『転生したら弱小領主の嫡男でした!!元アラフィフの戦国サバイバル~時代・技術考証や設定などは完全無視です!~』

姜維信繁

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日ノ本未だ一統ならず-北条と東北。明とスペイン、欧州情勢。-

第629話 『雷管と蒸気機関、なんとか7年、いや5年でできないか?』(1577/6/7)

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 天正六年五月二十一日(1577/6/7) 諫早城 <純正>

「雷か……発火剤と蒸気機関、なんとか七年いや、五年でできないか?」

 俺は一貫斎と忠右衛門、そして政秀と宇田川松庵を呼んで聞いた。一貫斎は兵器関連で、大砲の規格化を成功させていて、現在は主に雷管とライフリングの研究を行っている。

 忠右衛門と政秀の研究は重複するところがあるのだが、忠右衛門が電気関連で政秀が蒸気機関を研究している。宇田川松庵は化学者で医者でもあるが、薬品や様々な物質の研究を行っているのだ。

 ・高炉と反射炉関連……忠右衛門・政秀・松庵
 
 ・雷管とライフリング……松庵・一貫斎
 
 ・蒸気機関……忠右衛門・政秀
 
 ・電気関連……忠右衛門

「五年では、難しいかと」

 一貫斎が発言したが、他の3人も同じようだ。

「左様か。そう即答されては身も蓋もないのだが、なんとか五年、ないし七年でやってほしいのだ。忠右衛門、政秀、蒸気機関の具合はどうなのだ。過日見せた船、それから炭鉱の排水のくみ上げ機械、その後はいかがじゃ?」

 定期的に進捗は聞いていたが、最近は目立った報告がなかったからだ。

「は。以前お見せいたしました蒸気機関につきましては、障りもなく稼働しております。されどあれ以上の馬力を出そうと考えましたが、いたずらに大型になり、実用に乏しくございます」

「ふむ。二倍の馬力をだそうと思えば二倍の機関がいると申すか」

「さようにございます」

 うーん。まあ理屈はそうだよね。そうなると船に載せるとなると厳しいな。燃料の石炭もメチャクチャ食うだろうし。

「なんとか方法はないのか?」

「は……。ない事はございませんが、いまだ……」

 政秀が口ごもり、忠右衛門を見る。忠右衛門も答えづらそうだ。

「良い。思うところを申せ。それで処罰などせぬ。皆もわかっておろう」

 俺はどんなに奇想天外な事を言われても、怒らない。転生人という事もあるだろうが、自由な考えや意見が発展には必要だと考えているからだ。

「は。されば申し上げまする。今の蒸気機関にございますが、確かにその原理としては、手前味噌みそではありますが、素晴らしいかと存じます」

「うむ」

「されど、円筒内に噴射される冷水によって円筒が毎回冷却され、次に蒸気が入った際に、その熱の八割が円筒の加熱に費やされてしまうのです」

 ああ、これは前に説明を受けたな。熱して冷ましての繰り返し。結局無駄になっているって事? 詳しい事はわからんけど、熱効率みたいな?

「それで、改善能うのか」

「は。そのためには活塞かっそく(ピストン)とは別に設けた膨張室(チャンバー・分離凝縮器・復水器)で蒸気の凝縮過程を行い、円筒を常に注入蒸気と同じ温度にしなければなりませぬ」

「ふむ」

「また、熱出力における活塞(ピストン)と円筒(シリンダー)の均衡の悪さにも着目し、適切な寸法比を導き出さねばなりませぬ」

 なんか良くわからんが、熱効率が悪いから、熱を維持したまま無駄な熱を使わなければ、もっと出力が出せるという事なんだろう。

「それは……口ごもっておったが、能わぬのか」

「理屈としては、能うのです。能うはずなのです」

 政秀を補足するかのように、忠右衛門が言う。

「何が問題なのじゃ?」

「活塞(ピストン)や円筒(シリンダー)の加工が上手くいかぬのです。どうしても今の鍛冶屋の技では均一に作る事が能わぬのです」

惣兵衛尉そうべえのじょうでは能わぬのか」

 惣兵衛尉は平井惣兵衛尉といい、筑後国の瀬高上庄せたかかみのしょうにおいて有能な鋳物師である。

「いえ、そのようなことは……。彼の者の匠の技は驚くべきものにございますが、先のことを考えますと、より精密に多くの物をつくるとなると限界にございます」

「なにか……策はないのか? 工作機械なら忠右衛門、そなたの工場にあったではないか。あれを使って、その精密につくれぬのか」

 旋盤を含めた工作機器は、すでに開発され様々なところで活用されているはずだ。

「工作機械は機械でございますが、問題はその素材にございます」

「また、ボイラーやその他の機器の素材も加わります」

 二人が連続して言ってきた。

 確か……最初の蒸気機関は銅でつくられた。その後圧力に耐えうるように鉄が用いられたが、より加工しやすく強度のある鉄が求められたのだ。

 ん? ん? なんか聞いた事のある話しだぞ。

「蒸気機関というのは、物を動かすのに使えるな?」

「「は」」

「ではもちろん、その蒸気機関を、高炉でフイゴのかわりに送風機関として使っているな?」

「……」

「……」

「まさか! 使ってないのか! ? おいおい蒸気機関と製鉄はマストだろうが!」

 あまりの驚きに少しキレてしまったが、4人の? ? という顔に即刻話題を変えた。

「じゃあすぐに導入して」

 後々聞いたのだが、この4人、他の化学者や技術者と月に1回研究会とか意見交換会を行っているんだが、そこで他人の研究について考えを述べるのだ。

 意見を述べることはお互いの研究にとって有益に違いない。

 しかし、自分の開発した物、研究成果を情報として共有し、提供するという発想がなかったようだ。

 忠右衛門と政秀、親子でさえそうなのだ。他人なら、推して知るべし。

 あまり研究内容には踏み込まないのだが、ちょっとだけ踏み込んでみようと思う。




 次回 第630話 『蒸気機関の課題はわかった。次は雷管だ』
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