対した。
結局、その後も様々な意見がでたが、以下の折衷案で話がまとまる事となった。
・新政府参加の打診を続けるという事。
・越後、奥州の各大名が互いに戦をしない事を約束させること。
・もし互いに戦になったなら、勅命を以て征伐する。
小佐々州議会(肥前国会議)で議論された⑤の独立路線が、意外にも他の大名の賛同を得たのだ。
正直なところ全員自分の所で精一杯で、越後や奥州の所まで手が回らないのだろう。上杉が新政府に加盟し、奥州の諸大名も加盟したなら、今でさえ苦しい負担金が、さらに増える事になる。
「では、越後と奥州に関しては、いましばらくこのまま、と言う事でよろしいかな」
「異議なし」
満場一致で可決された。
「では次に、方々の負担金についてでありますが、その前にこの新政府の大枠について論じたいと考えております」
純正は全員を見回し、事前に作成してあった新政府憲法(小佐々法度改め、かなり追加修正を加えた物)を配布した。そしてまず初めに、立憲連邦制について発議したのだ。
立憲連邦制というと仰々しいが、要するに憲法を定め、それに基づいて統治をするという考え方である。ただしこれについては設立当初から言われてきた事であるし、特に問題はなかった。
少し違和感があったのが三権分立だろう。
そもそも三権分立とはなんぞや? という事である。日本社会では、立法・司法・行政が一本化していて、いわゆる代官所や奉行所(名称はまちまち)がその全てを行っていたのだ。
「三権分立とはつぶさには如何なるものか?」
信長が最初に問うと、純正が一同の視線を受けながら説明を続ける。
「三権分立とは、政府の権を立法、行政、司法の三つに分け、それぞれを独り立ちさせて働かせるという仕組みにござる。立法は法を定める議会、この評定のようなもの。行政は法を施行するいわゆる官府たる内閣。司法は検非違使や問注所のようなものにござろうか」
……。
一同がざわつく。無理もない。この概念は戦国時代の大名たちにとって全く馴染みがないのだろう。全員が大なり小なり困惑した表情を浮かべている。
「内府殿にお伺いしたい。何ゆえ三つに分ける要があるのでござろうか。古来この日ノ本では評定衆しかり、幕府の奉行所しかり、すべて一箇所に集約しておりましたが」
徳川家康が慎重に問いかけた。一同がうなずく。信長は純正の顔を見ながら、その返答を待っている。
「然に候。然れど、三権の分立の利は、権を一所に集めるを防ぎ、三所が互に目を付けあい、釣り合いを保つことにございます。権が一つに集まればそれを濫りに使い、賄賂の温床と成りやすうございましょう。よって三つに分ければより公で誰にでも解りやすい政が為せると存じます」
純正は一同の視線を受け止め、静かに説明をした。
……。
「……然れど、それが如何に我らの利となるのでござろうか。勝手向き(財政)が良くなる訳でもなく、入米(歳入)が増える訳でもない。かえって乱れの元になりはしませぬか?」
「然様。それよりも如何に入米を増やし、勝手向きを良くして国を富ます言問が重しかと存じますが、如何でござろうか」
勝頼の発言に長政が続いた。
無理もない反応である。ここは議論をせずに、徐々に変えていくべきだろうか。純正は静かに深呼吸し、大名たちの視線を一身に受けながら、さらに説明を続けることにした。
「確かに、入米や勝手向きの話は重しにございましょう。然れど入米にしろ勝手向きにしろ、民あっての事にございます。長い目で見ればこれが民の信を勝ち取り、国を豊かにするのです」
純正はゆっくりと、じっくり説明をするが、やはり概念としてなじみがないのだろう。
今でも組織上は立法・司法・行政が分かれてはいる。同じ人間が兼務することがないようにすれば、ひとまずは良いだろうか。理由としては業務の煩雑化やオーバーワークを挙げておけばいいだろう。
そう純正は考え、概念云々の話をするのではなく、単なる業務上の事で話をまとめ切り上げた。それに確かに、財政の問題は吃緊の課題だったのだ。
