159 / 812
九州三強と中央への目-北九州を二分する 二つの二虎競食の計-
トーレスとマカオ市長とインド総督と
しおりを挟む
永禄十年 十月 小佐々城 小佐々弾正大弼純正
東南アジアとインド洋、そしてアフリカ東岸・西岸の航行の自由を確保するために、有力者のお墨付きが必要だ。
トーレスとは久しぶりに合う。以前は豊後府内を根拠地に布教を行っていたが、今年の始めに居を移したいとの申し出が有り、許可をした。多比良城下に住まわせているが、そろそろ人口密度が厳しくなってきた。
すでにキリシタンの数は豊後の数倍となり、六万人を超えている。トーレスはそのキリシタンの日本での頂点、布教責任者だ。
俺はトーレス、アルメイダ、ヴィレラの三人を集めて話をはじめた。
「久しいな。トーレス、アルメイダ。」
「ダンジョウダイヒツサマニオカレマシテハ・・・」
「よいよい。大分日本語がうまくなったな。余には気兼ねせずともよい。気軽に話せ。」
一応通訳はいるが、この時代の宣教師の博識さには驚かされる。日本に来る間に勉強しているのだろうか?三人とも日常会話程度なら、問題なく話せる。
俺は南蛮人用に作らせた部屋に案内して、三人と話をしている。和洋折衷からの南蛮寄り、の様な部屋だ。テーブルと椅子、それから壁には掛け軸と、なんとも不思議な空間だ。
「忙しいところ悪かったな。さあ茶でも飲もう。菓子もあるぞ。いや、葡萄酒のほうが良かったか?南蛮の物には負けるかもしれぬが。」
一同に笑いが起きる。
「どうぞお構いなく。」
トーレスが笑顔で返す。
「それはありがたい。それからアルメイダよ。豊後の病院や学校は良いのか?肥前でも平戸と横瀬浦、それから口之津に病院と学校をつくって民を診察してくれているという。ありがとう。感謝する。銭はもちろん、必要な物があったら言ってくれ。」
ありがたい話だ。本当に感謝している。
「ありがとうございます。感謝します。豊後は大丈夫です。後進の医師もおりますし、それに今ではこちらが人が多うございます。」
そうか、それはよかった。ただ・・・。
「あまりこちらばかり贔屓にするでないぞ。宗麟公がやっかむ。」
また一同が笑う。
「それでトーレス、もう一人の彼は?」
「彼は、ガスパル・ヴィレラと申します。平戸にて隆信公に退去を命ぜられた後、私の指示で京で布教を行っておりました。義輝公が殺されたので、こちらに避難してきたところです。」
そうか。この後に信長が上洛してキリスト教を保護するんだよな。ちょっと遅いが信長にも使臣を送ろう。
「そうか。ヴィレラ、よろしく頼む。」
「こちらこそ。光栄ですダンジョウダイヒツサマ。」
ヴィレラは初めてなので、少し緊張しているようだ。
「それで、今回はどうされました?殿様がじきじきに。」
トーレスが本題を切り出してきた。
「うむ。知っての通り、わが小佐々家は広く交易を行っている。そなたら南蛮も含めて、明や朝鮮などな。そして、お主らの力添えもあって、自力で船を作り、大砲をつんで外洋に漕ぎ出す事もできる様になった。」
「喜ばしい事です。」
三人とも笑顔だ。
「そこでだ、海賊などは仕方がないとしても、南蛮人たちには誤解を与える事なく航海をしたい。そこで、通行手形ではないが、イエズス会東インド管区の日本布教区の責任者や次席、宣教師の署名があれば心強いと思ってな。どうだ、書いてくれぬか?」
「喜んで。」
良かった。快諾してくれた。
俺たちがいかにキリスト教を保護していると言っても、現地の末端の人たちは知らないだろうしな。念には念を。リスクは極力排除しておかなければ。
もちろん、かれらは良心から同意してくれたと思う。しかし、マカオ市長もしくは総督か?マニラやマラッカもそうだが、宣教師以外は金が必要だろな。
東南アジアとインド洋、そしてアフリカ東岸・西岸の航行の自由を確保するために、有力者のお墨付きが必要だ。
トーレスとは久しぶりに合う。以前は豊後府内を根拠地に布教を行っていたが、今年の始めに居を移したいとの申し出が有り、許可をした。多比良城下に住まわせているが、そろそろ人口密度が厳しくなってきた。
すでにキリシタンの数は豊後の数倍となり、六万人を超えている。トーレスはそのキリシタンの日本での頂点、布教責任者だ。
俺はトーレス、アルメイダ、ヴィレラの三人を集めて話をはじめた。
「久しいな。トーレス、アルメイダ。」
「ダンジョウダイヒツサマニオカレマシテハ・・・」
「よいよい。大分日本語がうまくなったな。余には気兼ねせずともよい。気軽に話せ。」
一応通訳はいるが、この時代の宣教師の博識さには驚かされる。日本に来る間に勉強しているのだろうか?三人とも日常会話程度なら、問題なく話せる。
俺は南蛮人用に作らせた部屋に案内して、三人と話をしている。和洋折衷からの南蛮寄り、の様な部屋だ。テーブルと椅子、それから壁には掛け軸と、なんとも不思議な空間だ。
「忙しいところ悪かったな。さあ茶でも飲もう。菓子もあるぞ。いや、葡萄酒のほうが良かったか?南蛮の物には負けるかもしれぬが。」
一同に笑いが起きる。
「どうぞお構いなく。」
トーレスが笑顔で返す。
「それはありがたい。それからアルメイダよ。豊後の病院や学校は良いのか?肥前でも平戸と横瀬浦、それから口之津に病院と学校をつくって民を診察してくれているという。ありがとう。感謝する。銭はもちろん、必要な物があったら言ってくれ。」
ありがたい話だ。本当に感謝している。
