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日ノ本未だ一統ならず-技術革新と内政の時、日本の内へ、外へ-
第685話 『大日本政府、初年度予算(負担金)と電池』(1581/1/4)
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天正九年十一月二十九日(1581/1/4) 肥前国 純アルメイダ大学 医学部研究室
東玄甫は解剖台の上のカエルに向かって立っていた。手に持っているメスの1本は切断用、もう1本は固定用だ。カエルの足を慎重に切り開き、筋肉を露出させる。
人体解剖はいわゆる腑分けによってされていたが、そう毎回毎回できるわけではない。以前から感じていた違和感を確かめるために実験しているのだ。
「おや? ……うん。やはりこれは偶然ではない」
2本のメスをカエルの足に差し入れた瞬間、切断されたカエルの足が、まるで生きているかのように痙攣したのだ。玄甫は目を見張り、メスを動かすたびに足が震えるのを観察した。
頭の中では疑問が渦巻いていた。
「これは一体どういうことだろう? 死んだカエルの筋肉が動くなんて……」
東玄甫は医者であり、生物学の知識は豊富だったが、物理学については詳しくなかった。しかし同僚であり先輩でもある物理学者の忠右衛門から、電気という概念について聞いたことがあったのだ。
玄甫はこの現象が電気に関係しているのではないかと考えた。
「忠右衛門様に相談してみよう」
そう思い、忠右衛門を訪ねることにした。
電気の研究をしていた忠右衛門は、何もしていないのに筋肉が動くという玄甫の観察に興味を示し、一緒に実験を行うことになったのだが、やはり金属のメスが筋肉に触れる度に足が収縮したのだ。
……。
「これは今わしが研究している電気による仕業かもしれぬ」
忠右衛門は、これが電気的な現象である可能性を指摘した。
その後玄甫は忠右衛門の助言を受け、更なる実験を重ねる。仮に筋肉内に電気が存在し、生命活動に関わっているとすれば、これは革命的な発見なのだ。
数日後、忠右衛門は興奮した様子で玄甫のもとを訪れた。
「玄甫! わしは電気を生む術を見いだしたぞ!」
純正はいま京都である。報告より先に、まず発見の発端となった玄甫のところを訪れたのだ。忠右衛門は2種類の金属板を塩水に浸した紙で挟み、それらを重ねて積み上げた装置を見せた。
「これは電堆と呼ぶことにした。亜鉛と銅の板を交互に積み重ね、その間に塩水を含ませた紙を挟んでいるのだ」
玄甫は驚きと興味を隠せずにいた。これが先日実験したものと同じなら、人体でも同じ事が起きているということなのか?
「それで、電気が発生するのですか?」
忠右衛門は頷き、2つの金属板をつなぐと、電流が流れることを示した。
「この電堆は、カエルの筋肉に触れさせなくても電気を発生させることができる。つまり、電気は動物の体内だけでなく、金属と塩水からも生み出せるのだ」
「なるほど! これはすごい!」
自然界で起きていることが、我々の人体で起きている。おお、なんと人体の奥深き事よ……。玄甫は興奮がさめやらない。
「これは前代未聞の発見でございますぞ! 人体にある電気と、金属と塩水から生まれる電気が同じものだとしたら、これは、治療にも使えるかも知れません!」
2人は興奮しながら、電堆の可能性について議論する。
その後忠右衛門は、電堆を改良し、より強力で安定した電流を得るための実験を重ねた。一方東玄甫は、生物電気の研究を続け、電気が生命現象にどのように関わっているのかを解明しようと努めたのであった。
■大同盟合議所
「さて、此度は各家中の負担金の分(割合)を決めていこうと存ずる。まずは石高によって分を決めていくのが良いかと存ずるが如何でござろうか?」
純正は大名を前にして、基本的な割合を石高によって決めようとしたが、ここで一つ問題があった。度量衡である。これを統一しなければ、各大名間で不公平が起きてしまう。
純正は大名たちの前で話を続けた。
「されど石高を則(基準)とするには、まず度量衡をひとつにすることが肝要にござる。それぞれの御家中で異なる測り方をすれば、公(公平)な負担金の算出において障りとなりまする。このため、度量衡を一つに統べるべきかと存ずる」