「方々、それでは次に、新政府の勝手向きについて論じたいと存じます」
純正は一番重要で全員の関心事であろう税の話を切り出した。
「まずは各州の年貢は一律四公六民とします。これは新政府が発足した初めからの決まりとなりますので、変わりありませぬ。加えて冥加金は都度徴収されておるところもあると存じますが、これを年貢と同じく毎年とします」
別段問題はない。
「その後、年貢と運上の四割を政府にいただきたい」
万座がざわついた。それもそのはず、これまでは何らかの公共事業に対しての負担金の拠出で済んでいたものが、有無を言わさず徴収されるのだ。
「そ、それは、あまりにも無体ではありませぬか? 我らから四割もお取りになるとは」
次回 第707話 (仮)『財政と琉球領土編入問題』
数度による肥前国内での協議の上で、大日本国新政府の会議に臨む純正であったが、いくつもの懸念があった。
・越後奥州問題
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・大日本国憲法への批准
参加大名は小佐々純正、織田信長、武田勝頼、徳川家康、浅井長政、畠山義慶、里見義重(正木憲時)、大宝寺義氏の八名だ。氏直は謹慎中である。
「では方々、此度は上記の三点について論じたいが、まずは越後と奥州である。如何にすればよいかお考えを伺いたい」
最初に発言したのは信長であった。力強く堂々としている。
「越後と奥州の儀は、我ら大方に関わる重き儀である」
そう前置きして続けた。
「まず上杉景勝が独り立ちを続く事で、我ら新政府の権が揺らぐ。これを放りたるままではいかぬ。景勝を説いて新政府に予参さすべきかと存ずる。また、もし拒むならば、武を以て制する覚悟も要るかと存ずる」
強気な信長であるが、それは新政府軍として討伐すべきというのだろうか。大同盟の時は兵や資金の提供の度合いによって得られる利益が決まるため、結局小佐々の独り勝ちであった。
新政府としてならば、前提から違う。
国として新政府軍を動かすなら、実質は小佐々軍である。そして結局、新政府の領土となるが、運営は小佐々家だ。
正直なところ、小佐々以外の州にはまったくメリットはない。関心すらないかもしれない。それでもなぜ信長は主張したのだろうか。なにか考えがあってなのだろうか。
信長の発言を受け、広間には一瞬の静寂が訪れた。それぞれの大名(州政府代表・国会議員)が思考を巡らせる中、小佐々純正が軽く咳払いをして、次の発言者を促した。
「他の方のお考えは如何か? 続いてお伺いしたい」
家康が次に口を開く。
「中将殿の考えに同じます。されど兵を用うるは避けるべきにて、外交の手を尽くし、景勝を説くべきと存じます。新政府へ与する事の利を説き、共に栄える先(将来)を考えさすべきかと存じます」
勝頼は家康に賛成し、武力行使は最後の手段だと述べたが、長政は反対した。戦による犠牲を考慮し、経済制裁を提案したのだ。義慶も同様で、戦を避けつつ経済制裁で参画を促す方法である。
里見義重も慎重派であり、奥州の大宝寺義氏は、武力行使には最後まで反対した。
結局、その後も様々な意見がでたが、以下の折衷案で話がまとまる事となった。
・新政府参加の打診を続けるという事。
・越後、奥州の各大名が互いに戦をしない事を約束させること。
・もし互いに戦になったなら、勅命を以て征伐する。
小佐々州議会(肥前国会議)で議論された⑤の独立路線が、意外にも他の大名の賛同を得たのだ。
正直なところ全員自分の所で精一杯で、越後や奥州の所まで手が回らないのだろう。上杉が新政府に加盟し、奥州の諸大名も加盟したなら、今でさえ苦しい負担金が、さらに増える事になる。
「では、越後と奥州に関しては、いましばらくこのまま、と言う事でよろしいかな」
「異議なし」
満場一致で可決された。
