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第38話 『タイムワープと若返りの謎に迫る』
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2024年11月12日(21:00) SPRO 地下施設
「では、これまでの状況証拠をまとめてみましょう」
結月がホワイトボードを指す。
『タイムワープ発生の必要条件』
1. 場所:石室内での発生
2. 物理現象:地震の振動
3. 人的要因:強い感情+密着状態
「これらの条件がそろった時にのみ、タイムワープが発生しているようです」
「でも……なぜこの条件なんでしょうか?」
咲耶が静かに問いかけた。
「仮説を立ててみましょう」
結月は新しい項目を書き始める。
『仮説』
・石室の構造が振動を増幅/共鳴?
・人の感情/接触が何らかのエネルギーを発生?
・時空の歪みが一時的に形成される?
「しかし……」
結月は首を振る。
「結局のところ、これらはあくまで現象の説明を試みているだけです。なぜ石室なのか、なぜ感情が必要なのか、その根本的な理由は説明できていません」
「まるで未来の技術とか超古代文明! 異星人の人智を超えたテクノロジー……みたいな感じだな」
修一が笑いながらそう言った。
「まさにそうなんです」
真剣な結月の表情と言葉に、解明できない技術にもかかわらず、全員の視線が集まった。
「実は……」
結月は少し躊躇した後、タブレットを手に取って言った。
「修一さんのDNA解析の結果で、興味深い発見がありました……」
「? どんな?」
修一は冗談のような顔から一変して不安な顔つきに変わる。
「SPROには……ある特殊なDNAのデータベースがあります」
結月は慎重に言葉を選びながら続けた。
「修一さんは先日の検査で、明確に現代人のDNAパターンを示していました。これは間違いありません。しかし、より詳細な解析を行ったところ、極めて特異な配列が見つかったのです」
「特異な配列?」
比古那が医学生らしい関心を示す。
「はい。SPROが保管している特殊なDNAデータと部分的に一致する箇所があります。しかも……」
結月は壱与たちの方を見た。
「このDNA配列は、壱与さん、イサク、イツヒメさんにも存在しているんです」
「然れど、吾等は弥生の、この時代とは違う古の人と判じられたのじゃろう?」
女王言葉の壱与が静かに問いかけた。
「その通りです。3人のDNAは確かに弥生時代の人々のパターンを示しています。見た目は現代人と変わらないものの、その遺伝情報は明確に弥生人のものです。しかし同時に、この特殊な配列も持っているのです。これが見た目を現代人に見せている要因なのかもしれません」
「どういうことだ? せんせーの場合、現代人だが弥生人の壱与ちゃんたちと同じ配列があって、その、特殊な配列が……まさか、せんせの若返りの秘密とか?」
比古那は医学的見地から理解不能な謎について結月に確認した。
「修一さんの場合、99%以上は現代人のDNAパターンです。人とサルとを分ける遺伝子の違いは1%ですが、個人差はその1%の中の、小数点以下のごくわずかな差なのです。そしてその、ごくわずかな部分に、この特殊な配列が含まれている。通常の検査では見過ごされてしまうような、微量なものなのです。まるで……」
結月は言葉を濁したが、今度は同じ医学部の咲耶が遮る。
「ちょっと待って、その、保管してあるDNAってなんの……?」
「……実は、このDNAデータの入手経緯について、お話ししておく必要があります」
結月は一同の反応を確かめるように間を置いた。
「1986年、日本航空のジャンボ機がアラスカ上空でUFOに遭遇した事件をご存知でしょうか」
「ははは! 宇宙人なんているわけない!」
槍太が断言するが、尊が反論する。
「確かに異星人の存在は立証されていない。でも、オレ達に起こった事も立証できない事じゃないか。今さらなに言っているんだ? 論理的に説明できない事は信じないが、今回に限っては……信じるしかないだろう」
槍太は黙りこくってしまった。
「……おるぞ。宇宙人とやらは間違いなくおる。わしは見たのだ」
全員が驚いて声の主の方を見た。
「あ! ナシメさん!」
壱与のもとで修一達の世話をした、魏に派遣された難升米そっくりの人物がそこにいたのだ。
「なしめ? 誰じゃそいつは」
老人は首をひねった。
(おい、どうする? ナシメのじいさんそっくりだぞ?)
