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日ノ本未だ一統ならず-技術革新と内政の時、日本の内へ、外へ-
第695話 『花の大諫早』(1582/2/26)
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天正十一年二月四日(1582/2/26) 豊後府内
翌日、一行は駅馬車に乗り、陸路で諫早に向かう事となった。
「真や(そう言えば)、お主が岐阜に来ることはあっても、わしが赴く事はなかったの。これが初めてではないか?」
「然様にございますね」
そう信長は言いながら、周囲の風景に目をやった。府内の街中はもちろんの事、各都市を結ぶ街道もコンクリートで舗装され、張り巡らされた街道を駅馬車が何台も走っている。
13年前の永禄十一年に純正は初めて上洛し、岐阜城で信長と対面している。その時は大友を牽制し、余計な中央からの介入を防ぐためであった。
まさか信長を本拠地である諫早に招く日がこようとは。
「あの時のお主とは別人のようだな。これほどの栄えを築くとは見事だ」
「お褒めに与り光栄です。中将殿のお力添えがなければ、今のそれがしはありませぬ。無我夢中の十三年にございました」
信長は再び周囲を見渡し、満足げに微笑んだ。
「この町の栄えた有り様を目の当たりにして、まるで同じ日ノ本ではないようだ。信忠に聞いてはおったが、これが日ノ本の先の世かもしれぬな」
街道を進む駅馬車は、滑らかな道を力強く進んでいく。沿道には市が立ち、商人たちが商品を並べて売買している光景が広がっていた。街の人々も忙しそうに行き交い、その様子は活気に満ちている。
馬車の中で、信長は何度も驚きの声を上げた。
「これほどに街を栄えさせるには、計り知れない労があったのではないか」
純正は謙虚に微笑み、「皆の力を借りてこその至り(結果)にございます」と答える。
やがて駅馬車は日田に到着し、一行は温泉宿に宿を取ることにした。温泉の湯気が立ち上る中で、旅の疲れを癒すためにそれぞれが湯に浸かる。
「この温泉の湯は格別だ。まるで疲れが一瞬で溶けていくようだ」
翌朝、温泉宿を出発した一行は馬車鉄道に乗り換え、久留米へと向かう準備を整えた。馬車鉄道は駅馬車と同じく、純正と信長、氏規と江雪斎、そして既存のメンバーとに分かれて移動する。
全員がその先進的な技術に驚きを隠せない。馬車がレールの上を滑るように進む中、信長は感心して話しかけた。
「この仕組み、まるで風のように進むな。戦場で用いれば策の幅が大いに広がることだろう」
「それがしも、この仕組みの見所(見込み・可能性)には大いに心寄せて(期待して)おります。特に人と物の流れの無駄がなくなり申した」
浅井長政と武田勝頼は、馬車の窓から外の景色を見渡しながら会話を交わしている。
「左衛門佐(長政)殿、この技を我らの所領でも取り入れれば、民の暮らしがさらに豊かになるのではないか」
と勝頼が口を開いた。
「そうですな。これほどの仕組みならば、商いも盛んになり、民も豊かになりましょうが……」
「いかがなされた?」
「これだけの備え、いくら銭がかかるか分からぬ。見てくだされ。この道の上に敷かれた二本の棒を。しかも所々には鉄がふんだんに使われ、恐らくは弱きところを強めておるのでしょうが、かような技をいかにして導き入れようか」
長政は馬車鉄道の素晴らしさに感心し興味を覚えたが、簡単には導入できないだろうと考えたのだ。
「確かに銭はかかりましょう。然ればこその新政府ではありませぬか? まずは堺から京までの街道に馬車鉄道が引かれるでしょう。いや、大阪やもしれませぬな。次に都から中将殿の岐阜、そして安土のあたりから若狭を経て敦賀、次に安土から尾張清洲、浜松、駿府へと続きましょう。時はかかるかもしれませぬが、共に栄えんとするのが新政府ですからな」
長政は頷きながら答えた。
「……然様ですな、蔵人(蔵人所頭・勝頼)殿。銭ははかるが、先の世のために皆で担っていかねばならぬ」