「ありがとうございます。感謝します。豊後は大丈夫です。後進の医師もおりますし、それに今ではこちらが人が多うございます。」
そうか、それはよかった。ただ・・・。
「あまりこちらばかり贔屓にするでないぞ。宗麟公がやっかむ。」
また一同が笑う。
「それでトーレス、もう一人の彼は?」
「彼は、ガスパル・ヴィレラと申します。平戸にて隆信公に退去を命ぜられた後、私の指示で京で布教を行っておりました。義輝公が殺されたので、こちらに避難してきたところです。」
そうか。この後に信長が上洛してキリスト教を保護するんだよな。ちょっと遅いが信長にも使臣を送ろう。
「そうか。ヴィレラ、よろしく頼む。」
「こちらこそ。光栄ですダンジョウダイヒツサマ。」
ヴィレラは初めてなので、少し緊張しているようだ。
「それで、今回はどうされました?殿様がじきじきに。」
トーレスが本題を切り出してきた。
「うむ。知っての通り、わが小佐々家は広く交易を行っている。そなたら南蛮も含めて、明や朝鮮などな。そして、お主らの力添えもあって、自力で船を作り、大砲をつんで外洋に漕ぎ出す事もできる様になった。」
「喜ばしい事です。」
三人とも笑顔だ。
「そこでだ、海賊などは仕方がないとしても、南蛮人たちには誤解を与える事なく航海をしたい。そこで、通行手形ではないが、イエズス会東インド管区の日本布教区の責任者や次席、宣教師の署名があれば心強いと思ってな。どうだ、書いてくれぬか?」
「喜んで。」
良かった。快諾してくれた。
俺たちがいかにキリスト教を保護していると言っても、現地の末端の人たちは知らないだろうしな。念には念を。リスクは極力排除しておかなければ。
もちろん、かれらは良心から同意してくれたと思う。しかし、マカオ市長もしくは総督か?マニラやマラッカもそうだが、宣教師以外は金が必要だろな。
1
お気に入りに追加
158
あなたにおすすめの小説
『転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く~時代・技術考証や設定などは完全無視です!~』
姜維信繁
ファンタジー
佐賀藩より早く蒸気船に蒸気機関車、アームストロング砲。列強に勝つ!
人生100年時代の折り返し地点に来た企画営業部長の清水亨は、大きなプロジェクトをやり遂げて、久しぶりに長崎の実家に帰ってきた。
学生時代の仲間とどんちゃん騒ぎのあげく、急性アルコール中毒で死んでしまう。
しかし、目が覚めたら幕末の動乱期。龍馬や西郷や桂や高杉……と思いつつ。あまり幕末史でも知名度のない「薩長土肥」の『肥』のさらに隣の藩の大村藩のお話。
で、誰に転生したかと言うと、これまた誰も知らない、地元の人もおそらく知らない人の末裔として。
なーんにもしなければ、間違いなく幕末の動乱に巻き込まれ、戊辰戦争マッシグラ。それを回避して西洋列強にまけない国(藩)づくりに励む事になるのだが……。
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
ボッチの少女は、精霊の加護をもらいました
星名 七緒
ファンタジー
身寄りのない少女が、異世界に飛ばされてしまいます。異世界でいろいろな人と出会い、料理を通して交流していくお話です。異世界で幸せを探して、がんばって生きていきます。
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
異世界でホワイトな飲食店経営を
視世陽木
ファンタジー
定食屋チェーン店で雇われ店長をしていた飯田譲治(イイダ ジョウジ)は、気がついたら真っ白な世界に立っていた。
彼の最後の記憶は、連勤に連勤を重ねてふらふらになりながら帰宅し、赤信号に気づかずに道路に飛び出し、トラックに轢かれて亡くなったというもの。
彼が置かれた状況を説明するためにスタンバイしていた女神様を思いっきり無視しながら、1人考察を進める譲治。
しまいには女神様を泣かせてしまい、十分な説明もないままに異世界に転移させられてしまった!
ブラック企業で酷使されながら、それでも料理が大好きでいつかは自分の店を開きたいと夢見ていた彼は、はたして異世界でどんな生活を送るのか!?
異世界物のテンプレと超ご都合主義を盛り沢山に、ちょいちょい社会風刺を入れながらお送りする異世界定食屋経営物語。はたしてジョージはホワイトな飲食店を経営できるのか!?
● 異世界テンプレと超ご都合主義で話が進むので、苦手な方や飽きてきた方には合わないかもしれません。
● かつて作者もブラック飲食店で店長をしていました。
● 基本的にはおふざけ多め、たまにシリアス。
● 残酷な描写や性的な描写はほとんどありませんが、後々死者は出ます。
超文明日本
点P
ファンタジー
2030年の日本は、憲法改正により国防軍を保有していた。海軍は艦名を漢字表記に変更し、正規空母、原子力潜水艦を保有した。空軍はステルス爆撃機を保有。さらにアメリカからの要求で核兵器も保有していた。世界で1、2を争うほどの軍事力を有する。
そんな日本はある日、列島全域が突如として謎の光に包まれる。光が消えると他国と連絡が取れなくなっていた。
異世界転移ネタなんて何番煎じかわかりませんがとりあえず書きます。この話はフィクションです。実在の人物、団体、地名等とは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる