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九州三強と中央への目-肥前王 源朝臣小佐々弾正大弼純正-
香春岳城の戦い その弐
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九月三日 巳の一つ刻(09:00)香春岳城 山麓 立花鑑載
「まさか!?」
わしは香春岳城の本丸を見上げた。なんと、わが軍と同じ仏狼機砲があるではないか。しかも一門や二門ではない。何門あるのだ?しかも五百町以上あるぞ。確かにわれらは風下だ。しかも高所からの砲撃でこれだけ射程が延びるものなのか?
こうしてはおれん!砲撃は続いている。
「みな静まれ!静まるのだ!」
そうは言ったものの、簡単に収まるはずがない。わが兵とて演習で知ってはいても、みずからが砲撃にさらされる事など考えてもみなかったであろう。兵は混乱し指揮系統も引き裂かれつつある。なんとか統制しなければ。
しばらくして砲撃が終わった。
なんとか統制を取り戻し、隊列を整えていたその時、左右の山から敵兵が躍り出てきた。まるで予期していない敵兵からの攻撃である。砲撃の混乱で鉄砲隊の銃撃の準備はできていない。刀や槍、徒手空拳での乱戦となった。
なんだ?何がどうなっているのだ?最初の銃撃の後、敵はちりじりに逃げたのではないのか?極めつけに山に砲撃も御見舞したのだ。どこに隠れていたのだ?隠れる場所などないはずだが・・・・。わしの頭の中で常識と非常識がぐるぐる回っている。
あり得ない事が起きている。しかし現実に目の前で起きている事実は、それがあり得る事を証明しているのだ。むらがる雑兵を相手取りながら、賢明に事実を認め理解しようと試みる。
「うぐぅぅ!」
乱戦の中、右脇腹に激痛が走った。長槍が刺さっている。その先にはぶるぶると震える足軽がいた。むん!と刀で槍をたたっ斬り、抜いた槍を放り投げ、ずかずかと足軽に近寄る。
足軽は尻もちをつき後ずさる。わしは一刀のもと切り捨てた。ずきんずきんと何度も痛みがはしる。わしの心の臓の動きを表すかの様に、血が流れでる。
衣は血で染まり真っ赤である。混戦はなんとかわが方に有利に進み、敵は撤退しているようだ。いったい我が方の損失はどれほどなのだ?予想以上に敵兵の数が多かったのか?それにしても見誤ったわ。不覚。
■巳一つ刻(09:00)第二軍 香春岳城 東側平地 高橋鑑種
『発 笠木山信号所 宛 総軍司令部 メ モジゼウ カンラク フツカトリヒトツドキ(17:00) メ 三日 寅一つ刻(03:00)』
(なんと!早すぎる。さすがは道雪どの。雷神の名の通りにござるな)。敵を褒める余裕があった。それは城の東側、平地の奪取が容易に終わったからである。さしたる守備兵もおらず、なんなく占領できた。
さらに思いの外広く、砲兵三個中隊と同数の歩兵中隊を配置できる。
どおおおおおん!どおおおん!
一ノ岳の向こう側から砲撃音が聞こえてきた。
(立花どの、『水』と言っておきながら大砲で攻撃するとは。『火』の戦術はわしが言った事ではないか。まったく・・・)苦笑いをする。本来、陣頭に立って戦うのはやぶさかではないが、大将の立場上、本陣からは動かずにいた。
しかし大砲の、実戦での威力を見てみたい誘惑には勝てなかった。演習で大砲の音には慣れてはいたが、やはり間近で見て体験しておく必要があると思ったのだ。
「これは高橋どの、御大将がここまでこられるとは。大将はどっしりと本陣にて構え、戦の大まかな差配をされていれば良いのではありませぬか?」
笑いながら旅団長の小田賢光大佐は言う。
「まあ、そう言われるな。何事も経験。わしは南蛮式の戦には貴殿らより不慣れゆえ、いろいろと見ておかねばならぬと思うてな」。
わしも笑みが溢れる。負けるはずがないという余裕なのだろうか。
「では私はここにおりますのでどうぞ平地まで行って御覧ください。中尉!高橋殿をご案内いたせ!」
配下の中尉がわしを案内する。
平地までは大砲の台車と人一人が通れるほどの道がある。整備はさほど行き届いてはいないが、搬送に問題はなかったのだろう。台地は、よくみると何十年も前に放棄され、手入れされておらぬ曲輪の様にも見える。
しかし周りには木々が生い茂っているが、ここだけは長くても足元ほどの丈の草に、地面も見える。そして足元から正面に目をやると、壮観だ。十八門の砲が一列にならび一ノ岳を狙っている。次の瞬間にはいっせいに火を吹き攻撃を開始するのであろう。
いつの間にか砲撃音は止んでいた。
「いつ砲撃するのだ?」
「号令いただければ、いつでも」
わしが、よし、と声をあげようとした時であった。
どおおおおおん!どおおおん!どおおおおおん!どおおおん!
なんだ!?と一ノ岳を見上げると、目を疑った。大砲があるではないか。まずい!!次の瞬間、台地は砲弾の雨にさらされ、大砲はぐじゃんどがんと音をたてて壊されていく。兵が逃げ惑っている。
どおおおおん!