徳川家康は畠山義慶と共に車窓からの風景を見つめ、その馬車鉄道の技術に驚きを隠せずに声を漏らした。
「能州(義慶)殿、この技を見て、我々も新たな見込み(可能性)に目を向けねばならぬと思うが、如何に?」
義慶は真剣な表情で頷いた。
「然様にございますね。権少将(家康)殿。これほどの新しき技があれば、我らの領内も新たな時を迎えることでしょう」
家康は信長と清洲同盟を結んでいた。長政は信長の義弟である。
信長が純正と同盟を結んだ事により、必然的に二人も純正と同盟を結ぶことになったのだが、技術の導入は随分と後になってからなのだ。
義慶が治める能登も、海運で栄えているとは言え、新政府のメンバーとしては後発であった。
北条氏規と家老の板部岡江雪斎は、新政府への加盟と北条家の存続の条件について話し合うために上洛したのだが、図らずも新政府の根幹たる小佐々家の領内の状況を見聞するべく、一行に加わったのであった。
「江雪斎。この技、わが北条家中にも導き入るる事能えば、如何ほどの利があろうか」
江雪斎は深く頭を下げて応じる。
「確かに、助五郎(氏規)様。我らとの差は一目了然(一目瞭然)でございます。然れどこの……人の営みに要る品や、何らかのもてなしを供す様々な行いを、これほど見事に産み、配り、費やす一連の流れは、間違いなく我らの領国を強く豊かに致しましょう」
馬車鉄道は鉄のレールの上を滑るように走り、車両自体が重い荷物をスムーズに運ぶことができる。
これにより、物流が大幅に改善され、人々の移動も迅速に行える。馬の力だけでなく、レールの工夫で効率的に進むこの技術は、戦国時代にはあり得ないものであった。
沿道には農民や商人が行き交い、冬の景色が広がっている。
田畑は休耕期に入り、雪がうっすらと積もった風景が広がる。道沿いの町々も、暖を取るための煙が立ち昇る家々が並び、活気に満ちている。その光景を目にしながら、氏邦と江雪斎だけでなく、新政府のメンバーも驚きの声を漏らす。
里見義重が静かに呟いた。
「この町の栄え様、まるで夢を見ているようだ」
久留米に到着した一行は、さらなる驚きに包まれる。久留米の町もまた、整然とした街並みと賑やかな商業地が広がっていたのだ。町の中心部には二階建ての建物が建ち並び、行き交う人々の数も多い。
「これほどの街を目の当たりにするとはな」
信長の言葉に純正は誇らしげに言う。
「中将殿、ここからさらに、船と同じ蒸気機関で動く乗り物に乗り換え、佐賀を経て諫早へと向かいます」
徳川家康は汽車に近づき、舐めるように眺めて言う。
「うべなるかな(なるほど)。船を走らせれば、陸もまた同じという事か」
「諫早に着いたら、もっとつぶさにその技の事を聞かせてもらおう」
信長の問いに純正はにこやかに答えた。
「ぜひとも、楽しみにしていてくだされ」
久留米を発った一行は佐賀を越え、鹿島を経て太良へ向かう。佐賀は純正の一門である龍造寺純家の居城であり、肥前では、いや、小佐々の領国のなかでは諫早の次に栄えていたのだ。
広大な平野を開拓し、コンクリートによる河川工事で筑後川を制して一大穀倉地帯になりつつあった。水運を用いて有明海から筑後川を経て博多に至る大交通網を構築していたからでもある。
「のどかよの」
幾内からは戦がなくなって久しい。
信長を含めた織田軍もスペイン戦には参加したものの、陸上の兵(陸軍)は加わっていない。松永弾正や本願寺顕如と争っていたのが昨日の事のようだ。
「然様ですね」
有明海沿いののどかな田園風景の中、汽車は諫早へと進む。
東に見えていた有明海の景色が終わり、長田村を過ぎた辺りから異変が起きた。もちろん、異変というのは純正以外の一行が見た、諫早城下に入るにつれて変わっていく景観である。
本明川の両岸にあった田園は姿を消し、多くの民家や商家が建ち並ぶ。賑やかな通りには行き交う人々の姿が溢れ、店々の看板の旗が風に揺れている。商人たちは元気に声を張り上げ、通行人を呼び込んでいた。
