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嫉妬
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「それで、一体何があったんだ、エマ?」
そう尋ねられ、私はフェリクスに一部始終を説明した。
「なっ……?! イザベラがそんなことを……?! なんてことだ……と、とりあえず君が無事で本当に良かった」
フェリクスが顔を赤らめながら言う。
「でも危ないところでしたわ。あなたに寝取られの性癖があると言ってイザベラを煽ったおかげでなんとか時間稼ぎができましたけど」
「なっ?! ね、寝取られだと……?! 俺にそんな趣味はないぞ」
「知っていますわ。もちろんイザベラを動揺させるための方便です」
「それはそうだろうが……まったく君は……一体どこでそのような知識を身につけてくるのだ? 本当にいつも奇抜な手を使ってピンチを切り抜けるんだな」
「だって他に案が思い浮かばなかったんですもの」
暖炉の前に2人並んで座って炎を見つめている。全く散々な合宿研修になったものだ。
「ちなみにその、部屋に入った時、君がルークの体に……う、腕をまわしていたのは……」
フェリクスがおずおずと尋ねてくる。なるほど、それが気になってフェリクスったら私とルークの姿をガン見していたというわけね。
「もちろんあれもイザベラを欺くための演技ですわ」
「そ、そうか……、そ、そうだよな、ははは」
勘違いを誤魔化すようなフェリクスの笑い声が部屋に響く。笑い声がやむと真剣な響きでフェリクスが言った。
「だが例えフリとは言え……君をああして初めてベッドに押し倒すのは俺でありたかった」
急にそんな風に言われて思わずドキッとしてしまう。
「お、押し倒す……って」
「だってそうだろう? 俺は君の婚約者なのに、これまでルークばかりが君に触れている。フェンリルの森でだって本当は俺が君を助けに行きたかったのに……」
「そんなことを言われましても……」
気がつけばフェリクスからじっと見つめられていた。……よく考えたら、今私たち、この部屋に2人きりなのよね……。
暖炉の明かりに照らされたフェリクスの表情が険しい。無言で頬に手を触れられた。
フェリクスの唇が近づいてきて、そのままキスされていた。
「……っ」
少しの間触れられてそっと離れる。唇が離れたと思ったら強く抱き締められていた。
「体が冷たいな」
そう言いながらフェリクスは体を離すと私の唇をそっと撫でた。
ドキドキしすぎてさっきからされるがままになっている。
フェリクスから言われてみて思い出したけれど、そういえば服が濡れたままだったせいで体がすごく冷えていた。
「そのままでは冷える。 服を脱げ、エマ」
「えっ?!」
「代わりにこれを着ろ」
そう言ってフェリクスは自分が着ていた上着を脱いで手渡してきた。
「そ、そんな、大丈夫です」
「いいから黙って着ておけ」
私はカーテンに隠れて濡れた服を脱ぐと、おずおずとフェリクスの上着に腕を通した。
……フェリクスのいい匂いがする。
暖炉の前に戻ると炎の前でついまた目が合ってしまう。
「き、急にあんな……こ、困りま」
先ほどのキスの抗議をしようと思っていたのに、言い終わらないうちにまたまたキスされた。今度は少し長いキス。
「……っん」
「……っ好きだ、エマ」
唇が一瞬離れたと思ったら角度を変えてもう一度。ちゅぱっという音が響いてなんだか少しいやらしい。
フェリクスから借りた上着の下は素肌だ。首筋にフェリクスの指先が触れる。ぴくりと体を震わせたと同時に甘い声が出てしまう。
「ん……っ」
そのまま首筋にもキスをされる。
「……っ……ふう……んっ、フェリクス、ちょ……っとまって……」
「……まさかそんな可愛らしい声をルークにも聞かせてなんていないよな?」
「る、ルークとは、き、キスだってしていませんから」
「ならいい。君の初めては全部俺のものにしたい」
言いながらまた唇にキス。今度はフェリクスの舌が入ってきた。
「……っん」
初めての感覚に体が熱くなって吐息が漏れる。
フェリクスがはっと我に返ったようにさっと体を離した。
「す、すまない」
フェリクスが言う。
「というか君のその姿が反則なんだ……! 俺の上着を着てそんな……! 可愛らしすぎるだろう……?!」
「そ、そんなこと言ったってフェリクスがこれを着ろと言ったのでしょう!」
お互いに顔を真っ赤にして叫び合う。
「とにかく……駄目だ、ええと……もう眠ろう」
「そ、そうですわね……ええと、ベッドに……」
そうは言ったものの部屋にベッドは一つしかない。ベッドを見つめたまま2人で固まってしまう。フェリクスが言う。
「いや、俺はいい。床で寝る」
「そ、そんな、王太子ともあろうお方を床で寝かせるなんてできません」
「今の俺は王太子である前に一人の男だ。同じベッドで2人で眠るなど……駄目だ、絶対に。理性が飛ぶ」
「で、ですけれどあなたときたらさっき私に上着を渡したせいでそんなに薄着で……。そんな恰好で床の上で一晩なんて過ごしたら風邪をひいてしまいますわ」
