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九州三強と中央への目-肥前王 源朝臣小佐々弾正大弼純正-
鳴動!薩隅日肥、千載一遇の肝付と伊東
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同月
永禄十一年 六月二十日 島津宗家を継いで薩州を転戦し、日向の伊東、大隅の肝付ら国人衆と死闘を繰り広げ、薩摩守護の地位を獲得した十五代当主島津貴久が、死んだ。享年五十四歳。
十四日には毛利元就が没している。はからずも九州の北と南の雄が、ほぼ同時期に戦国の世から姿を消したのである。それは新たな争乱が九州の地を襲うきっかけとなった。そしてこれを逃す伊東、肝付、そして南肥後の相良ではなかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
同年 七月 小佐々城 小佐々弾正大弼純正
「なんて?元就が?!しかも島津貴久も死んだと?」
まじか。早すぎるぞこの世界。ていうか史実通りになったり早まったり、どっちなん?確かに龍造寺も滅ぼし(残ってはいる)たし、筑前筑後、北肥後も俺の勢力下だよ?あれ、これ史実の龍造寺じゃね?・・・・やばい。
そりゃあいろいろやったよ!?まるで肥前だけ幕末みたいになってるけどさ。みんなの努力の結晶だと言って欲しい;;京都大使館に撰銭令、お店や諸々この時代にない事やってきたさ。
でも元々『ど』のつく一般人の俺だよ?歴史が詳しいだけのオタクのおっさんよ?必死になるさそりゃあ。生き残るためじゃん!仕方ないやん。
・・・・。愚痴っても仕方ない。ま、じ、で、これは、ちょっと騒々しくなるぞ。
「誰かある!皆を呼べ!」
今年三回目となる緊急戦略会議だ。まだまだ決めなきゃいけない事、両手じゃ足りないほどあったのに、さらに増えた。
「千方!南の最新情報は?」
大友ならびに伊東をはじめとした南九州担当の藤原千方に確認する。
「は、まずは島津にございますが、家督は生前から嫡子の義久が継いでおりましたゆえ、お家騒動などはございません。義久のもと、家中の動揺ならびに国衆の離反を抑える様に動いております」。
「まあ、妥当な選択だな」。
「しかし義久は、島津宗家として薩州・豊州両島津を従えているとはいえ、離反の種が全くないわけではありません。さらに国力で劣っているとはいえ、日向の伊東は大隅の肝付や南肥後の相良と結んでおります。飫肥、そして真幸院を狙っておるのでしょう。そしてもう一つ気になるのが・・・」。
「なんだ?」
俺は確認した。
「薩摩の国人衆の動きにございます。先ほど述べました通り、島津は薩摩を完全に掌握しているわけではありません。大口城の菱刈重広はこの一月に島津に大勝しておりますし、入来院氏や東郷氏も抵抗を続けております。そのあたりが気になるところ。そして重広はまだ幼いゆえ叔父の菱刈隆秋が実権を握っておりまする」。
「ふむう。地理的には三方を敵に囲まれている島津が不利か。三河守、毛利はどうだ?」
毛利・中国担当の空閑三河守に聞く。
「は、されば毛利も島津同様動きませぬ。元就の遺訓通り今の領地を保全する動きでしょう。この騒動が収まっても積極的に領土拡張はしないかと。ただ、出雲の尼子が気になりまする」。
「元就が死んでからまだ一月しか経っておりませぬが、山中幸盛をはじめとした旧尼子家臣が、勝久を還俗させ担ぎあげて、尼子家再興を周囲に呼びかけております」。
尼子、か。これは史実通りだな。第一次尼子家再興運動ってやつだ。しかし一時は優勢になるものの、ことごとく毛利に破れて瓦解する。ただ、今回は元就が死んでいる。両川がいるとはいえ、長引くか?
