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従属と抵抗 九州三強への岐路- 雌雄を決す、塩田津の湊戦役-
敢作敢当 鍋島直茂
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今、鍋島直茂が眼前にいる。
どう考えても龍造寺家のフィクサー。史実で龍造寺家の勢力拡大にもっとも寄与し、隆信死後も主家を支えつつ肥前鍋島藩の祖となる人物。
某歴史シミュレーションゲーム『○○○○望』でも高スペックで出場する、九州でも指折りの有能な人物である。
「はじめて御意を得まする。鍋島左衛門大夫直茂にございます。」
「うむ、面をあげよ。」
俺は緊張しながらも威厳を保つ様に心がけ、静かに答えた。やさしげな顔立ちに凛とした佇まい。捕虜となった今も卑屈にはなっていない。戦国武将の荒々しさも、垣間見える。そんな感じだ。
「さて、こたびはようやってくれたの。何か言う事はあるか?」
「は、されば『敗軍の将は以て勇を言うべからず』と申します。某からは何も言う事はできぬかと。」
俺は含み笑いをしながら言った。
「嘘を申すな。言いたい事が山ほどあるのではないか?立花に高橋と秋月に、宇久に平戸や波多に有馬大村と、全部その方が仕組んだ事であろう?何と申したかな、確か『空閑』と申したか。随分と苦労させられたと、うちの者がぼやいておったわ。」
直茂が、はっとした顔で俺をみている。
「まあ当家にも、それをなりわいとした者共がいるという事だ。何も佐賀鍋島だけになせる業ではないぞ。」
もう一度聞く。
「それで、本当はどうしたいのだ?」
直茂は平身低頭している。
「されば、お願いがございます。主家、龍造寺家の存続を、なにとぞお許しいただきたく。」
「ふむ、存続ねえ。いや、存続もなにも、嫡男の政家は佐賀城にいるし、石高にしても佐賀郡の十三万石、本領は減っておらぬ。それから江上と千葉の去就も関わってくるから、その方らがもう一戦交えようと思うなら、出来ぬ話ではなかろう?」
「とんでもありません。江上の九万石、千葉の五万石は旧主隆信が武をもって切り従えたもの。隆信死ぬとわかるや造反するに間違いございません。されば反撃など、とてもとても。よしんば国衆が留まったとしても、もう以前の様には戦えません。それだけ殿に求心力があったのです。」
「その求心力のある隆信に、なぜ神代・平井が叛いたのだ?」
「それは・・・、近ごろの殿は、なぜかわかりませぬが、もう肥前をとった様な気になっておりました。それゆえ慢心の行いも多く・・・。」
「ふむ、それはそなたにも問題があるのだぞ。」
「それは一体どういう?」
「『狡兎死して走狗烹らる』という。そこまではいかぬが、家中でのそなたの評判が上がるにつれ、隆信は面白くなくなった。そして少しずつ言う事を聞かなくなったのではないか?人は誰しも自分が一番で有り続けたいものだからな。」
直茂は黙ってしまった。
「まあ、俺はあまり気にはしない。そもそも俺自身、皆に比べて自分がそこまで高い能力だとは思っていないからな。わはははは!」
「龍造寺との交渉、そなたに一任する。生きるか死ぬかはそなた次第ぞ。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
さて、直茂がどうするか。
しかしどう動こうが、実際のところ、直茂の言う通り、千葉や江上をはじめとした国衆の離反はさけられまい。本家が弱まれば、一気に全体が弱体化して離反者が続出する。
しばらくは引見が続きそうだ。
どう考えても龍造寺家のフィクサー。史実で龍造寺家の勢力拡大にもっとも寄与し、隆信死後も主家を支えつつ肥前鍋島藩の祖となる人物。
某歴史シミュレーションゲーム『○○○○望』でも高スペックで出場する、九州でも指折りの有能な人物である。
「はじめて御意を得まする。鍋島左衛門大夫直茂にございます。」
「うむ、面をあげよ。」
俺は緊張しながらも威厳を保つ様に心がけ、静かに答えた。やさしげな顔立ちに凛とした佇まい。捕虜となった今も卑屈にはなっていない。戦国武将の荒々しさも、垣間見える。そんな感じだ。
「さて、こたびはようやってくれたの。何か言う事はあるか?」
「は、されば『敗軍の将は以て勇を言うべからず』と申します。某からは何も言う事はできぬかと。」
俺は含み笑いをしながら言った。
「嘘を申すな。言いたい事が山ほどあるのではないか?立花に高橋と秋月に、宇久に平戸や波多に有馬大村と、全部その方が仕組んだ事であろう?何と申したかな、確か『空閑』と申したか。随分と苦労させられたと、うちの者がぼやいておったわ。」
直茂が、はっとした顔で俺をみている。
「まあ当家にも、それをなりわいとした者共がいるという事だ。何も佐賀鍋島だけになせる業ではないぞ。」
もう一度聞く。
「それで、本当はどうしたいのだ?」
直茂は平身低頭している。
「されば、お願いがございます。主家、龍造寺家の存続を、なにとぞお許しいただきたく。」
「ふむ、存続ねえ。いや、存続もなにも、嫡男の政家は佐賀城にいるし、石高にしても佐賀郡の十三万石、本領は減っておらぬ。それから江上と千葉の去就も関わってくるから、その方らがもう一戦交えようと思うなら、出来ぬ話ではなかろう?」
「とんでもありません。江上の九万石、千葉の五万石は旧主隆信が武をもって切り従えたもの。隆信死ぬとわかるや造反するに間違いございません。されば反撃など、とてもとても。よしんば国衆が留まったとしても、もう以前の様には戦えません。それだけ殿に求心力があったのです。」
「その求心力のある隆信に、なぜ神代・平井が叛いたのだ?」
「それは・・・、近ごろの殿は、なぜかわかりませぬが、もう肥前をとった様な気になっておりました。それゆえ慢心の行いも多く・・・。」
「ふむ、それはそなたにも問題があるのだぞ。」
「それは一体どういう?」
「『狡兎死して走狗烹らる』という。そこまではいかぬが、家中でのそなたの評判が上がるにつれ、隆信は面白くなくなった。そして少しずつ言う事を聞かなくなったのではないか?人は誰しも自分が一番で有り続けたいものだからな。」
直茂は黙ってしまった。
「まあ、俺はあまり気にはしない。そもそも俺自身、皆に比べて自分がそこまで高い能力だとは思っていないからな。わはははは!」
「龍造寺との交渉、そなたに一任する。生きるか死ぬかはそなた次第ぞ。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
さて、直茂がどうするか。
しかしどう動こうが、実際のところ、直茂の言う通り、千葉や江上をはじめとした国衆の離反はさけられまい。本家が弱まれば、一気に全体が弱体化して離反者が続出する。
しばらくは引見が続きそうだ。
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