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九州統一なるか?純正と信長包囲網-肥薩戦争と四国戦役-
信長のむちゃ振りと純正の参戦
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永禄十二年 十月五日 諫早城
一ヶ月続いた信長の留学生問題であったが、九月の末に予定されていた留学生達が到着した。そのうち中等部が十五名である。
さすがに著名な人物ばかりではないが、純正は知っている。
そして全員の挨拶が終わったあと、大事な子どもを親御さんから預かる気持ちって、こうなのかと人数分考えながら憂鬱だった。
大学で五人と喋った時とは全く違う。森長可は最年少だったが、それでも他が年上ばかりだったので、天真爛漫なところはあっても、どこか大人びていたのだ。
今回の中学組は全員が13歳前後である。正直な所、(20歳の)純正にとっては全員子供だ。
ただ、全員が元服を終えた大人であり、自己責任で判断し、行動するように約束させた。なんでもかんでもこっちのせいにされては敵わない。
しかし、それよりも純正の頭を悩ませたのは信長からの書状であった。
『戦場の経験もさせて』
はあ? なんで?
それしか純正には言う事ができなかった。あのおっさん、何を考えているんだか。簡単に言うけど、下手すれば死ぬんだぞ。責任は問わぬ、とか言っても、絶対になんかある。
そう純正は思っていた。
しかし、もっと問題なのは、その事を生徒全員が知っている事だ。会うたびごとに、どこの戦ですか、いつですか、と目で訴えてくる。
そんな気がしてならなかった。
対島津の状況としては、3日の20時に伊東が全軍を率いて動くと言う報せを受けていた。島津もおそらく優先すべきは大口城であろうとの予測は当たっていた。
しかし、戦況がどう動いているかの情報がない。まだ詳細がわからない。しかし、軍事行動をともなう支援ではないから、大友戦のように注視してもいない。
四国戦役を宗麟に任せたが、比べると、それよりもおおざっぱな把握状況である。伊東が戦端を開いていないのはわかった。しかし、肝付と大口の状況がつかめない。
■永禄十二年 十月六日 寅三つ刻(0400) 諫早城
『発 宇土信号所 宛 総司令部 秘メ ◯四 未一(1300) 相良 大口城 包囲 解キ 撤退ス 被害 少シ 秘メ』
緊急通信で目を覚ました純正は、包囲の一角が崩れた事を知った。おそらく島津の本隊の接近を知り、交戦したかは不明だが、撤退したのだろう。
そう判断した。当初の戦略では、三方から島津を包囲して圧力をかけ、島津がいずれかに攻めかかれば、必然的に他方が手薄になる。
そこを攻撃する、というものであった。もしくは持久戦である。
しかし、伊東の主力が到着したのは聞いたが、戦果報告はない。肝付も同様である。
■永禄十二年 十月六日 酉一つ刻(1700) 諫早城
『発 種子島分遣隊司令 宛 総司令部 秘メ ◯三 巳の一(0900) 志布志城 陥落ス 種子島 肝付ノ要請ヲ受ケ 盟ヲ 結フ ワレ コレヨリ 支援二 カカル 秘メ ◯五 申一(1500) ケ 戸石浦信号所』
「なんだって!?」
純正は思わずこの通信文を見た時に声に出してしまった。これはまずい、と瞬時に感じたのだ。
志布志といえば肝付の城の中でも湊を有し、そして東西の交通と軍事の要衝である。そこが落とされたならば、肝付は動きが取れなくなる。
しかしどうやって落としたのだ?
禰寝の城に後詰めを向かわせていたにしても、本隊が北上しているのだから、国見城を攻めている肝付軍を破ったとは考えにくい。
もしそうなら途中にある肝付の本拠である高山城を狙うはずだ。
……まさか。
「水陸両用作戦か」
純正がこれまで何度も使ってきた戦法である。考えたくはなかったが、島津がそれを行って、禰寝の城の南をまわって志布志を襲ったのなら、辻褄が合う。
純正は島津の戦略、戦術に空恐ろしさを感じながら、どうすべきか思案した。
まず、考えなければならないのは、今後の戦略として、継続的に包囲が可能な状態を保たなければならないという事だ。相良は撤退したとはいえ、被害は軽微である。
問題は肝付が分断され、さらなる離反をよんで弱体化することである。もう一つは伊東だ。決戦は避けなければならない。当初の5千程度の兵力では決戦はできないし、目的でもなかった。
しかし、二万の大軍となると、どう考えても決戦を考えている。義祐の人間性はよく知らないが、ここは決戦のタイミングではない。
戦に必ずはないが、決戦するのであれば、必ず勝てる要素を積み上げて、万全の体勢で臨まなければならない。純正は差し出がましいようだが、書状を送り攻撃を控えるようにお願いした。
どうか、間に合ってくれ。そう願わずにはいられなかった。あわせて、種子島分遣隊にも送る。
『発 総司令部 宛 種子島分遣隊 秘メ 支援要請並ヒニ 支援ヲ認メル 艦隊ニテ 輸送 移送ノ 支援ヲ 行ナウベシ 但シ 艦隊ノ 武力ヲモッテ 島津ヲ 攻メル 事ナカレ 厳二 命ズ 秘メ ◯六 酉三(1800)』
信号はすぐに戸石浦の信号所にとどくだろう。しかし船が出るのは明朝だ。遅ければこの通信が届くのは翌日七日の夕方、もしくは八日になるであろう。
次回予告 第331話 三国連合vs.島津⑩島津義久vs.伊東義祐
一ヶ月続いた信長の留学生問題であったが、九月の末に予定されていた留学生達が到着した。そのうち中等部が十五名である。
さすがに著名な人物ばかりではないが、純正は知っている。
そして全員の挨拶が終わったあと、大事な子どもを親御さんから預かる気持ちって、こうなのかと人数分考えながら憂鬱だった。
大学で五人と喋った時とは全く違う。森長可は最年少だったが、それでも他が年上ばかりだったので、天真爛漫なところはあっても、どこか大人びていたのだ。
今回の中学組は全員が13歳前後である。正直な所、(20歳の)純正にとっては全員子供だ。
ただ、全員が元服を終えた大人であり、自己責任で判断し、行動するように約束させた。なんでもかんでもこっちのせいにされては敵わない。
しかし、それよりも純正の頭を悩ませたのは信長からの書状であった。
『戦場の経験もさせて』
はあ? なんで?