(どうするもなにも、現代にいることがあり得るわけないだろ? 他人の空似だよ)
比古那と槍太が心の声で会話していると、ナシメそっくりの老人は口を開いた。
「失礼した。わしは寺内伸寿。1986年の日航機1628便の機長だ」
老人は全員を見渡しながら言った。
「日航機……1628便?」
比古那は首を傾げるがそれもそのはず、生まれる前の話を結月が説明する。
「寺内顧問は、SPROの研究に長年協力していただいています。この特殊なDNA配列の発見は、実は寺内顧問の証言がきっかけでした」
寺内は静かにうなずいた。
「当時47歳、わしも今年で85歳になった。アラスカ上空でUFOに遭遇した際、副操縦士は『光は見たが形は見えなかった』と証言し、機関士は『何も見ていない』と。わしは結局地上勤務に飛ばされた。異常者としてな。しかし実は……」
寺内は一瞬言葉を切り、それからまるで長年の沈黙を破るかのように続けた。
「やつらは間違いなく飛行機の中におったのだ。見た目は人間とかわらん。異星人と言えばもっと気味の悪い者を想像するかもしれんが、まさに人間じゃった。その異星人がなんらかの……おそらくは人類の遺伝子に関する実験をやっておったのじゃろう」
結月は新たにホワイトボードに書き始めた。
『DNA分析から見えてきた事実』
・修一さん:現代人DNAに極めて微量の特殊配列
・壱与さんたち:弥生人DNAに同じ特殊配列
・外見と遺伝情報の"ズレ"
「この特殊配列は、1986年の日航機事件の後、機体から採取された物質の分析で初めて発見されました。その後、私たちは様々な時代の人骨のDNAと比較研究を行ってきたのです」
結月は一瞬間を置き、続けた。
「その結果この配列は弥生時代以前から存在し、現代人にも受け継がれていることが判明しました。しかも、この配列を持つ人々は、時代を問わず現代人と同じような外見的特徴を示す。これは通常の進化では説明できない現象です」
「あの時、飛行機の中で見た"彼ら"は、まさに現代人と同じ姿をしていた。それもこれも、同じ理由からなのかもしれんな」
寺内が補足するように言った。
『仮説』
・古代における遺伝子操作の可能性
・現代人の起源との関連性
・特定のDNA配列の世代間保存
次回予告 第39話『遺伝子の実験と様々な仮説』
「では、これまでの状況証拠をまとめてみましょう」
結月がホワイトボードを指す。
『タイムワープ発生の必要条件』
1. 場所:石室内での発生
2. 物理現象:地震の振動
3. 人的要因:強い感情+密着状態
「これらの条件がそろった時にのみ、タイムワープが発生しているようです」
「でも……なぜこの条件なんでしょうか?」
咲耶が静かに問いかけた。
「仮説を立ててみましょう」
結月は新しい項目を書き始める。
『仮説』
・石室の構造が振動を増幅/共鳴?
・人の感情/接触が何らかのエネルギーを発生?
・時空の歪みが一時的に形成される?
「しかし……」
結月は首を振る。
「結局のところ、これらはあくまで現象の説明を試みているだけです。なぜ石室なのか、なぜ感情が必要なのか、その根本的な理由は説明できていません」
「まるで未来の技術とか超古代文明! 異星人の人智を超えたテクノロジー……みたいな感じだな」
修一が笑いながらそう言った。
「まさにそうなんです」
真剣な結月の表情と言葉に、解明できない技術にもかかわらず、全員の視線が集まった。
「実は……」
結月は少し躊躇した後、タブレットを手に取って言った。
「修一さんのDNA解析の結果で、興味深い発見がありました……」
「? どんな?」
修一は冗談のような顔から一変して不安な顔つきに変わる。
「SPROには……ある特殊なDNAのデータベースがあります」
結月は慎重に言葉を選びながら続けた。
「修一さんは先日の検査で、明確に現代人のDNAパターンを示していました。これは間違いありません。しかし、より詳細な解析を行ったところ、極めて特異な配列が見つかったのです」
「特異な配列?」
比古那が医学生らしい関心を示す。
「はい。SPROが保管している特殊なDNAデータと部分的に一致する箇所があります。しかも……」
結月は壱与たちの方を見た。
「このDNA配列は、壱与さん、イサク、イツヒメさんにも存在しているんです」
「然れど、吾等は弥生の、この時代とは違う古の人と判じられたのじゃろう?」
女王言葉の壱与が静かに問いかけた。