「おそらくは大友が支援をしておりまする。府内から伊予へ向けて兵糧船が多数出港いたしており、伊予の宇都宮を経由して商船に偽装して備中の三村まで送り、そこから陸路で出雲まで運搬しているかと。三村はまだ毛利の勢力下ではありませぬゆえ」。
なるほど。まあ、予想どおりだな。
「豊前・豊後の動きについては藤原どのにお聞きください」。
俺は首を千方に向ける。
「は、されば大友は毛利の動きをみつつ、筑前の麻生ならびに豊前の杉を狙っており、毛利の支援がないとみるや一気に攻め取りにかかるかと存じます」。
うーん、多々良浜の戦い?ちょっと経緯が違うけど、戦が起こればその勝敗で毛利対大友の勢力バランスは一変するな。
「利三郎、毛利からなにか言ってきているか?」
「いえ、いまのところはまだ。葬儀の案内がきているのみにございます」。
「そうか、おそらくは出雲の状況をみて、援軍が来ないとわかるや攻めるな。麻生と杉から目を離すなよ。それから大友もだ。われらは不可侵と通商の盟しか結んでおらぬが、援軍要請がくれば受けねばならぬだろう。やっとここまで大友の勢いを削ぐ事ができたのだ。盛り返させてはならぬからな」。
「はは」
千方が返事をする。
「利三郎。元就殿の葬儀には名代として適切な者を送れ。それから、麻生と杉だが、こう伝えてくれ。『われら、毛利殿と不可侵と通商の盟を結んでおる。もし、毛利殿から援軍の求めあらば、喜んでご助力いたす。しかしもし、事情により毛利殿本国からの援軍能わぬときは、小佐々を頼られませ。そして以後、よしなにお願いいたす』とな」。
戦略としては、大友が毛利傘下の麻生・杉を攻める→毛利から(実際は傘下の国衆から)援軍要請あり、出陣。大友と決戦。勝って、その後毛利は事情により北九州の国人を切り離しているので、今後は国人衆の要請でわが傘下に入る、と。
これで万事よし。問題は、必ず勝てるか?という事。これに尽きる。すべてに絶対はない。勝てるために周到に準備し、負けたときの事も考えておく。
ここは龍造寺四天王と筑前衆。そして筑後の国人衆にも出てもらおう。大友との全面決戦ではないが、この戦で勝てば勢いが間違いなくこちらに向く。残った筑後や北肥後の国衆もこちらにつくであろう。
まずは状況をみつつ各地で臨戦態勢に入り、麻生と杉より要請があった時点で動ける様にしておこう。
「直茂、四人衆をまとめてくれ」。
「かしこまりました!」
「刑部大輔どの、下野守どの、筑前を頼みます」。
「お任せくだされ」。
「筑後の近江守どの(蒲池鑑盛)には資、頼む。しかと伝えてくれ」。
「ははあ」。
「それから喜よ、南肥後に向かい、修理大夫どのに、決して軽挙妄動はされぬよう、クギをさしてまいれ」。
「かしこまりました!」
よし、これでいい。後は万事計画通りに進んでくれる事を祈ろう。
永禄十一年 六月二十日 島津宗家を継いで薩州を転戦し、日向の伊東、大隅の肝付ら国人衆と死闘を繰り広げ、薩摩守護の地位を獲得した十五代当主島津貴久が、死んだ。享年五十四歳。
十四日には毛利元就が没している。はからずも九州の北と南の雄が、ほぼ同時期に戦国の世から姿を消したのである。それは新たな争乱が九州の地を襲うきっかけとなった。そしてこれを逃す伊東、肝付、そして南肥後の相良ではなかった。
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同年 七月 小佐々城 小佐々弾正大弼純正
「なんて?元就が?!しかも島津貴久も死んだと?」
まじか。早すぎるぞこの世界。ていうか史実通りになったり早まったり、どっちなん?確かに龍造寺も滅ぼし(残ってはいる)たし、筑前筑後、北肥後も俺の勢力下だよ?あれ、これ史実の龍造寺じゃね?・・・・やばい。
そりゃあいろいろやったよ!?まるで肥前だけ幕末みたいになってるけどさ。みんなの努力の結晶だと言って欲しい;;京都大使館に撰銭令、お店や諸々この時代にない事やってきたさ。
でも元々『ど』のつく一般人の俺だよ?歴史が詳しいだけのオタクのおっさんよ?必死になるさそりゃあ。生き残るためじゃん!仕方ないやん。
・・・・。愚痴っても仕方ない。ま、じ、で、これは、ちょっと騒々しくなるぞ。
「誰かある!皆を呼べ!」
今年三回目となる緊急戦略会議だ。まだまだ決めなきゃいけない事、両手じゃ足りないほどあったのに、さらに増えた。
「千方!南の最新情報は?」
大友ならびに伊東をはじめとした南九州担当の藤原千方に確認する。
