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九州三強と中央への目-北九州を二分する 二つの二虎競食の計-
相良と島津と琉球
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同年 五月 小佐々城 小佐々弾正大弼純正
二度目の戦略会議である。相良との同盟、そして島津と琉球はどうするか。
「利三郎、詳細を話せ」。
外務省の利三郎に交渉の詳細を話す様に言った。
「は、相良の要求は同盟の対価として何をくれるのか?です。せんだっての天草国衆の離反が尾を引いております。われらは調略しておりませんが、結果的に相良の国力を下げる事にになったので、同盟をするにしてもその対価を出せ、と」。
「何を馬鹿な事を」
直茂が言う。
「同盟とはそれ自体が対価でしょう?不可侵であれば、自国に攻め込む勢力に加担しない。逆もあり。攻め込む場合も加担しない。攻守の盟はもっと固く、攻めても守ってもお互いに協力する物。そこに条件を出してくるとは、すでに五分の盟ではありませぬぞ。断りましょう、殿」。
直茂が言うのはもっともだ。
いまの我らの脅威は大友。相良は島津。相良単独でも島津に対抗できぬわけではない。しかし厳しいのは確かだ。対してわれらは、相良が攻めてきたとしても、大友を牽制しながら相良に対処できる。
最悪、不可侵と通商協定しか結んでおらぬ毛利だが、援軍要請はできる。毛利と大友は反目しておるからな。今回の盟はどちらかというと、天草国衆の安全を担保するための意味合いが大きい。
「加賀守様、まずは相良の条件を確認してからでも遅くないのではないですか?」
そう発言したのは、戦略会議室(参謀方)の佐志方庄兵衛だ。直茂はうなずいた。
「利三郎さま、相良はどの様な条件を言ってきたのですか?」
「そうだな、まずは、燧発式銃の貸出を言ってきおった」。
(なんと!)
ざわついている。無理もない。おそらく日の本で燧発式銃を持っているのはわれわれだけだ。しかし燧発式銃は、仕組みを考えるまでは時間がかかるが、実際に知ってしまうと真似できないほど精密な物ではない。
工部省の国友一貫斎いわく、図面があれば一月もかからないだろうとの事。爆破事件で盗まれた恐れもある。で、あれば、燧発式銃の貸与に関しては、盟を結ぶのであれば、どうしても譲れない条件という事でもない。
ただし、だ。あくまでも五分の盟であるから、われらにも利がなければならない。
「利三郎よ。まさかわれらが出すだけの条件を提示するわけではあるまい?相良は何が出せると言ってきたのだ?」
俺は確認する。
「は、されば、球磨郡では銅が腐るほど産出するとの事。対州鉱山や波佐見、筑前宗像の鉱山など比にならぬと。また、天草郡では煙のでない五平太(石炭)や、殿が探していらっしゃる陶石なる物が採れるそうにございます」。
なるほど。・・・これはいい。
「燧発式銃の貸与とその三つ、ただとまではいかぬ。が、坑夫の賃金と設備代にイロを多少つけた金額で輸出してくれるなら、悪い話ではない。銅は別として、石炭や陶石は売った事がないだろうから値のつけようもなかろう」。
「それに銅は金や銀と同じく、わが国には膨大な量が必要だ。みなは技術の流出を心配するかもしれぬが、銃を真似て作れたとして、量産までは時間がかかろう。それに玉薬がなければただの筒だ」。
「こちらが貸与するにしても売るにしても、量を調整すればいいだけの話。あくまで貸与だ。種子島を扱った人間なら、それが燧発式に替わったとしてもすぐに使える。必要になった、その時に、貸与だ。そして、貸与だから、回収する。よいか?」
「それから大砲と船に関しては、もっと信頼がおける様になってからだ。最初から最高の軍事機密を漏らすわけにはいかないからな」。
