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九州三強と中央への目-肥前王 源朝臣小佐々弾正大弼純正-
9/2 19:00 蒲池鑑盛 嵐の前の静けさ
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二日目 戌一つ刻(19:00) 角牟礼城下 蒲池鑑盛
日田勢八百も合わせて到着した。角牟礼城は城主の森五郎左衛門鑑高が指揮をとり、魚返・中島・志津利氏などの玖珠郡衆が籠城している。弓矢の名手、宿利外記もいて接近戦では注意が肝要だ。
角牟礼城は高さが六町ほどの角埋山の山頂に築かれている。周りは切り立った岩山でまさに要害である。本丸は山頂北西端にあり、二の丸、三の丸が空堀と土塁、そして要所に石垣を配して畝状竪堀群と無数の曲輪で守っている。
城の東側は南北に森川が流れており、川沿いは平野になっていて集落が点在している。川幅はせまい。川の東側、玄興院と天満社に陣を構えた。城までは十三町ほどだ。本陣目の前の川は、人が通れる浅瀬になっている。
その先も平野で視界が開けているので、大軍を展開しやすい。日は沈んでいたが軍議を開く。急を要するのだ。西牟田どの、星野どの、草野どの、黒木どの等の主要な国人を集める。
「各々方、これからどの様にして城を攻めるか協議いたそう」
わしは皆の顔を見回して告げる。
「ではまずは、要害、堅城にて降伏を勧めましょう。応じずともやらねばなりませぬ」。
西牟田どのが発言する。
うむ、そうだ、といって皆がうなずく。
「期限は昼ごろでよろしいでしょう。もともと応じるとは思っておりませぬ。形だけです。そしてそれまでの間に、軍を動かしまする」。
どこに動かすのだ?皆が一様に身を乗り出す。
「そして昼までに移動を終わらせるのです。半里もありませぬゆえ、半刻もあれば移動あたうでしょう。昼に降伏がなければ大砲にて砲撃を開始いたします。反対側の山の斜面から五町ほどです。届けばよし。届かなくても、土塁石垣を壊す事はできます」。
「そうして敵の意気をくじきつつ、別働隊が城攻めを行うのです」。
「調べによれば、本丸から南東へは尾根伝いに平地が続いていて、その南側に水の手があります」。
「本丸の南側から西側の二の丸、三の丸は頑強です。まず砲撃で敵の意識を集中させ、一番弱いであろう水の手から登り、尾根伝いに平地を本丸まで駆け上がりましょう」。
西牟田殿の発言に皆が同意する。
そこで、妙見城主の星野重実どのが口を開いた。
「西牟田殿のご意見、至極もっともにございます。それがしも賛成にござる。それに補足いたしとうございます」。
皆が今度は星野殿の方を向いて発言を待つ。
「されば、ここから北東三里半先(14km)、歩いて一刻半(3時間)のところには、帆足鑑直が守る日出生《ひじゅう》城がありもうす。兵はこちらも変わらず千足らず、六~七百ほどです。勇将でなる帆足は、密かに目立たぬよう兵を分散させて接近し、奇襲にて挟撃をしかけてくるやもしれませぬ」。
「兵の数はこちらが圧倒的に上にござりますれば、二手に分け、それぞれを同じ様に攻めるのが上策かと存じます」。
「兵法において兵を分けるは各個に敗れる恐れがあります。しかしそれは、各個が敵の一隊と同数程度、もしくは奇襲などで不意を突かれた場合でござる。もとより奇襲は寡兵が行う手立てにて、構えておれば恐れる事はありません」。
皆がうなずく。
「他に意見はありませぬか?では、星野殿の言われる様に二手に分け、角牟礼城は西牟田殿の策でまいるとする。隊はこちらがわしと草野殿、日出生城は西牟田殿を大将として、星野殿と黒木どの、陸軍は一個連隊と半個連隊で分けるとしよう。編成は小田大佐、お任せいたす」。
陸軍第三混成旅団長の小田増光大佐が返事をし、軍議は終わった。
日田勢八百も合わせて到着した。角牟礼城は城主の森五郎左衛門鑑高が指揮をとり、魚返・中島・志津利氏などの玖珠郡衆が籠城している。弓矢の名手、宿利外記もいて接近戦では注意が肝要だ。
角牟礼城は高さが六町ほどの角埋山の山頂に築かれている。周りは切り立った岩山でまさに要害である。本丸は山頂北西端にあり、二の丸、三の丸が空堀と土塁、そして要所に石垣を配して畝状竪堀群と無数の曲輪で守っている。
城の東側は南北に森川が流れており、川沿いは平野になっていて集落が点在している。川幅はせまい。川の東側、玄興院と天満社に陣を構えた。城までは十三町ほどだ。本陣目の前の川は、人が通れる浅瀬になっている。
その先も平野で視界が開けているので、大軍を展開しやすい。日は沈んでいたが軍議を開く。急を要するのだ。西牟田どの、星野どの、草野どの、黒木どの等の主要な国人を集める。
「各々方、これからどの様にして城を攻めるか協議いたそう」
わしは皆の顔を見回して告げる。
「ではまずは、要害、堅城にて降伏を勧めましょう。応じずともやらねばなりませぬ」。
西牟田どのが発言する。
うむ、そうだ、といって皆がうなずく。
「期限は昼ごろでよろしいでしょう。もともと応じるとは思っておりませぬ。形だけです。そしてそれまでの間に、軍を動かしまする」。
どこに動かすのだ?皆が一様に身を乗り出す。
「そして昼までに移動を終わらせるのです。半里もありませぬゆえ、半刻もあれば移動あたうでしょう。昼に降伏がなければ大砲にて砲撃を開始いたします。反対側の山の斜面から五町ほどです。届けばよし。届かなくても、土塁石垣を壊す事はできます」。
「そうして敵の意気をくじきつつ、別働隊が城攻めを行うのです」。
「調べによれば、本丸から南東へは尾根伝いに平地が続いていて、その南側に水の手があります」。
「本丸の南側から西側の二の丸、三の丸は頑強です。まず砲撃で敵の意識を集中させ、一番弱いであろう水の手から登り、尾根伝いに平地を本丸まで駆け上がりましょう」。
西牟田殿の発言に皆が同意する。
そこで、妙見城主の星野重実どのが口を開いた。
「西牟田殿のご意見、至極もっともにございます。それがしも賛成にござる。それに補足いたしとうございます」。
皆が今度は星野殿の方を向いて発言を待つ。
「されば、ここから北東三里半先(14km)、歩いて一刻半(3時間)のところには、帆足鑑直が守る日出生《ひじゅう》城がありもうす。兵はこちらも変わらず千足らず、六~七百ほどです。勇将でなる帆足は、密かに目立たぬよう兵を分散させて接近し、奇襲にて挟撃をしかけてくるやもしれませぬ」。
「兵の数はこちらが圧倒的に上にござりますれば、二手に分け、それぞれを同じ様に攻めるのが上策かと存じます」。
「兵法において兵を分けるは各個に敗れる恐れがあります。しかしそれは、各個が敵の一隊と同数程度、もしくは奇襲などで不意を突かれた場合でござる。もとより奇襲は寡兵が行う手立てにて、構えておれば恐れる事はありません」。
皆がうなずく。
「他に意見はありませぬか?では、星野殿の言われる様に二手に分け、角牟礼城は西牟田殿の策でまいるとする。隊はこちらがわしと草野殿、日出生城は西牟田殿を大将として、星野殿と黒木どの、陸軍は一個連隊と半個連隊で分けるとしよう。編成は小田大佐、お任せいたす」。
陸軍第三混成旅団長の小田増光大佐が返事をし、軍議は終わった。
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