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二島五ヶ村の領主 無双≠生き延び スタート
山内二十六ヶ山の総領 神代勝利
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肥前国 波佐見 内海城 神代勝利
「お初に御意を得まする。沢森平九郎政忠にございます。」
若いな、息子長良より一回り下位か。
内海殿と私は同時に挨拶をし、まずは内海殿がこの若い彼杵の領主に話しかけた。
「堅苦しい挨拶は良い。先だってから利三郎殿に話は聞いておる。もとより我らも盟に異存はござらぬし、粘土も好きなだけ持っていけば良い。それから・・・」
内海殿が何かを言いかける前に、
「これに」
と箱に入った物を差し出してきた。
一尺四方の箱の中にはなにやら琥珀色の石が入っておる。
「おお、これこれこれ。実は家中でたいそう評判でな。」
満面の笑みで話をする。
「お気に召されたようで何よりでござる。入用であれば原価にてお譲りいたします。」
かたじけない、とその箱を下げながら内海殿は真顔に戻る。
「神代様もご興味がおありになれば融通いたしまする。詳しくは内海様からお聞きください。」
確かに興味がない訳では無いが、それよりも彼杵の領主がわざわざ流浪のわしに何の用であろうか。
しばしの沈黙の後、切り出してきた。
「実は神代様に、お力になっていただきたく、まかりこしました。」
?一体どういう事だ?
「怪訝なお顔をされるのも無理からぬ事にございますが、神代様は・・・・」
「なんでござろう?」
「されば、龍造寺隆信については、どうお考えでしょうか?」
おそらくわしの顔は険しく、怒りを懸命に抑えている様に見えたのだろう。
ただ、黙ってわしが話し出すのをまっておる。
「どうもこうも。敵ながらあっぱれと言う他あるまい。山中にて決するのではなく、平野にて決戦に臨んだ事、裏切り者のせいで味方が壊滅し敗走した事も、すべてわしが不甲斐ないせいだ。」
しかし、あの男はこのままにしていては危険だ。
「なにがあっぱれな物か。尊大だ。先日使者が参ってきて何と言ったと思う?」
「降れ、この一言ですぞ。塩は撒かなかったが、いささか腹が立ち申した。」
「大村様や有馬様も、この状況は座視できぬとみて、これ以上西に進んで来るのであれば、対処しなければならない、と申しておった。」
一瞬、平九郎殿の顔に変化があったが、すぐに消え、そこで、と内海殿の後に続けた。
「龍造寺隆信は危険な男にございます。また、配下の鍋島直茂はかなりの切れ者にて、隆信の欠点を補っておりまする。成松信勝、江里口信常、百武賢兼、円城寺信胤など武に秀でる家臣も多い。」
「今はまだ、神代様を破ったとて、少弐の旧臣を完全に平定するまで、東肥前の統一はなりませぬ。しかし、それがなった暁には西に向かうは必定。それに抗するため大村様、有馬様がご出馬と相成れば、我らも助勢いたす事になり申す。」
「よしんば出陣を免れたとしても、後詰がなくなった我らは孤立するゆえ、平戸松浦や後藤が組んで攻め寄せれば、さすがに厳しゅうございます。」
本当に十二歳なのか?まるで同い年の男と話をしている気がするのは、気のせいだろうか。
「そこで、我らは神代様の三瀬復帰を武器弾薬にて後押ししたく存じます。」
これまではわしに損のない話だ。
平九郎殿はつづけた。
「おそらく今後十年は北九州にて大友様の優位はゆるぎますまい。龍造寺が東に行かぬのであれば、西しか進路はございませぬ。いかがでしょう?悪い話ではないと思います。」
ささやかではありますが、と付け加えたあと、大きな箱を抱えた家臣らしき人物がやってきてフタを開ける。
「どうぞお使いください。」
!!!
なんと鉄砲が百丁もあるではないか!六百貫はするぞ!しかも弾も火薬も!
・・・・・・・・・・・・・・・「承知いたした。」
目をつむり、深く息を吸い、そして吐いて、わしは答えた。
わしも齢五十を越え、なお龍造寺に抗うとなれば、これが最後になろう。後には長良がいるとはいえ、隆信に抗い続けられるだろうか?