「これほど栄えているとは……」
信長はある程度予想していたが、予想の何倍も上である。
「これが諫早城下の有り様にございます。中将殿にお見せできる日が来て嬉しく思います」
一行が進むにつれて、さらに立派な建物が目に入ってきた。石造りの公共施設や立派な屋敷が建ち並び、街の整然とした景観が広がっている。
「このような街並み、我が岐阜でも見たことがない。これほどに栄えさせるには、如何ほどの労があったのか」
「全ては皆の助けによるものです。民が力を合わせ、共に築いてきたのです」
純正は答えた。
町の中心部に近づくと、広々とした広場があった。広場には噴水があり、その周りを囲むように市場が開かれていた。商人たちが商品を並べ、買い物客が賑やかに行き交っている。
その中心にそびえ立つのが、純正の居城諫早城である。
諫早城はその堂々たる姿で訪れる者を圧倒した。
城は高台に位置し、石垣は二重三重に重なり合い、堅牢な防備を誇っている。天守閣は空に向かってそびえ立ち、白壁が太陽の光を反射して眩しく輝く。
金箔がそこかしこにあしらわれて豪華さを際立たせ、繊細な彫刻が施された柱や梁は、職人たちの技術の粋を集めたものである。
天守閣の最上階からは、諫早城下の全景を一望でき、遠く有明海まで見渡すことができた。城内には、居住空間や会議室、兵器庫などが整然と配置されており、戦時の防備だけでなく、平時の行政機能も充実している事がわかる。
「これが諫早城か。これが、城なのか……」
「はい、中将殿。この城は我が領内の守りの要にございます」
信長が感嘆の声を漏らすと純正がにこやかに答えた。
「見事なものだ。これほどの城を築き上げるには、並々ならぬ労があったことであろう」
「皆の力を合わせて築いたものです。民が安心して暮らせるよう、これからもこの城を守り続けてまいります」
一行は諫早城内を巡り、その壮大さと精緻さに驚きの声を上げながら、各所を見学した。一行の目には、新たな時代の息吹と、純正の統治の力が感じられたのであった。
諫早城の見事さは心に深く刻まれ、新たな時代の到来を確信させたのだ。
次回 第696話 (仮)『冷蔵と冷凍に関する話』
翌日、一行は駅馬車に乗り、陸路で諫早に向かう事となった。
「真や(そう言えば)、お主が岐阜に来ることはあっても、わしが赴く事はなかったの。これが初めてではないか?」
「然様にございますね」
そう信長は言いながら、周囲の風景に目をやった。府内の街中はもちろんの事、各都市を結ぶ街道もコンクリートで舗装され、張り巡らされた街道を駅馬車が何台も走っている。
13年前の永禄十一年に純正は初めて上洛し、岐阜城で信長と対面している。その時は大友を牽制し、余計な中央からの介入を防ぐためであった。
まさか信長を本拠地である諫早に招く日がこようとは。
「あの時のお主とは別人のようだな。これほどの栄えを築くとは見事だ」
「お褒めに与り光栄です。中将殿のお力添えがなければ、今のそれがしはありませぬ。無我夢中の十三年にございました」
信長は再び周囲を見渡し、満足げに微笑んだ。
「この町の栄えた有り様を目の当たりにして、まるで同じ日ノ本ではないようだ。信忠に聞いてはおったが、これが日ノ本の先の世かもしれぬな」
街道を進む駅馬車は、滑らかな道を力強く進んでいく。沿道には市が立ち、商人たちが商品を並べて売買している光景が広がっていた。街の人々も忙しそうに行き交い、その様子は活気に満ちている。
馬車の中で、信長は何度も驚きの声を上げた。
「これほどに街を栄えさせるには、計り知れない労があったのではないか」
純正は謙虚に微笑み、「皆の力を借りてこその至り(結果)にございます」と答える。
やがて駅馬車は日田に到着し、一行は温泉宿に宿を取ることにした。温泉の湯気が立ち上る中で、旅の疲れを癒すためにそれぞれが湯に浸かる。
「この温泉の湯は格別だ。まるで疲れが一瞬で溶けていくようだ」
