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日ノ本未だ一統ならず-北条と東北。明とスペイン、欧州情勢。-
第606話 新型戦列艦の就役と艦隊編成(1574/8/17)
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天正三年八月一日(1574/8/17)小佐々城 一室
小佐々家は本家と中浦小佐々家、そして松島小佐々家の三家がある。
純正が本家の家督を継ぐ前から分かれてはいたのだが、11年前の永禄六年、葛の峠の戦いで本家の世継ぎと分家の当主二人が全て討死してしまった。
そこで本家の当主であった小佐々純勝は純正(当時沢森政忠)に家督を譲り、敗戦と討死の心労のため亡くなったのだが、数年後純正は、従兄弟の幸若丸に元服を機に松島小佐々家を継がせたのであった。
もう一つの分家である中浦小佐々家の世継ぎは、生まれて間もない甚吾であった。史実でいう中浦ジュリアンである。その甚吾は来年の元服を機に正式に中浦小佐々家の当主となる。
小佐々城から諫早城へ領都を移してから、太田和城(旧沢森城)や小佐々城は多少はさびれた感は否めない。
しかし弥次郎の奮闘もあり、平戸や唐津から長崎へと南下する船や、逆に肥後方面から長崎そして平戸~博多へ向かう商船の中継地として、旧都しての繁栄を保っていたのだ。
元々の小佐々の中心地である。捕鯨や石炭に加えて、その他諸々の山海の幸を加工して流通・販売していた。
<純正>
さーて、どうすっかなあ……。
京都から北条戦の知らせをうけた俺は、久しぶりにやってきた小佐々城で畳に寝っ転がってうだうだしていた。
北条戦はゴーサインを出したものの、具体的な戦略はまだなのだ。里見には吉原の港から補給物資を安房に輸送する段取りをつけさせている。
後方支援は、問題ない。
大敵北条との戦だ。普通に考えたらじっくり作戦を練って万全の準備をして望まないといけないんだろうけど、なんだろうな。脱力感というか、惰性というか。
たまーになるんだよね。俺、何してんだ症候群。燃え尽き症候群とでも言うんだろうか。
さっさと日本統一してしまえよっていう自分と、平和に平和にっていうもう一人の自分。平和の自分が本来なんだが、結局戦になってしまう。
信長の本能寺が1582年だから、あと8年か。史実じゃそのころは武田を滅ぼして北条が服属を申し出ている。毛利と長宗我部攻めに向かう、というところで謀反にあう。
今のところ、俺はその轍は踏む路線にはいないだろう。と、思う。8年も前倒しで信長の版図より大きな領土を保有しているのだ。上杉との戦いでは若干苦戦した部分もあるけど、結局圧勝した。
ただなあ……不気味なのは義昭なんだよね。氏政が嘘でも将軍を擁しているからなあ。いっそのこと解官を上奏するか? いやいや、その後のが面倒だ。
そういえば信長もしてないな。表向きはずうーっと帰ってきてくれみたいなスタンスだったと思う。秀吉の代になって返上するんだ。義昭自身から。
それに俺が征夷大将軍なら、武家の棟梁だ。信長や勝頼が黙っていないだろう。あくまで同列で同盟を組んでいるし、俺も同盟のほうが面倒臭くない。
でも、結局は盟主みたいな事実上のトップだけどな。
まあ……後の事は、その時考えるか。
あとはスペインだ。どの程度北条に入り込んでいる? 武装は? 船は?
