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日ノ本未だ一統ならず-技術革新と内政の時、日本の内へ、外へ-
第680話 『紡績機の改良・発明。人類、空へ』(1580/9/15)
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天正九年八月七日(1580/9/15) <純正>
俺が今世に転生して19年がたった。
その間に技術革新が発生し、その分野は多岐にわたった。軍事技術や兵器ばっかりに目が行くけど、昔の日本の明治維新と同じで、忘れちゃならない物がある。
紡績と製糸だ。富岡製糸工場のような紡績工場が発展したのだ。
布を製造する機織り機は、明国から取り入れた「斜身式大花楼機」を基に改良されてきた。一方、糸を紡ぐ作業は長い間糸車を使用していたけど、蒸気機関の発明で状況が変わってきた。
蒸気機関がいろんな動力に使われるようになって、工業製品が不足し始めたんだ。
そこで大量の糸を製造する方法をいろいろ考えて、8年前に80個の紡錘、あのコマの軸が長くなったようなやつね。あれを備えた壱型紡績機が開発された。
その後、機織り機も改良されて、太い糸の製造には適さなかった紡績機が水力で稼働できるようになった。これが弐型紡績機で、人間の指ではなく木製または金属製のシリンダーを使って、糸に強い撚りを与えられるようになった。
でも弐型は紡績部分が複数の滑車を使って糸を強く引っ張る仕組みだったので、太い糸を作ることはできたけど、細い糸は切れてしまって作れなかった。
機織り機は強い縦糸と細い横糸の両方が必要であり、壱型・弐型ともに不完全だったのだ。
人間ってすごいね。この両方の長所を取り入れた紡績機、参型が発明されて、中国産の生糸より高品質なものが大量に生産できるようになったんだ。
同様に、蚕の繭から糸を取り出す繰糸機も様々な改良が加えられた。
結果として輸入に頼っていた生糸や絹織物、綿織物が国産にできるようになった。明とは友好関係を保ちたかったけど、海禁政策だったからね。日本に対してだけきつかった。
結局緩和されることなく今の緊張状態になった。
「申し上げます! 諫早より通信が入っております!」
「見せよ」
「はっ」
なんだろう? 戦はないし、なんの通信だ?
発 科技省 宛 屋形
メ 我 気球ノ製造ナラビニ飛行ニ成功セリ 直ニ見テイタダキタク オ越シ願イタシ メ
なんて? 気球? こうしちゃおれん。
■天正九年八月十七日(1580/9/25) 諫早城下 郊外
太田和忠右衛門政藤(叔父)とその息子源五郎政秀(従兄弟)は、熱気球による有人飛行の実験を公開しようとしている。
実験場に設定した広場には家臣や領民たちが集まり、技術者親子の新しい発明に、期待と不安が入り混じった表情を浮かべているが、中央には白地に七つ割平四つ目の小佐々の家紋が大きく描かれた気球が堂々と設置されている。
「御屋形様、これが我らの新しい発明、名付けて熱気球でございます」
忠右衛門が政藤の顔を一瞬見て、純正に向かってそう言った。
「見事なものだ、忠右衛門に源五郎。夢物語だと思っていたものが、実現したのだな。これで本当に空を飛ぶことができるのか?」
「はい、御屋形様。我らは幾度も人を乗せず実験を行い、成功を収めております。此度は人を乗せた初の飛行をお見せいたします」
時に実験は命を落とすこともある。爆発であり、落下であり、様々な要因があるが、二人にはそうなって欲しくない。純正は二人を信じつつも、心配は絶えない。
「うむ、期待しているぞ。くれぐれも気をつけるのだ。何より大事なのは成功よりもお主ら二人の命であるからな」
「はは。有り難き幸せにございます」
忠右衛門と政藤は、気球につながった大きなカゴにゆっくりと乗り込む。純正と観客が息をのむ中、火が点けられ、気球は徐々に膨らみ始める。
