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九州三強と中央への目-肥前王 源朝臣小佐々弾正大弼純正-
着到の隈部親永
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九月四日 辰一つ刻(0700) 北肥後 筒ヶ岳城下 第五軍幕舎 神代貴茂准将
総軍司令部から信号がきた。
『発 総軍司令部 宛 第五軍司令部 メ アカボシ アソ フクゾクス クマベ キタルトキ カウスレバ メツシ フクスレバ トドマラセ グンシレイハ ミヨウダイトシテ ゼングンヲ ヒキヰテ ブンゴニ シンカウ セヨ メ』
なるほど、赤星と阿蘇がわれらに服属したと。
で、あればわれらがやる事は簡単であるな。要するにのこのこやってきた隈部に服属を迫り、抵抗するなら殲滅し、降伏するならこの場に留めて残りの国人衆を糾合して、阿蘇と合同で豊後に向かえ、という事だな。
しかし、こうなっては隈部も可哀そうだな。ここまで自分の目算が崩れるとは、奴も思っていなかったであろう。第五軍、肥後から豊後へ侵攻する部隊の大将である神代貴茂准将は、信号文を読みながらほくそ笑んだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
辰二つ刻(0730) 筒ヶ岳城へ向かう道中 ※隈部親永
「まったく、何だというのだ。赤星の所業は無礼千万ではないか!確かに我らは長年北肥後の覇権を巡って争っておった。しかし、こたびはその長年の恨みつらみを水に流し、合力して小佐々に当たれとの、左衛門督様のお達しではないか」。
それを・・・。
『こたびの戦、われらに義があるとは思えぬゆえ、帰らせていただく。礼儀にてここまで参ったが、やはり考えは変わらぬ。ごめん』。
だと?たわけた事を。
まあよい、こたびの戦は切り取り勝手である。赤星が来なければわれらの取り分が増えるだけの事。確かに赤星と合志の兵二千の離脱は痛いが、それでも阿蘇の四千を入れればわれらは八千。敵より有利なのは変わらぬわ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
辰三つ刻(0800) 筒ヶ岳城下 隈部親永
「との!筒ヶ岳城が見えてまいりました!・・・しかし、何か様子が変でござる!」
先行させてある斥候から報告があった。
「なんだ?なにが変なのだ?」
「はい、遠目からははっきりとは確認できませんでしたが、城内には大きな鉄砲の様な物が備えつけられております。それから城下には三千~四千の兵が陣をはっておりまする。こちらも大鉄砲があり、その数は十や二十ではありませぬ」。
なんだと?左衛門督様が大砲なる巨大な鉄砲を作っておるという噂は聞いた事があったが、あくまで噂で気にもとめておらなんだ。それを小佐々が持っているだと?それも十や二十ではない?そんな馬鹿な!
敵は筒ヶ岳城の南東約一里、菊池川沿いの平野部にある岩崎に陣を張っている。くそう、われらが陣をおこうとしていた場所なのだが。仕方あるまい。少し北、半里ほど離れた玉名に陣を張ろう。
「申し上げます!敵から降伏の使者が参っております!」
「なに!?降伏だと?笑わせるな。まあよい、会うだけ会ってやろうではないか」。
わしは大上段に構え、小佐々の使者を迎えた。
「筑後守どのにおかれては、遠路はるばるご苦労にござった」。
この男は何を言っているのだ?使者の分際で『どの』だと?
「さて、いかがいたそう。降伏されるか?それともここで死ぬるか?」
もう我慢の限界だ。
「寝ぼけた事を申すな!さっきから聞いておれば調子に乗りおって。使者風情の無礼な振る舞いにも我慢しておったのに、降伏か死だと?なぜその二つなのだ!?」
「その二つしかないからだ。隈部どの。お主に勝ち目はござらん」。
使者はわしに近寄ってきた。近習が使者を静止するため立ち上がったので一旦止まり、はあ、とため息をついて二つの文を近習に渡した。わしはそれを読み愕然とした。あり得ぬ事が書いてあったのだ。
「お主が頼みにしている阿蘇どのも、途中で帰った赤星どのも、とっくの昔にわれらに服属しておる。ゆえに勝ち目がないと申したのだ」。
そんな馬鹿な。なぜこの様な事が起きるのだ?まさか赤星はその上で帰ったのか?阿蘇どのは?左衛門督様から文が来たときには、もう小佐々と通じておったのか?
