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従属と抵抗 九州三強への岐路- 雌雄を決す、塩田津の湊戦役-
開戦!立花鑑載蜂起する。
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永禄八年 十月 佐賀龍造寺城(佐賀城) 龍造寺隆信
「申し上げます。立花山城の立花鑑載、与力の米多比直知、薦野宗鎮を謀殺した由にございます。」
伝令が告げる。
「そうか、鑑載が叛いたか。よしよし、高橋や秋月はどうじゃ?」
「は、時を同じくして蜂起するものと思われます。」
予想通り、稲の刈り入れが終わるのを待って蜂起したか。これで大友は筑前から目を離す事は出来ぬな。豊前の毛利が動けばなおさらじゃ。
「よし!直茂を呼べ!」
使いの者が鍋島直茂を呼びにいく。
「お呼びですか、殿。」
直茂が静かに言う。
「うむ。そちの言った通りになった。立花が叛いたぞ。さて、どうする?どっちに動く?」
「殿もお人が悪い。もう決めていらっしゃるのでしょう?われらとすれば、どちらでもようございます。波多に行くか塩田津の湊にいくか。どちらにしても、うまく運べば両方。だめでもどちらかは手に入りまする。」
「ふふふ。そう言うな直茂。その通り、波多などすぐつぶせる。問題は小佐々じゃの。あやつは少々大きくなりすぎた。今つぶしておかねば、後々苦労するであろう。・・・では、塩田津の湊を取りにいくとする。その様に文を出せ。十一月一日に事を起こすゆえ、時を同じくして、お頼み申す、とな。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・同月 小佐々城 小佐々弾正大弼純正
「申し上げます。立花山城の立花鑑載、ならびに宝満城の高橋鑑種と古処山城の秋月種実、大友に造反してございます。」
藤原千方が告げに来た。
「そうか。皆を集めよ。」
「はっ。殿、それから」
「なんじゃ?」
「この流れ、やはり龍造寺が絡んでおりました。もともと立花らに造反の素地があったとは言え、こうも見事につながるとは思えません。空閑衆が焚き付けたものかと。また、毛利の世鬼一族の影も見受けられます。」
「相まみえたか?」
「は、なかなかに手ごわく、油断いたしまいた。」
「千方、死ぬなよ。生きてこそ、だ。」
「は、ありがたき幸せ。」
空閑衆に世鬼一族か。まったくもう、勘弁してくれよな。
主殿に皆が集まってきた。
「殿!筑前の国衆が大友に叛いたとは誠にございますか?」
治郎兵衛が聞いてくる。
「誠じゃ。恐らくそれにあわせて龍造寺も動くであろう。」
場がざわつく。
「殿は敵の兵力はいかほどとお考えで?」
と杢兵衛。
「うむ。詳細は報告を待たねばならぬが、筑前方面は敵がおらぬ。波多も前回に懲りて簡単には龍造寺には攻め込むまい。神代、平井、その他あわせて、一万程度にはなろうかと思う。」
一万か・・・。そういう顔を皆がしている。
「わが方はどのくらいの兵を用意できそうか?」
治郎兵衛に確認する。
「されば、こたびは陸戦が主体となるでしょうから、わが軍は小佐々砦の第一連隊と本城の第三連隊、合計二千。後藤と伊万里、志佐の予備隊で千五百、相神浦と波佐見衆、平戸を入れても合計五千ほどかと。」
「五千?敵の半分じゃないか?せめて・・・、そうだ!平戸の隊と本拠の残りを入れたら八千!これならなんとかなるのでは?!」
と勝行が発言する。
「ダメだ。本拠と平戸を空にはできん。大丈夫だとは思うが、この隙に松浦の旧臣が蜂起しかねん。動かせん。この五千でなんとかせねばならん。が・・・。」
俺は目をつむり、考える。塩田津の湊が戦場なら、まずは大村が当たる。それで少しでも龍造寺を削れれば。
「敵の目的が塩田津の湊なら、まずは相対するのは大村だ。今の大村なら、絞り出しても千か千五百だろうが、それでも藤津の防衛軍と一体になれば、足止めくらいにはなってくれよう。」
波多と同盟が結べていたら、ここまで戦力に開きはなかったであろうが、致し方ない。それよりも・・・・。
なんだこの違和感は?・・・・あまり使いたくはないが、二の手三の手、・・・四の手まで用意しておかねばならないか?
