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九州三強と中央への目-肥前王 源朝臣小佐々弾正大弼純正-

遡ること10時間半前 

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開戦初日 未の一つ刻(PM1:00) 肥後 隈部城 隈部親永

左衛門督様から文が届いた。

『われら、九州探題、六カ国守護の立場より、秩序を乱す毛利を討つ。総勢二万。その際小佐々の助力があるかもしれぬゆえ、北肥後の国人衆は、小佐々に与する小代・内古閑を攻める様に。総大将を隈部親永どの、副将を赤星統家どのとする。万事協議して所領は切り取り勝手。なお、後詰めとしては阿蘇どのにもご助力願っている。しかしあくまで後詰めゆえ、阿蘇殿の配下として動くわけではないので安心すべし』。

なるほど、左衛門督様は毛利を攻めるか。さもありなん。今が絶好の機であろうからな。陣触れを出してすぐ我らに文をよこしたのなら、ちょうど今頃は豊前松山城付近に布陣しているころだろう。

いや、戸次道雪の事、すでに攻め落としているかもしれんな。そしてこの文だが、内容は違えど、北肥後の他の諸将にも送ってのいるだろう。そうなれば、わしがこれから陣触れを出し、使者がそれぞれの城に着き、それから兵を集めるのではない。

すでに各城で陣触れは出ているであろうから、おおよそ明後日にはこちらに着くであろう。それから出陣して筒ヶ岳城に到着するのは、明明後日の朝であろうか。

筒ヶ岳城までは、二刻半と四半刻、七里の距離だ。

三日目 未の一つ刻(PM1:00)全軍到着
三日目 未の二つ刻(PM2:00)筒ヶ岳城(小代氏居城)へ向け出立
四日目 辰の二つ刻(AM7:30)筒ヶ岳城到着

ただ問題は、いやそれが唯一の問題だ。

左衛門督様は勝てるのだろうか?正直な所、九州探題や六カ国守護など名ばかりで、治めているのは豊後のみ。北肥後に支配力と日向に親大友の土持氏と伊東氏。どうみても陰りが見えておる。

対して小佐々はどうだ?肥前をほぼ平らげ、筑前筑後を服属させて、さらには天草郡の半分と玉名郡、飽田郡の半分をも手中に収めている。兵力で考えれば二倍以上のの差がある。ここは考えどころだ。

勝つ方、いや結果的に勝った方につかなければ、家が滅ぶ。どうするべきか。戦は兵の数だけではない。しかし、この差はいかんともしがたい。

ただし、小佐々は後顧の憂いがないとはいえ、全力を投じはしないだろう。肥前に守備隊を残すであろうから、主力は筑前筑後衆、そして龍造寺とその旧臣の国人どもだろう。さすれば互角とまではいかぬとも、三万ほどの兵力ではなかろうか。

これならやり方によっては勝てる。しかし、確信は持てぬ。そもそも戦に必ずはない。あわせて、小佐々の強さと言えば、鉄砲の数と大筒じゃ。あれは鉄砲が飛んで二町(約200m)じゃが、五町ほど飛ぶらしい。

にわかには信じられんが、これまでの戦もそうやって勝ってきた。そしてその大砲は、鉄砲とは使い道が違うようだ。人を殺めるよりも、衝撃で混乱を誘う、もしくは土塁や石塁などを破壊するのが目的らしい。

さもありなん。いかに大きな鉄砲とて、当たって死ぬのはせいぜい二人か三人であろう。しかも、その大砲・・・。半年前に大事故があり、大砲がしたようだ。造船所も作業場もかなりの被害とのこと。

これは確かな情報だ。

だとすれば、必ず小佐々が勝つとは言い切れぬ。それにこれから小佐々に服属を願い出ても、小代や内古閑の後塵を拝する。領土を接しているわれらは、大友はもちろん阿蘇の勢力下にある北肥後においては、一朝有事の際はすぐさま捻り潰される。

どうするべきか・・・・。しかし、ここでわしが悩んだとして、赤星に合志、城や名和をはじめとした国人衆は集まってくるであろう。集まってやはり止めるなど、出来はせぬ。・・・・・。

もはや、賽は投げられた、か。
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