それしか純正には言う事ができなかった。あのおっさん、何を考えているんだか。簡単に言うけど、下手すれば死ぬんだぞ。責任は問わぬ、とか言っても、絶対になんかある。
そう純正は思っていた。
しかし、もっと問題なのは、その事を生徒全員が知っている事だ。会うたびごとに、どこの戦ですか、いつですか、と目で訴えてくる。
そんな気がしてならなかった。
対島津の状況としては、3日の20時に伊東が全軍を率いて動くと言う報せを受けていた。島津もおそらく優先すべきは大口城であろうとの予測は当たっていた。
しかし、戦況がどう動いているかの情報がない。まだ詳細がわからない。しかし、軍事行動をともなう支援ではないから、大友戦のように注視してもいない。
四国戦役を宗麟に任せたが、比べると、それよりもおおざっぱな把握状況である。伊東が戦端を開いていないのはわかった。しかし、肝付と大口の状況がつかめない。
■永禄十二年 十月六日 寅三つ刻(0400) 諫早城
『発 宇土信号所 宛 総司令部 秘メ ◯四 未一(1300) 相良 大口城 包囲 解キ 撤退ス 被害 少シ 秘メ』
緊急通信で目を覚ました純正は、包囲の一角が崩れた事を知った。おそらく島津の本隊の接近を知り、交戦したかは不明だが、撤退したのだろう。
そう判断した。当初の戦略では、三方から島津を包囲して圧力をかけ、島津がいずれかに攻めかかれば、必然的に他方が手薄になる。
そこを攻撃する、というものであった。もしくは持久戦である。
しかし、伊東の主力が到着したのは聞いたが、戦果報告はない。肝付も同様である。
■永禄十二年 十月六日 酉一つ刻(1700) 諫早城
『発 種子島分遣隊司令 宛 総司令部 秘メ ◯三 巳の一(0900) 志布志城 陥落ス 種子島 肝付ノ要請ヲ受ケ 盟ヲ 結フ ワレ コレヨリ 支援二 カカル 秘メ ◯五 申一(1500) ケ 戸石浦信号所』
「なんだって!?」
純正は思わずこの通信文を見た時に声に出してしまった。これはまずい、と瞬時に感じたのだ。
志布志といえば肝付の城の中でも湊を有し、そして東西の交通と軍事の要衝である。そこが落とされたならば、肝付は動きが取れなくなる。
しかしどうやって落としたのだ?
禰寝の城に後詰めを向かわせていたにしても、本隊が北上しているのだから、国見城を攻めている肝付軍を破ったとは考えにくい。
もしそうなら途中にある肝付の本拠である高山城を狙うはずだ。
……まさか。
「水陸両用作戦か」
純正がこれまで何度も使ってきた戦法である。考えたくはなかったが、島津がそれを行って、禰寝の城の南をまわって志布志を襲ったのなら、辻褄が合う。
純正は島津の戦略、戦術に空恐ろしさを感じながら、どうすべきか思案した。
まず、考えなければならないのは、今後の戦略として、継続的に包囲が可能な状態を保たなければならないという事だ。相良は撤退したとはいえ、被害は軽微である。
問題は肝付が分断され、さらなる離反をよんで弱体化することである。もう一つは伊東だ。決戦は避けなければならない。当初の5千程度の兵力では決戦はできないし、目的でもなかった。
しかし、二万の大軍となると、どう考えても決戦を考えている。義祐の人間性はよく知らないが、ここは決戦のタイミングではない。
戦に必ずはないが、決戦するのであれば、必ず勝てる要素を積み上げて、万全の体勢で臨まなければならない。純正は差し出がましいようだが、書状を送り攻撃を控えるようにお願いした。
どうか、間に合ってくれ。そう願わずにはいられなかった。あわせて、種子島分遣隊にも送る。
『発 総司令部 宛 種子島分遣隊 秘メ 支援要請並ヒニ 支援ヲ認メル 艦隊ニテ 輸送 移送ノ 支援ヲ 行ナウベシ 但シ 艦隊ノ 武力ヲモッテ 島津ヲ 攻メル 事ナカレ 厳二 命ズ 秘メ ◯六 酉三(1800)』
信号はすぐに戸石浦の信号所にとどくだろう。しかし船が出るのは明朝だ。遅ければこの通信が届くのは翌日七日の夕方、もしくは八日になるであろう。
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