翌朝、温泉宿を出発した一行は馬車鉄道に乗り換え、久留米へと向かう準備を整えた。馬車鉄道は駅馬車と同じく、純正と信長、氏規と江雪斎、そして既存のメンバーとに分かれて移動する。
全員がその先進的な技術に驚きを隠せない。馬車がレールの上を滑るように進む中、信長は感心して話しかけた。
「この仕組み、まるで風のように進むな。戦場で用いれば策の幅が大いに広がることだろう」
「それがしも、この仕組みの見所(見込み・可能性)には大いに心寄せて(期待して)おります。特に人と物の流れの無駄がなくなり申した」
浅井長政と武田勝頼は、馬車の窓から外の景色を見渡しながら会話を交わしている。
「左衛門佐(長政)殿、この技を我らの所領でも取り入れれば、民の暮らしがさらに豊かになるのではないか」
と勝頼が口を開いた。
「そうですな。これほどの仕組みならば、商いも盛んになり、民も豊かになりましょうが……」
「いかがなされた?」
「これだけの備え、いくら銭がかかるか分からぬ。見てくだされ。この道の上に敷かれた二本の棒を。しかも所々には鉄がふんだんに使われ、恐らくは弱きところを強めておるのでしょうが、かような技をいかにして導き入れようか」
長政は馬車鉄道の素晴らしさに感心し興味を覚えたが、簡単には導入できないだろうと考えたのだ。
「確かに銭はかかりましょう。然ればこその新政府ではありませぬか? まずは堺から京までの街道に馬車鉄道が引かれるでしょう。いや、大阪やもしれませぬな。次に都から中将殿の岐阜、そして安土のあたりから若狭を経て敦賀、次に安土から尾張清洲、浜松、駿府へと続きましょう。時はかかるかもしれませぬが、共に栄えんとするのが新政府ですからな」
長政は頷きながら答えた。
「……然様ですな、蔵人(蔵人所頭・勝頼)殿。銭ははかるが、先の世のために皆で担っていかねばならぬ」
徳川家康は畠山義慶と共に車窓からの風景を見つめ、その馬車鉄道の技術に驚きを隠せずに声を漏らした。
「能州(義慶)殿、この技を見て、我々も新たな見込み(可能性)に目を向けねばならぬと思うが、如何に?」
義慶は真剣な表情で頷いた。
「然様にございますね。権少将(家康)殿。これほどの新しき技があれば、我らの領内も新たな時を迎えることでしょう」
家康は信長と清洲同盟を結んでいた。長政は信長の義弟である。
信長が純正と同盟を結んだ事により、必然的に二人も純正と同盟を結ぶことになったのだが、技術の導入は随分と後になってからなのだ。
義慶が治める能登も、海運で栄えているとは言え、新政府のメンバーとしては後発であった。
北条氏規と家老の板部岡江雪斎は、新政府への加盟と北条家の存続の条件について話し合うために上洛したのだが、図らずも新政府の根幹たる小佐々家の領内の状況を見聞するべく、一行に加わったのであった。
「江雪斎。この技、わが北条家中にも導き入るる事能えば、如何ほどの利があろうか」
江雪斎は深く頭を下げて応じる。
「確かに、助五郎(氏規)様。我らとの差は一目了然(一目瞭然)でございます。然れどこの……人の営みに要る品や、何らかのもてなしを供す様々な行いを、これほど見事に産み、配り、費やす一連の流れは、間違いなく我らの領国を強く豊かに致しましょう」
馬車鉄道は鉄のレールの上を滑るように走り、車両自体が重い荷物をスムーズに運ぶことができる。
これにより、物流が大幅に改善され、人々の移動も迅速に行える。馬の力だけでなく、レールの工夫で効率的に進むこの技術は、戦国時代にはあり得ないものであった。
沿道には農民や商人が行き交い、冬の景色が広がっている。
田畑は休耕期に入り、雪がうっすらと積もった風景が広がる。道沿いの町々も、暖を取るための煙が立ち昇る家々が並び、活気に満ちている。その光景を目にしながら、氏邦と江雪斎だけでなく、新政府のメンバーも驚きの声を漏らす。
里見義重が静かに呟いた。
「この町の栄え様、まるで夢を見ているようだ」
久留米に到着した一行は、さらなる驚きに包まれる。久留米の町もまた、整然とした街並みと賑やかな商業地が広がっていたのだ。町の中心部には二階建ての建物が建ち並び、行き交う人々の数も多い。
