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日ノ本未だ一統ならず-内政拡充技術革新と新たなる大戦への備え-
しばらくは内政に関わろう。技術開発の進捗状況。
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天正元年(1572) 五月十五日 諫早城
・反射炉
・大砲
・ライフル
・後装式
・パーカッションロック……。
・蒸気機関に蒸気船……。
純正は、ぱっと考えて出てくるものを羅列したが、そのほとんどが兵器に関わるものだった。
上杉との戦争も終わり、五千人以上の死傷者の事もあって少しげんなりしていた頃であったが、やはり兵器開発の歴史が人類を進歩させた、というのはあながちウソではないようだ。
戦死者の追悼や、死傷者やその遺族に対する恩給の増大はあったが、金の問題ではないと思っている。
自分のため、小佐々のために命をかけたと言ってはくれるが、純正の心はやはり暗いのだ。
「御屋形様、よろしいでしょうか?」
天正元年度の戦略閣僚会議(戦略会議室と全閣僚)は終わっていたが、各省からの報告や相談などは随時行っていた。
厚生労働省の東玄甫だ。
「おお、玄甫か。いかがした?」
「はい、御屋形様は呂宋に遠征の際、キニーネを所望されたのを覚えておいででしょうか?」
「うむ、覚えておる」
「そのキネの樹皮ですが、ポルトガルからの輸入も潤沢に出来ており、呂宋やジャワ島その他でも採取が始められ、印(効能)が証明されています」
「おお! そうか! 四年越しの苦労が実ったのだな?」
「そればかりではございませぬ。同じく仰せであった除虫菊なるものですが、こちらも栽培が始められ、線香として用いる事で、蚊を殺す印(効能)がございました。ゆえに産を増やし、日ノ本でも用いたく存じます」
「もちろんだ。許す。大いに栽培し、領内に流通させよ」
命に関わる事である。純正の暗さを吹き飛ばすニュースであった。
「加えて……」
「なんだ、まだあるのか?」
玄甫はしたり顔(どや顔)である。
「は、実は雪浦川のコンクリート工事が終わってから、筑後川をはじめとした川の工事に入っております」
「うむ、その件か。国交省から都度報告は受けておったが、それをなぜ、厚労省のそなたが言うのだ?」
「は、川を治めるための工事、と聞き及んでおりましたが、どうにもそれだけではないようなのです」
「どういう事じゃ?」
「はい、筑後川には、その付近に住まう領民に特有の病がございました」
「ふむ」
「その病は腹に水が溜まって、やがては死んでしまうゆえ、腹水病と名付けておりました。然れど、その工事を終わった地域と、していない地域で発症者数が変わってきたのです」
「! それは、コンクリート工事に薬効があったという事か?」
「薬効……かどうかはわかりませぬが、病の発症や治癒になんらかの影響を及ぼした事は確かにございます。また、川での仕事を生業とするものや、田植えなどを行う領民に多いことから、ある策を施しましてございます」
「どのような策じゃ?」
「はい、獣の皮とわらを重ね合わせ油に浸したり、または『ゴム』をつかった水に濡れない長靴を使って作業をさせました。すると、減ったのです。発症者が!」
※ゴムは史実では1876年にイギリス人がマレーシアで栽培したのが始まりですが、作中ではコロンブスの発見以降、ヨーロッパ人によって東南アジアに伝播しているという設定です。
コンクリートの護岸・治水工事と防水の靴……水に触れない事がなにか、原因に寄与しているのだろうか? 純正はそう考えた。
しかし医者でもないので判断は早計だ。
「よし! ではまとめると、その病の元や発症までの経緯、感染経路はわからぬが、コンクリート工事と防水の靴に効能があるかもしれぬ、という事だな?」