「それにこの二つは真似できん。例え図面があったとしても、そう簡単に作れては工部省の面々が泣くわ。事実無理であろう。操艦にしても、われらがどれだけ苦労して今の兵を育てた?一朝一夕には絶対に無理だ。」。
「よって相良との盟は、結ぶ事を前提に、条件は後で詰めるという流れでいこう。皆の者よいか?」
「直茂も納得したか?」
「は、殿の仰せのとおりに」
「みな、どうだ?意見はあるか?」
「では相良に関してこれで終わりとする」。
誰も発言しないので次の議題に移る。薩摩と琉球だ。
「薩摩の島津が琉球に対して、『われらが琉球と自由交易をする事』に対して異を唱えているようです」。
利三郎が言う。しかしそれに対して琉球は、とりあわない。『貴国には関係ないでしょう』との立場をやんわりと貫いているようだ。
「それはそうだ。島津にわれらの交易を邪魔されるいわれはない。室町幕府が健在で、その朱印を持っている者だけが交易でき、それ以外は出来ぬならば仕方がない。しかし、そうではない。島津はただの一大名ではないですか」。
農商務省の経済産業交易局、岡甚右衛門が発言する。
「これに関しては島津をいたずらに恐れ、交易を止めるのは愚の骨頂にございましょう。島津は三州の統一を目指しております」。
「そのために使える物は何でも使おうとしております。九州においての秩序、九州探題の大友宗麟のもと、三州守護として認めてもらおうとしております。現在島津と大友は良好な関係にあります」。
・・・・良好な関係!まさか?その秩序を壊して大友の勢力を削いでいるわれらは、共通の敵?
「日向は大友と島津の緩衝地帯になっており、そこに伊東がおります。大友は伊東とも昵懇にしておりますが、今のところ、伊東と島津は正面から敵対していません。ですから大友と島津は良好な関係を保てているのです」。
「今のところは琉球と島津に関しては静観いたしましょう。琉球から『島津から経済的または軍事的圧力を受けた』との報告がない限り、こちらから動く必要はないかと存じます」。
なるほど。そうだな、静観しよう。
(「ああ、それから、おれ、上洛するよ。反対意見は受け付けません^^」)。
ぼそっと、聞こえるか聞こえないか、程度の小声で言った。
「みな、反対意見はないか?もしくは関連事項はないか?」
・・・。ないので、第二回会議を終了した。
二度目の戦略会議である。相良との同盟、そして島津と琉球はどうするか。
「利三郎、詳細を話せ」。
外務省の利三郎に交渉の詳細を話す様に言った。
「は、相良の要求は同盟の対価として何をくれるのか?です。せんだっての天草国衆の離反が尾を引いております。われらは調略しておりませんが、結果的に相良の国力を下げる事にになったので、同盟をするにしてもその対価を出せ、と」。
「何を馬鹿な事を」
直茂が言う。
「同盟とはそれ自体が対価でしょう?不可侵であれば、自国に攻め込む勢力に加担しない。逆もあり。攻め込む場合も加担しない。攻守の盟はもっと固く、攻めても守ってもお互いに協力する物。そこに条件を出してくるとは、すでに五分の盟ではありませぬぞ。断りましょう、殿」。
直茂が言うのはもっともだ。
いまの我らの脅威は大友。相良は島津。相良単独でも島津に対抗できぬわけではない。しかし厳しいのは確かだ。対してわれらは、相良が攻めてきたとしても、大友を牽制しながら相良に対処できる。
最悪、不可侵と通商協定しか結んでおらぬ毛利だが、援軍要請はできる。毛利と大友は反目しておるからな。今回の盟はどちらかというと、天草国衆の安全を担保するための意味合いが大きい。
「加賀守様、まずは相良の条件を確認してからでも遅くないのではないですか?」
そう発言したのは、戦略会議室(参謀方)の佐志方庄兵衛だ。直茂はうなずいた。
「利三郎さま、相良はどの様な条件を言ってきたのですか?」
「そうだな、まずは、燧発式銃の貸出を言ってきおった」。
(なんと!)