大名たちは顔を見合わせ、小声で意見を交わした後、家康が口を開いた。
「確かに、定めし度量衡がなければ、公な則とは言えませぬ。されど、如何様にしてまとめるかが障りとなりましょう。各地の測り方は長年にわたって用いられてきたものであり、いきなり変えるは騒動の元となりましょう」
純正は頷きながら答えた。
「仰せの通りにござる。そこで案を提じとうございます。まず各地の則をつぶさに調べ、その上で公の則を策定することです。その則に基づき、各地の石高を再び算用(計算)いたし、公なる(公平な)負担金の分を定めまする」
純正の意見にうなずき、考え、隣と相談する大名の中で、長政が発言した。
「されど、さような検分にはかなりの時が要るかと存じます。その間に急を要する費えが生じた時は、いかに処すかも考えなければなりませぬ」
純正は微笑みを浮かべながら返答した。想定問答集だ。
「ご案じめさるな。左様なときは暫しの間いまの石高を則として、臨時の負担金を設けましょう。その間に調べを進め、則が定められた時に帳尻を整える事といたします」
「うむ。わしは内府殿の案には賛成じゃ。方々は如何にござろうか? 障りがなければ、よろしいのではござらぬか? 然りながら調べを進めるにあたっては、我らの考えも容れながら、でお願いいたそう」
信長だ。
「むろんにございます」
こうして、度量衡の統一と石高の再計算に向けた新政府の協議は一歩前進した。
・小佐々家 52.89%
・織田家 29.09%
・武田家 8.29%
・徳川家 3.21%
・里見家 2.68%
・浅井家 2.07%
・畠山家 1.34%
・大宝寺家 0.44%
全ての家中が海運による利益を得ていた。特に日本海側の海運は栄えていたと思われるが、今回は石高のみの算出である。
次回 第686話 (仮)『太田和弾正大弼政種と鉄筋コンクリート』
東玄甫は解剖台の上のカエルに向かって立っていた。手に持っているメスの1本は切断用、もう1本は固定用だ。カエルの足を慎重に切り開き、筋肉を露出させる。
人体解剖はいわゆる腑分けによってされていたが、そう毎回毎回できるわけではない。以前から感じていた違和感を確かめるために実験しているのだ。
「おや? ……うん。やはりこれは偶然ではない」
2本のメスをカエルの足に差し入れた瞬間、切断されたカエルの足が、まるで生きているかのように痙攣したのだ。玄甫は目を見張り、メスを動かすたびに足が震えるのを観察した。
頭の中では疑問が渦巻いていた。
「これは一体どういうことだろう? 死んだカエルの筋肉が動くなんて……」
東玄甫は医者であり、生物学の知識は豊富だったが、物理学については詳しくなかった。しかし同僚であり先輩でもある物理学者の忠右衛門から、電気という概念について聞いたことがあったのだ。
玄甫はこの現象が電気に関係しているのではないかと考えた。
「忠右衛門様に相談してみよう」
そう思い、忠右衛門を訪ねることにした。
電気の研究をしていた忠右衛門は、何もしていないのに筋肉が動くという玄甫の観察に興味を示し、一緒に実験を行うことになったのだが、やはり金属のメスが筋肉に触れる度に足が収縮したのだ。
……。
「これは今わしが研究している電気による仕業かもしれぬ」
忠右衛門は、これが電気的な現象である可能性を指摘した。
その後玄甫は忠右衛門の助言を受け、更なる実験を重ねる。仮に筋肉内に電気が存在し、生命活動に関わっているとすれば、これは革命的な発見なのだ。
数日後、忠右衛門は興奮した様子で玄甫のもとを訪れた。
「玄甫! わしは電気を生む術を見いだしたぞ!」
純正はいま京都である。報告より先に、まず発見の発端となった玄甫のところを訪れたのだ。忠右衛門は2種類の金属板を塩水に浸した紙で挟み、それらを重ねて積み上げた装置を見せた。
「これは電堆と呼ぶことにした。亜鉛と銅の板を交互に積み重ね、その間に塩水を含ませた紙を挟んでいるのだ」
玄甫は驚きと興味を隠せずにいた。これが先日実験したものと同じなら、人体でも同じ事が起きているということなのか?
