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天下一統して大日本国となる。-天下百年の計?-
第697話 『本能寺の変』(1582/6/21)
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天正十一年六月二日(1582/6/21) 京都大使館
織田信長をはじめとした旧来の新政府の面々に加え、北条からの使者を諫早に迎える事が出来たのは大きかった。氏規も江雪斎も小佐々の国力と軍事力に度肝を抜かれ、すっかり新政府の一員としての考えに感化されて帰って行ったのだ。
「あー疲れた!」
「諫早に帰ったんだ、疲れるも何もなかろう」
純久は諫早帰りの純正のだらけきった有り様に呆れて溜息をつきながら言った。叔父である純久の前だけで見せる、だらけモードの純正である。
「いやあ、20年たってもこればっかりは肩が凝るね。根が平民も平民だからね~」
「20年とは……もうそんなに経つか」
叔父である純久には、自分と父親が未来からの転生者だという事を知らせてある。その為、以前にも増してぶっちゃけトークができるのだ。
「あの頃は叔父さんも凜とした若武者だったのに、おっさんになったねえ……」
「やかましい。それを言うならお主も、可愛らしい童がふてぶてしい大人になったではないか」
あははははは、と二人して笑う。
「申し上げます!」
大使館の職員がけたたましい声を上げて入ってきた。
「何事か!」
「は! 左近衛中将様、本能寺にて何者かに襲われましてございます!」
「「何い! ?」」
二人は顔を見合わせて驚愕の表情を浮かべた。
「つぶさに報せよ!」
純久が厳しい口調で命じると、職員は息を整えながら続けた。
「本能寺にて中将様(信長)が襲われ、手負いの程は重けれど、命に別状はなしとの事にございます!」
「それは、まずは良し! されど刑部(京都独立旅団長)は何をしておったのだ! 京の警固は要人の警固であろうが!」
職員は恐縮して続ける。
「それが……刑部様は中将様をはじめ、新政府の議員の方々の警固は特に構えて(注意)おられたのですが、中将様が要らぬと仰せにて、警固を解いたようにございます。中将様のお付きの者も少なき人数だった由にてかような仕儀に」
職員の報告に純正は腹立たしく呟く。
「あのおっさん……こんな時に傾くなよ。立場考えろって……」
純正は頭をかいた。
「それで、中将様はご無事なのだな? 賊は如何した?」
純久の矢継ぎ早な質問に職員が答える。
「は、中将様は只今療養しておられます。賊は数名捕らえましたが、全てではありませぬ。京の市中(町中)は乱れており、急ぎ備えを強める事が肝要かと存じます」
「うべな(なるほど)。ともかく、中将様がご無事であることは幸いだ。然れど斯様な目(事態)を招いたことは由々しき事である」
純久は厳しい表情を浮かべながら言った。
「平九郎よ、速やかに処さねばならぬ。市中を安んじなければ、何が新政府かと、民心を惑わす事になる」
純正は頷き、即座に行動に移る決意を固めた。
「わかってる。中将殿は無論の事、新政府への影響を最小限に抑えなければならない」
「よし、この機に我らの力を示し、信を得ることが急務だ」
純久は職員に向かって再度指示を出した。
「刑部に伝令! 丹波・近江・伊賀・大和・河内・摂津への街道すべてを塞ぎ、賊を出す出ないぞ。怪しい者は捕らえよ! 中将様の無事を確かめ、警固を強めるのだ」
「はっ!」
職員が退出すると、純久は深く息をつき、平九郎に向かって言った。
「これからが正念場だ。覆水盆に還らずだが、中将様が襲われた事で、新政府の礎が揺らぐ事があってはならぬ」
「さすが叔父さんだね。俺がいなくても大丈夫なんじゃね?」
「馬鹿たれ」
■数日後
「賊が全員捕まったそうですね」
「ああ。然れど首謀者の名は吐かぬ」
