上 下
195 / 767
九州三強と中央への目-肥前王 源朝臣小佐々弾正大弼純正-

Re:永禄遣欧使節団

しおりを挟む
永禄十一年 七月 横瀬浦港 小佐々純正

永禄五年、今から六年前にポルトガルに送った使節団(留学生)が帰ってきた。

数学・物理学・天文学・地理学・科学・化学・建築学・工学・農学・医学・薬学・造船学・弾道学・土木工学・語学(ポルトガル語・スペイン語・英語・オランダ語・フランス語)などなど。

実学を主に学んでくる様に言っていたんだが、大学は宗教色が強すぎて話にならなかったらしい。研究といった部分で言えばむしろ大学の外にあるアカデミーの存在が大きかったようだ。

特殊な技能や知識などは、ある意味職人に分類されていた。いや、俺にしてみれば別にどうでもいいんだよね。船や大砲や鉄砲、農業や林業や漁業、その他富国強兵に役立つならなんでもいい。そして大学に早速学部を作った。

すべての学部を作り、すべてに研究室を設立した。教育に関しては文部省だが、研究に関しては工部省の管轄とした。そして全員に持ち回りで中学校の教師をさせた。これで中学校の教育の基礎ができた。小学校は領内の三分の二が完成している。

中学校の校舎は手つかずだが、これで建造に拍車がかかるだろう。もともと校舎はあっても教える人材がいなかった。

今回の留学から得るものは大きい。今後も引き続き一年ごとに派遣しよう。留学生達には帰港初日はしっかり休んでもらった。街にでかけて遊ぶ者もいたが、こちらが用意した宿舎で休んだ者が多かった。

本当は一ヶ月ほど休暇をとらせて、ゆっくりさせてやりたいのだが、そうもいかない。彼らの力が必要なのだ。さすがに農家出身者はいかなったが、今後学校教育が進み、教育レベルに差がなくなれば増えてくるだろう。

しかしその際に、タダでさえ少ない日本人だ。外国でも仲良くしてほしいが、武家と商家、それから農民の子供達が身分の差を越えて仲良くできるだろうか。これは簡単な問題ではない。節度は必要だが、いじめや見下す様な事があってはならない。

人材が育って、指導者や引率をする人間の中に、平民出身が出てくれば多少は変わるだろう。もう少し時が必要だ。時間をかけてゆっくり変えていこう。

そして、今回彼らがもたらした物で最も目をひくのは、何といっても活字印刷機だ。これで様々な文書を印刷できる。

その他に農作物として、ジャガイモやトウモロコシ、サツマイモにトマト、トウガラシやカボチャ、落花生などがもたらされた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日 小佐々城 小佐々弾正大弼純正

「皆の者、長旅本当にご苦労であった。誰一人欠ける事なく、五体満足、息災にて再び帰ってこれた事を、本当に嬉しく思う」。

俺は留学生を城に呼びねぎらった。もちろん祝賀パーティーも準備している。家族も呼んだ。今後小佐々の根幹を支えていく若者たちだ。もし希望者がいれば、家族全員田舎から引っ越しして、城下に住む許可を出そう。費用も負担する。

今のところは武家の息子が多いのでそれはないが、ゆくゆくは、と考えた。

「それから、久しいな。九十郎に源五郎」。
利三郎叔父上と忠右衛門叔父上の次男で、二人とも俺より一つ下だ。

「海の向こうにいってみたい、と言った時は本当に驚いた。しかもいとこで二人だ」。思わず笑みが溢れる。本当に、無事で良かった。

「平九郎様、いえ、弾正大弼様におかれましては、ご健勝の事お慶び申し上げます。われらに対し、過分のおもてなしかたじけのうございます」。

まだ俺が家督を継ぐ前、転生してすぐに蛎浦の海戦があった。それまでのほんの数日間だったけど、同じ年頃のいとこ同士で遊んだのを覚えている。派遣する時はもう家督を継いで、沢森の当主だったからな。

もう、あれから六年か。早いな。九十郎は天文学、源五郎は工学を学んだ。源五郎はおそらく工部省の一貫斎のお気に入りになるであろう。この時代の工学は、軍事兵器の開発者を意味している事が多い。

天文学は・・・今太陰暦だから、太陽暦と関係あるのかな?

その夜は俺も、みんなと一緒に食べて飲んだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

二次会?の概念はないから(あったのか?)、俺の部屋で三人で飲み直した。葡萄酒もあるし、キンキンに冷えたビールがあれば文句はないが、冷蔵庫がないから仕方ない。澄酒に二人とも驚いていた。焼きスルメに豆腐にネギとしょうが。醤油をたらしてつまみにして飲んだ。

「ああそうだ!平ちん!(平九郎)知ってた?お天道様が回ってるんじゃなくて、俺たちがいる、この地球って言うんだけど、わかるか?わかる?その地球がまわっているんだぞ」。

だいぶ酔ってるな。俺も楽しく酔えたし、そろそろお開きかな。

「ああうん、知ってる知ってる。コペルニクスの地動説やろ?」

!!!!!!!!!!!!!!!・・・・・・・・・・・・。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

【完結】悪役令嬢の断罪現場に居合わせた私が巻き込まれた悲劇

藍生蕗
ファンタジー
悪役令嬢と揶揄される公爵令嬢フィラデラが公の場で断罪……されている。 トリアは会場の端でその様を傍観していたが、何故か急に自分の名前が出てきた事に動揺し、思わず返事をしてしまう。 会場が注目する中、聞かれる事に答える度に場の空気は悪くなって行って……

別に構いませんよ、離縁するので。

杉本凪咲
恋愛
父親から告げられたのは「出ていけ」という冷たい言葉。 他の家族もそれに賛同しているようで、どうやら私は捨てられてしまうらしい。 まあいいですけどね。私はこっそりと笑顔を浮かべた。

【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する

土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。 異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。 その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。 心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。 ※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。 前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。 主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。 小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。

公爵令嬢はアホ係から卒業する

依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」  婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。  そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。   いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?  何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。  エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。  彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。    *『小説家になろう』でも公開しています。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。

しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹 そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる もう限界がきた私はあることを決心するのだった

処理中です...