「はっ。さようにございます」
「では玄甫よ、早急に甲斐の国で同じ事ができるようにいたすがよい。大膳大夫殿には俺が言っておく」
治水工事はKDA(小佐々開発援助)で行っている。
「ははぁっ」
ウイルス? 細菌? 寄生虫? 原因はわからないが、ゴム靴で予防ないし治療ができるなら安いものだ。
馬車やその他の使い道を考えて、ゴムを国内に持ってきておいて良かったと感じた純正である。
「ああ玄甫! それからな……」
退室しようとする玄甫を純正は引き留めた。
「なんでございましょう」
「今、そなたが医師として認める者は何人いる?」
「医師……それがしと同じ、となればわかりませぬが、人に医術を施せるとなれば、医学部を卒業した者は百から二百かと存じます」
「二百か……少ないの」
「は、なにぶん大学、医学部にも定数がございますれば」
「うむ。では、これは……前々から考えていたのだが、佐賀に大学を増やそうかと考えている。無論すぐにはできないだろうが、そのための人員を、各学部で選出してくれぬか? 文部科学省の喜兵衛(上泉喜兵衛延利・外務省流民保護の人⇒文科省へ異動)とも協議せよ」
「ははっ」
領民の健康状態の維持向上は、国力に直結する。いかにすぐれた技術も、人ありきである。
発 治部大丞 宛 権中納言
秘メ 下越ニテ 蘆名 ナラビニ 伊達勢 上杉勢ヨリ 少数ナレド 堅牢ナリ ヤウヤウ(徐々ニ) 押セドモ 時ガ カカリテハ 領内ノ 治 定マラズ コノ上ハ 上杉ニ 助力ヲ 申シ出テ 恩ヲ 売ルノモ 一策カト 献策ス 秘メ
確かに、恩を売るのも一策ではあるが、あえてやらなくてもいいだろう。やっと軍が終わって一段落しているのだ。
加勢する義理はないし、しなくてもそしりを受ける覚えはない。
純正はそう考えた。
発 権中納言 宛 治部大丞
秘メ 治部大丞ノ 献策 有リ難シ 然レド ワレラノ 本分ニ 非ズ 今ハマヅ 北陸ノ所領ト 佐渡ニ 専念 スベシ 上杉勢 進退 窮マレシ時 求メ アレバ 助力イタス 事トス 秘メ
次回 第574話 上杉戦の反省と留学生の今後
・反射炉
・大砲
・ライフル
・後装式
・パーカッションロック……。
・蒸気機関に蒸気船……。
純正は、ぱっと考えて出てくるものを羅列したが、そのほとんどが兵器に関わるものだった。
上杉との戦争も終わり、五千人以上の死傷者の事もあって少しげんなりしていた頃であったが、やはり兵器開発の歴史が人類を進歩させた、というのはあながちウソではないようだ。
戦死者の追悼や、死傷者やその遺族に対する恩給の増大はあったが、金の問題ではないと思っている。
自分のため、小佐々のために命をかけたと言ってはくれるが、純正の心はやはり暗いのだ。
「御屋形様、よろしいでしょうか?」
天正元年度の戦略閣僚会議(戦略会議室と全閣僚)は終わっていたが、各省からの報告や相談などは随時行っていた。
厚生労働省の東玄甫だ。
「おお、玄甫か。いかがした?」
「はい、御屋形様は呂宋に遠征の際、キニーネを所望されたのを覚えておいででしょうか?」
「うむ、覚えておる」
「そのキネの樹皮ですが、ポルトガルからの輸入も潤沢に出来ており、呂宋やジャワ島その他でも採取が始められ、印(効能)が証明されています」
「おお! そうか! 四年越しの苦労が実ったのだな?」
「そればかりではございませぬ。同じく仰せであった除虫菊なるものですが、こちらも栽培が始められ、線香として用いる事で、蚊を殺す印(効能)がございました。ゆえに産を増やし、日ノ本でも用いたく存じます」
「もちろんだ。許す。大いに栽培し、領内に流通させよ」
命に関わる事である。純正の暗さを吹き飛ばすニュースであった。
「加えて……」
「なんだ、まだあるのか?」
玄甫はしたり顔(どや顔)である。
「は、実は雪浦川のコンクリート工事が終わってから、筑後川をはじめとした川の工事に入っております」