溜息とともに純久は続ける。
「連中は忠義を尽くしているのか、恐怖に怯えているのか、いずれにせよ、今少し刻がかかろう」
「心当たりは?」
「無きにしも非ずだが、お主もあるのではないか?」
今度は純正がふう、と息を吐いて言う。
「大方、六角や松永、本願寺の息のかかっていた連中の仕業では? 奴ら俺や中将殿、いや幾内は中将殿の方が多いか。逆恨みしていたとしてもおかしくはない」
「そうやも知れぬ。まったく、逆恨みにしても何年憾むのだ? 本願寺も松永も八年前、六角に至っては更にその前ではないか。そんな暇があるなら職を探して生きろというのだ」
純久は純正に同意しつつ、賊の真意がわからなかった。
純正の統治、新政府の統治は間違いなく領民のためになっているはずだ。良い物が安く手に入るようになり、街道や海岸、通信設備などの公共事業も行って雇用を促進している。
よって、働けない、職がないというのは考えにくい。それなのに未だに反抗するという事は、純正や信長、新政府の恩恵を認めたくはない、という事なのだろう。
純正や信長に敗れた大名に仕えていた頃の、在りし日の栄耀栄華が忘れられず、あの時は良かった、純正がいなければ、信長がいなければ……という思いが恨み辛みとなって吹き出したのだろうか?
「動機がどうあれ、首謀者がどうあれ、明らかにせねばならぬ。明らかにして厳罰を与えねば、新政府たりえぬ」
「そうですね……ああそれから、中将殿は元気にしてらっしゃいましたよ」
「見舞いに行ったのか? わしも行ったが、その時はまだ安静が要るとのことであったが」
「ええ。俺に対して軽口をたたけるくらいには回復してました」
純久は安堵の表情を見せた。
「それは良い知らせだ。中将様が息災ならば、我らも心強い。だが、今後も油断は禁物だ。京の治安を回復し、再びこのような事態が起こらぬようにせねばならん」
「そうだね」
まったく、テロかよ。と一連の騒動を振り返って思った純正であったが、戦争のない日本でも政治家を狙ったテロが起きている。この時代は暗殺など日常茶飯事なのだ。
次回 第698話 (仮)『力による現状変更と海上保険と貿易会社』
織田信長をはじめとした旧来の新政府の面々に加え、北条からの使者を諫早に迎える事が出来たのは大きかった。氏規も江雪斎も小佐々の国力と軍事力に度肝を抜かれ、すっかり新政府の一員としての考えに感化されて帰って行ったのだ。
「あー疲れた!」
「諫早に帰ったんだ、疲れるも何もなかろう」
純久は諫早帰りの純正のだらけきった有り様に呆れて溜息をつきながら言った。叔父である純久の前だけで見せる、だらけモードの純正である。
「いやあ、20年たってもこればっかりは肩が凝るね。根が平民も平民だからね~」
「20年とは……もうそんなに経つか」
叔父である純久には、自分と父親が未来からの転生者だという事を知らせてある。その為、以前にも増してぶっちゃけトークができるのだ。
「あの頃は叔父さんも凜とした若武者だったのに、おっさんになったねえ……」
「やかましい。それを言うならお主も、可愛らしい童がふてぶてしい大人になったではないか」
あははははは、と二人して笑う。
「申し上げます!」
大使館の職員がけたたましい声を上げて入ってきた。
「何事か!」
「は! 左近衛中将様、本能寺にて何者かに襲われましてございます!」
「「何い! ?」」
二人は顔を見合わせて驚愕の表情を浮かべた。
「つぶさに報せよ!」
純久が厳しい口調で命じると、職員は息を整えながら続けた。
「本能寺にて中将様(信長)が襲われ、手負いの程は重けれど、命に別状はなしとの事にございます!」
「それは、まずは良し! されど刑部(京都独立旅団長)は何をしておったのだ! 京の警固は要人の警固であろうが!」
職員は恐縮して続ける。