「その通りです。3人のDNAは確かに弥生時代の人々のパターンを示しています。見た目は現代人と変わらないものの、その遺伝情報は明確に弥生人のものです。しかし同時に、この特殊な配列も持っているのです。これが見た目を現代人に見せている要因なのかもしれません」
「どういうことだ? せんせーの場合、現代人だが弥生人の壱与ちゃんたちと同じ配列があって、その、特殊な配列が……まさか、せんせの若返りの秘密とか?」
比古那は医学的見地から理解不能な謎について結月に確認した。
「修一さんの場合、99%以上は現代人のDNAパターンです。人とサルとを分ける遺伝子の違いは1%ですが、個人差はその1%の中の、小数点以下のごくわずかな差なのです。そしてその、ごくわずかな部分に、この特殊な配列が含まれている。通常の検査では見過ごされてしまうような、微量なものなのです。まるで……」
結月は言葉を濁したが、今度は同じ医学部の咲耶が遮る。
「ちょっと待って、その、保管してあるDNAってなんの……?」
「……実は、このDNAデータの入手経緯について、お話ししておく必要があります」
結月は一同の反応を確かめるように間を置いた。
「1986年、日本航空のジャンボ機がアラスカ上空でUFOに遭遇した事件をご存知でしょうか」
「ははは! 宇宙人なんているわけない!」
槍太が断言するが、尊が反論する。
「確かに異星人の存在は立証されていない。でも、オレ達に起こった事も立証できない事じゃないか。今さらなに言っているんだ? 論理的に説明できない事は信じないが、今回に限っては……信じるしかないだろう」
槍太は黙りこくってしまった。
「……おるぞ。宇宙人とやらは間違いなくおる。わしは見たのだ」
全員が驚いて声の主の方を見た。
「あ! ナシメさん!」
壱与のもとで修一達の世話をした、魏に派遣された難升米そっくりの人物がそこにいたのだ。
「なしめ? 誰じゃそいつは」
老人は首をひねった。
(おい、どうする? ナシメのじいさんそっくりだぞ?)
(どうするもなにも、現代にいることがあり得るわけないだろ? 他人の空似だよ)
比古那と槍太が心の声で会話していると、ナシメそっくりの老人は口を開いた。
「失礼した。わしは寺内伸寿。1986年の日航機1628便の機長だ」
老人は全員を見渡しながら言った。
「日航機……1628便?」
比古那は首を傾げるがそれもそのはず、生まれる前の話を結月が説明する。
「寺内顧問は、SPROの研究に長年協力していただいています。この特殊なDNA配列の発見は、実は寺内顧問の証言がきっかけでした」
寺内は静かにうなずいた。
「当時47歳、わしも今年で85歳になった。アラスカ上空でUFOに遭遇した際、副操縦士は『光は見たが形は見えなかった』と証言し、機関士は『何も見ていない』と。わしは結局地上勤務に飛ばされた。異常者としてな。しかし実は……」
寺内は一瞬言葉を切り、それからまるで長年の沈黙を破るかのように続けた。
「やつらは間違いなく飛行機の中におったのだ。見た目は人間とかわらん。異星人と言えばもっと気味の悪い者を想像するかもしれんが、まさに人間じゃった。その異星人がなんらかの……おそらくは人類の遺伝子に関する実験をやっておったのじゃろう」
結月は新たにホワイトボードに書き始めた。
『DNA分析から見えてきた事実』
・修一さん:現代人DNAに極めて微量の特殊配列
・壱与さんたち:弥生人DNAに同じ特殊配列
・外見と遺伝情報の"ズレ"
「この特殊配列は、1986年の日航機事件の後、機体から採取された物質の分析で初めて発見されました。その後、私たちは様々な時代の人骨のDNAと比較研究を行ってきたのです」
結月は一瞬間を置き、続けた。
「その結果この配列は弥生時代以前から存在し、現代人にも受け継がれていることが判明しました。しかも、この配列を持つ人々は、時代を問わず現代人と同じような外見的特徴を示す。これは通常の進化では説明できない現象です」
「あの時、飛行機の中で見た"彼ら"は、まさに現代人と同じ姿をしていた。それもこれも、同じ理由からなのかもしれんな」
寺内が補足するように言った。
『仮説』
・古代における遺伝子操作の可能性
・現代人の起源との関連性
・特定のDNA配列の世代間保存
次回予告 第39話『遺伝子の実験と様々な仮説』
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