180 / 766
九州三強と中央への目-北九州を二分する 二つの二虎競食の計-
第176話 3月 第二回練習艦隊 広南国の会安
しおりを挟む
永禄十一年 三月 籠手田安経
広南国(ベトナム)の会安(ホイアン)についた。
この国の王である阮潢(グエン・ホアン)は、もともと仕えていた王朝が新王朝に奪われ、それに対抗して南部に出来た勢力の王だ。
現在はその新王朝を倒すために共に戦っているもう一つの勢力、鄭松を支援しつつ南部に勢力を拡大している。
しかしこの地域は北部勢力と違って、明や日ノ本との交流も盛んである。
南蛮人、いや南蛮人がたくさんの種類いるので、もう殿が言っているポルトガル人に統一しようと思う。
今いるこの会安も、広南国の首都である富春(フエ)の外港である。日の本の民もいれば明の人間もいる。
ここ会安から富春までは陸路で三十里ほどだ。今回の訪問も他国同様国交の樹立と交易の開始だ。これはあまり難しくはないだろう。
言葉の問題があるが、現地の日の本の民や明の人間、何ならポルトガル人を介してもいい。
現地語の分かる人であれば問題ない。ただし、意思の疎通における間違いだけは防がなければ。
石炭や鉄の元になる石、それから銅がとれれば取引したいが、銅はわが国でもとれる。価格や量によるだろう。
鮫皮・象牙・胡椒・水牛の角・鉛や薬などがあってもいい。
石炭は今のところ必要ない。鉄の石は、殿は日ノ本の石とは違うといっていた。
何が違うのかよくわからんが、採れるものなら輸入したい。
輸出はどうだろう? 日ノ本と同じく近隣と戦っているなら武器も必要だろうが、あまり武器は輸出したくはないのが本音だ。
国力に直結するから、南蛮の国とはいえ乗り気はしない。
日の本古来の工芸品が無難なところだろうか。領内で出回っている石けんや澄酒、鉛筆や椎茸などもいいかもしれない。
なにしろ、どのようなものが必要なのかは実際に話してみないとわからないのだ。
南蛮の諸国は明やポルトガルと違って銀は必要ないだろうか? 必要ないのであれば、金や銀を支払いに使う交易路は限定しておきたい。
国内の兌換貨幣や紙幣の導入に、兌換元の金や銀は手元に残しておきたい。
ああ、それから『ごむ』の木だ。
殿いわく、木の皮をはがして白い汁がでたら、それが『ごむ』の木らしい。『ごむ』はこれから行くカンボジアやシャムでも交渉するが、車輪の材料になる。
『こんくりいと』の利用で街道が舗装されていくと移動が楽になるが、その際の移動に使われるのが馬車だ。
その車輪は木で作っているのだが、乗り心地が最悪だと殿はぼやいていたな。
他にも『ゴム』の使い道はたくさんあるらしい。
しかしカンボジアはもとより政情不安な国もある。外国の圧力で通商関係に影響がでるかもしれない。よって複数の交易国を持っておくことが肝要だろう。
自由気ままに船にのって旅ができたら楽だが、今わしは小佐々の代表としてきておる。しっかりしなければ、と気を引き締めながら富春に向かうのであった。
広南国(ベトナム)の会安(ホイアン)についた。
この国の王である阮潢(グエン・ホアン)は、もともと仕えていた王朝が新王朝に奪われ、それに対抗して南部に出来た勢力の王だ。
現在はその新王朝を倒すために共に戦っているもう一つの勢力、鄭松を支援しつつ南部に勢力を拡大している。
しかしこの地域は北部勢力と違って、明や日ノ本との交流も盛んである。
南蛮人、いや南蛮人がたくさんの種類いるので、もう殿が言っているポルトガル人に統一しようと思う。
今いるこの会安も、広南国の首都である富春(フエ)の外港である。日の本の民もいれば明の人間もいる。
ここ会安から富春までは陸路で三十里ほどだ。今回の訪問も他国同様国交の樹立と交易の開始だ。これはあまり難しくはないだろう。
言葉の問題があるが、現地の日の本の民や明の人間、何ならポルトガル人を介してもいい。
現地語の分かる人であれば問題ない。ただし、意思の疎通における間違いだけは防がなければ。
石炭や鉄の元になる石、それから銅がとれれば取引したいが、銅はわが国でもとれる。価格や量によるだろう。
鮫皮・象牙・胡椒・水牛の角・鉛や薬などがあってもいい。
石炭は今のところ必要ない。鉄の石は、殿は日ノ本の石とは違うといっていた。
何が違うのかよくわからんが、採れるものなら輸入したい。
輸出はどうだろう? 日ノ本と同じく近隣と戦っているなら武器も必要だろうが、あまり武器は輸出したくはないのが本音だ。
国力に直結するから、南蛮の国とはいえ乗り気はしない。
日の本古来の工芸品が無難なところだろうか。領内で出回っている石けんや澄酒、鉛筆や椎茸などもいいかもしれない。
なにしろ、どのようなものが必要なのかは実際に話してみないとわからないのだ。
南蛮の諸国は明やポルトガルと違って銀は必要ないだろうか? 必要ないのであれば、金や銀を支払いに使う交易路は限定しておきたい。
国内の兌換貨幣や紙幣の導入に、兌換元の金や銀は手元に残しておきたい。
ああ、それから『ごむ』の木だ。
殿いわく、木の皮をはがして白い汁がでたら、それが『ごむ』の木らしい。『ごむ』はこれから行くカンボジアやシャムでも交渉するが、車輪の材料になる。
『こんくりいと』の利用で街道が舗装されていくと移動が楽になるが、その際の移動に使われるのが馬車だ。
その車輪は木で作っているのだが、乗り心地が最悪だと殿はぼやいていたな。
他にも『ゴム』の使い道はたくさんあるらしい。
しかしカンボジアはもとより政情不安な国もある。外国の圧力で通商関係に影響がでるかもしれない。よって複数の交易国を持っておくことが肝要だろう。
自由気ままに船にのって旅ができたら楽だが、今わしは小佐々の代表としてきておる。しっかりしなければ、と気を引き締めながら富春に向かうのであった。
2
お気に入りに追加
155
あなたにおすすめの小説
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました
杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」
王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。
第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。
確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。
唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。
もう味方はいない。
誰への義理もない。
ならば、もうどうにでもなればいい。
アレクシアはスッと背筋を伸ばした。
そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺!
◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。
◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。
◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。
◆全8話、最終話だけ少し長めです。
恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。
◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。
◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03)
◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます!
9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
愛されなかった私が転生して公爵家のお父様に愛されました
上野佐栁
ファンタジー
前世では、愛されることなく死を迎える主人公。実の父親、皇帝陛下を殺害未遂の濡れ衣を着せられ死んでしまう。死を迎え、これで人生が終わりかと思ったら公爵家に転生をしてしまった主人公。前世で愛を知らずに育ったために人を信頼する事が出来なくなってしまい。しばらくは距離を置くが、だんだんと愛を受け入れるお話。
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる