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肥前五強!non無双でもやるしかない。-肥前争乱、淘汰するものされるもの-
俵石城陥落、そして決別
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永禄七年 十二月 深堀水軍旗艦 艦上
「な、自分が何を言っているのか、わかっているのですかな?それとも気でも狂ったか?」
「もちろん、わかっているし、俺はおかしくなんてなってない。いたって正常だ。」
「ではなぜ?確かに殿は援軍要請を出した。多比良にも届いているはずだ。」
「あー、届いたのかな?しかし俺は自分の意志で七ツ釜を出港し、こうして深掘を攻めている。深掘を攻めるのに、いちいち純忠の許可がいるのか?」
ぐっ。
栄正は唇を噛んだ。
「では長崎はどうだ?あれは紛れもなく大村の所領ぞ!」
今度は純景が割って入ってきた。
「聞き捨てなりませんな。今は降伏しておりますが、長崎は我ら長崎家の父祖伝来の地。大村領など、一度たりともなっておりませんぞ。思い上がりも甚だしい!」
栄正は何も言えずにいる。それはそうだろう。純景が言っている事は正論だ。
和睦要請を無視する。
一見悪い事をしている様に見えるが、第三者からの和睦調停がうまくいかない事など、山ほどある。特に優勢な方から見ると、自軍に利益がないと、受け入れる意味がない。
「あーそれから、宮の村はもちろんだが、川棚村まで兵を進めて、我らが治めておるからな。宮の村は後藤が攻めて来るとわかって、どんどん流民が南風崎に流れて来た。後藤はもう攻めて来ぬから、と言っても聞き入れてくれぬのだ。」
「川棚は川棚で、殺される!報復が怖いから何とかしてくれ!と仏教とキリシタン、両方から頼まれて、仕方なく、治めておる。ここは大村純忠の領地だから、と何度言っても聞いてくれん。致し方なかろう。」
「そもそも領民を守れず、領民の陳情も聞けぬのなら、領主の資格はないと思うがのう。」
栄正は青ざめている。怒りと呆れと、自分の無力さを悟ったのか、呆然としている。
「では、そういう事で、帰ったらちゃあんと純忠へ報告してくれよ。」
純正は栄正の肩をぽんぽん、と叩いた。
意気消沈する栄正を乗せた小舟が岸へ向かう。
「さて!と、いう事なんだが、ご両人、これで良いかな?」
二人が呆れてきょとん、としている。
「二人共、俺の家臣になるって事でいいか?と聞いておる。」
「どうするも何も、私は深堀様に降伏した身ですから、深堀様に従いまする。」
純景が言う。
ふふ、ふふふふ、ふはははは!あーはっはっはっはっは!
「小佐々を十五の小倅がついだとは聞いておったが、一度会ってみたいと思うておった!いやあ、予想を遥かに上回る!」
「それは、褒めているのかけなしているのか、どっちなんだ?」
「褒めておるのよ!大村の使者を手玉に取り、今またこのわしを取り込もうとしておる!」
「それで、どうするのだ?まだやるか?」
「いやいや、その前に一つ聞かせてくれ。あれは、あの城への攻撃は、味方がいるとわかっていて攻撃していたのか?」
「わかっていたさ。ただ、攻め込むのは城の北側からだからな。それゆえ当たらぬように、わざと外して、城の南側の土塁や石垣だけ狙ったのだ。」
「おぬしも、俺が攻めてきたとわかったら、真っ先に領民を逃しておったろう?」
「なぜそれを?」
「彼を知り己を知れば百戦殆うからず、というからな。それに以前からおぬしの事は調べておったのだ。」
「はは!あはははは!参った。いや参った!よし、この深堀純賢、弾正大弼様にお仕えいたそう!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
結局、須古城を守っていた平井経治は、自身の弟に龍造寺隆信の娘を娶らせる事で和睦をした。周辺豪族は皆龍造寺に帰順し、頼みの有馬も領内に問題が発生したとして、帰ってしまったからだ。単独では到底太刀打ちできない。
龍造寺領内に入った波多勢は、というと、背後を伊万里に脅かされ、行くか戻るかの状態を、千葉胤連に完膚なきまでに叩かた。
ほうほうの体で岸岳城へ逃げ帰ったのだった。もっとも、波多勢の龍造寺領内侵攻を予期して、伊万里に調略をかけていたのは、空閑衆である事は想像に難くない。
深堀領と長崎村が小佐々領になった。長崎村周辺の三ヶ村、福田村から畝刈村を治める福田氏、金山でもめた大串村も、大村氏から寝返り、小佐々氏に帰順した。これにて小佐々の領土は五万九千八百二十四石となった。
金銀鉱山の件に関しては、領主同士でのいざこざは確かにあった。しかし当の領民同士は仲が良く、賃金の額も支払いも良かったので、何のいさかいもなかったのだ。隣の芝生は青く見えるというが、実際に青かったのだ。
福田氏の場合は致し方ないであろう。南北を小佐々に挟まれたのだ。大村氏の援護は当てに出来ない。深堀、長崎以外の領地の併合は、今回の戦だけが原因ではなかった。石宗衆が裏で動き、秘密裏に調略していたのだ。
こうして東肥前と南肥前、西肥前を巻き込んだ争乱は一応の終わりをみせた。大村は大村湾の入り口と半島の西側全てを失い、藤津郡とあわせて二万四千五百七十六石となった。ついに小佐々氏とは立場が逆転してしまったのである。