「それが……刑部様は中将様をはじめ、新政府の議員の方々の警固は特に構えて(注意)おられたのですが、中将様が要らぬと仰せにて、警固を解いたようにございます。中将様のお付きの者も少なき人数だった由にてかような仕儀に」
職員の報告に純正は腹立たしく呟く。
「あのおっさん……こんな時に傾くなよ。立場考えろって……」
純正は頭をかいた。
「それで、中将様はご無事なのだな? 賊は如何した?」
純久の矢継ぎ早な質問に職員が答える。
「は、中将様は只今療養しておられます。賊は数名捕らえましたが、全てではありませぬ。京の市中(町中)は乱れており、急ぎ備えを強める事が肝要かと存じます」
「うべな(なるほど)。ともかく、中将様がご無事であることは幸いだ。然れど斯様な目(事態)を招いたことは由々しき事である」
純久は厳しい表情を浮かべながら言った。
「平九郎よ、速やかに処さねばならぬ。市中を安んじなければ、何が新政府かと、民心を惑わす事になる」
純正は頷き、即座に行動に移る決意を固めた。
「わかってる。中将殿は無論の事、新政府への影響を最小限に抑えなければならない」
「よし、この機に我らの力を示し、信を得ることが急務だ」
純久は職員に向かって再度指示を出した。
「刑部に伝令! 丹波・近江・伊賀・大和・河内・摂津への街道すべてを塞ぎ、賊を出す出ないぞ。怪しい者は捕らえよ! 中将様の無事を確かめ、警固を強めるのだ」
「はっ!」
職員が退出すると、純久は深く息をつき、平九郎に向かって言った。
「これからが正念場だ。覆水盆に還らずだが、中将様が襲われた事で、新政府の礎が揺らぐ事があってはならぬ」
「さすが叔父さんだね。俺がいなくても大丈夫なんじゃね?」
「馬鹿たれ」
■数日後
「賊が全員捕まったそうですね」
「ああ。然れど首謀者の名は吐かぬ」
溜息とともに純久は続ける。
「連中は忠義を尽くしているのか、恐怖に怯えているのか、いずれにせよ、今少し刻がかかろう」
「心当たりは?」
「無きにしも非ずだが、お主もあるのではないか?」
今度は純正がふう、と息を吐いて言う。
「大方、六角や松永、本願寺の息のかかっていた連中の仕業では? 奴ら俺や中将殿、いや幾内は中将殿の方が多いか。逆恨みしていたとしてもおかしくはない」
「そうやも知れぬ。まったく、逆恨みにしても何年憾むのだ? 本願寺も松永も八年前、六角に至っては更にその前ではないか。そんな暇があるなら職を探して生きろというのだ」
純久は純正に同意しつつ、賊の真意がわからなかった。
純正の統治、新政府の統治は間違いなく領民のためになっているはずだ。良い物が安く手に入るようになり、街道や海岸、通信設備などの公共事業も行って雇用を促進している。
よって、働けない、職がないというのは考えにくい。それなのに未だに反抗するという事は、純正や信長、新政府の恩恵を認めたくはない、という事なのだろう。
純正や信長に敗れた大名に仕えていた頃の、在りし日の栄耀栄華が忘れられず、あの時は良かった、純正がいなければ、信長がいなければ……という思いが恨み辛みとなって吹き出したのだろうか?
「動機がどうあれ、首謀者がどうあれ、明らかにせねばならぬ。明らかにして厳罰を与えねば、新政府たりえぬ」
「そうですね……ああそれから、中将殿は元気にしてらっしゃいましたよ」
「見舞いに行ったのか? わしも行ったが、その時はまだ安静が要るとのことであったが」
「ええ。俺に対して軽口をたたけるくらいには回復してました」
純久は安堵の表情を見せた。
「それは良い知らせだ。中将様が息災ならば、我らも心強い。だが、今後も油断は禁物だ。京の治安を回復し、再びこのような事態が起こらぬようにせねばならん」
「そうだね」
まったく、テロかよ。と一連の騒動を振り返って思った純正であったが、戦争のない日本でも政治家を狙ったテロが起きている。この時代は暗殺など日常茶飯事なのだ。
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