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九州三強と中央への目-北九州を二分する 二つの二虎競食の計-
九月 野芥村 徳栄寺の会盟②
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筑前の西 早良郡野芥村 徳栄寺 小佐々弾正大弼純正
俺は続けた。
「もう、終わりにしましょう。わたしの条件とは、このまま、です。何もかわりませぬ。これで終わりにしましょう。」
「このまま、とは一体どういう事だ?」
全員が訝しがる。
「よろしいでしょうか?例えば皆さまが、どの様な条件で毛利と約を結ばれているかわからぬ、と私は申し上げました。そうです、例えば大友に勝ったら香春岳城をくれとか、筑前の六郡を譲り受けるとか、そういった内容です。例えば。」
高橋鑑種がギクリとした顔で俺を見る。俺はそれを笑顔で返して話を続ける。
しかしどうやら、高橋だけではないようだ。みながみな、顔を見合わせている。
「よろしいですか。ここにいらっしゃるのは、筑前の主だった五人の国人の方です。その方以外の領地、大友の直轄地は早良郡のわずか四万五千石ですぞ。それをどうやって、皆さまが約をかわされた内容で分け与えるのでしょうか。数があいませぬ。」
「例えば仮に、仮にです。毛利が高橋殿に六郡を与えるとしましょう。どの六郡ですか?秋月殿の穂波郡、夜須郡、嘉麻郡、下座郡で六郡ですか?それともさらに二郡加えて十郡ですか?」
高橋は努めて冷静を装っている。
「いずれにしても、筑前国だけでは増える領土などたかが知れているのです。豊前と豊後も取りますか?大友がそう簡単にくれるとも思いませんし、毛利はなおさらでしょう。」
「皆さまは、今の時点でしかるべき領地は確保しているのです。取らぬ狸の皮算用でこのまま戦を続けますか?」
「わたしが提案する条件は皆さまが提示されている条件より劣るかもしれません。しかし間違いなく、今を保証できます。もちろんこの世に完璧はありません。しかし今のまま不毛な戦いを続けるよりはましなはずです。」
一つ、下記の五つより選ぶとする。
一つ、今のままの独立を一年間維持。ただしその後は預かり知らぬ事。
二つ、小佐々の傘下として、領内統治を行う。(今までの国衆制度)
三つ、領主ではなく代官として領内を統治。俸祿は相談により固定と出来高
家臣は小佐々の直参となる。
四つ、領主ではなく代官として領内を統治。現在の家族、家臣の所領は安堵
所領の石高は相談により決定。出来高の俸祿は三より割合が少ない。
五つ、四公六民とし、今の石高を一貫二石と換算して俸祿を支給。
一つ、大友直轄地の早良郡は小佐々領とし、博多の帆別銭を優遇する。
一つ、一以外は小佐々の庇護を受けられるものとする。
一つ、二以外は賦役はないものとする。
「いかがでしょうか。土地は宝。父祖伝来の土地は命と同じく大事でしょう。しかし仮に二以外を選んでいただいても、今と変わらず同じ土地に住み、治めていただきます。運営費は小佐々が捻出するものとし、管理のみ行っていただくかたちです。」
全員がお互いに顔を見合わせている。無理もない。こういう仕置のやり方はおそらく日の本にはない。あるかな?そこは不明だけど、選択肢が多い分選びやすいはずだ。一を選ぶ人は、まずいまい。
「神代どのや筑紫どのは、どの様にされているのか?」
原田隆種が聞いた。
「私は二でござる。しかし三から五もやってみました。長崎の深堀どのや、北松浦の志佐どのなどは三や四でござる。どれが良い悪いではなく、どれが自分にあうかどうかだと思います。」
「私は今年からなので四から始めようと考えています。」
俺は続けた。
「わかりやすい様に五つに分けておりますが、じっくり考えて決めていただければと思います。要はこの枠組に入っていただけるかどうか。決して悪い話ではないと思います。」
「しかし、われわれがこの通りにやったとして、大友が黙っておるとは思えぬが。」
「その通りです。しかし起請文にもある通り、破れば非は向こうにあります。そしてその時のために、こちらを御覧ください。」
先日、二年かけてやっとおりた勅書を見せた。
内容は、