だとしても赤星にしても阿蘇にしても、なぜこの様に早く文のやり取りができるのだ?あまりにも早すぎるではないか。
呆然として言葉がでないわしに向かって、
「どうなのだ!降るのか!戦って死ぬのか!?」
使者がわしに怒号の様な勢いで詰め寄る。
「く、だ、る。・・・・ぐう。く、くだりま、する」。
「相わかった。わが殿にはその様にお伝えいたす。おって指示を待つがよい」。
使者は立ち上がり、踵を返して戻っていった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『発 第五軍司令部 宛 総軍司令部ならびに前線各司令部 ヒメ クマベ カウフクス ワレラ コレヨリ クマベイガイヲ キユウガウシ アソトトモニ ウチマキジヨウヨリ ブンゴ ナンザンジヨウヘ シンカウス ヒメ 四日 辰四つ刻(0830)』
総軍司令部から信号がきた。
『発 総軍司令部 宛 第五軍司令部 メ アカボシ アソ フクゾクス クマベ キタルトキ カウスレバ メツシ フクスレバ トドマラセ グンシレイハ ミヨウダイトシテ ゼングンヲ ヒキヰテ ブンゴニ シンカウ セヨ メ』
なるほど、赤星と阿蘇がわれらに服属したと。
で、あればわれらがやる事は簡単であるな。要するにのこのこやってきた隈部に服属を迫り、抵抗するなら殲滅し、降伏するならこの場に留めて残りの国人衆を糾合して、阿蘇と合同で豊後に向かえ、という事だな。
しかし、こうなっては隈部も可哀そうだな。ここまで自分の目算が崩れるとは、奴も思っていなかったであろう。第五軍、肥後から豊後へ侵攻する部隊の大将である神代貴茂准将は、信号文を読みながらほくそ笑んだ。
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辰二つ刻(0730) 筒ヶ岳城へ向かう道中 ※隈部親永
「まったく、何だというのだ。赤星の所業は無礼千万ではないか!確かに我らは長年北肥後の覇権を巡って争っておった。しかし、こたびはその長年の恨みつらみを水に流し、合力して小佐々に当たれとの、左衛門督様のお達しではないか」。
それを・・・。
『こたびの戦、われらに義があるとは思えぬゆえ、帰らせていただく。礼儀にてここまで参ったが、やはり考えは変わらぬ。ごめん』。
だと?たわけた事を。
まあよい、こたびの戦は切り取り勝手である。赤星が来なければわれらの取り分が増えるだけの事。確かに赤星と合志の兵二千の離脱は痛いが、それでも阿蘇の四千を入れればわれらは八千。敵より有利なのは変わらぬわ。
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辰三つ刻(0800) 筒ヶ岳城下 隈部親永
「との!筒ヶ岳城が見えてまいりました!・・・しかし、何か様子が変でござる!」
先行させてある斥候から報告があった。
「なんだ?なにが変なのだ?」
「はい、遠目からははっきりとは確認できませんでしたが、城内には大きな鉄砲の様な物が備えつけられております。それから城下には三千~四千の兵が陣をはっておりまする。こちらも大鉄砲があり、その数は十や二十ではありませぬ」。
なんだと?左衛門督様が大砲なる巨大な鉄砲を作っておるという噂は聞いた事があったが、あくまで噂で気にもとめておらなんだ。それを小佐々が持っているだと?それも十や二十ではない?そんな馬鹿な!
敵は筒ヶ岳城の南東約一里、菊池川沿いの平野部にある岩崎に陣を張っている。くそう、われらが陣をおこうとしていた場所なのだが。仕方あるまい。少し北、半里ほど離れた玉名に陣を張ろう。
「申し上げます!敵から降伏の使者が参っております!」
「なに!?降伏だと?笑わせるな。まあよい、会うだけ会ってやろうではないか」。
わしは大上段に構え、小佐々の使者を迎えた。
「筑後守どのにおかれては、遠路はるばるご苦労にござった」。
この男は何を言っているのだ?使者の分際で『どの』だと?
「さて、いかがいたそう。降伏されるか?それともここで死ぬるか?」
もう我慢の限界だ。
「寝ぼけた事を申すな!さっきから聞いておれば調子に乗りおって。使者風情の無礼な振る舞いにも我慢しておったのに、降伏か死だと?なぜその二つなのだ!?」
「その二つしかないからだ。隈部どの。お主に勝ち目はござらん」。
使者はわしに近寄ってきた。近習が使者を静止するため立ち上がったので一旦止まり、はあ、とため息をついて二つの文を近習に渡した。わしはそれを読み愕然とした。あり得ぬ事が書いてあったのだ。
「お主が頼みにしている阿蘇どのも、途中で帰った赤星どのも、とっくの昔にわれらに服属しておる。ゆえに勝ち目がないと申したのだ」。
そんな馬鹿な。なぜこの様な事が起きるのだ?まさか赤星はその上で帰ったのか?阿蘇どのは?左衛門督様から文が来たときには、もう小佐々と通じておったのか?
だとしても赤星にしても阿蘇にしても、なぜこの様に早く文のやり取りができるのだ?あまりにも早すぎるではないか。
呆然として言葉がでないわしに向かって、
「どうなのだ!降るのか!戦って死ぬのか!?」
使者がわしに怒号の様な勢いで詰め寄る。
「く、だ、る。・・・・ぐう。く、くだりま、する」。
「相わかった。わが殿にはその様にお伝えいたす。おって指示を待つがよい」。
使者は立ち上がり、踵を返して戻っていった。
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『発 第五軍司令部 宛 総軍司令部ならびに前線各司令部 ヒメ クマベ カウフクス ワレラ コレヨリ クマベイガイヲ キユウガウシ アソトトモニ ウチマキジヨウヨリ ブンゴ ナンザンジヨウヘ シンカウス ヒメ 四日 辰四つ刻(0830)』
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