上 下
84 / 775
肥前五強!non無双でもやるしかない。-横瀬浦開港 敵が味方 味方が敵に-

沢森政忠、五代目弾正忠純正に、相成る。

しおりを挟む
 親父と一緒に小佐々城にいった。馬で一刻(2時間)もかからない。

 小佐々城は城の辻と呼ばれる小高い山の上に築かれている。

 城の本丸からはゲキト岳を源流として梨の木から北の七ツ釜港に流れこむ多比良川と、それに沿って瀬戸村までつながる道を望む。
 
 周囲には北に田平下館、南に小峰上館があって一門や譜代家臣の家族などが住んでいる。南側には石積の段曲輪、北の山腹には「扇陣」と呼ばれる石垣があった。

 典型的な山城だが、改めてじっくり見る事はこれまでなかったのだ。

「かような事に相成り、誠に申し訳ございません。それがしの不徳のいたすところにございます。真っ先にお伺いせねばならぬところ、仕置に手間どり、かような時期になり申した。重ねがさね申し訳ございません」

「よい。よく来てくれたの。嬉しく思うぞ」

 俺は自分の目を疑った。

 本当に同じ人間なのか。頬はやつれ痩せこけて、クマができた顔には全く生気がない。髪はほぼ白髪で埋め尽くされており、声もかすれている。

 おととし初めて会った時は、五十を過ぎていた。

 それでも精悍で活力にあふれ、見方によっては四十前と言っても過言ではなかった。それが今、見る影もない。まるで黄泉路に向かう老人だ。

 右側に座っている常陸介叔父上もひどい。

 まだ三十だというのに、焦燥しきった四十過ぎの、ただのオジサンだ。
 
 凛々しく、雄々しく、弓の名手で俺の命を助けてくれた、あの叔父さんはどこにいったんだ。

「ごほっ、実はの、平九郎。こたび呼んだのは、お主に頼みがあっての事なのじゃ」

「はい、なんでしょうか」

「小佐々を……ついでくれぬか」

 ! ! !

 俺は驚いたが、実は、なんというか、そこまで驚かなかった。不思議な感覚だ。

 葛の峠の戦いで義父上と義理の叔父上二人をなくした時、なんとなく、なんとなくではあるが、こんな日がくるのではないか? と感覚的に予感していた。

 だからまず、親父の顔を確認した。うんうん、とうなずくそぶりを見せている。

「……。かしこまりました。しかし、この件、常陸介様をはじめ、御一門や譜代の方々は得心(納得)なさっておいでなのでしょうか」

 俺は常陸介叔父上を見た。叔父上はただ、うなずいている。

「小佐々を……頼むぞ平九郎」

「はは。神明に誓って。全身全霊をもって励みまする!」
 
 深々と平伏した。

 その五日後、三代目弾正忠、小佐々純勝は永眠した。享年五十五。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?

水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが… 私が平民だとどこで知ったのですか?

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

【完結】クビだと言われ、実家に帰らないといけないの?と思っていたけれどどうにかなりそうです。

まりぃべる
ファンタジー
「お前はクビだ!今すぐ出て行け!!」 そう、第二王子に言われました。 そんな…せっかく王宮の侍女の仕事にありつけたのに…! でも王宮の庭園で、出会った人に連れてこられた先で、どうにかなりそうです!? ☆★☆★ 全33話です。出来上がってますので、随時更新していきます。 読んでいただけると嬉しいです。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...