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九州三強と中央への目-肥後の相良と阿蘇、そして北肥後国人衆-

親父は神か?

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同年 十二月 沢森城下 技術部 試験場

セメントの配合とコンクリートの強度試験が行き詰まっているらしい。どの材料をどのくらい配合するかなんて誰にもわからないから、根気との勝負だ。技術部員が頭を抱えている。

部員を激励しながら、休憩をとらせていると、なぜか親父がやってきた。

「どうしたの?」小声で
「いや、吉法師も愛もねとっけん、(寝てるから)相手してくれんけん(くれないから)ちょっと気分転換にね。」
そうか、そうなる時もあるよね。後で会いに行こう。

「え?なんこい?(なにこれ?)なんばしよっと?(なにしてんの?)」
あれ?長崎弁モードだぞ。

「あーそうね。コンクリば。そーねそーね。(そっかそっか)」
あれあれ?

「だけんセメンばつくっとに、鍾乳の石とか貝殻ば使うとやろ?そいと粘土ばまぜて。だけん順番の違うとって!混ずん前に焼いて元ば作らんば。」
(だからセメントをつくるのに、鍾乳洞の石とか貝殻使うんだろ?それと粘土をまぜて。だから順番が違うんだって!混ぜる前に焼いて元をつくらないと。)

「焼いてから砕いてこまこうして粘土と混ぜてつくるとやったら、ちょっとずつしよったら、どんくらい水のいって、どんくらい粘土のいっかわからんやろ?しかも乾いた粘土ば砕いてこまこうして。」
(焼いた後に砕いて細かくして、粘土と混ぜて作るんだったら、ちょっとずつやってたら、どのくらい水が必要でどのくらい粘土が必要なのかわからないでしょ?しかも同時に乾いた粘土を砕いて細かくして)

「ちょっとしか作れんし、次つくったとがやわかったり固かったりするけん。そいけんな、まず、石とか貝殻ば焼いてから砕くやろ。そいから細こう粉んごとして。そいと粘土。一番よかとは鉢のあっやろ?茶色か。」
(少ししか作れないし、次に作ったのが柔らかかったり固かったりするから。だからまず、石とか貝殻を焼いて砕くでしょ。それから細かく砕いて粉みたいにして。それと粘土。一番いいのは鉢があるでしょ。茶色の。)

「別に鉢じゃのうしても、割れとるととかいらんごとなったやつとか、そこらじゅうにあるやろう?焼いてかとうなる前の粘土ばまぜようってしても難しかけん、焼き終わったやつばつこうた方がよか。」
(別に鉢じゃなくても割れていらなくなったやつとか、そこら中にいっぱいあるでしょ?焼いて固くなる前の粘土を混ぜようとしても難しいから、焼き終わったやつを使った方がいい。)

「そいば砕いて粉んごとして、そいでさっきの細こう粉んごとなった、まあセメンの元たいな。そいが八で粘土が二ぐらいでまずっとさ。こいでよか。こん割合でくそんごとつくっとけばよかっさ。こいがいちばん大事かけん。」
(それを砕いて粉みたいにして、そしてさっきの細かい粉みたいになった、まあ、セメントの元だよね。それを8で粘土が2くらいで混ぜるんだよ。これでいい。その割合でくそみたいにたくさん作ればいい。これが一番大事)

「そいで、セメンばつくっとやのうして、コンクリばつくっとやろ?まあ、あとからのろとかセメンばつくっとやったらそん時考えればよか。」
(そしてセメントを作るんじゃなくて、コンクリートを作るんだろ?まあ、後でノロとかモルタルを作るんだったらその時考えればいい。)

「えーっと、そいでどんくらいいっとか(どのくらい必要なのか)わからんばって(知らないけど)、とりあえず1リューベで考えたら、いや1リューベじゃわからんか。えーっとな、そいやったらわかりやすかところで(それだったらわかりやすいところで)一間でよか。縦と、横と高さと、全部一間。」

「こいで(これで)一辺が1.8mやけん(だから)わかりやすか。そいで(それで)そいにいっとが(それに必要なのが)、えーっと、ああちょいまった。1.8×1.8×1.8=・・・ちょっと書くもん貸して。・・・ええっと5.832余裕見て1.1かけて6.4152リューベか。」

「そいで割合がセメン・水・砂・砂利で3・2・8・10やけん(だから)300・200・800・1000キロやろ。一貫が3.75キロやけん、
セメンが300×6.4152=1924.56キロ=513.216貫
水が200×6.4152=1283.04キロ=342.144貫
砂が800×6.4152=5142.16キロ=1368.576貫
砂利が1000×6.4152=6415.2キロ=1710.72貫」

「ふう、頭いたか。疲れた。あとはもうわかっやろ(わかるだろ)?帰ってぬっけん。(寝るよ)」

ああ、忘れとった。親父、仕事モード入っとる。でも、ありがとう。神や。
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