「これほどの街を目の当たりにするとはな」
信長の言葉に純正は誇らしげに言う。
「中将殿、ここからさらに、船と同じ蒸気機関で動く乗り物に乗り換え、佐賀を経て諫早へと向かいます」
徳川家康は汽車に近づき、舐めるように眺めて言う。
「うべなるかな(なるほど)。船を走らせれば、陸もまた同じという事か」
「諫早に着いたら、もっとつぶさにその技の事を聞かせてもらおう」
信長の問いに純正はにこやかに答えた。
「ぜひとも、楽しみにしていてくだされ」
久留米を発った一行は佐賀を越え、鹿島を経て太良へ向かう。佐賀は純正の一門である龍造寺純家の居城であり、肥前では、いや、小佐々の領国のなかでは諫早の次に栄えていたのだ。
広大な平野を開拓し、コンクリートによる河川工事で筑後川を制して一大穀倉地帯になりつつあった。水運を用いて有明海から筑後川を経て博多に至る大交通網を構築していたからでもある。
「のどかよの」
幾内からは戦がなくなって久しい。
信長を含めた織田軍もスペイン戦には参加したものの、陸上の兵(陸軍)は加わっていない。松永弾正や本願寺顕如と争っていたのが昨日の事のようだ。
「然様ですね」
有明海沿いののどかな田園風景の中、汽車は諫早へと進む。
東に見えていた有明海の景色が終わり、長田村を過ぎた辺りから異変が起きた。もちろん、異変というのは純正以外の一行が見た、諫早城下に入るにつれて変わっていく景観である。
本明川の両岸にあった田園は姿を消し、多くの民家や商家が建ち並ぶ。賑やかな通りには行き交う人々の姿が溢れ、店々の看板の旗が風に揺れている。商人たちは元気に声を張り上げ、通行人を呼び込んでいた。
「これほど栄えているとは……」
信長はある程度予想していたが、予想の何倍も上である。
「これが諫早城下の有り様にございます。中将殿にお見せできる日が来て嬉しく思います」
一行が進むにつれて、さらに立派な建物が目に入ってきた。石造りの公共施設や立派な屋敷が建ち並び、街の整然とした景観が広がっている。
「このような街並み、我が岐阜でも見たことがない。これほどに栄えさせるには、如何ほどの労があったのか」
「全ては皆の助けによるものです。民が力を合わせ、共に築いてきたのです」
純正は答えた。
町の中心部に近づくと、広々とした広場があった。広場には噴水があり、その周りを囲むように市場が開かれていた。商人たちが商品を並べ、買い物客が賑やかに行き交っている。
その中心にそびえ立つのが、純正の居城諫早城である。
諫早城はその堂々たる姿で訪れる者を圧倒した。
城は高台に位置し、石垣は二重三重に重なり合い、堅牢な防備を誇っている。天守閣は空に向かってそびえ立ち、白壁が太陽の光を反射して眩しく輝く。
金箔がそこかしこにあしらわれて豪華さを際立たせ、繊細な彫刻が施された柱や梁は、職人たちの技術の粋を集めたものである。
天守閣の最上階からは、諫早城下の全景を一望でき、遠く有明海まで見渡すことができた。城内には、居住空間や会議室、兵器庫などが整然と配置されており、戦時の防備だけでなく、平時の行政機能も充実している事がわかる。
「これが諫早城か。これが、城なのか……」
「はい、中将殿。この城は我が領内の守りの要にございます」
信長が感嘆の声を漏らすと純正がにこやかに答えた。
「見事なものだ。これほどの城を築き上げるには、並々ならぬ労があったことであろう」
「皆の力を合わせて築いたものです。民が安心して暮らせるよう、これからもこの城を守り続けてまいります」
一行は諫早城内を巡り、その壮大さと精緻さに驚きの声を上げながら、各所を見学した。一行の目には、新たな時代の息吹と、純正の統治の力が感じられたのであった。
諫早城の見事さは心に深く刻まれ、新たな時代の到来を確信させたのだ。
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