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日ノ本未だ一統ならず-北条と東北。明とスペイン、欧州情勢。-

第609話 加賀と越中西部の自治について言問を行う(1574/9/17)

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 天正三年九月三日(1574/9/17)

 5月に行われた合議において、越中の旧本願寺勢力の所領である礪波となみ郡については、当初畠山義のりの管轄下に置くのが良いのではないかとされたが、義慶は辞退した。

 家臣からは要望があったようだが、足ることを知るという考えで辞退したのだ。能登一国と加賀の分割統治となれば、それ以上は許容量過多という訳である。

 この件については小佐々軍の単独である。
  
 そのため、他の大名の発言力はないに等しい。しかしそれでも純正は合議とし、年貢や港の他、全ての権益を話し合いで分担しようとしたのだ。

 加賀守護は建前では富樫氏であったが、その権力を奪われて久しく、一国をまとめるだけの人員もいなければ資金力もなかった。

 そのため合議には参加するが、ほとんどは事後承諾という形で会議は進められた。




各々方おのおのがた、加賀は河北・石川・能美のみ・江沼の四郡である。その他越中の礪波郡とあわせ五郡となるが、いかようにして治めるか?」

 利三郎の言葉に、全員が口ごもる。

「いかようにと仰せでも、郡司を置くにしても五つじゃ。われらは七つの家中であるゆえ、二つの家中は余りますぞ」

「さよう。いかようにして決めるのですか」

 光秀の問いに秀吉が追従した。

「入れ札にて決めるのはいかがじゃ?」

 純久の発言に武藤喜兵衛が答える。

「入れ札は構いませぬが、小佐々家は外せぬでしょう。この儀の立役者にござれば、入れぬのはおかしい」

「それでは残り四つにござるな。されど里見は辞退しとうござる。遠方であるし、今は北条に討ち入らんとしておるところ。人は出せぬのが実のところにござる」

 里見義政が喜兵衛の発言に対して要望を口にした。確かに里見にとってみれば、それどころではない。

「では残り四つを畠山、織田、武田、浅井、徳川で決めるということですかな?」

「いやいや、わざわざ分けずとも、石川郡は高十八万石と多い故、それを二つに分けることで、誰もが受け持つことになりますぞ」

 石川数正の発言に宮部継潤が答えると、おお、そうだ、という声があがった。

「ではそれで、決をとりたいがいかがかな?」

「「「異議なし」」」

 結局、越中の礪波郡は畠山氏が治める事になり、加賀を五つに分けて小佐々・織田・武田・浅井・徳川が治める事となった。




「さて、次に重しなのは法度にござる。各々方、領国ではそれぞれの分国法、法度にて治めておると存ずるが、こたびの加賀を、礪波郡も含めて加賀というが、いかなる法度で治むるかにござろう」

 利三郎が全員の顔を見回しながら発言する。

「それは……もう小佐々諸法度で良いのではござらぬか? 皆で治めるとはいえ、六つも七つもある分国法を考え直して、一からつくるのも時がかかろう。まずは、小佐々の諸法度でやってみて、変えるべき点があればその都度変えればよいかと存ずる」

 光秀の発言だ。

 全員がその通り、と同意の意を示す。

 もしかすると、自領に直接利益をもたらすことではないから、関心が薄いのではないだろうか? 利三郎も純久も同じ事を考えているようで、顔を見合わせた。

「されど各々方、小佐々の諸法度は……いささかなじみが薄い点も多い故、赴任した郡代や代官が戸惑うやもしれませぬぞ」

 利三郎が言うと、光秀が切り返す。

「それは承知の上にござる。一番重し事は政の隙間をつくらぬ事ではござらぬか? 幸いにして今のところは訴えの類いは起きておらぬようだが、一刻も早く民に示さねば無法の地となりますぞ」

 光秀の言葉は言い得て妙である。現代でいうところの政治の空白である。

「……各々方、いかがか?」

「「「異議なし」」」

 これも満場一致で決まった。各地区に小佐々家から司法省の補佐官が派遣され、一定期間司法のサポートをすることになったのだ。
  
 もちろん、あくまで司法であるから行政上の越権行為は禁止した。




「次に年貢に運上金、冥加金についてにござるが」

 利三郎は財源の確保について発議した。

「それについても考えがございます」

 また発言したのは光秀であった。

「年貢、運上金、冥加金、すべて四公六民といたします。その四公をさらにわけ、四を同盟分として六を加賀を治めるための銭にいたします。四の同盟分は半分を残し、半分は六分割するのはいかがでしょうか」

 実は利三郎も純久も、光秀と同じように考えていた。違うのは同盟分をさらに半分にするところだ。

 しかしこれは考えてみれば当然の結果である。

 ようするに大同盟だ合議だと言っても、実入りがないのだ。

 当初は合議制を行うにあたって、得た権益についてはかけた(国力による比率)で分配するというものであった。

 半分を残しておいたのは、運営の諸経費と、今後起こるであろう軍事行動の費用にあてるためである。
  
 利益を得つつ、今後かかる費用を抑えようと考えるのは、納得できるものであった。

「うべなるかな(なるほど)。いずれにしても初めての試みゆえ、さまざまな差し障りがでてくるやもしれませぬが、日向守殿の仰せの通りにござる。方々、いかがでござろうか?」

 結局税率は40%で、40%の内訳は郡予算が10%で国予算が10%、残りの20%を半分が合議所で残りを各国で当分するかたちとなった。
  
 実際にどの程度の予算が運営に必要なのかはやってみなければわからない。




 ほどなくして合議所に出納局が設けられ、同盟の資金を管理する事となった。加賀から近江までの資金輸送は各郡がそれぞれ個別に行ったのだ。

 ちなみに延暦寺や雑賀寺、本願寺から得られた諸々の権益も、大同盟歳入として出納局が管理した。

 次回 第610話 駿河~伊豆大島~安房航路
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