そうならないに越した事はないが、しかし戦場に絶対はない。
今俺たちが不利なのには変わりない。
「殿、さすればここは、いささか戦場から離れておりまする。皆の士気を上げるため、部隊を効率的に動かすために、後藤殿のおられる武雄に移られますよう進言いたします。」
「あいわかった。その様にいたそう。勝行、ここは頼むぞ。俺がいない時、全権はおまえに託す。」
はは、と勝行が頭を下げる。
勝行が判断し、動かなくてはならない、そんな事が起きない事を祈ろう。
「申し上げます。立花山城の立花鑑載、与力の米多比直知、薦野宗鎮を謀殺した由にございます。」
伝令が告げる。
「そうか、鑑載が叛いたか。よしよし、高橋や秋月はどうじゃ?」
「は、時を同じくして蜂起するものと思われます。」
予想通り、稲の刈り入れが終わるのを待って蜂起したか。これで大友は筑前から目を離す事は出来ぬな。豊前の毛利が動けばなおさらじゃ。
「よし!直茂を呼べ!」
使いの者が鍋島直茂を呼びにいく。
「お呼びですか、殿。」
直茂が静かに言う。
「うむ。そちの言った通りになった。立花が叛いたぞ。さて、どうする?どっちに動く?」
「殿もお人が悪い。もう決めていらっしゃるのでしょう?われらとすれば、どちらでもようございます。波多に行くか塩田津の湊にいくか。どちらにしても、うまく運べば両方。だめでもどちらかは手に入りまする。」
「ふふふ。そう言うな直茂。その通り、波多などすぐつぶせる。問題は小佐々じゃの。あやつは少々大きくなりすぎた。今つぶしておかねば、後々苦労するであろう。・・・では、塩田津の湊を取りにいくとする。その様に文を出せ。十一月一日に事を起こすゆえ、時を同じくして、お頼み申す、とな。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・同月 小佐々城 小佐々弾正大弼純正
「申し上げます。立花山城の立花鑑載、ならびに宝満城の高橋鑑種と古処山城の秋月種実、大友に造反してございます。」
藤原千方が告げに来た。
「そうか。皆を集めよ。」
「はっ。殿、それから」
「なんじゃ?」
「この流れ、やはり龍造寺が絡んでおりました。もともと立花らに造反の素地があったとは言え、こうも見事につながるとは思えません。空閑衆が焚き付けたものかと。また、毛利の世鬼一族の影も見受けられます。」
「相まみえたか?」
「は、なかなかに手ごわく、油断いたしまいた。」
「千方、死ぬなよ。生きてこそ、だ。」
「は、ありがたき幸せ。」
空閑衆に世鬼一族か。まったくもう、勘弁してくれよな。
主殿に皆が集まってきた。
「殿!筑前の国衆が大友に叛いたとは誠にございますか?」
治郎兵衛が聞いてくる。
「誠じゃ。恐らくそれにあわせて龍造寺も動くであろう。」
場がざわつく。
「殿は敵の兵力はいかほどとお考えで?」
と杢兵衛。
「うむ。詳細は報告を待たねばならぬが、筑前方面は敵がおらぬ。波多も前回に懲りて簡単には龍造寺には攻め込むまい。神代、平井、その他あわせて、一万程度にはなろうかと思う。」
一万か・・・。そういう顔を皆がしている。
「わが方はどのくらいの兵を用意できそうか?」
治郎兵衛に確認する。
「されば、こたびは陸戦が主体となるでしょうから、わが軍は小佐々砦の第一連隊と本城の第三連隊、合計二千。後藤と伊万里、志佐の予備隊で千五百、相神浦と波佐見衆、平戸を入れても合計五千ほどかと。」
「五千?敵の半分じゃないか?せめて・・・、そうだ!平戸の隊と本拠の残りを入れたら八千!これならなんとかなるのでは?!」
と勝行が発言する。
「ダメだ。本拠と平戸を空にはできん。大丈夫だとは思うが、この隙に松浦の旧臣が蜂起しかねん。動かせん。この五千でなんとかせねばならん。が・・・。」
俺は目をつむり、考える。塩田津の湊が戦場なら、まずは大村が当たる。それで少しでも龍造寺を削れれば。
「敵の目的が塩田津の湊なら、まずは相対するのは大村だ。今の大村なら、絞り出しても千か千五百だろうが、それでも藤津の防衛軍と一体になれば、足止めくらいにはなってくれよう。」
波多と同盟が結べていたら、ここまで戦力に開きはなかったであろうが、致し方ない。それよりも・・・・。
なんだこの違和感は?・・・・あまり使いたくはないが、二の手三の手、・・・四の手まで用意しておかねばならないか?
そうならないに越した事はないが、しかし戦場に絶対はない。
今俺たちが不利なのには変わりない。
「殿、さすればここは、いささか戦場から離れておりまする。皆の士気を上げるため、部隊を効率的に動かすために、後藤殿のおられる武雄に移られますよう進言いたします。」
「あいわかった。その様にいたそう。勝行、ここは頼むぞ。俺がいない時、全権はおまえに託す。」
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