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九州三強と中央への目-北九州を二分する 二つの二虎競食の計-

それで、どうでしたか?

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四月 某所

「それで、どうでしたか?」
「万事つつがなく。小佐々の兵器廠ならびに船の大砲、さらには造船所まで、まったくここまで上手くいくとは思いませなんだ」。

「ご油断めさるな。壁に耳あり障子に目ありと申します。さて、次は筑前ですが」。

「はい、その筑前でございますが、少し気になる話を聞きましてございます」。

「どんな噂でしょう?」

「は、されば立花・高橋・秋月は、以前と全く変わらぬ、本領安堵も本領安堵。ただ従う先が弾正大弼に変わっただけの様にございます」。

「なんと?知行召し上げもないのですか?」

「はい、まったく同じです」。

「そしてもっと奇妙なのは、宗像や原田などは、表面上は以前と変わりません。しかし内情は、石高は以前の四分の一から三分の一ほどに減っております。そして代官としてそのままその土地を治め、年貢も徴収する様にございます」。

「・・・・?徴収はするが納める先が小佐々という事ですか?」

「はい、領民にしてみれば領主は同じです。その上の殿様が変わったとしか思わないのでしょう」。

「しかしその領内統治に関して、宗像や原田は一切費用を負いません。すべてが小佐々持ちです。ですから賦役もなければ軍役もありません。いや、厳密に言えば参陣の義務はあるのですが、軍役に関して無理な負担はありません」。

「なにせ小佐々は国衆を頼みにしておりません。金で雇った本国の直轄軍が二万ほどおりますれば」。

「そんなにおるのですか?」

「はい、しかも常備兵で、しっかりと専属の知識教育・調練を施された兵です」。

「それであれば稲の刈り入れや田植えは関係ありませんね。一年中戦ができまする」。

「その通りです」
「では全く不安はないのですか?」
「表面上は。ただ、どうでしょう。噂を流せば、あるいは揺らぐかもしれませぬ」。

「噂?どの様な噂でしょうか」

「は、今回の事故は厳重な箝口令が敷かれているようですが、人の口に戸は立てられませぬ。事実を噂として流し、そこに尾ひれをつければあるいは」。

「噂は別に離反を促すようなものでなくてもよいのです。互いに疑心暗鬼になるように仕向ければよい。一度疑えば人は簡単に信じられなくなります。それは別に筑前衆に限った事ではありません。宇久でも良いし、宗でもいいのです」。

「従属している筑後や肥後の国人でもいい。あるいは譜代でも。重要なのはお互いに疑わせ、何を信じていいのかわからなくさせる事です。中から壊れれば、こちらが何もせずとも、あるべき姿に戻りましょう」。

「絶対に足がつかない様にせねばなりませぬぞ」。

「心得ておりまする。誰もがやったとはわかりますまい」。

「忍びの者には報酬をはずまなくてはなりません。残った家族には何不自由なく暮らせる様に便宜を図ましょう」。

「承知しました。抜かりなく」。
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