ざわついている。無理もない。おそらく日の本で燧発式銃を持っているのはわれわれだけだ。しかし燧発式銃は、仕組みを考えるまでは時間がかかるが、実際に知ってしまうと真似できないほど精密な物ではない。
工部省の国友一貫斎いわく、図面があれば一月もかからないだろうとの事。爆破事件で盗まれた恐れもある。で、あれば、燧発式銃の貸与に関しては、盟を結ぶのであれば、どうしても譲れない条件という事でもない。
ただし、だ。あくまでも五分の盟であるから、われらにも利がなければならない。
「利三郎よ。まさかわれらが出すだけの条件を提示するわけではあるまい?相良は何が出せると言ってきたのだ?」
俺は確認する。
「は、されば、球磨郡では銅が腐るほど産出するとの事。対州鉱山や波佐見、筑前宗像の鉱山など比にならぬと。また、天草郡では煙のでない五平太(石炭)や、殿が探していらっしゃる陶石なる物が採れるそうにございます」。
なるほど。・・・これはいい。
「燧発式銃の貸与とその三つ、ただとまではいかぬ。が、坑夫の賃金と設備代にイロを多少つけた金額で輸出してくれるなら、悪い話ではない。銅は別として、石炭や陶石は売った事がないだろうから値のつけようもなかろう」。
「それに銅は金や銀と同じく、わが国には膨大な量が必要だ。みなは技術の流出を心配するかもしれぬが、銃を真似て作れたとして、量産までは時間がかかろう。それに玉薬がなければただの筒だ」。
「こちらが貸与するにしても売るにしても、量を調整すればいいだけの話。あくまで貸与だ。種子島を扱った人間なら、それが燧発式に替わったとしてもすぐに使える。必要になった、その時に、貸与だ。そして、貸与だから、回収する。よいか?」
「それから大砲と船に関しては、もっと信頼がおける様になってからだ。最初から最高の軍事機密を漏らすわけにはいかないからな」。
「それにこの二つは真似できん。例え図面があったとしても、そう簡単に作れては工部省の面々が泣くわ。事実無理であろう。操艦にしても、われらがどれだけ苦労して今の兵を育てた?一朝一夕には絶対に無理だ。」。
「よって相良との盟は、結ぶ事を前提に、条件は後で詰めるという流れでいこう。皆の者よいか?」
「直茂も納得したか?」
「は、殿の仰せのとおりに」
「みな、どうだ?意見はあるか?」
「では相良に関してこれで終わりとする」。
誰も発言しないので次の議題に移る。薩摩と琉球だ。
「薩摩の島津が琉球に対して、『われらが琉球と自由交易をする事』に対して異を唱えているようです」。
利三郎が言う。しかしそれに対して琉球は、とりあわない。『貴国には関係ないでしょう』との立場をやんわりと貫いているようだ。
「それはそうだ。島津にわれらの交易を邪魔されるいわれはない。室町幕府が健在で、その朱印を持っている者だけが交易でき、それ以外は出来ぬならば仕方がない。しかし、そうではない。島津はただの一大名ではないですか」。
農商務省の経済産業交易局、岡甚右衛門が発言する。
「これに関しては島津をいたずらに恐れ、交易を止めるのは愚の骨頂にございましょう。島津は三州の統一を目指しております」。
「そのために使える物は何でも使おうとしております。九州においての秩序、九州探題の大友宗麟のもと、三州守護として認めてもらおうとしております。現在島津と大友は良好な関係にあります」。
・・・・良好な関係!まさか?その秩序を壊して大友の勢力を削いでいるわれらは、共通の敵?
「日向は大友と島津の緩衝地帯になっており、そこに伊東がおります。大友は伊東とも昵懇にしておりますが、今のところ、伊東と島津は正面から敵対していません。ですから大友と島津は良好な関係を保てているのです」。
「今のところは琉球と島津に関しては静観いたしましょう。琉球から『島津から経済的または軍事的圧力を受けた』との報告がない限り、こちらから動く必要はないかと存じます」。
なるほど。そうだな、静観しよう。
(「ああ、それから、おれ、上洛するよ。反対意見は受け付けません^^」)。
ぼそっと、聞こえるか聞こえないか、程度の小声で言った。
「みな、反対意見はないか?もしくは関連事項はないか?」
・・・。ないので、第二回会議を終了した。
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