ならば息子への遺産と、最後の晴れ舞台に、この若者を信じてみてもいいのではないだろうか。
わしはそう思い。承諾した。
「お初に御意を得まする。沢森平九郎政忠にございます。」
若いな、息子長良より一回り下位か。
内海殿と私は同時に挨拶をし、まずは内海殿がこの若い彼杵の領主に話しかけた。
「堅苦しい挨拶は良い。先だってから利三郎殿に話は聞いておる。もとより我らも盟に異存はござらぬし、粘土も好きなだけ持っていけば良い。それから・・・」
内海殿が何かを言いかける前に、
「これに」
と箱に入った物を差し出してきた。
一尺四方の箱の中にはなにやら琥珀色の石が入っておる。
「おお、これこれこれ。実は家中でたいそう評判でな。」
満面の笑みで話をする。
「お気に召されたようで何よりでござる。入用であれば原価にてお譲りいたします。」
かたじけない、とその箱を下げながら内海殿は真顔に戻る。
「神代様もご興味がおありになれば融通いたしまする。詳しくは内海様からお聞きください。」
確かに興味がない訳では無いが、それよりも彼杵の領主がわざわざ流浪のわしに何の用であろうか。
しばしの沈黙の後、切り出してきた。
「実は神代様に、お力になっていただきたく、まかりこしました。」
?一体どういう事だ?
「怪訝なお顔をされるのも無理からぬ事にございますが、神代様は・・・・」
「なんでござろう?」
「されば、龍造寺隆信については、どうお考えでしょうか?」
おそらくわしの顔は険しく、怒りを懸命に抑えている様に見えたのだろう。
ただ、黙ってわしが話し出すのをまっておる。
「どうもこうも。敵ながらあっぱれと言う他あるまい。山中にて決するのではなく、平野にて決戦に臨んだ事、裏切り者のせいで味方が壊滅し敗走した事も、すべてわしが不甲斐ないせいだ。」
しかし、あの男はこのままにしていては危険だ。
「なにがあっぱれな物か。尊大だ。先日使者が参ってきて何と言ったと思う?」
「降れ、この一言ですぞ。塩は撒かなかったが、いささか腹が立ち申した。」
「大村様や有馬様も、この状況は座視できぬとみて、これ以上西に進んで来るのであれば、対処しなければならない、と申しておった。」
一瞬、平九郎殿の顔に変化があったが、すぐに消え、そこで、と内海殿の後に続けた。
「龍造寺隆信は危険な男にございます。また、配下の鍋島直茂はかなりの切れ者にて、隆信の欠点を補っておりまする。成松信勝、江里口信常、百武賢兼、円城寺信胤など武に秀でる家臣も多い。」
「今はまだ、神代様を破ったとて、少弐の旧臣を完全に平定するまで、東肥前の統一はなりませぬ。しかし、それがなった暁には西に向かうは必定。それに抗するため大村様、有馬様がご出馬と相成れば、我らも助勢いたす事になり申す。」
「よしんば出陣を免れたとしても、後詰がなくなった我らは孤立するゆえ、平戸松浦や後藤が組んで攻め寄せれば、さすがに厳しゅうございます。」
本当に十二歳なのか?まるで同い年の男と話をしている気がするのは、気のせいだろうか。
「そこで、我らは神代様の三瀬復帰を武器弾薬にて後押ししたく存じます。」
これまではわしに損のない話だ。
平九郎殿はつづけた。
「おそらく今後十年は北九州にて大友様の優位はゆるぎますまい。龍造寺が東に行かぬのであれば、西しか進路はございませぬ。いかがでしょう?悪い話ではないと思います。」
ささやかではありますが、と付け加えたあと、大きな箱を抱えた家臣らしき人物がやってきてフタを開ける。
「どうぞお使いください。」
!!!
なんと鉄砲が百丁もあるではないか!六百貫はするぞ!しかも弾も火薬も!
・・・・・・・・・・・・・・・「承知いたした。」
目をつむり、深く息を吸い、そして吐いて、わしは答えた。
わしも齢五十を越え、なお龍造寺に抗うとなれば、これが最後になろう。後には長良がいるとはいえ、隆信に抗い続けられるだろうか?
ならば息子への遺産と、最後の晴れ舞台に、この若者を信じてみてもいいのではないだろうか。
わしはそう思い。承諾した。
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