「それで、電気が発生するのですか?」
忠右衛門は頷き、2つの金属板をつなぐと、電流が流れることを示した。
「この電堆は、カエルの筋肉に触れさせなくても電気を発生させることができる。つまり、電気は動物の体内だけでなく、金属と塩水からも生み出せるのだ」
「なるほど! これはすごい!」
自然界で起きていることが、我々の人体で起きている。おお、なんと人体の奥深き事よ……。玄甫は興奮がさめやらない。
「これは前代未聞の発見でございますぞ! 人体にある電気と、金属と塩水から生まれる電気が同じものだとしたら、これは、治療にも使えるかも知れません!」
2人は興奮しながら、電堆の可能性について議論する。
その後忠右衛門は、電堆を改良し、より強力で安定した電流を得るための実験を重ねた。一方東玄甫は、生物電気の研究を続け、電気が生命現象にどのように関わっているのかを解明しようと努めたのであった。
■大同盟合議所
「さて、此度は各家中の負担金の分(割合)を決めていこうと存ずる。まずは石高によって分を決めていくのが良いかと存ずるが如何でござろうか?」
純正は大名を前にして、基本的な割合を石高によって決めようとしたが、ここで一つ問題があった。度量衡である。これを統一しなければ、各大名間で不公平が起きてしまう。
純正は大名たちの前で話を続けた。
「されど石高を則(基準)とするには、まず度量衡をひとつにすることが肝要にござる。それぞれの御家中で異なる測り方をすれば、公(公平)な負担金の算出において障りとなりまする。このため、度量衡を一つに統べるべきかと存ずる」
大名たちは顔を見合わせ、小声で意見を交わした後、家康が口を開いた。
「確かに、定めし度量衡がなければ、公な則とは言えませぬ。されど、如何様にしてまとめるかが障りとなりましょう。各地の測り方は長年にわたって用いられてきたものであり、いきなり変えるは騒動の元となりましょう」
純正は頷きながら答えた。
「仰せの通りにござる。そこで案を提じとうございます。まず各地の則をつぶさに調べ、その上で公の則を策定することです。その則に基づき、各地の石高を再び算用(計算)いたし、公なる(公平な)負担金の分を定めまする」
純正の意見にうなずき、考え、隣と相談する大名の中で、長政が発言した。
「されど、さような検分にはかなりの時が要るかと存じます。その間に急を要する費えが生じた時は、いかに処すかも考えなければなりませぬ」
純正は微笑みを浮かべながら返答した。想定問答集だ。
「ご案じめさるな。左様なときは暫しの間いまの石高を則として、臨時の負担金を設けましょう。その間に調べを進め、則が定められた時に帳尻を整える事といたします」
「うむ。わしは内府殿の案には賛成じゃ。方々は如何にござろうか? 障りがなければ、よろしいのではござらぬか? 然りながら調べを進めるにあたっては、我らの考えも容れながら、でお願いいたそう」
信長だ。
「むろんにございます」
こうして、度量衡の統一と石高の再計算に向けた新政府の協議は一歩前進した。
・小佐々家 52.89%
・織田家 29.09%
・武田家 8.29%
・徳川家 3.21%
・里見家 2.68%
・浅井家 2.07%
・畠山家 1.34%
・大宝寺家 0.44%
全ての家中が海運による利益を得ていた。特に日本海側の海運は栄えていたと思われるが、今回は石高のみの算出である。
次回 第686話 (仮)『太田和弾正大弼政種と鉄筋コンクリート』
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