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二島五ヶ村の領主 無双≠生き延び スタート
上松浦党の波多親
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永禄四年(1561年) 六月 沢森城
「して、どうであった?」
俺は利三郎の報告を受けた。
ひと月ほど前から粘土の調達と外交をまかせていた件だ。
「は、内海、福田とも感触は良好でござった。」
「両家とも、力のある勢力に与しなければ家を保つ事ができませぬ。それゆえ、親大村の我らと組むのは(現時点では)やぶさかでないようです。また、先日の我らが勝利、殿の初陣での活躍も知れ渡っている様子。こちらは波多、佐志方も同様でござった。」
利三郎がにやにやとも、ほくほくとも、よくわからない顔をしている。
「なんだ?」
ごほん、と咳払いすると、
「いえ、なにも」
と顔を引き締めた。
「また、ご所望の(ねばつち)でございますが、まったく関心のない様子でござった。ただの土くれなど何に使うのか?とは聞かれましたが、なんとか煙に巻きました。」
「そうか。石鹸はどうであった?」
「は、興味津々でございました。また、値段につきましては、殿が予想されていた原価の五文・・・六文で話しましたが、ようございましたか?」
「よい、元々そこで利益を得ようとは考えておらぬ。目的は粘土(ねんど・ねばつち)と盟だからな。諸々の費用込みで五文でもいい位だ。」
俺はふふっと笑い、話の続きを待った。
(家中で使おうが城下で売ろうがどうでもいい。大量に売れなければ意味がないからな。)
後は針尾の佐志方杢兵衛でございますが・・・・。
「うむ、いかがした?」
「は、こちらはさきほどの二名と違い、盟に重きをおいておりました。もちろん石鹸にも興味を示してはおりましたが、我らとの盟に大いに利を感じた様子です。」
「針尾島の領有をめぐって針尾氏と抗争を繰り返しておりますが、劣勢にございます。過去には島を追い出された経緯もございますれば、挟撃できる我らとの盟はかなりの魅力にみえるのでしょう。」
ただ、と俺は釘を差した。
「ただ、盟を結んだからとて、すぐに我らは兵を出す事あたわぬぞ。」
「承知しております。その点は、我が殿は家督をついで間もない事、家中をまとめ、国を豊かにするのが先決と申し伝えました。ただし、傘下の城が攻められた場合は合力する、とも」
ふふ、と俺は笑った。
「当然だ。それがなくば盟の意味がないからの。」
「はは、あわせて針尾氏に勝利した際には、領有を主張してきましたので・・・。」
「気が早いな。」
「はい、そこで我らは領地はいらぬ、かわりに早岐の瀬戸の通行権と徴税自由権を、と要求いたしました。もちろん、帰って我が殿にお伺いを立てる、と加えましたが。」
「さすがだ利三郎。針尾島は二千四百石で小佐々を越えるとはいえ、所詮は島だ。西側の針尾の瀬戸は流れが早くて渡れぬし、早岐の瀬戸を押さえておれば、大村領との商いの効率が飛躍的にあがる。ははは、島よりも十倍以上の値打ちがあるわ。」
沢森から陸路で大村までは八刻(16時間)かかるが、海路ではどれだけ長く見積もっても半分の四刻(8時間)で済む。
夕方には市が終わるので最低一泊は必要だが、大量に運べるので、同じ量を売るのに何度も往復する必要がない。城下に出店でも構えて在庫をおけば、月に一、二度で済むかもしれない。
費用対効果抜群だ。
「そして最後の波多だが。」
「はい、こちらは終始上機嫌で会談を終える事ができました。もちろん盟に関しては全く異存のない様子。先だっての我らの勝利が殊の外効いております。」
宿敵松浦氏を我らが撃退!
噂は本当にすごい力を持っているのだな、そう改めて感じた。確かに敵将二人を討ち取って勝ちはしたが、父上は死線をさまよった。
信親が油断をして船を投錨していたから勝てたが、それ即ち、我らが松浦より強い訳では無い。
「ただ、ひとつ気になる事が。」
「なんじゃ」
「現当主、と言って良いのかわかりませぬが、波多藤童丸は先代当主の波多盛の実子ではございませぬ。未亡人の真芳がお家存続のために、力のある有馬家と誼を通じて盟を結ぶべく、有馬晴純の孫を迎えて据えているのです。」
「なるほど。しかしそれは別段、何も問題なかろう?」
「は、しかしそれは真芳が独断で決め、他の家臣も追随す様に相続を認めたのでございます。」
・・・なるほど、それで反対勢力がいる、と。
「この家督相続は、以前より重臣一同で協議がなされており、盛の弟で壱岐代官である志摩守の子、隆、重、正の中から選んで迎えようと決していたのです。」
「それを前の室(妻)の鶴の一声でご破算にされたのですから、面目丸つぶれです。家中は完全にふたつに分かれております。」
まあ、他家のお家騒動なんてどうでもいい。勝手に騒いでお互いに力を削いでくれればいいのだ。
東の龍造寺、南の後藤、西の松浦の牽制役になってくれさえすればいい。
領地が接していないので困る事もない。
「あいわかった。彼らとは今後も良好な関係が続くよう、適宜連絡をとりあう様に。」
こうして利三郎との引見は終わった。
こちらで加工しています。
出典:国土地理院ウェブサイト (https://maps.gsi.go.jp/#10/32.883624/129.865265/&base=blank&ls=blank&disp=1&lcd=blank&vs=c0g1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1)