「うむ、その件か。国交省から都度報告は受けておったが、それをなぜ、厚労省のそなたが言うのだ?」
「は、川を治めるための工事、と聞き及んでおりましたが、どうにもそれだけではないようなのです」
「どういう事じゃ?」
「はい、筑後川には、その付近に住まう領民に特有の病がございました」
「ふむ」
「その病は腹に水が溜まって、やがては死んでしまうゆえ、腹水病と名付けておりました。然れど、その工事を終わった地域と、していない地域で発症者数が変わってきたのです」
「! それは、コンクリート工事に薬効があったという事か?」
「薬効……かどうかはわかりませぬが、病の発症や治癒になんらかの影響を及ぼした事は確かにございます。また、川での仕事を生業とするものや、田植えなどを行う領民に多いことから、ある策を施しましてございます」
「どのような策じゃ?」
「はい、獣の皮とわらを重ね合わせ油に浸したり、または『ゴム』をつかった水に濡れない長靴を使って作業をさせました。すると、減ったのです。発症者が!」
※ゴムは史実では1876年にイギリス人がマレーシアで栽培したのが始まりですが、作中ではコロンブスの発見以降、ヨーロッパ人によって東南アジアに伝播しているという設定です。
コンクリートの護岸・治水工事と防水の靴……水に触れない事がなにか、原因に寄与しているのだろうか? 純正はそう考えた。
しかし医者でもないので判断は早計だ。
「よし! ではまとめると、その病の元や発症までの経緯、感染経路はわからぬが、コンクリート工事と防水の靴に効能があるかもしれぬ、という事だな?」
「はっ。さようにございます」
「では玄甫よ、早急に甲斐の国で同じ事ができるようにいたすがよい。大膳大夫殿には俺が言っておく」
治水工事はKDA(小佐々開発援助)で行っている。
「ははぁっ」
ウイルス? 細菌? 寄生虫? 原因はわからないが、ゴム靴で予防ないし治療ができるなら安いものだ。
馬車やその他の使い道を考えて、ゴムを国内に持ってきておいて良かったと感じた純正である。
「ああ玄甫! それからな……」
退室しようとする玄甫を純正は引き留めた。
「なんでございましょう」
「今、そなたが医師として認める者は何人いる?」
「医師……それがしと同じ、となればわかりませぬが、人に医術を施せるとなれば、医学部を卒業した者は百から二百かと存じます」
「二百か……少ないの」
「は、なにぶん大学、医学部にも定数がございますれば」
「うむ。では、これは……前々から考えていたのだが、佐賀に大学を増やそうかと考えている。無論すぐにはできないだろうが、そのための人員を、各学部で選出してくれぬか? 文部科学省の喜兵衛(上泉喜兵衛延利・外務省流民保護の人⇒文科省へ異動)とも協議せよ」
「ははっ」
領民の健康状態の維持向上は、国力に直結する。いかにすぐれた技術も、人ありきである。
発 治部大丞 宛 権中納言
秘メ 下越ニテ 蘆名 ナラビニ 伊達勢 上杉勢ヨリ 少数ナレド 堅牢ナリ ヤウヤウ(徐々ニ) 押セドモ 時ガ カカリテハ 領内ノ 治 定マラズ コノ上ハ 上杉ニ 助力ヲ 申シ出テ 恩ヲ 売ルノモ 一策カト 献策ス 秘メ
確かに、恩を売るのも一策ではあるが、あえてやらなくてもいいだろう。やっと軍が終わって一段落しているのだ。
加勢する義理はないし、しなくてもそしりを受ける覚えはない。
純正はそう考えた。
発 権中納言 宛 治部大丞
秘メ 治部大丞ノ 献策 有リ難シ 然レド ワレラノ 本分ニ 非ズ 今ハマヅ 北陸ノ所領ト 佐渡ニ 専念 スベシ 上杉勢 進退 窮マレシ時 求メ アレバ 助力イタス 事トス 秘メ
次回 第574話 上杉戦の反省と留学生の今後
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