さて、イエズス会はどう動くでろうか。
「な、自分が何を言っているのか、わかっているのですかな?それとも気でも狂ったか?」
「もちろん、わかっているし、俺はおかしくなんてなってない。いたって正常だ。」
「ではなぜ?確かに殿は援軍要請を出した。多比良にも届いているはずだ。」
「あー、届いたのかな?しかし俺は自分の意志で七ツ釜を出港し、こうして深掘を攻めている。深掘を攻めるのに、いちいち純忠の許可がいるのか?」
ぐっ。
栄正は唇を噛んだ。
「では長崎はどうだ?あれは紛れもなく大村の所領ぞ!」
今度は純景が割って入ってきた。
「聞き捨てなりませんな。今は降伏しておりますが、長崎は我ら長崎家の父祖伝来の地。大村領など、一度たりともなっておりませんぞ。思い上がりも甚だしい!」
栄正は何も言えずにいる。それはそうだろう。純景が言っている事は正論だ。
和睦要請を無視する。
一見悪い事をしている様に見えるが、第三者からの和睦調停がうまくいかない事など、山ほどある。特に優勢な方から見ると、自軍に利益がないと、受け入れる意味がない。
「あーそれから、宮の村はもちろんだが、川棚村まで兵を進めて、我らが治めておるからな。宮の村は後藤が攻めて来るとわかって、どんどん流民が南風崎に流れて来た。後藤はもう攻めて来ぬから、と言っても聞き入れてくれぬのだ。」
「川棚は川棚で、殺される!報復が怖いから何とかしてくれ!と仏教とキリシタン、両方から頼まれて、仕方なく、治めておる。ここは大村純忠の領地だから、と何度言っても聞いてくれん。致し方なかろう。」
「そもそも領民を守れず、領民の陳情も聞けぬのなら、領主の資格はないと思うがのう。」
栄正は青ざめている。怒りと呆れと、自分の無力さを悟ったのか、呆然としている。
「では、そういう事で、帰ったらちゃあんと純忠へ報告してくれよ。」
純正は栄正の肩をぽんぽん、と叩いた。
意気消沈する栄正を乗せた小舟が岸へ向かう。
「さて!と、いう事なんだが、ご両人、これで良いかな?」
二人が呆れてきょとん、としている。
「二人共、俺の家臣になるって事でいいか?と聞いておる。」
「どうするも何も、私は深堀様に降伏した身ですから、深堀様に従いまする。」
純景が言う。
ふふ、ふふふふ、ふはははは!あーはっはっはっはっは!
「小佐々を十五の小倅がついだとは聞いておったが、一度会ってみたいと思うておった!いやあ、予想を遥かに上回る!」
「それは、褒めているのかけなしているのか、どっちなんだ?」
「褒めておるのよ!大村の使者を手玉に取り、今またこのわしを取り込もうとしておる!」
「それで、どうするのだ?まだやるか?」
「いやいや、その前に一つ聞かせてくれ。あれは、あの城への攻撃は、味方がいるとわかっていて攻撃していたのか?」
「わかっていたさ。ただ、攻め込むのは城の北側からだからな。それゆえ当たらぬように、わざと外して、城の南側の土塁や石垣だけ狙ったのだ。」
「おぬしも、俺が攻めてきたとわかったら、真っ先に領民を逃しておったろう?」
「なぜそれを?」
「彼を知り己を知れば百戦殆うからず、というからな。それに以前からおぬしの事は調べておったのだ。」
「はは!あはははは!参った。いや参った!よし、この深堀純賢、弾正大弼様にお仕えいたそう!」
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結局、須古城を守っていた平井経治は、自身の弟に龍造寺隆信の娘を娶らせる事で和睦をした。周辺豪族は皆龍造寺に帰順し、頼みの有馬も領内に問題が発生したとして、帰ってしまったからだ。単独では到底太刀打ちできない。
龍造寺領内に入った波多勢は、というと、背後を伊万里に脅かされ、行くか戻るかの状態を、千葉胤連に完膚なきまでに叩かた。
ほうほうの体で岸岳城へ逃げ帰ったのだった。もっとも、波多勢の龍造寺領内侵攻を予期して、伊万里に調略をかけていたのは、空閑衆である事は想像に難くない。
深堀領と長崎村が小佐々領になった。長崎村周辺の三ヶ村、福田村から畝刈村を治める福田氏、金山でもめた大串村も、大村氏から寝返り、小佐々氏に帰順した。これにて小佐々の領土は五万九千八百二十四石となった。
金銀鉱山の件に関しては、領主同士でのいざこざは確かにあった。しかし当の領民同士は仲が良く、賃金の額も支払いも良かったので、何のいさかいもなかったのだ。隣の芝生は青く見えるというが、実際に青かったのだ。
福田氏の場合は致し方ないであろう。南北を小佐々に挟まれたのだ。大村氏の援護は当てに出来ない。深堀、長崎以外の領地の併合は、今回の戦だけが原因ではなかった。石宗衆が裏で動き、秘密裏に調略していたのだ。
こうして東肥前と南肥前、西肥前を巻き込んだ争乱は一応の終わりをみせた。大村は大村湾の入り口と半島の西側全てを失い、藤津郡とあわせて二万四千五百七十六石となった。ついに小佐々氏とは立場が逆転してしまったのである。
さて、イエズス会はどう動くでろうか。
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