鉄砲は別として船や大砲は自力で作る事は不可能だろう。援軍としてやってくる可能性はあるだろうか。
「おい! 何やってんだ!」
「うひゃおう!」
懐かしいな、この感じ。勝行だ。
「どうした?」
「どうした? じゃねえよ。新型艦が完成したから艦隊の編成と運用を任せるって言ってただろう? 終わったから報告に来たんだよ。佐世保に行くぞ」
「お、おう……」
■佐世保湊
純正と海軍総司令がくるとあって、佐世保鎮守府は緊張に包まれていた。
佐世保湊には旧式のドックと併設して、二基のドックが完成している。
昨年の3月に2年かけて佐世保・佐伯(大分)・呉浦(広島)・餝磨津(兵庫・姫路)の四カ所に3,000トン級船舶が建造可能な大型ドックが完成していたのだ。
海軍関係者の他にも、相神浦松浦の家中が大勢きていた。
「御屋形様、このたびはおめでとうございます」
叔父である利三郎の長女の伊予を妻にしている、松浦盛である。波多鎮、伊万里治とならぶわんぱく三人衆の一人だ。さすがにあの頃とは違うのか、当主の風格がでている。
もう25歳だ。
「うむ。皆の支えがあっての事だ。感謝する」
純正の言葉に全員が平伏するなか、祖父と言ってもいいくらいに高齢の義父、松浦宗金がいた。
爺様、元気だ。
おじいちゃん子(前世)の純正はほっこりしつつ、笑顔で退室した。
2個艦隊の威容を一目見ようと、肥前はもとより肥後や筑前からも見物客が訪れていた。
新編成:第四艦隊
旗艦 富士(1,632t)
長さ:51.82m
幅:14.25m
吃水:6.25m
3本マスト
乗員:550名
兵装:74門
上砲列: 18ポンド(8kg)砲28門
下砲列: 32ポンド(15kg)砲28門
後甲板: 9ポンド(4kg)砲14門
艦首楼: 9ポンド(4kg)砲4門
以降白根・大山(だいせん)・恵那・と新型戦艦4隻がつづく。これが第4艦隊の中核をなす戦艦群である。つづいて戦艦級であった霧島を重巡洋艦とし、足柄・羽黒と同列とした。
阿武隈・川内・神通・那珂・夕張はそのまま軽巡級である。さらに第5艦隊所属であった駆逐艦8隻を組み込み、計20隻の1個艦隊としたのだ。
第5艦隊には戦艦八島・三笠・朝日・初瀬の4隻が配置され、並行して建造された重巡と軽巡、そして駆逐艦が配された。艦載砲が新型のものが順次搭載されている。
マニラに派遣されている第1~第3艦隊も順次佐世保に寄港させて換装が進んでいた。
次回 第607話 連合艦隊司令長官 深沢勝行
小佐々家は本家と中浦小佐々家、そして松島小佐々家の三家がある。
純正が本家の家督を継ぐ前から分かれてはいたのだが、11年前の永禄六年、葛の峠の戦いで本家の世継ぎと分家の当主二人が全て討死してしまった。
そこで本家の当主であった小佐々純勝は純正(当時沢森政忠)に家督を譲り、敗戦と討死の心労のため亡くなったのだが、数年後純正は、従兄弟の幸若丸に元服を機に松島小佐々家を継がせたのであった。
もう一つの分家である中浦小佐々家の世継ぎは、生まれて間もない甚吾であった。史実でいう中浦ジュリアンである。その甚吾は来年の元服を機に正式に中浦小佐々家の当主となる。
小佐々城から諫早城へ領都を移してから、太田和城(旧沢森城)や小佐々城は多少はさびれた感は否めない。
しかし弥次郎の奮闘もあり、平戸や唐津から長崎へと南下する船や、逆に肥後方面から長崎そして平戸~博多へ向かう商船の中継地として、旧都しての繁栄を保っていたのだ。
元々の小佐々の中心地である。捕鯨や石炭に加えて、その他諸々の山海の幸を加工して流通・販売していた。
<純正>
さーて、どうすっかなあ……。
京都から北条戦の知らせをうけた俺は、久しぶりにやってきた小佐々城で畳に寝っ転がってうだうだしていた。
北条戦はゴーサインを出したものの、具体的な戦略はまだなのだ。里見には吉原の港から補給物資を安房に輸送する段取りをつけさせている。
後方支援は、問題ない。
