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九州三強と中央への目-肥前王 源朝臣小佐々弾正大弼純正-

第二軍、対吉弘鑑理

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九月五日 卯の三つ刻(0600) 香春岳城 第二軍幕舎 

『発 総軍司令部 宛 第一第二軍司令部 ヒメ タイ ダウセツ エングン ハケンス ダイイチグンハ タケヤマジヨウ キユウエンニ ムカイ ダイニグンハ カワラダケジヨウ ニテ テキト タイジセヨ ヒメ 四日 午三つ刻(1200)』

「原田殿、殿が援軍を道雪に向けて派遣したようです!」
「そのようですな」。
落ち着いている。歴戦の将とはこういうものなのだろうか。

「わしもそろそろ隠居せねばならぬ歳ゆえ、この大戦を最期にしたいものですな」。
「原田殿、この様な時に何を!それにまだまだでござろう!」
「わはははは。冗談にござるよ。さて、どうしますかな」。

原田隆種は童の様に笑う。種実は自分もこの様に歳をとりたい、とふと思った。

「殿は、足止めが目的だと言っておりましたが、このまま何もせず、というのもいただけませぬ。我らはやられてばかりで、せめて敵に一矢報いなければ」。
「なるほど、そうですなあ。では、攻めまするか。どう攻めますか?」

種実は少し考えてから答えた。

「敵がもし大砲を持っていないなら、西側の水の手を切る策も、東の平地から大砲で攻めて一ノ岳から二ノ岳を狙い、その隙に三ノ岳の鞍部から攻め上がる策も、どちらでもようござるが・・・」

「ただ、これ以上の損害は許せませぬ。ゆえに攻めなくても落とせる、水の手を切る策で行くのがよいかと存じます。敵が水の手を切らせぬために、下ってくれば鉄砲にて攻撃します。さすれば三日~五日で城内の水はなくなりましょう」。

「では軍はなんとする?一隊か、それとも分けるか。陣構えはいかがか?」
原田隆種が聞く。

「では、西の水の手を切る隊は陸軍主体でお願いしたい。陣構えは後方に砲兵隊を置き、その前に方陣の槍歩兵、左右を鉄砲隊でおさえ、更に騎兵を配置します」。

「さすれば砲兵にて相手を撹乱し、遠距離にて鉄砲で射撃を行い、近距離に迫ってくる敵には騎兵と槍兵(歩兵)が対応します」。

「進むにつれ隘路の幅はせばまってくるゆえ、騎兵は後方へと配する様になりますが、槍歩兵と銃兵を合わせた方陣はどの方向からの攻撃にも対応できます」。

なるほど、といわんばかりに隆種はニコニコとしている。

「この軍の大将はおぬしである。わしはそれで良いと思うが、他になければそうされよ」。

「はい!全軍出撃じゃ!賢光大佐、陸軍の指揮はお願いします」。
陸軍司令官の小田賢光大佐は『はは』答え、部隊の宿営地へ戻った。

こうして第二次香春岳城攻撃戦が始まった。
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