「源五郎(政藤)、すべての準備は整っているか?」
「はい、父上。いつでも飛び立てます」
二人は顔を見合わせ、純正を見る。
「よい、では飛び立つがよい。武運を祈る」
火が燃え上がり、気球はゆっくりと地面から浮き上がる。人々の歓声が広がる中、気球はますます高く上昇していく。忠右衛門と政藤はカゴの中から手を振り、下の群衆に応える。
「源五郎見よ! 我らは誠に空を飛んでいる!」
「素晴らしい、父上。この景色を御屋形様にお見せしたい!」
気球がみるみるうちに上昇していく。純正はすぐに手旗を用意させ、自ら信号を送る。
メ 見事 家中ノ 誇リナリ メ
短文であり、二人とも緊急通信のための手旗は覚えている。危険な実験や声が聞こえないなどの状況でも連絡がとれるよう、実験前は反復練習しているのだ。
気球はさらに上昇し、眼下の群衆の顔はすでにわからない。諫早城まで見える。風に乗って穏やかに漂う気球の中で、忠右衛門親子はその瞬間の成功を心から喜び合った。
「これで、我らの名は後世に語り継がれることでしょう、父上」
政秀は目を輝かせ、眼下に広がる諫早城下を眺めながら言った。
「そうだ。されど源五郎、名声のためにやったのではないぞ。家中のため、お主の従兄弟であり我が甥である御屋形様のためである。更なる精進を続けねばならぬぞ」
「無論にございます」
気球は穏やかに降下を始め、無事に着陸する。歓声と拍手が鳴り響く中、二人は純正のもとに駆け寄り、成功を報告する。
「御屋形様、無事に帰還いたしました。我々の実験は成功にございます」
「大義である。忠右衛門、源五郎よ。お主たちの功は誠にたたえるに値する。これからも我が家中と領民のために努めてくれ」
「「はは!」」
希望と未来への期待が満ちあふれ、忠右衛門親子の名は永遠に刻まれることとなった。
次回 第681話 (仮)『大日本政府樹立に向けての第二回会議と大阪城』
俺が今世に転生して19年がたった。
その間に技術革新が発生し、その分野は多岐にわたった。軍事技術や兵器ばっかりに目が行くけど、昔の日本の明治維新と同じで、忘れちゃならない物がある。
紡績と製糸だ。富岡製糸工場のような紡績工場が発展したのだ。
布を製造する機織り機は、明国から取り入れた「斜身式大花楼機」を基に改良されてきた。一方、糸を紡ぐ作業は長い間糸車を使用していたけど、蒸気機関の発明で状況が変わってきた。
蒸気機関がいろんな動力に使われるようになって、工業製品が不足し始めたんだ。
そこで大量の糸を製造する方法をいろいろ考えて、8年前に80個の紡錘、あのコマの軸が長くなったようなやつね。あれを備えた壱型紡績機が開発された。
その後、機織り機も改良されて、太い糸の製造には適さなかった紡績機が水力で稼働できるようになった。これが弐型紡績機で、人間の指ではなく木製または金属製のシリンダーを使って、糸に強い撚りを与えられるようになった。
でも弐型は紡績部分が複数の滑車を使って糸を強く引っ張る仕組みだったので、太い糸を作ることはできたけど、細い糸は切れてしまって作れなかった。
機織り機は強い縦糸と細い横糸の両方が必要であり、壱型・弐型ともに不完全だったのだ。
人間ってすごいね。この両方の長所を取り入れた紡績機、参型が発明されて、中国産の生糸より高品質なものが大量に生産できるようになったんだ。
同様に、蚕の繭から糸を取り出す繰糸機も様々な改良が加えられた。
結果として輸入に頼っていた生糸や絹織物、綿織物が国産にできるようになった。明とは友好関係を保ちたかったけど、海禁政策だったからね。日本に対してだけきつかった。
結局緩和されることなく今の緊張状態になった。
「申し上げます! 諫早より通信が入っております!」
「見せよ」
「はっ」
なんだろう? 戦はないし、なんの通信だ?