大敵北条との戦だ。普通に考えたらじっくり作戦を練って万全の準備をして望まないといけないんだろうけど、なんだろうな。脱力感というか、惰性というか。
たまーになるんだよね。俺、何してんだ症候群。燃え尽き症候群とでも言うんだろうか。
さっさと日本統一してしまえよっていう自分と、平和に平和にっていうもう一人の自分。平和の自分が本来なんだが、結局戦になってしまう。
信長の本能寺が1582年だから、あと8年か。史実じゃそのころは武田を滅ぼして北条が服属を申し出ている。毛利と長宗我部攻めに向かう、というところで謀反にあう。
今のところ、俺はその轍は踏む路線にはいないだろう。と、思う。8年も前倒しで信長の版図より大きな領土を保有しているのだ。上杉との戦いでは若干苦戦した部分もあるけど、結局圧勝した。
ただなあ……不気味なのは義昭なんだよね。氏政が嘘でも将軍を擁しているからなあ。いっそのこと解官を上奏するか? いやいや、その後のが面倒だ。
そういえば信長もしてないな。表向きはずうーっと帰ってきてくれみたいなスタンスだったと思う。秀吉の代になって返上するんだ。義昭自身から。
それに俺が征夷大将軍なら、武家の棟梁だ。信長や勝頼が黙っていないだろう。あくまで同列で同盟を組んでいるし、俺も同盟のほうが面倒臭くない。
でも、結局は盟主みたいな事実上のトップだけどな。
まあ……後の事は、その時考えるか。
あとはスペインだ。どの程度北条に入り込んでいる? 武装は? 船は?
鉄砲は別として船や大砲は自力で作る事は不可能だろう。援軍としてやってくる可能性はあるだろうか。
「おい! 何やってんだ!」
「うひゃおう!」
懐かしいな、この感じ。勝行だ。
「どうした?」
「どうした? じゃねえよ。新型艦が完成したから艦隊の編成と運用を任せるって言ってただろう? 終わったから報告に来たんだよ。佐世保に行くぞ」
「お、おう……」
■佐世保湊
純正と海軍総司令がくるとあって、佐世保鎮守府は緊張に包まれていた。
佐世保湊には旧式のドックと併設して、二基のドックが完成している。
昨年の3月に2年かけて佐世保・佐伯(大分)・呉浦(広島)・餝磨津(兵庫・姫路)の四カ所に3,000トン級船舶が建造可能な大型ドックが完成していたのだ。
海軍関係者の他にも、相神浦松浦の家中が大勢きていた。
「御屋形様、このたびはおめでとうございます」
叔父である利三郎の長女の伊予を妻にしている、松浦盛である。波多鎮、伊万里治とならぶわんぱく三人衆の一人だ。さすがにあの頃とは違うのか、当主の風格がでている。
もう25歳だ。
「うむ。皆の支えがあっての事だ。感謝する」
純正の言葉に全員が平伏するなか、祖父と言ってもいいくらいに高齢の義父、松浦宗金がいた。
爺様、元気だ。
おじいちゃん子(前世)の純正はほっこりしつつ、笑顔で退室した。
2個艦隊の威容を一目見ようと、肥前はもとより肥後や筑前からも見物客が訪れていた。
新編成:第四艦隊
旗艦 富士(1,632t)
長さ:51.82m
幅:14.25m
吃水:6.25m
3本マスト
乗員:550名
兵装:74門
上砲列: 18ポンド(8kg)砲28門
下砲列: 32ポンド(15kg)砲28門
後甲板: 9ポンド(4kg)砲14門
艦首楼: 9ポンド(4kg)砲4門
以降白根・大山(だいせん)・恵那・と新型戦艦4隻がつづく。これが第4艦隊の中核をなす戦艦群である。つづいて戦艦級であった霧島を重巡洋艦とし、足柄・羽黒と同列とした。
阿武隈・川内・神通・那珂・夕張はそのまま軽巡級である。さらに第5艦隊所属であった駆逐艦8隻を組み込み、計20隻の1個艦隊としたのだ。
第5艦隊には戦艦八島・三笠・朝日・初瀬の4隻が配置され、並行して建造された重巡と軽巡、そして駆逐艦が配された。艦載砲が新型のものが順次搭載されている。
マニラに派遣されている第1~第3艦隊も順次佐世保に寄港させて換装が進んでいた。
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