『近頃の筑前の有り様遺憾極まりない。大友左衛門督ができぬのであれば、小佐々弾正大弼が筑前守も兼務して平安をもたらす様に。阻害する者は朝敵である。』
俺は続けた。
「もう、終わりにしましょう。わたしの条件とは、このまま、です。何もかわりませぬ。これで終わりにしましょう。」
「このまま、とは一体どういう事だ?」
全員が訝しがる。
「よろしいでしょうか?例えば皆さまが、どの様な条件で毛利と約を結ばれているかわからぬ、と私は申し上げました。そうです、例えば大友に勝ったら香春岳城をくれとか、筑前の六郡を譲り受けるとか、そういった内容です。例えば。」
高橋鑑種がギクリとした顔で俺を見る。俺はそれを笑顔で返して話を続ける。
しかしどうやら、高橋だけではないようだ。みながみな、顔を見合わせている。
「よろしいですか。ここにいらっしゃるのは、筑前の主だった五人の国人の方です。その方以外の領地、大友の直轄地は早良郡のわずか四万五千石ですぞ。それをどうやって、皆さまが約をかわされた内容で分け与えるのでしょうか。数があいませぬ。」
「例えば仮に、仮にです。毛利が高橋殿に六郡を与えるとしましょう。どの六郡ですか?秋月殿の穂波郡、夜須郡、嘉麻郡、下座郡で六郡ですか?それともさらに二郡加えて十郡ですか?」
高橋は努めて冷静を装っている。
「いずれにしても、筑前国だけでは増える領土などたかが知れているのです。豊前と豊後も取りますか?大友がそう簡単にくれるとも思いませんし、毛利はなおさらでしょう。」
「皆さまは、今の時点でしかるべき領地は確保しているのです。取らぬ狸の皮算用でこのまま戦を続けますか?」
「わたしが提案する条件は皆さまが提示されている条件より劣るかもしれません。しかし間違いなく、今を保証できます。もちろんこの世に完璧はありません。しかし今のまま不毛な戦いを続けるよりはましなはずです。」
一つ、下記の五つより選ぶとする。
一つ、今のままの独立を一年間維持。ただしその後は預かり知らぬ事。
二つ、小佐々の傘下として、領内統治を行う。(今までの国衆制度)
三つ、領主ではなく代官として領内を統治。俸祿は相談により固定と出来高
家臣は小佐々の直参となる。
四つ、領主ではなく代官として領内を統治。現在の家族、家臣の所領は安堵
所領の石高は相談により決定。出来高の俸祿は三より割合が少ない。
五つ、四公六民とし、今の石高を一貫二石と換算して俸祿を支給。
一つ、大友直轄地の早良郡は小佐々領とし、博多の帆別銭を優遇する。
一つ、一以外は小佐々の庇護を受けられるものとする。
一つ、二以外は賦役はないものとする。
「いかがでしょうか。土地は宝。父祖伝来の土地は命と同じく大事でしょう。しかし仮に二以外を選んでいただいても、今と変わらず同じ土地に住み、治めていただきます。運営費は小佐々が捻出するものとし、管理のみ行っていただくかたちです。」
全員がお互いに顔を見合わせている。無理もない。こういう仕置のやり方はおそらく日の本にはない。あるかな?そこは不明だけど、選択肢が多い分選びやすいはずだ。一を選ぶ人は、まずいまい。
「神代どのや筑紫どのは、どの様にされているのか?」
原田隆種が聞いた。
「私は二でござる。しかし三から五もやってみました。長崎の深堀どのや、北松浦の志佐どのなどは三や四でござる。どれが良い悪いではなく、どれが自分にあうかどうかだと思います。」
「私は今年からなので四から始めようと考えています。」
俺は続けた。
「わかりやすい様に五つに分けておりますが、じっくり考えて決めていただければと思います。要はこの枠組に入っていただけるかどうか。決して悪い話ではないと思います。」
「しかし、われわれがこの通りにやったとして、大友が黙っておるとは思えぬが。」
「その通りです。しかし起請文にもある通り、破れば非は向こうにあります。そしてその時のために、こちらを御覧ください。」
先日、二年かけてやっとおりた勅書を見せた。
内容は、
『近頃の筑前の有り様遺憾極まりない。大友左衛門督ができぬのであれば、小佐々弾正大弼が筑前守も兼務して平安をもたらす様に。阻害する者は朝敵である。』
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