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西国王小佐々純正と第三勢力-対上杉謙信 奥州東国をも巻き込む-
三好長治の試練と上杉方・放生津城の異変
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天正元年 四月二日 巳の一つ刻(0900) 庄川西岸(枇杷首村) 三好長治陣
「申し上げます! 最左翼の島津軍、川を渡りて敵と一戦を交える構えにございます!」
「なに! ? 我らも負けてはおられぬ! 直ちに徒渉(徒歩での渡河)の支度をいたせ!」
「お待ちください! あちらとこちらでは事の様(状況)が違いまする! まずはしかと物見を放ち、敵の有り様(様子)を掴まねばなりませぬ!」
伝令の報せを聞き、血気にはやる大将の三好長治を諫めるのは、摂津三宅城主の中川清秀である。
「左様、特にこの枇杷首より向こう岸の大門新村までの瀬は、浅うござるが中州がいくつもあり、足元を取られまする」
池田城城代の荒木村重も同じように慎重論であった。
「何を申すかお主ら、ここで武功をあげねば、兵庫の津が栄ゆ(発展する)事はないのだぞ!」
長治が声を荒らげる。
「殿、そ(それ)はここにいる皆が分きたる(わかっている)事にございます。然れど、そがために功をあせっては、要らぬ失(損害)を被りまする。なにとぞ、ここは辛抱してくだされ」
還暦に近い小西隆佐の諫言に、長治も黙るしかなかった。
「ただ今戻りましてございます!」
「おお! どうであった! ?」
川の状況と対岸の上杉軍の様子を探らせていた物見が戻ってきたのだ。
「はは、中州には見ての通り背丈ほどの葦が茂っておりますが、向こう岸の敵兵は少のうございました」
「聞いたかお主ら! この機を逃しては謙信の備えが整ってしまうぞ! 今こそ川を渡り、一戦に及ぼうぞ!」
物見からの情報で、敵の状況が掴めたのだ。当主である長治の意見を遮るものがなくなった。
庄川の西岸の枇杷首村と、東岸の大門新村の間には大きく長い中州があり、それを取り囲むかのように大小の中州が点在している。
川幅は六町ほど(650m)。
すでに布陣してあった以下の陣立てで、まず先陣の二千四百名が渡河を始めた。
・先陣左翼に荒木村重の六百、中翼に岩成友通の千二百、右翼に中川清秀の六百。
・中陣左翼に有馬則頼の六百、中翼に小西行長の千二百、右翼に伊丹親興の六百。
・本陣に三好長治の三千六百。(軍監で小西隆佐、遊軍で加藤重徳の千二百)
・後陣左翼に安宅清康の六百、中翼に安宅信康の千二百、右翼に船越景直の六百。
・合計一万二千。
■庄川東岸 吉久新村
「誠、取り掛く(攻めかかる)事なきとは、さすが義の人謙信にござるな」
渡河が終わり陣を整えた山田宗昌は一人つぶやいた。
先陣の中翼であったが、渡河が終われば南の上杉軍に対応するべく南向きに陣を構えた。布陣は下記の通り。
・先陣左翼に米良矩重の百五十、中翼に山田宗昌の三百、右翼に米良重鑑の百五十。
・中陣左翼に米良重良の百五十、中翼に荒武宗並の三百、右翼に米良重秀の百五十。
・本陣に伊東祐兵の九百。(軍監に稲津重恒、長倉祐政)
・後陣左翼に土持高信の百五十、中翼に木脇祐守の三百、右翼に藤田左近の百五十。
・合計三千。
今回、伊東祐青は城代として日向に残っている。
小佐々に与した土持家の土持高信と藤田左近も参陣している。
しかし関わりの深かった前当主の伊東祐兵は没しており、新当主の祐兵には敬意を表して、土持や米良といった国人ともお互いに誼を通わせていたのだ。
■庄川西岸 能町村 島津本陣
「兄者、われらはまだにござるか?」
伊東軍が渡河を終わり、南の上杉軍に臨むべく陣形を南向きに変えていた頃である。四男家久が聞いてきた。
「まだじゃ。それよりも先陣同士の軍が始まっておらぬではないか。矢文で約を交わしたのじゃ。こちらが違えていかがする。謙信の手並みを拝見しよう……やや! 始まったか?」
対岸の吉久新村から歓声が聞こえてきた。ホラ貝とドラの音とともに、おおおおお! という両軍の地鳴りのような雄叫びが聞こえてきたのだ。
伊東軍は三千、対する上杉軍も右翼を北に向けて進ませ、その数は三千ほど。ほぼ同数である。
■三女子村(枇杷首村より北十三町・約1.4km)
・南下中 戸次(立花)道雪・高橋紹運軍
・南下中 一条兼定軍
・南下中 龍造寺純家(政家)軍
この日の払暁(日の出の30分前後の時間帯)、寅三つ刻(0400)に立花道雪を大将とする小佐々軍は守山城を出発していた。