「は、まずは島津にございますが、家督は生前から嫡子の義久が継いでおりましたゆえ、お家騒動などはございません。義久のもと、家中の動揺ならびに国衆の離反を抑える様に動いております」。
「まあ、妥当な選択だな」。
「しかし義久は、島津宗家として薩州・豊州両島津を従えているとはいえ、離反の種が全くないわけではありません。さらに国力で劣っているとはいえ、日向の伊東は大隅の肝付や南肥後の相良と結んでおります。飫肥、そして真幸院を狙っておるのでしょう。そしてもう一つ気になるのが・・・」。
「なんだ?」
俺は確認した。
「薩摩の国人衆の動きにございます。先ほど述べました通り、島津は薩摩を完全に掌握しているわけではありません。大口城の菱刈重広はこの一月に島津に大勝しておりますし、入来院氏や東郷氏も抵抗を続けております。そのあたりが気になるところ。そして重広はまだ幼いゆえ叔父の菱刈隆秋が実権を握っておりまする」。
「ふむう。地理的には三方を敵に囲まれている島津が不利か。三河守、毛利はどうだ?」
毛利・中国担当の空閑三河守に聞く。
「は、されば毛利も島津同様動きませぬ。元就の遺訓通り今の領地を保全する動きでしょう。この騒動が収まっても積極的に領土拡張はしないかと。ただ、出雲の尼子が気になりまする」。
「元就が死んでからまだ一月しか経っておりませぬが、山中幸盛をはじめとした旧尼子家臣が、勝久を還俗させ担ぎあげて、尼子家再興を周囲に呼びかけております」。
尼子、か。これは史実通りだな。第一次尼子家再興運動ってやつだ。しかし一時は優勢になるものの、ことごとく毛利に破れて瓦解する。ただ、今回は元就が死んでいる。両川がいるとはいえ、長引くか?
「おそらくは大友が支援をしておりまする。府内から伊予へ向けて兵糧船が多数出港いたしており、伊予の宇都宮を経由して商船に偽装して備中の三村まで送り、そこから陸路で出雲まで運搬しているかと。三村はまだ毛利の勢力下ではありませぬゆえ」。
なるほど。まあ、予想どおりだな。
「豊前・豊後の動きについては藤原どのにお聞きください」。
俺は首を千方に向ける。
「は、されば大友は毛利の動きをみつつ、筑前の麻生ならびに豊前の杉を狙っており、毛利の支援がないとみるや一気に攻め取りにかかるかと存じます」。
うーん、多々良浜の戦い?ちょっと経緯が違うけど、戦が起こればその勝敗で毛利対大友の勢力バランスは一変するな。
「利三郎、毛利からなにか言ってきているか?」
「いえ、いまのところはまだ。葬儀の案内がきているのみにございます」。
「そうか、おそらくは出雲の状況をみて、援軍が来ないとわかるや攻めるな。麻生と杉から目を離すなよ。それから大友もだ。われらは不可侵と通商の盟しか結んでおらぬが、援軍要請がくれば受けねばならぬだろう。やっとここまで大友の勢いを削ぐ事ができたのだ。盛り返させてはならぬからな」。
「はは」
千方が返事をする。
「利三郎。元就殿の葬儀には名代として適切な者を送れ。それから、麻生と杉だが、こう伝えてくれ。『われら、毛利殿と不可侵と通商の盟を結んでおる。もし、毛利殿から援軍の求めあらば、喜んでご助力いたす。しかしもし、事情により毛利殿本国からの援軍能わぬときは、小佐々を頼られませ。そして以後、よしなにお願いいたす』とな」。
戦略としては、大友が毛利傘下の麻生・杉を攻める→毛利から(実際は傘下の国衆から)援軍要請あり、出陣。大友と決戦。勝って、その後毛利は事情により北九州の国人を切り離しているので、今後は国人衆の要請でわが傘下に入る、と。
これで万事よし。問題は、必ず勝てるか?という事。これに尽きる。すべてに絶対はない。勝てるために周到に準備し、負けたときの事も考えておく。
ここは龍造寺四天王と筑前衆。そして筑後の国人衆にも出てもらおう。大友との全面決戦ではないが、この戦で勝てば勢いが間違いなくこちらに向く。残った筑後や北肥後の国衆もこちらにつくであろう。
まずは状況をみつつ各地で臨戦態勢に入り、麻生と杉より要請があった時点で動ける様にしておこう。
「直茂、四人衆をまとめてくれ」。
「かしこまりました!」
「刑部大輔どの、下野守どの、筑前を頼みます」。
「お任せくだされ」。
「筑後の近江守どの(蒲池鑑盛)には資、頼む。しかと伝えてくれ」。
「ははあ」。
「それから喜よ、南肥後に向かい、修理大夫どのに、決して軽挙妄動はされぬよう、クギをさしてまいれ」。
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