「だが……」
そう尋ねられ、私はフェリクスに一部始終を説明した。
「なっ……?! イザベラがそんなことを……?! なんてことだ……と、とりあえず君が無事で本当に良かった」
フェリクスが顔を赤らめながら言う。
「でも危ないところでしたわ。あなたに寝取られの性癖があると言ってイザベラを煽ったおかげでなんとか時間稼ぎができましたけど」
「なっ?! ね、寝取られだと……?! 俺にそんな趣味はないぞ」
「知っていますわ。もちろんイザベラを動揺させるための方便です」
「それはそうだろうが……まったく君は……一体どこでそのような知識を身につけてくるのだ? 本当にいつも奇抜な手を使ってピンチを切り抜けるんだな」
「だって他に案が思い浮かばなかったんですもの」
暖炉の前に2人並んで座って炎を見つめている。全く散々な合宿研修になったものだ。
「ちなみにその、部屋に入った時、君がルークの体に……う、腕をまわしていたのは……」
フェリクスがおずおずと尋ねてくる。なるほど、それが気になってフェリクスったら私とルークの姿をガン見していたというわけね。
「もちろんあれもイザベラを欺くための演技ですわ」
「そ、そうか……、そ、そうだよな、ははは」
勘違いを誤魔化すようなフェリクスの笑い声が部屋に響く。笑い声がやむと真剣な響きでフェリクスが言った。
「だが例えフリとは言え……君をああして初めてベッドに押し倒すのは俺でありたかった」
急にそんな風に言われて思わずドキッとしてしまう。
「お、押し倒す……って」
「だってそうだろう? 俺は君の婚約者なのに、これまでルークばかりが君に触れている。フェンリルの森でだって本当は俺が君を助けに行きたかったのに……」
「そんなことを言われましても……」
気がつけばフェリクスからじっと見つめられていた。……よく考えたら、今私たち、この部屋に2人きりなのよね……。
暖炉の明かりに照らされたフェリクスの表情が険しい。無言で頬に手を触れられた。
フェリクスの唇が近づいてきて、そのままキスされていた。
「……っ」
少しの間触れられてそっと離れる。唇が離れたと思ったら強く抱き締められていた。
「体が冷たいな」
そう言いながらフェリクスは体を離すと私の唇をそっと撫でた。
ドキドキしすぎてさっきからされるがままになっている。
フェリクスから言われてみて思い出したけれど、そういえば服が濡れたままだったせいで体がすごく冷えていた。
「そのままでは冷える。 服を脱げ、エマ」
「えっ?!」
「代わりにこれを着ろ」
そう言ってフェリクスは自分が着ていた上着を脱いで手渡してきた。
「そ、そんな、大丈夫です」
「いいから黙って着ておけ」
私はカーテンに隠れて濡れた服を脱ぐと、おずおずとフェリクスの上着に腕を通した。
……フェリクスのいい匂いがする。
暖炉の前に戻ると炎の前でついまた目が合ってしまう。
「き、急にあんな……こ、困りま」
先ほどのキスの抗議をしようと思っていたのに、言い終わらないうちにまたまたキスされた。今度は少し長いキス。
「……っん」
「……っ好きだ、エマ」
唇が一瞬離れたと思ったら角度を変えてもう一度。ちゅぱっという音が響いてなんだか少しいやらしい。
フェリクスから借りた上着の下は素肌だ。首筋にフェリクスの指先が触れる。ぴくりと体を震わせたと同時に甘い声が出てしまう。
「ん……っ」
そのまま首筋にもキスをされる。
「……っ……ふう……んっ、フェリクス、ちょ……っとまって……」
「……まさかそんな可愛らしい声をルークにも聞かせてなんていないよな?」
「る、ルークとは、き、キスだってしていませんから」
「ならいい。君の初めては全部俺のものにしたい」
言いながらまた唇にキス。今度はフェリクスの舌が入ってきた。
「……っん」
初めての感覚に体が熱くなって吐息が漏れる。
フェリクスがはっと我に返ったようにさっと体を離した。
「す、すまない」
フェリクスが言う。
「というか君のその姿が反則なんだ……! 俺の上着を着てそんな……! 可愛らしすぎるだろう……?!」
「そ、そんなこと言ったってフェリクスがこれを着ろと言ったのでしょう!」
お互いに顔を真っ赤にして叫び合う。
「とにかく……駄目だ、ええと……もう眠ろう」
「そ、そうですわね……ええと、ベッドに……」
そうは言ったものの部屋にベッドは一つしかない。ベッドを見つめたまま2人で固まってしまう。フェリクスが言う。
「いや、俺はいい。床で寝る」
「そ、そんな、王太子ともあろうお方を床で寝かせるなんてできません」
「今の俺は王太子である前に一人の男だ。同じベッドで2人で眠るなど……駄目だ、絶対に。理性が飛ぶ」
「で、ですけれどあなたときたらさっき私に上着を渡したせいでそんなに薄着で……。そんな恰好で床の上で一晩なんて過ごしたら風邪をひいてしまいますわ」
「だが……」
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