わしの視界に入った砲弾はみるみるうちに大きくなり、わしの視界を遮り、ついには何も見えなくなった。
ぐじゃあ。ずるずる、どすん。
砲兵中隊指揮官、歩兵中隊指揮官の退却の号令が鳴り響く。
「まさか!?」
わしは香春岳城の本丸を見上げた。なんと、わが軍と同じ仏狼機砲があるではないか。しかも一門や二門ではない。何門あるのだ?しかも五百町以上あるぞ。確かにわれらは風下だ。しかも高所からの砲撃でこれだけ射程が延びるものなのか?
こうしてはおれん!砲撃は続いている。
「みな静まれ!静まるのだ!」
そうは言ったものの、簡単に収まるはずがない。わが兵とて演習で知ってはいても、みずからが砲撃にさらされる事など考えてもみなかったであろう。兵は混乱し指揮系統も引き裂かれつつある。なんとか統制しなければ。
しばらくして砲撃が終わった。
なんとか統制を取り戻し、隊列を整えていたその時、左右の山から敵兵が躍り出てきた。まるで予期していない敵兵からの攻撃である。砲撃の混乱で鉄砲隊の銃撃の準備はできていない。刀や槍、徒手空拳での乱戦となった。
なんだ?何がどうなっているのだ?最初の銃撃の後、敵はちりじりに逃げたのではないのか?極めつけに山に砲撃も御見舞したのだ。どこに隠れていたのだ?隠れる場所などないはずだが・・・・。わしの頭の中で常識と非常識がぐるぐる回っている。
あり得ない事が起きている。しかし現実に目の前で起きている事実は、それがあり得る事を証明しているのだ。むらがる雑兵を相手取りながら、賢明に事実を認め理解しようと試みる。
「うぐぅぅ!」
乱戦の中、右脇腹に激痛が走った。長槍が刺さっている。その先にはぶるぶると震える足軽がいた。むん!と刀で槍をたたっ斬り、抜いた槍を放り投げ、ずかずかと足軽に近寄る。
足軽は尻もちをつき後ずさる。わしは一刀のもと切り捨てた。ずきんずきんと何度も痛みがはしる。わしの心の臓の動きを表すかの様に、血が流れでる。
衣は血で染まり真っ赤である。混戦はなんとかわが方に有利に進み、敵は撤退しているようだ。いったい我が方の損失はどれほどなのだ?予想以上に敵兵の数が多かったのか?それにしても見誤ったわ。不覚。
■巳一つ刻(09:00)第二軍 香春岳城 東側平地 高橋鑑種
『発 笠木山信号所 宛 総軍司令部 メ モジゼウ カンラク フツカトリヒトツドキ(17:00) メ 三日 寅一つ刻(03:00)』
(なんと!早すぎる。さすがは道雪どの。雷神の名の通りにござるな)。敵を褒める余裕があった。それは城の東側、平地の奪取が容易に終わったからである。さしたる守備兵もおらず、なんなく占領できた。
さらに思いの外広く、砲兵三個中隊と同数の歩兵中隊を配置できる。
どおおおおおん!どおおおん!
一ノ岳の向こう側から砲撃音が聞こえてきた。
(立花どの、『水』と言っておきながら大砲で攻撃するとは。『火』の戦術はわしが言った事ではないか。まったく・・・)苦笑いをする。本来、陣頭に立って戦うのはやぶさかではないが、大将の立場上、本陣からは動かずにいた。
しかし大砲の、実戦での威力を見てみたい誘惑には勝てなかった。演習で大砲の音には慣れてはいたが、やはり間近で見て体験しておく必要があると思ったのだ。
「これは高橋どの、御大将がここまでこられるとは。大将はどっしりと本陣にて構え、戦の大まかな差配をされていれば良いのではありませぬか?」
笑いながら旅団長の小田賢光大佐は言う。
「まあ、そう言われるな。何事も経験。わしは南蛮式の戦には貴殿らより不慣れゆえ、いろいろと見ておかねばならぬと思うてな」。
わしも笑みが溢れる。負けるはずがないという余裕なのだろうか。
「では私はここにおりますのでどうぞ平地まで行って御覧ください。中尉!高橋殿をご案内いたせ!」
配下の中尉がわしを案内する。
平地までは大砲の台車と人一人が通れるほどの道がある。整備はさほど行き届いてはいないが、搬送に問題はなかったのだろう。台地は、よくみると何十年も前に放棄され、手入れされておらぬ曲輪の様にも見える。
しかし周りには木々が生い茂っているが、ここだけは長くても足元ほどの丈の草に、地面も見える。そして足元から正面に目をやると、壮観だ。十八門の砲が一列にならび一ノ岳を狙っている。次の瞬間にはいっせいに火を吹き攻撃を開始するのであろう。
いつの間にか砲撃音は止んでいた。
「いつ砲撃するのだ?」
「号令いただければ、いつでも」
わしが、よし、と声をあげようとした時であった。
どおおおおおん!どおおおん!どおおおおおん!どおおおん!
なんだ!?と一ノ岳を見上げると、目を疑った。大砲があるではないか。まずい!!次の瞬間、台地は砲弾の雨にさらされ、大砲はぐじゃんどがんと音をたてて壊されていく。兵が逃げ惑っている。
どおおおおん!
わしの視界に入った砲弾はみるみるうちに大きくなり、わしの視界を遮り、ついには何も見えなくなった。
ぐじゃあ。ずるずる、どすん。
砲兵中隊指揮官、歩兵中隊指揮官の退却の号令が鳴り響く。
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