着陣後は個々に状況判断を行い、大将の判断で行動する。道雪の予測では最左翼の島津、左翼の三好軍の渡河地点が一番の激戦地であった。
状況によっては高橋軍、そして畠山や菊池・神保氏張勢も投入する。
右翼と最右翼は、渡河自体は簡単に行えるだろうが、渡った後の四つの城からの攻撃が怖い。道雪が庄村への渡河に集中させなかったのはそのためである。
上杉軍が二万ならば、島津一万五千、三好一万二千、立花・高橋八千、畠山他五千を入れて四万となる。それでも倍の兵数であるから十分に勝機はあると考えた。
一条・長宗我部の一万と、杉浦玄任の二万があわさって、渡河後の南部の四城が危うくなれば、増山城の守備兵も動かずにはいられないだろう。
仮に後詰めをださずに陥落したならば、その勢いを持って北上すればいい。
軍は最左翼を島津軍、右翼を三好軍、中翼を戸次・高橋軍(畠山他含む)、右翼を一条軍、最右翼が龍造寺軍である。
「申し上げます! 島津軍、伊東軍を先陣に川を渡ってございます!」
「何! ? いつじゃ?」
「は、四半刻(30分)ほど前にございます!」
「あい解った! ご武運を!」
伝令は水を飲み、すぐに戻っていった。
島津が渡河を決断したとなれば、それなりの安全が担保されての事であろう。
立花軍の基本戦略は四方向(三方向)からの渡河にて敵を分散し、兵力差をもってそのまま攻撃する、という特に変わった事のない戦法である。
策を弄されるかもしれないが、十分に注意する。
そうすれば自ずと勝ちは見えてくる、との結論であった。
立花軍、一条軍、長宗我部軍が枇杷首村を過ぎて出来田村に入った時である。
「申し上げます! 敵別働隊が放生津城に入っております!」
道雪を驚愕させる報告がはいったのだ。
■第三師団、陸路にて北信濃の平倉城へ。4/5着の予定。
■第二師団、吉城郡塩屋城下。
■第四艦隊、出羽田川郡鼠ヶ関湊。
■上杉軍城生城別働隊、喜右衛門。行軍中。
■杉浦玄任、井波城より金屋へ。
■島津(伊東)軍、庄川を渡河、南下。
■島津(肝付)軍、庄川渡河準備。
■島津本軍、庄川西岸にて待機。
■三好軍、庄川西岸枇杷首村より大門新村に向け渡河準備。
■立花軍、南下中、庄川西岸出来田村。一条軍、龍造寺軍も同じ。
■謙信、庄川東岸、大門新村に布陣、右翼を北上させる。
■(秘)○上中
■(秘)○○作戦中
■(秘)○○行軍中
■(秘)作業中
「申し上げます! 最左翼の島津軍、川を渡りて敵と一戦を交える構えにございます!」
「なに! ? 我らも負けてはおられぬ! 直ちに徒渉(徒歩での渡河)の支度をいたせ!」
「お待ちください! あちらとこちらでは事の様(状況)が違いまする! まずはしかと物見を放ち、敵の有り様(様子)を掴まねばなりませぬ!」
伝令の報せを聞き、血気にはやる大将の三好長治を諫めるのは、摂津三宅城主の中川清秀である。
「左様、特にこの枇杷首より向こう岸の大門新村までの瀬は、浅うござるが中州がいくつもあり、足元を取られまする」
池田城城代の荒木村重も同じように慎重論であった。
「何を申すかお主ら、ここで武功をあげねば、兵庫の津が栄ゆ(発展する)事はないのだぞ!」
長治が声を荒らげる。
「殿、そ(それ)はここにいる皆が分きたる(わかっている)事にございます。然れど、そがために功をあせっては、要らぬ失(損害)を被りまする。なにとぞ、ここは辛抱してくだされ」
還暦に近い小西隆佐の諫言に、長治も黙るしかなかった。
「ただ今戻りましてございます!」
「おお! どうであった! ?」
川の状況と対岸の上杉軍の様子を探らせていた物見が戻ってきたのだ。
「はは、中州には見ての通り背丈ほどの葦が茂っておりますが、向こう岸の敵兵は少のうございました」
「聞いたかお主ら! この機を逃しては謙信の備えが整ってしまうぞ! 今こそ川を渡り、一戦に及ぼうぞ!」
物見からの情報で、敵の状況が掴めたのだ。当主である長治の意見を遮るものがなくなった。
庄川の西岸の枇杷首村と、東岸の大門新村の間には大きく長い中州があり、それを取り囲むかのように大小の中州が点在している。
川幅は六町ほど(650m)。
すでに布陣してあった以下の陣立てで、まず先陣の二千四百名が渡河を始めた。
・先陣左翼に荒木村重の六百、中翼に岩成友通の千二百、右翼に中川清秀の六百。
・中陣左翼に有馬則頼の六百、中翼に小西行長の千二百、右翼に伊丹親興の六百。
・本陣に三好長治の三千六百。(軍監で小西隆佐、遊軍で加藤重徳の千二百)
・後陣左翼に安宅清康の六百、中翼に安宅信康の千二百、右翼に船越景直の六百。
・合計一万二千。
■庄川東岸 吉久新村
「誠、取り掛く(攻めかかる)事なきとは、さすが義の人謙信にござるな」
渡河が終わり陣を整えた山田宗昌は一人つぶやいた。
先陣の中翼であったが、渡河が終われば南の上杉軍に対応するべく南向きに陣を構えた。布陣は下記の通り。
・先陣左翼に米良矩重の百五十、中翼に山田宗昌の三百、右翼に米良重鑑の百五十。
・中陣左翼に米良重良の百五十、中翼に荒武宗並の三百、右翼に米良重秀の百五十。
・本陣に伊東祐兵の九百。(軍監に稲津重恒、長倉祐政)
・後陣左翼に土持高信の百五十、中翼に木脇祐守の三百、右翼に藤田左近の百五十。
・合計三千。
今回、伊東祐青は城代として日向に残っている。
小佐々に与した土持家の土持高信と藤田左近も参陣している。
しかし関わりの深かった前当主の伊東祐兵は没しており、新当主の祐兵には敬意を表して、土持や米良といった国人ともお互いに誼を通わせていたのだ。
■庄川西岸 能町村 島津本陣
「兄者、われらはまだにござるか?」
伊東軍が渡河を終わり、南の上杉軍に臨むべく陣形を南向きに変えていた頃である。四男家久が聞いてきた。
「まだじゃ。それよりも先陣同士の軍が始まっておらぬではないか。矢文で約を交わしたのじゃ。こちらが違えていかがする。謙信の手並みを拝見しよう……やや! 始まったか?」
対岸の吉久新村から歓声が聞こえてきた。ホラ貝とドラの音とともに、おおおおお! という両軍の地鳴りのような雄叫びが聞こえてきたのだ。
伊東軍は三千、対する上杉軍も右翼を北に向けて進ませ、その数は三千ほど。ほぼ同数である。
■三女子村(枇杷首村より北十三町・約1.4km)
・南下中 戸次(立花)道雪・高橋紹運軍
・南下中 一条兼定軍
・南下中 龍造寺純家(政家)軍
この日の払暁(日の出の30分前後の時間帯)、寅三つ刻(0400)に立花道雪を大将とする小佐々軍は守山城を出発していた。
着陣後は個々に状況判断を行い、大将の判断で行動する。道雪の予測では最左翼の島津、左翼の三好軍の渡河地点が一番の激戦地であった。
状況によっては高橋軍、そして畠山や菊池・神保氏張勢も投入する。
右翼と最右翼は、渡河自体は簡単に行えるだろうが、渡った後の四つの城からの攻撃が怖い。道雪が庄村への渡河に集中させなかったのはそのためである。
上杉軍が二万ならば、島津一万五千、三好一万二千、立花・高橋八千、畠山他五千を入れて四万となる。それでも倍の兵数であるから十分に勝機はあると考えた。
一条・長宗我部の一万と、杉浦玄任の二万があわさって、渡河後の南部の四城が危うくなれば、増山城の守備兵も動かずにはいられないだろう。
仮に後詰めをださずに陥落したならば、その勢いを持って北上すればいい。
軍は最左翼を島津軍、右翼を三好軍、中翼を戸次・高橋軍(畠山他含む)、右翼を一条軍、最右翼が龍造寺軍である。
「申し上げます! 島津軍、伊東軍を先陣に川を渡ってございます!」
「何! ? いつじゃ?」
「は、四半刻(30分)ほど前にございます!」
「あい解った! ご武運を!」
伝令は水を飲み、すぐに戻っていった。
島津が渡河を決断したとなれば、それなりの安全が担保されての事であろう。
立花軍の基本戦略は四方向(三方向)からの渡河にて敵を分散し、兵力差をもってそのまま攻撃する、という特に変わった事のない戦法である。
策を弄されるかもしれないが、十分に注意する。
そうすれば自ずと勝ちは見えてくる、との結論であった。
立花軍、一条軍、長宗我部軍が枇杷首村を過ぎて出来田村に入った時である。
「申し上げます! 敵別働隊が放生津城に入っております!」
道雪を驚愕させる報告がはいったのだ。
■第三師団、陸路にて北信濃の平倉城へ。4/5着の予定。
■第二師団、吉城郡塩屋城下。
■第四艦隊、出羽田川郡鼠ヶ関湊。
■上杉軍城生城別働隊、喜右衛門。行軍中。
■杉浦玄任、井波城より金屋へ。
■島津(伊東)軍、庄川を渡河、南下。
■島津(肝付)軍、庄川渡河準備。
■島津本軍、庄川西岸にて待機。
■三好軍、庄川西岸枇杷首村より大門新村に向け渡河準備。
■立花軍、南下中、庄川西岸出来田村。一条軍、龍造寺軍も同じ。
■謙信、庄川東岸、大門新村に布陣、右翼を北上させる。
■(秘)○上中
■(秘)○○作戦中
■(秘)○○行軍中
■(秘)作業中
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