発 科技省 宛 屋形
メ 我 気球ノ製造ナラビニ飛行ニ成功セリ 直ニ見テイタダキタク オ越シ願イタシ メ
なんて? 気球? こうしちゃおれん。
■天正九年八月十七日(1580/9/25) 諫早城下 郊外
太田和忠右衛門政藤(叔父)とその息子源五郎政秀(従兄弟)は、熱気球による有人飛行の実験を公開しようとしている。
実験場に設定した広場には家臣や領民たちが集まり、技術者親子の新しい発明に、期待と不安が入り混じった表情を浮かべているが、中央には白地に七つ割平四つ目の小佐々の家紋が大きく描かれた気球が堂々と設置されている。
「御屋形様、これが我らの新しい発明、名付けて熱気球でございます」
忠右衛門が政藤の顔を一瞬見て、純正に向かってそう言った。
「見事なものだ、忠右衛門に源五郎。夢物語だと思っていたものが、実現したのだな。これで本当に空を飛ぶことができるのか?」
「はい、御屋形様。我らは幾度も人を乗せず実験を行い、成功を収めております。此度は人を乗せた初の飛行をお見せいたします」
時に実験は命を落とすこともある。爆発であり、落下であり、様々な要因があるが、二人にはそうなって欲しくない。純正は二人を信じつつも、心配は絶えない。
「うむ、期待しているぞ。くれぐれも気をつけるのだ。何より大事なのは成功よりもお主ら二人の命であるからな」
「はは。有り難き幸せにございます」
忠右衛門と政藤は、気球につながった大きなカゴにゆっくりと乗り込む。純正と観客が息をのむ中、火が点けられ、気球は徐々に膨らみ始める。
「源五郎(政藤)、すべての準備は整っているか?」
「はい、父上。いつでも飛び立てます」
二人は顔を見合わせ、純正を見る。
「よい、では飛び立つがよい。武運を祈る」
火が燃え上がり、気球はゆっくりと地面から浮き上がる。人々の歓声が広がる中、気球はますます高く上昇していく。忠右衛門と政藤はカゴの中から手を振り、下の群衆に応える。
「源五郎見よ! 我らは誠に空を飛んでいる!」
「素晴らしい、父上。この景色を御屋形様にお見せしたい!」
気球がみるみるうちに上昇していく。純正はすぐに手旗を用意させ、自ら信号を送る。
メ 見事 家中ノ 誇リナリ メ
短文であり、二人とも緊急通信のための手旗は覚えている。危険な実験や声が聞こえないなどの状況でも連絡がとれるよう、実験前は反復練習しているのだ。
気球はさらに上昇し、眼下の群衆の顔はすでにわからない。諫早城まで見える。風に乗って穏やかに漂う気球の中で、忠右衛門親子はその瞬間の成功を心から喜び合った。
「これで、我らの名は後世に語り継がれることでしょう、父上」
政秀は目を輝かせ、眼下に広がる諫早城下を眺めながら言った。
「そうだ。されど源五郎、名声のためにやったのではないぞ。家中のため、お主の従兄弟であり我が甥である御屋形様のためである。更なる精進を続けねばならぬぞ」
「無論にございます」
気球は穏やかに降下を始め、無事に着陸する。歓声と拍手が鳴り響く中、二人は純正のもとに駆け寄り、成功を報告する。
「御屋形様、無事に帰還いたしました。我々の実験は成功にございます」
「大義である。忠右衛門、源五郎よ。お主たちの功は誠にたたえるに値する。これからも我が家中と領民のために努めてくれ」
「「はは!」」
希望と未来への期待が満ちあふれ、忠右衛門親子の名は永遠に刻まれることとなった。
次回 第681話 (仮)『大日本政府樹立に向けての第二回会議と大阪城』
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