「では次に、方々の負担金についてでありますが、その前にこの新政府の大枠について論じたいと考えております」
純正は全員を見回し、事前に作成してあった新政府憲法(小佐々法度改め、かなり追加修正を加えた物)を配布した。そしてまず初めに、立憲連邦制について発議したのだ。
立憲連邦制というと仰々しいが、要するに憲法を定め、それに基づいて統治をするという考え方である。ただしこれについては設立当初から言われてきた事であるし、特に問題はなかった。
少し違和感があったのが三権分立だろう。
そもそも三権分立とはなんぞや? という事である。日本社会では、立法・司法・行政が一本化していて、いわゆる代官所や奉行所(名称はまちまち)がその全てを行っていたのだ。
「三権分立とはつぶさには如何なるものか?」
信長が最初に問うと、純正が一同の視線を受けながら説明を続ける。
「三権分立とは、政府の権を立法、行政、司法の三つに分け、それぞれを独り立ちさせて働かせるという仕組みにござる。立法は法を定める議会、この評定のようなもの。行政は法を施行するいわゆる官府たる内閣。司法は検非違使や問注所のようなものにござろうか」
……。
一同がざわつく。無理もない。この概念は戦国時代の大名たちにとって全く馴染みがないのだろう。全員が大なり小なり困惑した表情を浮かべている。
「内府殿にお伺いしたい。何ゆえ三つに分ける要があるのでござろうか。古来この日ノ本では評定衆しかり、幕府の奉行所しかり、すべて一箇所に集約しておりましたが」
徳川家康が慎重に問いかけた。一同がうなずく。信長は純正の顔を見ながら、その返答を待っている。
「然に候。然れど、三権の分立の利は、権を一所に集めるを防ぎ、三所が互に目を付けあい、釣り合いを保つことにございます。権が一つに集まればそれを濫りに使い、賄賂の温床と成りやすうございましょう。よって三つに分ければより公で誰にでも解りやすい政が為せると存じます」
純正は一同の視線を受け止め、静かに説明をした。
……。
「……然れど、それが如何に我らの利となるのでござろうか。勝手向き(財政)が良くなる訳でもなく、入米(歳入)が増える訳でもない。かえって乱れの元になりはしませぬか?」
「然様。それよりも如何に入米を増やし、勝手向きを良くして国を富ます言問が重しかと存じますが、如何でござろうか」
勝頼の発言に長政が続いた。
無理もない反応である。ここは議論をせずに、徐々に変えていくべきだろうか。純正は静かに深呼吸し、大名たちの視線を一身に受けながら、さらに説明を続けることにした。
「確かに、入米や勝手向きの話は重しにございましょう。然れど入米にしろ勝手向きにしろ、民あっての事にございます。長い目で見ればこれが民の信を勝ち取り、国を豊かにするのです」
純正はゆっくりと、じっくり説明をするが、やはり概念としてなじみがないのだろう。
今でも組織上は立法・司法・行政が分かれてはいる。同じ人間が兼務することがないようにすれば、ひとまずは良いだろうか。理由としては業務の煩雑化やオーバーワークを挙げておけばいいだろう。
そう純正は考え、概念云々の話をするのではなく、単なる業務上の事で話をまとめ切り上げた。それに確かに、財政の問題は吃緊の課題だったのだ。
「方々、それでは次に、新政府の勝手向きについて論じたいと存じます」
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別段問題はない。
「その後、年貢と運上の四割を政府にいただきたい」
万座がざわついた。それもそのはず、これまでは何らかの公共事業に対しての負担金の拠出で済んでいたものが、有無を言わさず徴収されるのだ。
「そ、それは、あまりにも無体ではありませぬか? 我らから四割もお取りになるとは」
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