「して、どうであった?」
俺は利三郎の報告を受けた。
ひと月ほど前から粘土の調達と外交をまかせていた件だ。
「は、内海、福田とも感触は良好でござった。」
「両家とも、力のある勢力に与しなければ家を保つ事ができませぬ。それゆえ、親大村の我らと組むのは(現時点では)やぶさかでないようです。また、先日の我らが勝利、殿の初陣での活躍も知れ渡っている様子。こちらは波多、佐志方も同様でござった。」
利三郎がにやにやとも、ほくほくとも、よくわからない顔をしている。
「なんだ?」
ごほん、と咳払いすると、
「いえ、なにも」
と顔を引き締めた。
「また、ご所望の(ねばつち)でございますが、まったく関心のない様子でござった。ただの土くれなど何に使うのか?とは聞かれましたが、なんとか煙に巻きました。」
「そうか。石鹸はどうであった?」
「は、興味津々でございました。また、値段につきましては、殿が予想されていた原価の五文・・・六文で話しましたが、ようございましたか?」
「よい、元々そこで利益を得ようとは考えておらぬ。目的は粘土(ねんど・ねばつち)と盟だからな。諸々の費用込みで五文でもいい位だ。」
俺はふふっと笑い、話の続きを待った。
(家中で使おうが城下で売ろうがどうでもいい。大量に売れなければ意味がないからな。)
後は針尾の佐志方杢兵衛でございますが・・・・。
「うむ、いかがした?」
「は、こちらはさきほどの二名と違い、盟に重きをおいておりました。もちろん石鹸にも興味を示してはおりましたが、我らとの盟に大いに利を感じた様子です。」
「針尾島の領有をめぐって針尾氏と抗争を繰り返しておりますが、劣勢にございます。過去には島を追い出された経緯もございますれば、挟撃できる我らとの盟はかなりの魅力にみえるのでしょう。」
ただ、と俺は釘を差した。
「ただ、盟を結んだからとて、すぐに我らは兵を出す事あたわぬぞ。」
「承知しております。その点は、我が殿は家督をついで間もない事、家中をまとめ、国を豊かにするのが先決と申し伝えました。ただし、傘下の城が攻められた場合は合力する、とも」
ふふ、と俺は笑った。
「当然だ。それがなくば盟の意味がないからの。」
「はは、あわせて針尾氏に勝利した際には、領有を主張してきましたので・・・。」
「気が早いな。」
「はい、そこで我らは領地はいらぬ、かわりに早岐の瀬戸の通行権と徴税自由権を、と要求いたしました。もちろん、帰って我が殿にお伺いを立てる、と加えましたが。」
「さすがだ利三郎。針尾島は二千四百石で小佐々を越えるとはいえ、所詮は島だ。西側の針尾の瀬戸は流れが早くて渡れぬし、早岐の瀬戸を押さえておれば、大村領との商いの効率が飛躍的にあがる。ははは、島よりも十倍以上の値打ちがあるわ。」
沢森から陸路で大村までは八刻(16時間)かかるが、海路ではどれだけ長く見積もっても半分の四刻(8時間)で済む。
夕方には市が終わるので最低一泊は必要だが、大量に運べるので、同じ量を売るのに何度も往復する必要がない。城下に出店でも構えて在庫をおけば、月に一、二度で済むかもしれない。
費用対効果抜群だ。
「そして最後の波多だが。」
「はい、こちらは終始上機嫌で会談を終える事ができました。もちろん盟に関しては全く異存のない様子。先だっての我らの勝利が殊の外効いております。」
宿敵松浦氏を我らが撃退!
噂は本当にすごい力を持っているのだな、そう改めて感じた。確かに敵将二人を討ち取って勝ちはしたが、父上は死線をさまよった。
信親が油断をして船を投錨していたから勝てたが、それ即ち、我らが松浦より強い訳では無い。
「ただ、ひとつ気になる事が。」
「なんじゃ」
「現当主、と言って良いのかわかりませぬが、波多藤童丸は先代当主の波多盛の実子ではございませぬ。未亡人の真芳がお家存続のために、力のある有馬家と誼を通じて盟を結ぶべく、有馬晴純の孫を迎えて据えているのです。」
「なるほど。しかしそれは別段、何も問題なかろう?」
「は、しかしそれは真芳が独断で決め、他の家臣も追随す様に相続を認めたのでございます。」
・・・なるほど、それで反対勢力がいる、と。
「この家督相続は、以前より重臣一同で協議がなされており、盛の弟で壱岐代官である志摩守の子、隆、重、正の中から選んで迎えようと決していたのです。」
「それを前の室(妻)の鶴の一声でご破算にされたのですから、面目丸つぶれです。家中は完全にふたつに分かれております。」
まあ、他家のお家騒動なんてどうでもいい。勝手に騒いでお互いに力を削いでくれればいいのだ。
東の龍造寺、南の後藤、西の松浦の牽制役になってくれさえすればいい。
領地が接していないので困る事もない。
「あいわかった。彼らとは今後も良好な関係が続くよう、適宜連絡をとりあう様に。」
こうして利三郎との引見は終わった。
こちらで加工しています。
出典:国土地理院ウェブサイト (https://maps.gsi.go.jp/#10/32.883624/129.865265/&base=blank&ls=blank&disp=1&lcd=blank&vs=c0g1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1)
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